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第二章
17話
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17話
その時、私は魔界に来て一番緊張していた。豪華なドレスを着せられた体が少し震える。そんな私の肩を彼が優しく抱きしめた。
「私がついている。アヤはなにも心配しなくていい。」
その言葉に私は小さく頷いた。今日は彼もいつもとは違いこの国の正装をしている。黒を基調にした、たくさんの装飾がついた詰襟の軍服のような衣装。彼のグレーの瞳とやわらかな髪がよく映えている。
魔人国アルデバラン首都パナシーアの中央にそびえ建つ魔王陛下の居城、その中央広間には魔王に仕え、魔人国を支える様々な種族の者たちが集められていた。みな、不安と期待を込めた眼差しで王の玉座を見つめている。そこへ合図の鐘が鳴った。広間に集まる者たちが一斉に頭を下げる。
2つの足音が広間に響き、やがて頭の上から声がかかる。
「頭をあげよ。」
みなが頭をあげ、玉座に座る城の主、魔王の姿を捉える。そしてその隣に立つ豪華なドレスを身に纏った小さな女性を見つめた。美しい薄紅色のドレスは大きく肩があき、彼女の華奢な体を優しく包んでいた。胸元までの黒髪を緩やかにたらし、髪と同じ黒い瞳で広間に集まった者たちを見つめている。その右手には魔王陛下の紋章が浮かんでいた。
魔王の臣下たちの反応はさまざまだった。人間を初めて見る者、噂との違いに落胆する者、安心する者……広間はかすかにざわめいた。しかし、魔王陛下が片手をあげると、スッと静まる。魔王がゆっくりと立ち上がった。
「みなが知ってのとおり、今回の旅で、私は念願だった伴侶を得た。今日は彼女をみなに紹介したい。」
魔王が彼女の手を取る。陛下の隣に並ぶ彼女はさらに小柄に見えた。
「名は綾、姓は遠野。見ての通り人間だ。そのことにいろいろと思う者もいるだろうが、私はすでに彼女と血の盟約を結んでいる。」
彼女の右手をみなに見せるように掲げた。
「今日ここに宣言する、魔王ギルバート・メイナード・ヴァサル=フォックスの名において、彼女遠野綾を伴侶とし、魔界での全ての権利を保証する。」
その瞬間、広間は大きな拍手につつまれた。
* * *
「うぅ…緊張したー。」
手のひらに顔を埋めていると、ポンポンと頭を撫でられた。
「アヤお疲れ様。頑張ったな。」
「いや、こいつなんもしてないだろ。甘やかすんじゃねーよ。」
いつもとは違う騎士服に身を包んだサッシャさんにつっこまれた。
「そうですね、今日のメインイベントはこれからですから。」
田中さんも今日はきっちりしたタキシード姿だ。
そう、今日はこれで終わりじゃない。ここからが私の頑張りどころ。
一週間前
「私に…謁見ですか?」
魔力に慣れ体調が完全に戻った頃、私は彼の執務室に呼ばれていた。
「一週間後、貴女を城の臣下たちに紹介します。その後、獣人国ビスティアの宰相ダリオン・ヴォスクール、死霊国宰相オアゾ・ローゼンフェルドと面会することになります。」
「宰相さんということは、国でトップの方ですよね?なんで私と?」
「お前が魔王の伴侶だからさ。あいつらは興味津々なんだよ。堅物のギルがどんな女を選んだのか。」
「彼らは人間でありながら、魔王の伴侶になり、その魔力を内に秘めた貴女を見定めに来ます。決して失礼のないように対応しなければいけません。
これから一週間徹底的にマナーを叩き込みます。覚悟してください。」
そこから一週間毎日、美しい歩き方から食事のマナーまでたくさんのレッスンを受けた。このお城に来てから今まで、ただ部屋にいるだけで、なにもさせてもらえず、自分がいるかいないか分からなかったので、彼のために頑張れることができて嬉しかった。
そして本番がやってきた。一体どんな人たちなんだろう。
「アヤ。アヤはそのままでいたらいい。でも……」
ギルが私の腰を抱き、ぎゅっと顔を近づけた。
「今日の君は綺麗すぎて、心配になる。本当なら誰にも会わせたくない。」
「そういうのは後でやってくれ。」「後でやってください。」
