20 / 25
二章(7)
しおりを挟む
「乗る?」
何を言ってるんだろう、こいつ。そりゃあ、僕だって男だ。憧れが無いと言ったら嘘になる。ましてや女子と二人なら尚更というものだ。そう、前後が逆なら。普通、僕が運転して、秋野が……女子が後ろでしがみつく、というのを理想として思い浮かべるんじゃないか。
そして多分、僕はビビる。大いにビビる。半泣きになって、秋野に抱き着くだろう。ダッサ。まあまあ、半裸の男に言う事ではないな。
「私は気にしないけど、それでも、服は着た方が良いと思うな」
「うおっ」
後半の二行が口に出ていたみたいだ。普段話す人が居ないと、独り言が多くていけない。
というか、普通に着替えるか。
「ちょっと待ってて」
取り敢えず玄関口で秋野を待たせて、着替えると、
「はーい」
入ってきやがった。なんなの? 危機感ゼロなの?
「もうちょっと、警戒しろよ」
言いながら、さっさと服を着る。男の着替えなど十秒で終わる。
「ふーん。襲われちゃうとか?」
おおう。実際に口にされると、思ったより生々しいな。
どんな顔して言ってるのか、気になって秋野を見るが、開け放しになっていた窓の方を向いていて顔が見えない。窓自体を見ているのか、外を見ているのか。
「もしかして」
「ん?」
と思ったら急に振り向いてきた。相変わらず行動が読めない。危険な奴だ。
「ここから覗いてたの?」
ばれてやがる。
適当に誤魔化そうとも思ったが、それすら見抜かれたら最高に格好悪いし、素直に言うとするか。嘘苦手なんだよな。あれは高度なコミュニケーションと思っている。
「そうだよ。うるさかったからな。どんな奴かと見てやろうと、」
「ふーん」
思って、と言う前に秋野が被せてきた。聞く気が無いなら、聞かないでほしい。
「やらしー」
「ええ……」
凄い棒読みで罵倒された。街に行くときに聞いた、駅のアナウンスの方がよっぽど感情豊かと思えるぐらいの棒読み。
冗談言うのとか、慣れてないんだろうな。
「ふ、ふふっ、ふふふ」
そんな僕の表情をどう読み取ったのか、秋野は下手糞な笑い声を漏らす。笑ってるというより、笑おうと必死になってるみたいだ。
「……っぷ」
「ぷ、だって。ふふふ! 変な笑い方」
「お前が言うなよ! ……ぷっ、くく、ふはは!」
「ふふっ、魔王みたい、ふふふ!」
二人の笑い声が、狭い部屋に響く。
いつ以来だろう。心の底から笑ったのは。しかも二人で、一人は半裸だ。一人は落ちこぼれで、一人は優等生、ただし無免許でバイクを乗り回している。なんだこれ。世界一面白いんじゃないか、この状況。
何を言ってるんだろう、こいつ。そりゃあ、僕だって男だ。憧れが無いと言ったら嘘になる。ましてや女子と二人なら尚更というものだ。そう、前後が逆なら。普通、僕が運転して、秋野が……女子が後ろでしがみつく、というのを理想として思い浮かべるんじゃないか。
そして多分、僕はビビる。大いにビビる。半泣きになって、秋野に抱き着くだろう。ダッサ。まあまあ、半裸の男に言う事ではないな。
「私は気にしないけど、それでも、服は着た方が良いと思うな」
「うおっ」
後半の二行が口に出ていたみたいだ。普段話す人が居ないと、独り言が多くていけない。
というか、普通に着替えるか。
「ちょっと待ってて」
取り敢えず玄関口で秋野を待たせて、着替えると、
「はーい」
入ってきやがった。なんなの? 危機感ゼロなの?
「もうちょっと、警戒しろよ」
言いながら、さっさと服を着る。男の着替えなど十秒で終わる。
「ふーん。襲われちゃうとか?」
おおう。実際に口にされると、思ったより生々しいな。
どんな顔して言ってるのか、気になって秋野を見るが、開け放しになっていた窓の方を向いていて顔が見えない。窓自体を見ているのか、外を見ているのか。
「もしかして」
「ん?」
と思ったら急に振り向いてきた。相変わらず行動が読めない。危険な奴だ。
「ここから覗いてたの?」
ばれてやがる。
適当に誤魔化そうとも思ったが、それすら見抜かれたら最高に格好悪いし、素直に言うとするか。嘘苦手なんだよな。あれは高度なコミュニケーションと思っている。
「そうだよ。うるさかったからな。どんな奴かと見てやろうと、」
「ふーん」
思って、と言う前に秋野が被せてきた。聞く気が無いなら、聞かないでほしい。
「やらしー」
「ええ……」
凄い棒読みで罵倒された。街に行くときに聞いた、駅のアナウンスの方がよっぽど感情豊かと思えるぐらいの棒読み。
冗談言うのとか、慣れてないんだろうな。
「ふ、ふふっ、ふふふ」
そんな僕の表情をどう読み取ったのか、秋野は下手糞な笑い声を漏らす。笑ってるというより、笑おうと必死になってるみたいだ。
「……っぷ」
「ぷ、だって。ふふふ! 変な笑い方」
「お前が言うなよ! ……ぷっ、くく、ふはは!」
「ふふっ、魔王みたい、ふふふ!」
二人の笑い声が、狭い部屋に響く。
いつ以来だろう。心の底から笑ったのは。しかも二人で、一人は半裸だ。一人は落ちこぼれで、一人は優等生、ただし無免許でバイクを乗り回している。なんだこれ。世界一面白いんじゃないか、この状況。
0
あなたにおすすめの小説
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
私は貴方を許さない
白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。
前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。
迎えに行ったら、すでに君は行方知れずになっていた
月山 歩
恋愛
孤児院で育った二人は彼が貴族の息子であることから、引き取られ離れ離れになる。好きだから、一緒に住むために準備を整え、迎えに行くと、少女はもういなくなっていた。事故に合い、行方知れずに。そして、時をかけて二人は再び巡り会う。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる