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【第4話】咎められた震えと、青いポリバケツ
しおりを挟むジリリ……ジリリ……。 壁の時計の秒針が、残酷なほどゆっくりと時を刻んでいく。 はるかが壁に手をついて仁王立ちになってから、まだ5分。たったの5分しか経っていなかった。 だが、お腹の中で暴れ回る400ccの薬液と、三日分の滞留物にとっては、それは永遠にも等しい時間だった。
ギュルルッ……ゴボボォ……!
「んんっ……! うぅ……!」
お腹の中で、熱を持った泥水がのたうち回るたびに、はるかの体は勝手に動いてしまう。 内股を激しく擦り合わせたり、腰をくねらせて肛門への圧力を逃がしたり、つま先立ちでプルプル震えたり……。 いわゆる「モジモジ」した動きで、必死に決壊を防ごうとしていた。
バチンッ!!
「あ痛っ!!」
突然、直樹の手が、はるかのくねらせていた太ももの裏を思い切り叩いた。
「おい、動くなと言ったはずだぞ」
「だ、だって……じっとしてたら……出ちゃう……!」
「出さないために筋肉があるんだろう。……モジモジして誤魔化すな。踵(かかと)をつけろ。膝を伸ばせ」
直樹は無慈悲にも、はるかの震えるふくらはぎを軽く蹴って、無理やり直立不動の姿勢を取らせた。
「ひぃっ!? やだ、そんな姿勢……重さが全部かかるぅ!」
「それが狙いだ。……真っ直ぐ立つことで、薬液が垂直に便を押し流す。さあ、気をつけの姿勢で耐えろ」
「鬼……! 直樹さんの鬼ぃ……!」
逃げ場を奪われた。 くねらせることで逃がしていた圧力が、逃げ道を失い、すべて「出口」の一点に集中砲火を浴びせてくる。 お腹の中身が、カチカチの固形からドロドロの濁流へと完全に変質していくのが分かった。それはつまり、我慢するのが数百倍難しくなるということだ。
「あと3分だ。……おい、お腹の張り、すごいことになってるぞ」
直樹は横から、ユニフォームのハーフパンツの上からでも分かるほどポッコリと突き出た下腹部を、人差し指でツンツンと突いた。
「ひゃうっ!? や、やめて! 押さないでっ!」
「中でガスと泥がパンパンに詰まってるな」
グニッ。 直樹が面白がるように、おへその下あたりを強めに押し込んだ。
ゴボボボボッ!! ギュルルッ!!
刺激された腸が、悲鳴のような大音響を上げた。
「あ゛あ゛っ!! 下がるっ、下がっちゃうぅぅ!!」
はるかは白目を剥きかけ、あごから脂汗をボタボタと滴らせた。 理性のタガが外れかけ、壁に頭を打ち付けて泣き叫ぶ。 その時だった。今までで一番大きな、巨大な津波のような便意が押し寄せた。
「あっ、あっ、あーーーーっ!!」
プスンッ……チョロ……。
小さな、しかし決定的な敗北の音がした。 どんなに筋肉で蓋をしようとしても、内圧に耐えきれなくなった括約筋の隙間から、茶色いしずくが漏れ出したのだ。 熱い液体が、白い太ももをツーッと伝い、畳にポタッと落ちる。
「あ……」
はるかの動きが止まった。 やってしまった。好きな人の前で、管理者の前で、漏らしてしまった。
「……アウトだ」
直樹の声は、死刑宣告のように冷たかった。
「漏れたな。……姿勢も維持できない、我慢もできない。エース失格だ」
「ご、ごめんなさい……! わざとじゃ……勝手に出ちゃって……!」
「トイレに行く権利は剥奪する。……ここで出せ」
直樹は部屋の隅に歩いていくと、ガサゴソと何かを取り出した。 振り返ると、彼の手には、掃除用具入れにあるような、どこにでも売っている安っぽい**「青いポリバケツ」**が握られていた。
「え……?」
「トイレまで持たないだろ。……このバケツに全部吐き出せ」
直樹はドンッ、とはるかの足元にポリバケツを置いた。
「そ、そんな……ここで? バケツに……?」
「嫌なら垂れ流すか? ……ほら、早くまたがれ。もう限界だろ」
選択肢はなかった。お腹は破裂寸前で、もう一歩も歩けない。 はるかは嗚咽を漏らしながら、ゆっくりと腰を落とした。 太ももの半ばまで下ろされたハーフパンツとショーツを、さらに足首まで下げる。 そして、青いポリバケツをまたぐようにして、深くしゃがみ込んだ。
(いやだ……こんなの……一番恥ずかしい……!)
ユニフォーム姿のまま、部屋の真ん中で、安っぽいバケツにまたがって排泄しようとしている自分。 直樹がその姿を上から見下ろしている。
「さあ、力を抜け。……全部見せてみろ」
「うぅ……んっ……!」
はるかは観念して、震える手で膝を掴み、ずっと必死に締めていたお尻の力を、一気に緩めた。
その瞬間だった。
バリュリュリュリュリュッ!!! ドバババババッ!!!
「あぁぁーーーーっ!!!」
爆発音と共に、400ccの薬液と、三日間溜め込んだ汚物が、鉄砲水のような勢いで噴射された。 プラスチックのバケツの底を、激しい水流が叩きつける音が、静かな部屋にけたたましく響き渡る。
ビチャビチャビチャッ!! ブボボボボッ!!
止まらない。一度開いた水門からは、茶色い濁流が際限なく溢れ出してくる。 強烈な臭気が一気に部屋に充満した。
「はぁっ、はぁっ、あぁっ……! 出るぅ、すごい出てるぅ……!」
恥ずかしさで死にそうだった。でも、それ以上に、パンパンだったお腹が急速に萎んでいく快感が、脳みそを焼き尽くしそうだった。
「すごいな。……我慢してた分、勢いが違う」
直樹は冷静に、はるかのお尻からバケツへとつながる汚い滝を見つめ続けている。
ブリュッ、ボトトトッ……ジョロロ……。
ようやく勢いが弱まり、最後の方に残っていた硬い塊も、音を立ててバケツの中に落ちていった。 はるかは虚ろな目で、自分の身体から出た大量の「失敗」が、青いバケツの中で湯気を立てているのを見つめた。
「……全部、出たか?」
「うぅ……はい……全部……」
はるかは力なく答えると、そのまま顔を覆って泣き崩れた。 エースとしてのプライドは、この青いバケツの中に、完全に流されてしまったようだった。
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