【番外編】双子獣人は番も双子でした。。

塔野明里

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1話 幸せの先

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 1話 幸せの先

 * * *

 私は朝が弱くて、起きるのはいつもガロンより後になってしまう。彼は騎士団長になってさらに忙しくて、私が起きたときにはもう仕事に行ってしまっていることも多い。

 でもたまに、本当にたまにだけど、私が先に起きられるときがある。
 ガロンのくすんだ金髪は触ると柔らかくて、すこし癖っ毛。寝癖を直すのにいつも大変そうにしてる。眠っている彼の髪に触れるともふもふした耳がくすぐったそうに動く。それを見るのが好きで、先に起きれたときはすごく嬉しい。

 幸せを噛み締めながら、ふと私は怖くなる。ガロンはたくさんの優しいものに囲まれて生きてきた人。お母様もお父様も彼のことを愛してる。

 私は親の愛を知らない。愛なんて温かいものこの世界に来るまで知らなかった。
 姉のリリと私は一心同体で、必死に生きることだけ考えてきたから。

 リリは優しいし、頭も良い。きっといいお母さんになれる。


 じゃあ私は…?私は本当にお母さんになれる?
 

 * * *


「10ヶ月!?二人のいた世界ではそんなにかかるのか?信じられない…。」

 獣人やエルフの暮らすランディオール王国の首都ヴィンドヘイム。この国初めての結婚式が行われてから一週間。昨日とうとう兄貴の妻リーリアは子どもを授かるための実をその身体に宿した。

「この世界では、およそ3ヶ月で出産になるわ。まさかそんなに違うなんてびっくりね。」

 ここは俺たちの両親の屋敷。俺たち四人は母フェアリーデの呼び出しを受けた。

 俺ガロン・ロックスフォードは横に座る妻リーエルの話を驚きながら聞いていた。まさか子どもを産むのに1年近くかかるなんて。

 目の前に座る兄貴シオンは、妻のリーリアをその膝に横抱きして話を聞いている。もう兄貴の過保護にはそれほど驚かなくなったが、母の前でも隠す様子はない。もう昔の兄貴のイメージが壊れかけてる。
 さすがに恥ずかしいのかリリが頬を紅く染めているが、それすらも兄貴にとっては愛しいのだろう。妻の頭を撫でる兄貴の顔は、蕩けそうな笑顔だ。

「ねぇ、ガロン。シオンってあんな顔だったっけ?」

「いや、俺たちの知ってる兄貴はもういないと思ったほうがいいみたいだ。エルも膝に座るか?」

「やだ!」

 エルとヒソヒソと話す間も、兄貴にはリリしか見えていないらしい。

「まったく…誰に似たのかしら。」

 母は頭を抱えている。そんな母の伴侶に似たのは間違いないよな。 

「あのお母さま…つわりとかはありますか?赤ちゃんが魔力を吸収して成長するって聞いて、よくわからなくて…。」

「つわり?それは何かしら?」

 赤い顔をしながら話すリリによれば、元の世界では妊娠してしばらくすると体に様々な変化が起こるらしい。匂いに敏感になり食べられない物が出てきたり、吐き気がしたり、そのせいで起きられなくなることがあるらしい。

「10ヶ月もかかる上に、そんなに辛いのか?」

「そうだよ、赤ちゃんを産むのは命がけなの。」

 エルが姉の体を心配するのも理解できる。出産のときに出血があったり、母親は命がけだと聞いて血の気が引いた。

「この世界では赤ちゃんは栄養と魔力を吸収して成長するの。産むときも魔力で産道を補助しながらの出産になるから出血もほとんどない。心配することないわ。」

 母の言葉に2人は安心したようだった。改めて彼女たちがこの世界に来てくれてよかったと思う。

「それでも、大変なことには変わりないわ。しばらく昼間はこちらにいらっしゃい。本当は夜もこちらに来てくれていいのだけど?」

「夜は私が一緒にいますから問題ありません。これ以上リリとの時間が減ったら生きていけませんから。」

 有無を言わせぬ兄貴の言葉に母はまた頭を抱える。

 その時、執事長のヨナスがお茶と菓子を持ってやってきた。

「失礼いたします。新しいお茶をご用意いたしました。シオン様、リーリア様は仲睦まじいことで。」

 兄貴の膝の上でリリの顔がさらに赤くなった。降ろしてほしいと訴えても、どうやら無駄なようだ。

「ふふふっシオン様のそのご様子。若き日の旦那様と奥様を見ているようです。」

 エルフであるヨナスは俺たちの父親が幼い頃からこの屋敷に仕えている。

「もうヨナス。余計なこと言わないでちょうだい。」

 この屋敷で知らないことなどないと言われる執事長は無駄のない手つきで紅茶を注いでいく。

「お母様の話聞きたいです。お父様とどうやって知り合ったんですか?」

 リリとエルの興味津々の瞳に母は困ったように笑った。

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