側近2人のセリフがハモってて少し笑った。おかげでちょっと緊張が解けた。
その時、私は魔界に来て一番緊張していた。豪華なドレスを着せられた体が少し震える。そんな私の肩を彼が優しく抱きしめた。
「私がついている。アヤはなにも心配しなくていい。」
その言葉に私は小さく頷いた。今日は彼もいつもとは違いこの国の正装をしている。黒を基調にした、たくさんの装飾がついた詰襟の軍服のような衣装。彼のグレーの瞳とやわらかな髪がよく映えている。
魔人国アルデバラン首都パナシーアの中央にそびえ建つ魔王陛下の居城、その中央広間には魔王に仕え、魔人国を支える様々な種族の者たちが集められていた。みな、不安と期待を込めた眼差しで王の玉座を見つめている。そこへ合図の鐘が鳴った。広間に集まる者たちが一斉に頭を下げる。
2つの足音が広間に響き、やがて頭の上から声がかかる。
「頭をあげよ。」
みなが頭をあげ、玉座に座る城の主、魔王の姿を捉える。そしてその隣に立つ豪華なドレスを身に纏った小さな女性を見つめた。美しい薄紅色のドレスは大きく肩があき、彼女の華奢な体を優しく包んでいた。胸元までの黒髪を緩やかにたらし、髪と同じ黒い瞳で広間に集まった者たちを見つめている。その右手には魔王陛下の紋章が浮かんでいた。
魔王の臣下たちの反応はさまざまだった。人間を初めて見る者、噂との違いに落胆する者、安心する者……広間はかすかにざわめいた。しかし、魔王陛下が片手をあげると、スッと静まる。魔王がゆっくりと立ち上がった。
「みなが知ってのとおり、今回の旅で、私は念願だった伴侶を得た。今日は彼女をみなに紹介したい。」
魔王が彼女の手を取る。陛下の隣に並ぶ彼女はさらに小柄に見えた。
「名は綾、姓は遠野。見ての通り人間だ。そのことにいろいろと思う者もいるだろうが、私はすでに彼女と血の盟約を結んでいる。」
彼女の右手をみなに見せるように掲げた。
「今日ここに宣言する、魔王ギルバート・メイナード・ヴァサル=フォックスの名において、彼女遠野綾を伴侶とし、魔界での全ての権利を保証する。」
その瞬間、広間は大きな拍手につつまれた。
* * *
「うぅ…緊張したー。」
手のひらに顔を埋めていると、ポンポンと頭を撫でられた。
「アヤお疲れ様。頑張ったな。」
「いや、こいつなんもしてないだろ。甘やかすんじゃねーよ。」
いつもとは違う騎士服に身を包んだサッシャさんにつっこまれた。
「そうですね、今日のメインイベントはこれからですから。」
田中さんも今日はきっちりしたタキシード姿だ。
そう、今日はこれで終わりじゃない。ここからが私の頑張りどころ。
一週間前
「私に…謁見ですか?」
魔力に慣れ体調が完全に戻った頃、私は彼の執務室に呼ばれていた。
「一週間後、貴女を城の臣下たちに紹介します。その後、獣人国ビスティアの宰相ダリオン・ヴォスクール、死霊国宰相オアゾ・ローゼンフェルドと面会することになります。」
「宰相さんということは、国でトップの方ですよね?なんで私と?」
「お前が魔王の伴侶だからさ。あいつらは興味津々なんだよ。堅物のギルがどんな女を選んだのか。」
「彼らは人間でありながら、魔王の伴侶になり、その魔力を内に秘めた貴女を見定めに来ます。決して失礼のないように対応しなければいけません。
これから一週間徹底的にマナーを叩き込みます。覚悟してください。」
そこから一週間毎日、美しい歩き方から食事のマナーまでたくさんのレッスンを受けた。このお城に来てから今まで、ただ部屋にいるだけで、なにもさせてもらえず、自分がいるかいないか分からなかったので、彼のために頑張れることができて嬉しかった。
そして本番がやってきた。一体どんな人たちなんだろう。
「アヤ。アヤはそのままでいたらいい。でも……」
ギルが私の腰を抱き、ぎゅっと顔を近づけた。
「今日の君は綺麗すぎて、心配になる。本当なら誰にも会わせたくない。」
「そういうのは後でやってくれ。」「後でやってください。」
側近2人のセリフがハモってて少し笑った。おかげでちょっと緊張が解けた。
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