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第二章
57−5 雪の中
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「家庭教師に学んで、それから学院に行くんだ。なにもないで行くわけじゃない」
「でも、九年分を家庭教師に教えてもらうってことですよね。何歳で学校行ったんですか? その後神官の資格をとった感じ?」
「十二歳の時に、一年王都の学院で過ごした。その時に同時に神官の学びを受けて、合格したんだ」
「神官の勉強は、選択科目みたいな感じですか?」
神官科みたいな? いや、神学科か?
「学院に通いながら、神学校に通う。建物が隣同士だから、学ぶのに楽なんだ」
え。どういうこと? 九年の学院を一年で卒業し、その傍ら神学校に通っていたってこと?
「治療士とかもそこに通うんですか?」
「通わない。神殿で学びを受けるだけだ。神官になるには、神学校に通わなければならない」
「神学校は一年制なんです?」
「九年だ」
つまり、九年の学院と神学校を同時に通い、かつ一年で卒業したということか。頭良すぎる人ですか??
「それって、すごいのでは??」
「大した話じゃない。学院と神学校は基礎は同じで、ヴェーラーに関して多く学ぶのが神学校と思えばいい。魔法を多めに学んで、ヴェーラーについて学ぶ。学院は剣を扱って、魔法は少なく、基礎の魔法のみ。神学校は剣は扱わない。魔法に特化した科目が多い」
基礎の部分は同じなため、学院と神学校で同じ学びを得る必要はないそうだ。どちらも試験を受けて合格ラインに達せば授業を受けなくてよい。一部の科目だけ試験ではなく単位制になるそうだ。そのため、どうしても一年は通わなければならない。フェルナンは授業を受ける前の試験をクリアーし、単位制の授業のために一年通ったわけだ。
単位制の授業は実践がメインというのだから納得だ。剣や魔法の実技があったのだろうか。
「学院に比べて神学校は音楽などの芸術系から、薬学などの治療系を学ぶ。もちろん宗教色は強く、政治についても色濃い」
「政治もですか?」
「神官になると、政治に巻き込まれやすくなるからな」
「はー。音楽も?」
「神に祈るのに音楽は必要だ。貴族は音楽は必須だが、神に祈り音楽を奏でることは神官の方が多い」
「へー」
お経とかではなく、音楽を捧げるのか。
「あんた、なんでも感心するな」
「え、面白いなって思って。あと私、勉強嫌いで。勉強できる人、偉いなあって。勉強に対する集中力だけは本当になくて、なんで勉強に集中力発揮できるかわからない」
「あんただって、物作る時は集中できるだろう?」
「物作る時は楽しいですからね! 勉強? 苦痛すぎる。興味あるものはいいですけど、ないものなんて、無理。試験勉強する時、誘惑をすべてどかしておいても、急に枝毛とか気になってきますからね」
急に漫画が読みたくなくなったり、机の物を片付けたくなる。スマフォを封印しても、誘惑はたくさんあるのだ。急に爪が切りたくなるし、磨きたくなる。カサカサの手の手入れなんてしたくなる。
集中力とは、興味のあるものだけに発揮されるものだ。
「試験勉強、……するのか?」
あ。失敗した。フェルナンが怪訝な顔をしてくる。今さら誤魔化せない発言をしてしまった。うっかりすぎる。
「学校はほとんど行けなかったので、試験だけは受けないと。だったので」
