【番外編】双子獣人は番も双子でした。。

塔野明里

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2話 母の思い出

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 2話 母の思い出


 わたくし、フェアリーデ・ロックスフォード。旧姓フェアリーデ・アーランドはこのランディオール王国の北部。雪深いサーシェルという都市の貧乏貴族の三女として生まれました。
 茶色くふわふわと癖のある髪と同じ色の瞳と垂れた耳。童顔で背が小さく子どもっぽい見た目以外は平凡な容姿。しかしそれを不満に思ったことはありませんでした。

 姉弟は全部で五人。姉、姉、私、妹、そしてやっと生まれた男の子である弟。兎の獣人である両親。私たち兎の姉弟は毎日の食べるものにも苦労するような家でなんとか暮らしていたのです。

 代々受け継いできた家は大きいだけで、すきま風が吹き込むボロ屋敷。冬になると室内でも息が白くなるほどで、姉弟で毛布にくるまって冬を越しました。

 姉2人は同じ都市の貴族に嫁ぎ、彼女たちの仕送りと小さな領地の作物でなんとか生活をしていました。


 それが起こったのは例年よりも雪の多い冬の朝。
 地鳴りのような轟音とともに、地面の揺れる感覚。のちにサーシェルの大雪崩と呼ばれる災害が起きたとき、私は18歳になったばかりでした。


 * * *


「リーデ!聞いた?!王子様がサーシェルに視察にいらっしゃるんだって!」

 同じような貧乏貴族で仲の良い友人のサリーは可愛らしい猫耳をピコピコ動かしながらやってきました。屋敷の裏山で山菜を探していた私はその声に腰を伸ばしました。

「王子様って、アーカス様がいらっしゃるってこと?」

 ランディオール王国の第一王子であるアーカス様は、次期国王としてその手腕を発揮し様々な事業に力を入れています。災害支援もそのひとつ。

「雪崩の支援のためにわざわざ王子様がいらっしゃるなんて優しいわよね!」

 会ったこともない王子を想像してサリーは頬を赤らめていました。

 私は正直それどころではありません。このままではいつ食べる物がなくなってもおかしくない状況だったのです。

 昨年の冬に起こった大雪崩はサーシェルの都市部からは離れていましたが、都市の重要な畑や領地を飲み込んでいきました。その中には私たちの家の領土も含まれていて、春になった今も畑には種が植えられず作物が育たないままです。
 このままでは今年の冬を越すことができません。まだ幼い妹と弟のためになんとかしなければ。

「リーデ、聞いてる?いいよねぇ、もう婚約者が決まってる人は。」

「まだ決まったわけじゃないよ。縁談がきてるってだけ。」

 サーシェルの有力貴族であるカザック家からの縁談が来たのはつい先日のこと。カザック家の次男デュークとは幼い頃から知り合いです。犬の獣人である彼はその家名を振りかざし、弱い者いじめを繰り返している嫌な男でした。

 正直まったく好きではありません。むしろ大嫌いです。しかし、なぜか向こうからは好かれているらしく、いつもちょっかいをかけられます。

 私が18歳になってすぐ、そのデュークとの縁談が持ち上がりました。

 両親は良縁だと喜んでいました。幼い妹と弟のためにも、この縁談は必要なもの。カザック家に嫁げば実家に仕送りをすることができるし、この冬の心配もなくなるでしょう。

 分かってはいても、素直に喜ぶことはできませんでした。

「まぁあのデュークが相手じゃ喜べないよね。」

 好きになった人と結婚したいなんて、子どものようなことを言うつもりはありません。両親のため、私たちのために嫁いでいった姉たちを見ていれば自分のやるべきことはよく分かっています。
 しかしデュークの悪行を知らない人はいません。私は町の人から向けられる憐れみの視線が堪らなく嫌でした。

「しばらくは結婚なんてできないよ。持参金もないし、できるだけ引き延ばすつもり。」

 貴族との結婚の場合、嫁ぐ側は持参金を持って相手の家に入ります。我が家にはもちろんそんなお金はありません。今のところ借りる先も決まっていないはずです。

「それもそっか。カザックってケチで有名だもんねぇ。」

 大貴族にも関わらず、カザックは倹約家で有名。婚姻のための持参金を安くしてくれるとは思えません。

「今はそのおかげで助かったわ。ギリギリまで引き延ばしてやる。」

 憂鬱な気持ちを吹き飛ばすように、友人と声をあげて笑いました。


 
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