45 / 45
第四章
エピローグ
しおりを挟む
エピローグ
~五年後~
魔界魔人国アルデバラン中央にそびえる魔王城。いまその城は美しく飾り付けられ、来るべき日のため準備に追われる人々で溢れている。
魔人国建国三千年の節目。この魔王城で行われる盛大な式典は二日後に迫っていた。
パタパタっパタっ
忙しく行き交う人々の間を小さな足音が駆け抜けていく。
「お待ちください!」
追いかけてくる者たちなど気にせず、足音は城中央の美しい広間を通り抜け中庭に出る。そこには大きな噴水とそれを取り囲む華々。式典のために飾り付けられたその場所は絵物語の花園のようだ。
「パパ!」
噴水を背に立つ大きな人影。褐色の肌に美しい銀髪をひとつに束ね、装飾の施された礼服に身を包んだ彼こそ、この魔界を束ねる魔王ギルバートである。
「ミリア!」
父親譲りの銀髪を長く伸ばし、その肌は白く陶器のようになめらかだ。吸い込まれるような黒い瞳は黒曜石のように輝いている。可愛らしいドレスは走ったせいで裾が乱れていた。
「パパの嘘つき!昨日帰ってくるって約束したのに!」
頬を膨らませ怒る姿も可愛らしい。ギルはたまらず幼い娘を抱き上げた。
「すまない。仕事が長引いてしまったんだ。美味しいチョコレートをたくさん買ってきたからあとで一緒に食べよう。」
「むぅ……今日は一緒に寝てくれる?」
「もちろん!今日も明日も一緒だ。」
ここのところ忙しく構ってもらえなかった父の言葉に小さな姫はすぐに機嫌をなおした。
「やったぁ!絶対ね!」
今年五歳になる娘は知らぬ間に大人のような話し方をするようになった。女の子の成長は早いと聞いてはいたが、本当にあっという間に大きくなってしまう。
「おい!ミリア!どんだけ足速いんだよ!護衛を置いていくな!」
護衛隊長のサッシャと共にミリアの護衛につけている兵士たちが駆けてきた。みな息を切らしている。
「サッシャが遅いんだよ!護衛隊なのに遅すぎー。」
「お前、本当生意気になってきたな。その話し方母親そっくりだ。」
小さな舌を出し、しかめっ面を作る横顔はたしかによく似ている。
「ミリア!ドレスで走ったらダメって何回言ったら分かるの!」
護衛隊の後ろから侍女を連れて現れた魔王の伴侶は大きなお腹を両手で支えゆっくりと歩いてきた。
「アヤ!」
陛下の伴侶であり、人間である綾はもうすぐ臨月を迎える。
「おかえりなさい、ギル。」
「帰ってくるのが遅くなった。具合は大丈夫?無理しないで休んでいていいんだよ?」
母になり彼女はさらに美しく、そして強くなった。
「そういうわけにもいかないよ。もうすぐ到着でしょ?正直会いたくないけど。」
もうすぐ他国の宰相二人が式典のために到着する頃だ。今日から3日の滞在の間、アヤとミリアの護衛を倍に増やした。
「ミリア初めて会うから楽しみ!どんな人かな!」
無邪気な娘の言葉に魔王は眉間に皺を寄せる。子沢山のビスティア宰相はともかく、ゴシカ宰相ローゼンフェルドが小さな姫にどんな反応をするのかまったく分からなかった。
「ローゼンフェルドはともかく、ラディアルさんは絶対ミリアのこと好きだろうなぁ。」
数年前の一件からアヤはゴシカ秘書官のラディアルと文通する仲だ。娘が生まれた時から、子供用の可愛らしい服を山ほど送ってきている。
「ミリア。この3日間絶対に一人にならないでくれ。護衛か私の側にいるんだ。分かったね?」
「はーい!」
「本当に分かってんのかよ!絶対走るなよ!」
ミリアは魔王であるギルの血を濃く引き、魔力がとても強い。幼い今のうちから、その結婚相手にと様々な縁談が持ち込まれている。
「いつも返事だけはいいんだから、まったく。」
アヤのお腹が大きくなってきた頃から、ミリアは周りの大人を困らせるような行動をわざとするようになった。赤ちゃん返りとアヤは呼んでいるが、大きくなってきたとはいえまだまだ甘えたいのだ。
「ミリアは良い子だから大丈夫だよ。そうだろう?」
ぎゅっと抱きつく小さな体がたまらなく愛しい。
アヤのおかげで、私はこんなにも可愛らしい娘に出逢えた。これから産まれてくる我が子も、どれだけ愛しいことか。彼女との出逢いが私の人生をこんなにも鮮やかにしたのだ。
「陛下、宰相方が到着されます。ご用意を。」
秘書の田中は相変わらずの無表情で仕事をこなしている。しかし、娘のミリアには少し甘いようだ。
「じゃあ行こうか。」
右手で小さな姫を抱き、左手で愛しい妻の手を取った。
~終わり~
~五年後~
魔界魔人国アルデバラン中央にそびえる魔王城。いまその城は美しく飾り付けられ、来るべき日のため準備に追われる人々で溢れている。
魔人国建国三千年の節目。この魔王城で行われる盛大な式典は二日後に迫っていた。
パタパタっパタっ
忙しく行き交う人々の間を小さな足音が駆け抜けていく。
「お待ちください!」
追いかけてくる者たちなど気にせず、足音は城中央の美しい広間を通り抜け中庭に出る。そこには大きな噴水とそれを取り囲む華々。式典のために飾り付けられたその場所は絵物語の花園のようだ。
「パパ!」
噴水を背に立つ大きな人影。褐色の肌に美しい銀髪をひとつに束ね、装飾の施された礼服に身を包んだ彼こそ、この魔界を束ねる魔王ギルバートである。
「ミリア!」
父親譲りの銀髪を長く伸ばし、その肌は白く陶器のようになめらかだ。吸い込まれるような黒い瞳は黒曜石のように輝いている。可愛らしいドレスは走ったせいで裾が乱れていた。
「パパの嘘つき!昨日帰ってくるって約束したのに!」
頬を膨らませ怒る姿も可愛らしい。ギルはたまらず幼い娘を抱き上げた。
「すまない。仕事が長引いてしまったんだ。美味しいチョコレートをたくさん買ってきたからあとで一緒に食べよう。」
「むぅ……今日は一緒に寝てくれる?」
「もちろん!今日も明日も一緒だ。」
ここのところ忙しく構ってもらえなかった父の言葉に小さな姫はすぐに機嫌をなおした。