実際、小学校はテスト用紙が送られてくる。調べられるので完全なテストではないが、テスト用紙と答えをもらった。中学校の時は問題集やプリントがやたら届く。ネットで試験を受けさせられたこともあった。体調が良ければ学校の別室で試験を受ける。途中退室も許された。戻ることもできた。義務教育なので、ある程度病人に対しての対応はされていた。
「……学院に行っていたのか」
呟きに首を振りたくなる。フェルナンの言う学院とは? まったく違うものだ。魔法なんて習わない。剣も習わない。聖女のおかげで女性も学院には通うそうだが、男女別らしい。女性がどんな授業を受けているか知らないと言われて、少しだけ安堵する。
いえ、たいそうなものじゃないです。みんな行けるんです。誰でも入れる学校ですから。義務ですよ。義務。だから行かなくても卒業できる。幼い頃は少し学校行っていました。卒業式は出られなかったけど、ちゃんと卒業しましたよ。高校は、休学したまま行かなくなったけど。なんて言わない。
「病気がひどくて、留年したし、卒業もしてないんですよ」
その元気さで? とか問わないでほしい。話しながら、自分で言っていても嘘くさいと思ってしまった。この体の前は虚弱だったのだ。信じてほしい。
「えーと、趣味で本を読んでいたので、それで学んだくらいですかね。だから頭使うの苦手」
「本を、読むんだな」
「本は好きで。記憶力悪いからあまり記憶されていないという欠点ありますが」
すべて適当に覚えている。だからいつも適当だ。
フェルナンは思案顔をした。また余計なことを言った気がする。いや、他国のこと、他国のこと。その他国がどこだとか、聞いてこないはずだ。使徒の謎の強制力が発揮される、はず。
案の定、特に突っ込みはなかった。次に使徒に会う時は、学校事情など他国の話を聞いていた方が良いのかもしれない。どこからどこまで話すと危険なのか、ラインを知りたい。
話さなければいいだけだが、ついぽろりと、考えなしで口にしてしまう。
無言になるとフェルナンが火を消した。砂をかけるとかではなく、パッと消えてしまった。薪にしていた木から炎も消えて、煙がくゆる。その煙も空へ消えていった。結界をすり抜けていったのだ。
「便利魔法。魔法ってどんなことできるんです? 炎を燃やすとか、風で乾かすとか、攻撃とかー、あと癒し? 癒しも人によってできるできないあるって聞きました」
「人を生き返らせることはできない」
「さすがにそれは、ですよねえ」
それができては人口過多で、世界から人が溢れてしまう。そこは循環させないと、新しい命が生まれなくなりそうだ。
「じゃあ、時間を行き来するとかは?」
ワープが可能ならば、できそうな気がする。場所と場所を別の空間で繋ぐのならば、別の時間と別の時間を移動できないのだろうか。
「でも、九年分を家庭教師に教えてもらうってことですよね。何歳で学校行ったんですか? その後神官の資格をとった感じ?」
「十二歳の時に、一年王都の学院で過ごした。その時に同時に神官の学びを受けて、合格したんだ」
「神官の勉強は、選択科目みたいな感じですか?」
神官科みたいな? いや、神学科か?
「学院に通いながら、神学校に通う。建物が隣同士だから、学ぶのに楽なんだ」
え。どういうこと? 九年の学院を一年で卒業し、その傍ら神学校に通っていたってこと?
「治療士とかもそこに通うんですか?」
「通わない。神殿で学びを受けるだけだ。神官になるには、神学校に通わなければならない」
「神学校は一年制なんです?」
「九年だ」
つまり、九年の学院と神学校を同時に通い、かつ一年で卒業したということか。頭良すぎる人ですか??
