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嘆き2
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「だって目が覚めないんだもの。私が説明するしかないでしょ?」
エレディナが人気のない寝室で、人のベッドの上で寝転がる。寝転がっても布団より浮いているので、ただのふりだ。
「ガルネーゼが心配するふりして、あんたの寝所に留まるなんてことするから、側使え共が怒られるんじゃないかってオロオロしてて笑えたけど」
いつまで経っても目覚めないので、エレディナに聞こうと寝所に入り込んで踏ん張っていたらしい。二人きりにするわけにはいかないので、レミアは部屋で待機していたそうだが、とうとう外に追いやってエレディナと会話をしたそうだ。
おっさん、しつこいね。
「それだけ心配したんでしょ。風邪なんてほとんど引かない健康優良児が熱出して寝込むなんて、怪しいと踏んだのよ。カサダリア行く途中でどこか立ち寄るのは、いつものことだし」
立ち寄れば、そこの付近で何かしていることは想像が付くのだろう。ガルネーゼは最近政務官がフィルリーネのせいで罷免されていることを知って、故郷から目処をつけていたようだ。
「体調が良くなったら、引き籠もっていいそうよ。許可してやるから、移動させてきた物を早くどかせって」
「あー」
実は王都ダリュンベリを出る前に、ガルネーゼに玩具を送り付けていた。送り付けたというか、物流転移魔法陣を使用して、ガルネーゼの家に商品を転移させていたのだ。
第二都市カサダリアで販売するための試作品である。いつもならば自分ごとエレディナに転移してもらい、売りに行くのだが、今回は旅行で来ている。玩具を荷物に入れるわけにはいかないので、こっそり城から転移させておいたのだ。
「屋敷の部屋にごっそり何かが届いていて、何事かと思ったって言ってたわ。勝手に入っていいから、さっさと持ってけって」
そんなこともいつも通りなので、フィルリーネは軽く頷く。
「ところで、熱出ちゃたから見れなかったけど、精霊の様子はどお?」
「どお? って言われてもね。あんたが長く力を注いだ分、精霊たちも少しは気持ちが動いたみたいだけれど、元に戻すまでにはかなり時間が掛かりそうね。呼び出しても戻りたくなさそうだった」
精霊を呼ぶために恵みを祈ったけれど、あれでは足りなかったか。あまりにも枯渇しすぎていたため、戻ってきても住む気が起きないのもあるだろう。あれでは魔獣を呼び寄せるだけだ。
「魔導を注いで恵みを得られるような力場になっていたけれど、また連れて行こうとするやつが現れるのが嫌だって言ってた」
「連れて行こうとするやつ……」
「率先して移動させようとする精霊がいるみたいね」
「そんなことあり得るの?」
「分かんないわ。あまり要領を得なくて。王の力で移動させようとしたって感じじゃなくて、不安要素を掻き立てる精霊が紛れるみたい」
「何それ。つまり、誘導する精霊がいて、それに騙されて移動してるってこと?」
「そういうわけじゃなさそうなんだけれど。良く分かんないのよ。本人たちも分かってないから、何言ってるか理解できなくて。あまり覚えていないのよね。その子たちも」
精霊にそんなことが起きるのか? 言っている意味が分からずにフィルリーネは眉を寄せた。エレディナも自分が荒唐無稽なことを言っていると自覚している。肩を竦めて、でも変なことが起きて移動したのは間違いない。と呟いた。
「変な魔導でも掛けられているのか、そちらに移動させられそうになって、逃げようとして何とか逃げられたのがいるって感じ。戻れるならば戻りたいけれど、戻ってまたそうなったら嫌だなって」
それでは土地の豊かさが戻らない。精霊がいないまま、あとは崩れて砂になるだけだ。
「川は戻すって言ってたわ。上流だったらそんなに近くないからって。あの子たちも嫌で離れているわけではないから、故郷は心配なのよ」