「やったぁ!絶対ね!」
今年五歳になる娘は知らぬ間に大人のような話し方をするようになった。女の子の成長は早いと聞いてはいたが、本当にあっという間に大きくなってしまう。
「おい!ミリア!どんだけ足速いんだよ!護衛を置いていくな!」
護衛隊長のサッシャと共にミリアの護衛につけている兵士たちが駆けてきた。みな息を切らしている。
「サッシャが遅いんだよ!護衛隊なのに遅すぎー。」
「お前、本当生意気になってきたな。その話し方母親そっくりだ。」
小さな舌を出し、しかめっ面を作る横顔はたしかによく似ている。
「ミリア!ドレスで走ったらダメって何回言ったら分かるの!」
護衛隊の後ろから侍女を連れて現れた魔王の伴侶は大きなお腹を両手で支えゆっくりと歩いてきた。
「アヤ!」
陛下の伴侶であり、人間である綾はもうすぐ臨月を迎える。
「おかえりなさい、ギル。」
「帰ってくるのが遅くなった。具合は大丈夫?無理しないで休んでいていいんだよ?」
母になり彼女はさらに美しく、そして強くなった。
「そういうわけにもいかないよ。もうすぐ到着でしょ?正直会いたくないけど。」
もうすぐ他国の宰相二人が式典のために到着する頃だ。今日から3日の滞在の間、アヤとミリアの護衛を倍に増やした。
「ミリア初めて会うから楽しみ!どんな人かな!」
無邪気な娘の言葉に魔王は眉間に皺を寄せる。子沢山のビスティア宰相はともかく、ゴシカ宰相ローゼンフェルドが小さな姫にどんな反応をするのかまったく分からなかった。
「ローゼンフェルドはともかく、ラディアルさんは絶対ミリアのこと好きだろうなぁ。」
数年前の一件からアヤはゴシカ秘書官のラディアルと文通する仲だ。娘が生まれた時から、子供用の可愛らしい服を山ほど送ってきている。
「ミリア。この3日間絶対に一人にならないでくれ。護衛か私の側にいるんだ。分かったね?」
「はーい!」
「本当に分かってんのかよ!絶対走るなよ!」
ミリアは魔王であるギルの血を濃く引き、魔力がとても強い。幼い今のうちから、その結婚相手にと様々な縁談が持ち込まれている。
「いつも返事だけはいいんだから、まったく。」
アヤのお腹が大きくなってきた頃から、ミリアは周りの大人を困らせるような行動をわざとするようになった。赤ちゃん返りとアヤは呼んでいるが、大きくなってきたとはいえまだまだ甘えたいのだ。
「ミリアは良い子だから大丈夫だよ。そうだろう?」
ぎゅっと抱きつく小さな体がたまらなく愛しい。
アヤのおかげで、私はこんなにも可愛らしい娘に出逢えた。これから産まれてくる我が子も、どれだけ愛しいことか。彼女との出逢いが私の人生をこんなにも鮮やかにしたのだ。
「陛下、宰相方が到着されます。ご用意を。」
秘書の田中は相変わらずの無表情で仕事をこなしている。しかし、娘のミリアには少し甘いようだ。
「じゃあ行こうか。」
右手で小さな姫を抱き、左手で愛しい妻の手を取った。
~終わり~
1
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜
桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。
上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。
「私も……私も交配したい」
太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた
狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている
いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった
そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた
しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた
当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった
この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。
次期騎士団長の秘密を知ってしまったら、迫られ捕まってしまいました
Karamimi
恋愛
侯爵令嬢で貴族学院2年のルミナスは、元騎士団長だった父親を8歳の時に魔物討伐で亡くした。一家の大黒柱だった父を亡くしたことで、次期騎士団長と期待されていた兄は騎士団を辞め、12歳という若さで侯爵を継いだ。
そんな兄を支えていたルミナスは、ある日貴族学院3年、公爵令息カルロスの意外な姿を見てしまった。学院卒院後は騎士団長になる事も決まっているうえ、容姿端麗で勉学、武術も優れているまさに完璧公爵令息の彼とはあまりにも違う姿に、笑いが止まらない。
お兄様の夢だった騎士団長の座を奪ったと、一方的にカルロスを嫌っていたルミナスだが、さすがにこの秘密は墓場まで持って行こう。そう決めていたのだが、翌日カルロスに捕まり、鼻息荒く迫って来る姿にドン引きのルミナス。
挙句の果てに“ルミタン”だなんて呼ぶ始末。もうあの男に関わるのはやめよう、そう思っていたのに…
意地っ張りで素直になれない令嬢、ルミナスと、ちょっと気持ち悪いがルミナスを誰よりも愛している次期騎士団長、カルロスが幸せになるまでのお話しです。
よろしくお願いしますm(__)m
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です!
https://estar.jp/novels/26513389
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる