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第2話 経験豊富なカノジョの「たしなみ」
しおりを挟む「おはよー蓮! 今日もイケメンじゃん!」
翌朝、私は登校してきた桐生先輩を見つけるなり、周囲に見せつけるように駆け寄った。
今日から私たちは「公認カップル」。
ストーカーを諦めさせるためには、これでもかと言うほどラブラブに見せつけなきゃいけない。
「おはよう、るな。……随分と気合が入ってるね」
先輩は私の姿を見て、少しだけ目を丸くした。
今日の私は、昨日以上にスカートを短くし、胸元のボタンも一つ多めに開けている。
これくらい露出度が高くないと、「イケてる女」には見えないはずだ。
「当たり前っしょ! 彼女役なんだから、最高のコンディションで見せつけないと!」
「そうか。……頼もしいよ」
先輩は優しく微笑んでくれた。
よかった、喜んでくれてる!
私は調子に乗って、先輩の腕に自分の腕を絡ませた。
「ほらほら、行くよダーリン! しっかりエスコートしてよね!」
「あぁ、分かった」
ギュッと腕に押し付けられる感触に、心臓が爆発しそうだ。
二の腕に触れているのは、私の胸!?
いやいや、これは演技だから! 欧米じゃ挨拶みたいなもんだし!
必死に自分に言い聞かせるけれど、顔が熱いのはどうにもならない。
すれ違う生徒たちが、私たちを見て驚いたように囁き合う。
「え、桐生先輩と早川? マジで付き合ってるの?」
「うわ、あいつ大胆だな。腕組んでるよ」
「すげーミニスカ。パンツ見えそうじゃね? 俺もあんな彼女欲しいわー」
男子たちの視線が、私の太腿や胸元に突き刺さる。
品定めするような粘着質な視線。正直、少し怖い。
でも、ここで怖気づいたら「男慣れしてない」ってバレちゃう。
私は精一杯の作り笑顔で、先輩に密着し続けた。
◇
放課後。
私は先輩に連れられて、また生徒会室へと向かっていた。
昨日のような「相談」があるわけでもないのに、なんだろう?
もしかして、今日の演技が下手すぎてダメ出しされるとか?
「あの、先輩? 話ってなんですか?」
部屋に入り、鍵をかけた先輩に恐る恐る尋ねる。
すると先輩は、くるりと振り返り、私を壁際に追い詰めた。
「――っ!?」
ドンッ、と壁に手をつかれる。
いわゆる「壁ドン」だ。
至近距離にある端正な顔。逃げ場のない腕の中。
少女漫画で見たシチュエーションそのままで、心臓が早鐘を打つ。
(えっ、なにこれ!? もしかしてキスとか!? いやいや、心の準備が!)
期待と恐怖でパニックになる私を見下ろし、先輩は冷たい声で言った。
「君、スカート短すぎない?」
「……え?」
予想外の言葉に、キョトンとしてしまう。
先輩の目は笑っていない。
美しい顔が、どこか不機嫌そうに歪んでいる。
「俺という彼氏がいながら、他の男を誘惑するなんて……随分と**悪い子**だね」
「ゆ、誘惑なんてしてないし! これはファッションだし!」
慌てて弁解する。
まさか嫉妬!? いや、そんなわけない。これは演技の一環だ。
でも、先輩の迫力に押されて、声が裏返ってしまう。
「それに私、モテるから! 男の視線とか日常茶飯事っていうか~、慣れっこだしw」
精一杯の強がり。
けれど、先輩は私の言葉尻を逃さなかった。
「へぇ。じゃあ、男に体を見られるのも、触られるのも慣れてるんだ?」
「と、当然じゃん! 余裕余裕!」
嘘だ。触られたことなんて一度もない。
でも、ここで否定したら「経験豊富」という設定が崩れる。
引くに引けない私は、胸を張って言い切った。
「そっか。じゃあ……」
先輩は、ふっと妖艶に微笑んだ。
その笑顔に、背筋がゾクリとする。
「**『お仕置き』**も経験済みだよね? 海外じゃ、浮気した悪い彼女にお尻を叩く躾(レッスン)があるらしいけど」
「――は?」
お尻を、叩く?