「それって、すごいのでは??」
「大した話じゃない。学院と神学校は基礎は同じで、ヴェーラーに関して多く学ぶのが神学校と思えばいい。魔法を多めに学んで、ヴェーラーについて学ぶ。学院は剣を扱って、魔法は少なく、基礎の魔法のみ。神学校は剣は扱わない。魔法に特化した科目が多い」
基礎の部分は同じなため、学院と神学校で同じ学びを得る必要はないそうだ。どちらも試験を受けて合格ラインに達せば授業を受けなくてよい。一部の科目だけ試験ではなく単位制になるそうだ。そのため、どうしても一年は通わなければならない。フェルナンは授業を受ける前の試験をクリアーし、単位制の授業のために一年通ったわけだ。
単位制の授業は実践がメインというのだから納得だ。剣や魔法の実技があったのだろうか。
「学院に比べて神学校は音楽などの芸術系から、薬学などの治療系を学ぶ。もちろん宗教色は強く、政治についても色濃い」
「政治もですか?」
「神官になると、政治に巻き込まれやすくなるからな」
「はー。音楽も?」
「神に祈るのに音楽は必要だ。貴族は音楽は必須だが、神に祈り音楽を奏でることは神官の方が多い」
「へー」
お経とかではなく、音楽を捧げるのか。
「あんた、なんでも感心するな」
「え、面白いなって思って。あと私、勉強嫌いで。勉強できる人、偉いなあって。勉強に対する集中力だけは本当になくて、なんで勉強に集中力発揮できるかわからない」
「あんただって、物作る時は集中できるだろう?」
「物作る時は楽しいですからね! 勉強? 苦痛すぎる。興味あるものはいいですけど、ないものなんて、無理。試験勉強する時、誘惑をすべてどかしておいても、急に枝毛とか気になってきますからね」
急に漫画が読みたくなくなったり、机の物を片付けたくなる。スマフォを封印しても、誘惑はたくさんあるのだ。急に爪が切りたくなるし、磨きたくなる。カサカサの手の手入れなんてしたくなる。
集中力とは、興味のあるものだけに発揮されるものだ。
「試験勉強、……するのか?」
あ。失敗した。フェルナンが怪訝な顔をしてくる。今さら誤魔化せない発言をしてしまった。うっかりすぎる。
「学校はほとんど行けなかったので、試験だけは受けないと。だったので」
実際、小学校はテスト用紙が送られてくる。調べられるので完全なテストではないが、テスト用紙と答えをもらった。中学校の時は問題集やプリントがやたら届く。ネットで試験を受けさせられたこともあった。体調が良ければ学校の別室で試験を受ける。途中退室も許された。戻ることもできた。義務教育なので、ある程度病人に対しての対応はされていた。
「……学院に行っていたのか」
呟きに首を振りたくなる。フェルナンの言う学院とは? まったく違うものだ。魔法なんて習わない。剣も習わない。聖女のおかげで女性も学院には通うそうだが、男女別らしい。女性がどんな授業を受けているか知らないと言われて、少しだけ安堵する。
いえ、たいそうなものじゃないです。みんな行けるんです。誰でも入れる学校ですから。義務ですよ。義務。だから行かなくても卒業できる。幼い頃は少し学校行っていました。卒業式は出られなかったけど、ちゃんと卒業しましたよ。高校は、休学したまま行かなくなったけど。なんて言わない。
「病気がひどくて、留年したし、卒業もしてないんですよ」
その元気さで? とか問わないでほしい。話しながら、自分で言っていても嘘くさいと思ってしまった。この体の前は虚弱だったのだ。信じてほしい。
「えーと、趣味で本を読んでいたので、それで学んだくらいですかね。だから頭使うの苦手」
「本を、読むんだな」
「本は好きで。記憶力悪いからあまり記憶されていないという欠点ありますが」
すべて適当に覚えている。だからいつも適当だ。
フェルナンは思案顔をした。また余計なことを言った気がする。いや、他国のこと、他国のこと。その他国がどこだとか、聞いてこないはずだ。使徒の謎の強制力が発揮される、はず。
案の定、特に突っ込みはなかった。次に使徒に会う時は、学校事情など他国の話を聞いていた方が良いのかもしれない。どこからどこまで話すと危険なのか、ラインを知りたい。
話さなければいいだけだが、ついぽろりと、考えなしで口にしてしまう。
無言になるとフェルナンが火を消した。砂をかけるとかではなく、パッと消えてしまった。薪にしていた木から炎も消えて、煙がくゆる。その煙も空へ消えていった。結界をすり抜けていったのだ。
「便利魔法。魔法ってどんなことできるんです? 炎を燃やすとか、風で乾かすとか、攻撃とかー、あと癒し? 癒しも人によってできるできないあるって聞きました」
「人を生き返らせることはできない」
「さすがにそれは、ですよねえ」
それができては人口過多で、世界から人が溢れてしまう。そこは循環させないと、新しい命が生まれなくなりそうだ。
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