けれど怖い。何かが起きたから。不安にかられて戻る気力がない。
それでは根本を調査しなければ、やはり土地は死に行くばかりになる。
「だから、ああいったことが他にないか、みんなに伝えて教えてって言っておいたわ。今回は逃げたのが直近だったから、あの付近にいた子たちに話が聞けたし。いつもよりずっとましよ」
少しは情報を得られたことを喜ぼう。エレディナの言葉に小さく頷いた。
「こんにちはー」
「いらっしゃいませ。やあ、フィリィさん。久し振りですね」
入り込んだお洒落な店の中、身綺麗な男性がにこやかに迎えてくれた。
「デリならいますよ。中にどうぞ」
「ありがとうございます」
フィリィは促されて店に入る。高価そうなペンやインク壺。刺繍のこったカバーがされた手帳や、重厚な鞄などが見やすいように飾られている中、円錐の木材でできた濃紺の花模様が描かれた玩具が棚の上に飾られているのを見て、フィリィはにんまりと笑った。
客がいる中、店の奥にある扉を開いて隣の部屋に入り込む。商品の置いてある倉庫と化した薄暗い中、カーテンに隠れた扉を潜って階段を登ると扉がまたあり、そこをノックした。
「どうぞー」
若い女性の声がして、フィリィはゆっくりと扉を開いた。
「お邪魔しまーす」
「あら、久し振りじゃない。いらっしゃい、いらっしゃい。座って」
広い部屋の真ん中にある大きなテーブルの前で、赤毛を頭の上で結んだ女性、デリが椅子から立ち上がった。癖のある赤毛は背中まで伸びて三つ編みにされている。はっきりとした目鼻立ちのデリは手元にあったベルを鳴らして、お茶を頼んだ。
「店にあの玩具出したんですね。売れました?」
「もう何個か出てるよ。玩具だと思わずに買おうとされる方がいるね。説明するとうけがいいわ。絵柄が美しいから、気に入られるってことが証明されたのよ!」
「装飾考えれば売れるもんだなあ」
「もう少し装飾を豪華にしたら貴族にも売れるから、そっちは直接売りに出すわ」
「頼もしい」
デリはフィリィを促すと席に座らせた。老齢の女性がお茶を持ってきてくれて、目の前にお菓子と共に出される。素朴なミルク味のクッキーだ。この辺りではよく作られるお菓子で、フィリィはそれを嬉しそうに摘む。
「言われた通り、今回も底に焼きごてで印字してるから、あの印を見たお客様から問い合わせがあったわよ。貴族なんだけれど、新しい商品ができたら見せに来てほしいってね」
「ほんとですか? やったー!」
玩具には自分が考案した商品と分かるように、四角に花の形が描かれた印を焼きごてしてもらっている。最近では第二夫人の息子コニアサスが持ち始めたので、結構な反響があるのだ。ガルネーゼが商人から貰った試作品ということでコニアサスに回しているので、どこで購入しているか分からないのだが、焼印を見て気付く人が増えてきたのだろう。
「今回はどんな商品持ってきたの? 見せて、見せて」
「今日は商人が購入層と考えているものと、貴族相手のもので」
広げた玩具にデリは興味深そうに手にとって眺め始める。一つは計算能力を上げるための玩具だ。子供でもできる計算ではなく、桁数の多いもので、商人になったばかりの見習いなどに使ってほしい。もちろん商人を目指す子供も購買層だ。
もう一つは貴族の子度向けの玩具である。魔法陣に記す魔法記号のカードだ。意味と読み方と絵付きで、表裏で描かれているのでめくれば意味が分かる。記号図鑑の本もあり、並べ方を変えれば魔法陣に描く文字が順番に覚えられる。
そして最後が貴族の騎士希望と、狩人などの魔獣と対する人向けのものだ。魔獣の弱点をランク付けしており、特徴や弱点が描かれている。
「ちょっと大人向けっていうか、大人でも使い勝手のいい商品だね。子供向けはやめたの?」
「そろそろ貴族向けに発信したいなって。この印は必ず入れてくださいね」
「分かってる。フィリィが作ったって証拠ね」