思考が停止した。
スパンキングってこと? いや、それはさすがにハードすぎない!?
でも、「経験豊富」なるなちゃんなら、それくらい笑って流せるはずだ。
「あ、あーね! あるある! そういうプレイね!」
「そう。君なら慣れてるよね?」
「も、もちろんだし! どんと来いだし!」
震える声で答えた瞬間、世界が反転した。
気がつくと、私はソファに座った先輩の太腿の上に、うつ伏せに乗せられていた。
「ちょ、待っ……!」
暴れようとするけれど、腰をしっかり押さえつけられて動けない。
お尻が突き出されるような恥ずかしい格好。
スカートの裾が乱れて、太腿が露わになる。
「動かないで。経験者なら、じっとしてられるよね?」
耳元で囁かれる甘い毒。
「経験者」という言葉が、呪いのように私を縛り付ける。
ここで「嫌だ」と言えば、「なんだ、初めてか」とバレてしまう。
嘘を突き通すには、耐えるしかない。
「う、うん……いいよ。優しくしてよね……?」
「善処するよ」
パンッ!
乾いた音が、静かな生徒会室に響き渡った。
「いったぁ……ッ!?」
衝撃が走る。
スカートと下着の上からとはいえ、男性の手のひらで叩かれる痛みは強烈だ。
ジンジンと熱くなるお尻。
何より、子供みたいにお仕置きされているという状況が、死ぬほど恥ずかしい。
パンッ! パンッ!
「あうっ! んっ!」
先輩の手は止まらない。
リズミカルに、容赦なく振り下ろされる。
痛い。恥ずかしい。
でも、声を出したら負けな気がする。
「いい音だね。すごく震えてるけど、感じてるの?」
「ち、違……うっ、痛い、やめ……っ!」
本音が漏れそうになるのを、必死に唇を噛んで堪える。
涙がじわりと滲んでくる。
こんなの聞いてない。
経験豊富なギャルは、こんなことで泣いたりしないはずだ。
パンッ!
最後の一発が、一番強く叩き込まれた。
「ひゃうっ!」
また変な声が出て、私はガクンと力を失った。
お尻が熱い。顔も熱い。
もう無理だ。これ以上されたら、本当に泣いてしまう。
「……ふふっ、可愛いな」
頭上から降ってきたのは、満足げな笑い声だった。
解放された私は、慌てて飛び起き、スカートを直して涙目で睨みつける。
「い、痛いし! やりすぎだし!」
「ごめんごめん。ちょっと嫉妬しちゃって」
先輩は悪びれる様子もなく、私の頭をポンポンと撫でた。
そして、ふわりと私を抱きしめる。
「――っ!」
「でも、素直な反応で可愛かったよ。やっぱりるなは、いい子だね」
耳元で囁かれる優しい声。
さっきまで痛めつけてきた手と同じ手が、今は背中を優しく擦っている。
温かい。
痛かったはずなのに、抱きしめられた安心感と、「嫉妬してくれた」という事実に、胸がキュンとしてしまう。
(な、なによこれ……ズルい……!)
怒りたいのに、怒れない。
むしろ、もっと触れてほしいと思ってしまう自分がいる。
これが、大人の恋の駆け引きなの?
「……べ、別に痛くなかったし! これくらい余裕だし!」
精一杯の強がりで、震える声を絞り出す。
先輩は私の顔を覗き込み、ニッコリと笑った。
「そっか。強がりなお尻だったな」
その目は、どこか獲物を品定めするような、怪しい光を帯びていた。
そして、視線がゆっくりと下へ――私のスカートの奥、もっと深い場所へと向けられる。
「次は、**中身**も確かめてみようか」
「……え?」
中身って、何?
先輩の言葉の意味を理解する間もなく、予鈴のチャイムが鳴り響いた。
◇
その日の帰り道。
ジンジンと痺れるお尻をさすりながら、私は空を見上げた。
お尻は痛いけど、桐生先輩との秘密が増えたような気がして、少しだけ嬉しかった。
――まさか、その「中身」の確認が、明日もっと恥ずかしい事態を引き起こすなんて、この時の私はまだ知らなかったのだ。
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