人生ひっそり長生きが目標です 〜異世界人てバレたら処刑? バレずにスローライフする!〜

MIRICO

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第二章

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 昼食も終えて、夕飯の用意をし、皆で片付けをしていた頃、オクタヴィアンたちが戻ってきた。
「お帰りなさいませ。オクタヴィアン様」

 屋敷の者たちが気張ってオクタヴィアンを迎え、俯くように頭を下げた。オクタヴィアンの強行を知った屋敷の者たちが、オクタヴィアンには逆らわないという意思を持ったのを伝えるような挨拶だ。オクタヴィアンは気にする様子もなくその横を通り過ぎて部屋に戻っていく。
 一緒にいたのはいつもの護衛騎士、ラベルニアとルカ。他の騎士たちはガロガを連れて馬房に行ってしまった。
 その後、オクタヴィアンたちに夕食を出し、騎士や使用人たちの食事を出していて気づいた。フェルナンが来ていない。

「料理長、フェルナンさん食堂に来たの、見ました?」
「いや、俺は見てないな」
 他の料理人たちも見ていないと首を振る。
 おかしいな。一緒に戻ってきたのは見たのだが、その後に姿を現していない。
 やけに気になって、賄いを一気に食べて、フェルナンの部屋に行くことにした。

「たしか、この辺」
 自分の部屋から斜め下。部屋数から数えると、おそらくこの部屋。
 扉の前で、玲那はそっと扉をノックした。こんこんと二回。返事はない。この部屋じゃないか? 間違っているか? そう思いながら、もう一度ノックをする。

「フェルナンさん、いらっしゃいますか? 玲那です」
 人の気配がしない。出掛けているのだろうか。待っていても誰も出てこないので、諦めて踵を返そうとした時、かちりと扉が開いた。

「あ、フェルアナンさ……。だ、大丈夫ですか……?」
 扉の隙間から見えたフェルナンの顔色に、一瞬閉口した。
 真っ白な顔。顔色が悪いどころではない。血の気の引いたよう顔をしている。まっすぐ立って、疲労は見えず、体調の悪そうな雰囲気はなくとも、顔色だけが異様に悪かった。

「お、お茶。お茶いかがですか!? 食事しました? 軽い食事持ってきましょうか??」
 朝に焼いたバウンドケーキとお茶を差し出す。焼き菓子は甘さ引かえめで、料理長たちに好評だった。
「フェルナンさん?」
 フェルナンは返事をせず、扉の隙間で固まっていたが、ゆっくりと扉を開けた。入って良いのだろうか。

 眠っていたのか、ベッドが崩れている。ジロジロ見るのは失礼かと思い、窓際にあった机の上にお菓子とお茶の乗ったお盆を乗せた。フェルナンはなにも言わず、ベッドに腰掛ける。
 なにか言うべきか。けれど、あまりの顔色の悪さにしつこくなにか問うても、負担になるだけだろう。

「お茶、飲んでください。ゆっくり、息吸って。えと、お菓子! 甘いから。疲れてる時は甘いものがいいですよ! それでお茶飲んで、ゆっくりして、ゆっくり眠ってください。ね」
 なにを言っても無表情で、こちらを見向きもしない。部屋に入れてくれただけよかった。

「お風呂もちゃんと入った方がいいですよ! ね! ゆっくりするんですよ!」
 それだけ言って廊下に出ると、静かに扉を閉めた。
 扉のノブを握ったまま、しばらくその場にいて、玲那は顔を上げた。







「オクタヴィアン様、おやつです!」
 オクタヴィアンのいる部屋を教えてもらい、玲那は扉をノックした。警備などがいるかと思ったが、扉の前にはおらず、代わりに中から声が届く。

「あいてんぞ」
「失礼しまーす」
 扉を開ければ、高級ホテルのような豪華で広い部屋だった。それはともかく、オクタヴィアンは一人ではなく、ラベルニアとルカ二人一緒にいた。さすがに一人のはずがないか。

「一人分しかないんですけど」
「ふうん? なんだ、これ」
「プリンとパウンドケーキです。卵のおやつと焼いたおやつです。甘いですよ」

 プリンとバウンドケーキは、初回は大成功だった。あまりのおいしさに、料理長たち料理人がもう一度作ってみようと二作目に手を出したのだが、プリンは気泡だらけ、バウンドケーキは膨らまず固まってしまった。そのため、料理人たちに火が付き、何度も作る羽目になったのである。
 料理長も失敗が不服だったようで、卵と砂糖の量がどうこう言うことなく、集中して作ってしまった。怒られるのが目に見えていたので、オクタヴィアンのために成功したものをとっておいた。数少ない成功例だ。
 差し出すと、オクタヴィアンは木べらを持ちながら、妙な物体を見る目を向けた。

「そんな顔して、警戒しないでも。食感が柔らかいだけですから」
「なにをしたらこんな気持ち悪い感触になるんだ?」
「夕食と一緒で、卵でそうなるんですよ」
「卵? 卵で甘い菓子になるのか?」
「まあ、いいから食べてみてくださいよ。プリンの方は、男性は苦手な人多いみたいなんですけど、まあ、オクタヴィアン様なら」
「どういう意味だよ」

 お子様には好かれる食べ物だよー。とは言わず、にっこり笑顔で返しておく。食べないなら俺にくださいとルカに言われて、オクタヴィアンがすぐに口に入れた。目を見開いて、すぐに二口目に入る。口にあったようだ。カラメルは苦めにしたのだが、問題なさそうで安堵する。
 隣で物欲しそうにルカが眺めていたが、申し訳ない。成功したものはこれしか残っていない。
 上機嫌で食べるオクタヴィアンを眺めてから、世間話よろしく話しかけた。

「オクタヴィアン様、お城でなにしてきたんですか?」
「ああん? ……なんだよ。なに企んでるんだ」
「企んでませんよ。なんでそうなるんですか」
「こんなの持ってきて、変なこと聞くからだよ」
 さすが、野生の勘が鋭い。よく気づいた。そんなことないですよー。と言いながら、うふふと笑えば、疑り深く目をすがめてくる。

「王の謁見があって、軽く話しただけだ。挨拶回りして、挨拶して、挨拶したんだよ」
「大変すね」
「大変なんだよ。それで、なんだって?」
「フェルナンさんがおかしいので、なにかあったのかなあって思って」

 特になにかあったわけではなさそうなので、率直に聞くことにした。少しでも気づいたことはないか、ラベルニアとルカにも視線を送る。ルカは首を傾げ、ラベルニアは特に反応はない。オクタヴィアンはプリンを食べ終えてから口をひらく。

「フェルナン? お前ら、もしかして付き合ってるのか?」
「は? おませなこと言いますね」
「はあっ!?」

 なぜそんな話になるのかと問えば、オクタヴィアンが怒り出した。ルカがプッと吹き出すので、すぐにギロリと睨みつける。
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