デリはにこやかに言いながら、商品を細かく見る。彼女は第二都市カサダリアで豪商向けの筆記具や鞄などの商品を買い付ける、女性買手だ。父親の店で売るための商品を買い付けたり、職人と相談して新商品を作り出したりする。買い付け、商品企画に加え、貴族には直接売りに行く営業も行う、バイタリティ満載な人なのだ。
まだ二十代なのに、中々のやり手だ。デリとは、職人へ玩具を見せに行った時に出会った。子供が作った玩具を職人が疑り深く見ていた時に、たまたま訪れ、デリはフィリィの商品に興味を持った。以来の付き合いである。
「この魔獣の木札、数字書いてあるの、何なの?」
「それは子供向けに遊べるようにしてあるんです。強い魔獣は数字が多くて、弱い魔獣は数字が低い。その数字を競わせるゲーム流行らせたいんですよね。魔獣に会っちゃった時の危険度が、ゲームしながら覚えられるっていう」
「そしたらこれ、地方の方が売れるんじゃない?」
「地方で購入層あるかなあ」
「最近、魔獣が地方でよく出るって話だからね。むしろ売れると思うよ。見たことのない魔獣が出るって話もあるし、大人も気になる玩具になるね」
精霊が減れば魔獣も増える。見たことのない魔獣も出てくるだろう。あまり好ましい話ではない。
「詳しく書いてあるし、量があるわね。これ量産は時間が掛かるな。何種類か作らせても採算合うかってところだけれど、貴族の騎士がいるところに様子見として出してみようか。できれば色付けてほしいけれど、この数を色付けすると完全に赤字になるから無理だね」
「さすがにそれは無理かなって。特徴だけ色付けするとかなら何とか。このツノは白で、とか、この足は赤くて、とか。分かりやすくするなら」
「それは、専門家が必要じゃない?」
「大丈夫です。私、分かるので、色だけ付けましょうか」
買い取ってくれるならばこのまま職人のところへ行き、作り方を教えなければならない。自分が気にしてこだわったところなどをこと細かく説明するのだ。自分の仕事はそこまでで、あとはデリが購買層を見付け、商品として売ってくれる。
そうして、購入が多いものに関しては、王都ダリュンベリのバルノルジに話がいき、そこで売りつけるのだ。バルノルジが王都ダリュンベリでも商品を考案しろと言う所以である。
エレディナが人気のない寝室で、人のベッドの上で寝転がる。寝転がっても布団より浮いているので、ただのふりだ。
「ガルネーゼが心配するふりして、あんたの寝所に留まるなんてことするから、側使え共が怒られるんじゃないかってオロオロしてて笑えたけど」
いつまで経っても目覚めないので、エレディナに聞こうと寝所に入り込んで踏ん張っていたらしい。二人きりにするわけにはいかないので、レミアは部屋で待機していたそうだが、とうとう外に追いやってエレディナと会話をしたそうだ。
おっさん、しつこいね。
「それだけ心配したんでしょ。風邪なんてほとんど引かない健康優良児が熱出して寝込むなんて、怪しいと踏んだのよ。カサダリア行く途中でどこか立ち寄るのは、いつものことだし」
立ち寄れば、そこの付近で何かしていることは想像が付くのだろう。ガルネーゼは最近政務官がフィルリーネのせいで罷免されていることを知って、故郷から目処をつけていたようだ。
「体調が良くなったら、引き籠もっていいそうよ。許可してやるから、移動させてきた物を早くどかせって」
「あー」
実は王都ダリュンベリを出る前に、ガルネーゼに玩具を送り付けていた。送り付けたというか、物流転移魔法陣を使用して、ガルネーゼの家に商品を転移させていたのだ。
第二都市カサダリアで販売するための試作品である。いつもならば自分ごとエレディナに転移してもらい、売りに行くのだが、今回は旅行で来ている。玩具を荷物に入れるわけにはいかないので、こっそり城から転移させておいたのだ。
「屋敷の部屋にごっそり何かが届いていて、何事かと思ったって言ってたわ。勝手に入っていいから、さっさと持ってけって」
そんなこともいつも通りなので、フィルリーネは軽く頷く。
「ところで、熱出ちゃたから見れなかったけど、精霊の様子はどお?」
「どお? って言われてもね。あんたが長く力を注いだ分、精霊たちも少しは気持ちが動いたみたいだけれど、元に戻すまでにはかなり時間が掛かりそうね。呼び出しても戻りたくなさそうだった」
精霊を呼ぶために恵みを祈ったけれど、あれでは足りなかったか。あまりにも枯渇しすぎていたため、戻ってきても住む気が起きないのもあるだろう。あれでは魔獣を呼び寄せるだけだ。
「魔導を注いで恵みを得られるような力場になっていたけれど、また連れて行こうとするやつが現れるのが嫌だって言ってた」
「連れて行こうとするやつ……」
「率先して移動させようとする精霊がいるみたいね」
「そんなことあり得るの?」
「分かんないわ。あまり要領を得なくて。王の力で移動させようとしたって感じじゃなくて、不安要素を掻き立てる精霊が紛れるみたい」
「何それ。つまり、誘導する精霊がいて、それに騙されて移動してるってこと?」
「そういうわけじゃなさそうなんだけれど。良く分かんないのよ。本人たちも分かってないから、何言ってるか理解できなくて。あまり覚えていないのよね。その子たちも」
精霊にそんなことが起きるのか? 言っている意味が分からずにフィルリーネは眉を寄せた。エレディナも自分が荒唐無稽なことを言っていると自覚している。肩を竦めて、でも変なことが起きて移動したのは間違いない。と呟いた。
「変な魔導でも掛けられているのか、そちらに移動させられそうになって、逃げようとして何とか逃げられたのがいるって感じ。戻れるならば戻りたいけれど、戻ってまたそうなったら嫌だなって」
それでは土地の豊かさが戻らない。精霊がいないまま、あとは崩れて砂になるだけだ。
「川は戻すって言ってたわ。上流だったらそんなに近くないからって。あの子たちも嫌で離れているわけではないから、故郷は心配なのよ」
けれど怖い。何かが起きたから。不安にかられて戻る気力がない。
それでは根本を調査しなければ、やはり土地は死に行くばかりになる。
「だから、ああいったことが他にないか、みんなに伝えて教えてって言っておいたわ。今回は逃げたのが直近だったから、あの付近にいた子たちに話が聞けたし。いつもよりずっとましよ」
少しは情報を得られたことを喜ぼう。エレディナの言葉に小さく頷いた。
「こんにちはー」
「いらっしゃいませ。やあ、フィリィさん。久し振りですね」
入り込んだお洒落な店の中、身綺麗な男性がにこやかに迎えてくれた。
「デリならいますよ。中にどうぞ」
「ありがとうございます」
フィリィは促されて店に入る。高価そうなペンやインク壺。刺繍のこったカバーがされた手帳や、重厚な鞄などが見やすいように飾られている中、円錐の木材でできた濃紺の花模様が描かれた玩具が棚の上に飾られているのを見て、フィリィはにんまりと笑った。
客がいる中、店の奥にある扉を開いて隣の部屋に入り込む。商品の置いてある倉庫と化した薄暗い中、カーテンに隠れた扉を潜って階段を登ると扉がまたあり、そこをノックした。
「どうぞー」
若い女性の声がして、フィリィはゆっくりと扉を開いた。
「お邪魔しまーす」
「あら、久し振りじゃない。いらっしゃい、いらっしゃい。座って」
広い部屋の真ん中にある大きなテーブルの前で、赤毛を頭の上で結んだ女性、デリが椅子から立ち上がった。癖のある赤毛は背中まで伸びて三つ編みにされている。はっきりとした目鼻立ちのデリは手元にあったベルを鳴らして、お茶を頼んだ。
「店にあの玩具出したんですね。売れました?」
「もう何個か出てるよ。玩具だと思わずに買おうとされる方がいるね。説明するとうけがいいわ。絵柄が美しいから、気に入られるってことが証明されたのよ!」
「装飾考えれば売れるもんだなあ」
「もう少し装飾を豪華にしたら貴族にも売れるから、そっちは直接売りに出すわ」
「頼もしい」
デリはフィリィを促すと席に座らせた。老齢の女性がお茶を持ってきてくれて、目の前にお菓子と共に出される。素朴なミルク味のクッキーだ。この辺りではよく作られるお菓子で、フィリィはそれを嬉しそうに摘む。
「言われた通り、今回も底に焼きごてで印字してるから、あの印を見たお客様から問い合わせがあったわよ。貴族なんだけれど、新しい商品ができたら見せに来てほしいってね」
「ほんとですか? やったー!」
玩具には自分が考案した商品と分かるように、四角に花の形が描かれた印を焼きごてしてもらっている。最近では第二夫人の息子コニアサスが持ち始めたので、結構な反響があるのだ。ガルネーゼが商人から貰った試作品ということでコニアサスに回しているので、どこで購入しているか分からないのだが、焼印を見て気付く人が増えてきたのだろう。
「今回はどんな商品持ってきたの? 見せて、見せて」
「今日は商人が購入層と考えているものと、貴族相手のもので」
広げた玩具にデリは興味深そうに手にとって眺め始める。一つは計算能力を上げるための玩具だ。子供でもできる計算ではなく、桁数の多いもので、商人になったばかりの見習いなどに使ってほしい。もちろん商人を目指す子供も購買層だ。
もう一つは貴族の子度向けの玩具である。魔法陣に記す魔法記号のカードだ。意味と読み方と絵付きで、表裏で描かれているのでめくれば意味が分かる。記号図鑑の本もあり、並べ方を変えれば魔法陣に描く文字が順番に覚えられる。
そして最後が貴族の騎士希望と、狩人などの魔獣と対する人向けのものだ。魔獣の弱点をランク付けしており、特徴や弱点が描かれている。
「ちょっと大人向けっていうか、大人でも使い勝手のいい商品だね。子供向けはやめたの?」
「そろそろ貴族向けに発信したいなって。この印は必ず入れてくださいね」
「分かってる。フィリィが作ったって証拠ね」
デリはにこやかに言いながら、商品を細かく見る。彼女は第二都市カサダリアで豪商向けの筆記具や鞄などの商品を買い付ける、女性買手だ。父親の店で売るための商品を買い付けたり、職人と相談して新商品を作り出したりする。買い付け、商品企画に加え、貴族には直接売りに行く営業も行う、バイタリティ満載な人なのだ。
まだ二十代なのに、中々のやり手だ。デリとは、職人へ玩具を見せに行った時に出会った。子供が作った玩具を職人が疑り深く見ていた時に、たまたま訪れ、デリはフィリィの商品に興味を持った。以来の付き合いである。
「この魔獣の木札、数字書いてあるの、何なの?」
「それは子供向けに遊べるようにしてあるんです。強い魔獣は数字が多くて、弱い魔獣は数字が低い。その数字を競わせるゲーム流行らせたいんですよね。魔獣に会っちゃった時の危険度が、ゲームしながら覚えられるっていう」
「そしたらこれ、地方の方が売れるんじゃない?」
「地方で購入層あるかなあ」
「最近、魔獣が地方でよく出るって話だからね。むしろ売れると思うよ。見たことのない魔獣が出るって話もあるし、大人も気になる玩具になるね」
精霊が減れば魔獣も増える。見たことのない魔獣も出てくるだろう。あまり好ましい話ではない。
「詳しく書いてあるし、量があるわね。これ量産は時間が掛かるな。何種類か作らせても採算合うかってところだけれど、貴族の騎士がいるところに様子見として出してみようか。できれば色付けてほしいけれど、この数を色付けすると完全に赤字になるから無理だね」
「さすがにそれは無理かなって。特徴だけ色付けするとかなら何とか。このツノは白で、とか、この足は赤くて、とか。分かりやすくするなら」
「それは、専門家が必要じゃない?」
「大丈夫です。私、分かるので、色だけ付けましょうか」
買い取ってくれるならばこのまま職人のところへ行き、作り方を教えなければならない。自分が気にしてこだわったところなどをこと細かく説明するのだ。自分の仕事はそこまでで、あとはデリが購買層を見付け、商品として売ってくれる。
そうして、購入が多いものに関しては、王都ダリュンベリのバルノルジに話がいき、そこで売りつけるのだ。バルノルジが王都ダリュンベリでも商品を考案しろと言う所以である。
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