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第三十三話 恐ろしいアクア
しおりを挟む「この豚野郎が! オラ! オラッ! ウリャ!」
ピギッ!? ピギャツ!? ブヒン!?
短い悲鳴を断末魔にオークたちが爆ぜていく。
「デカいだけで木偶の坊ねっ! 『シャイニングアローズ!』」
グガァア! ウゴォオオォオ!
急所を貫かれたオーガが大地に沈んでいく。巨体ゆえに、積み重なった死体は小高い山のようだ。
「私だって! えいっ!」
アクアが赤いピンポン玉サイズの玉を遠くに投擲する。あれはなんだ? 初めて見るな。
ドゴゴゴゴォォオオオオオオオ!!
「うぉっ!?」
ゴブリンの群れが吹き飛んだ。ゴブリンメイジもジェネラルもいたはずだ。五十体以上いたのに爆発によって跡形もなく消えていた。というか森の一部が抉られて大きな窪地が出来上がっていた。
「やり過ぎだろ……」
「ほんとですわ。とてもお手製のものとは思えませんの」
「自作なのか?」
「ええ、アンヘレスから聞きましたの。アクアさんは昨晩眠れなかったらしいのですわ。なので夜な夜なハイテンションで何かを混ぜていたらしいですわ」
調合スキルで爆弾製作かよ。なんて物騒なスキルなんだ。誤って爆発してたらと思うと冷や汗がでる。
「ルイスさん! 私の爆竹どうでしたか?」
いやいやいやいや。どうみてもそんな可愛い代物じゃないでしょ。
「今度はもっと強力な爆弾でも作ってみます!」
「止めなさい!」
「えーいいじゃないですかぁ。あ、そういえばルイスさんって調子でも悪いのですか?」
「いや、そんなことないぞ」
「でも、ずっと下を俯いて歩いているじゃないですか」
だって、みんな未だにビキニ姿で走り回っているんだもん。たゆんたゆん揺れているんだよ。正直目のやり場に困る。だからといって野郎の裸は見たくないし。
「そうですわ。また厚着をしてらっしゃるし。風邪をひかれたのでしたら私がヒールをかけてあげますわよ」
「いや、いいから! 大丈夫だから。鎧の下に耐熱効果のシャツを着てるから暑くないんだよ」
だからマイクロビキニで近づかないでくれ。まったくこれはなんの拷問なんだよ。唯一の救いは海パン姿であそこをさらけださなくてもいいことだな。
テントで着替えをしていた時に気づいたんだ。耐熱耐寒の魔導具の服をたくさん持っていたことに。筋力と防御力向上のシャツを着ていたけどそれには熱耐性が付与されていなかったのだ。すっかり忘れていたよ。
海パンだったらどうだったかって? おそらく今頃は後ろの奴らと同じ運命を辿っていたことだろう……。
「きびきび歩かないと、私間違ってさっきの爆竹をそこに落としちゃいますよ」
「「「ひぃいいい!?」」」
そう、海賊たちだ。さすがにあそこに放置できなかった。そのままにしていたらまた誰かを襲うだろうしな。なのでギルドに引き渡すことにしたのだ。
「こら押すな!」
「ばか引っ張るなって!」
「「「「うわぁぁああ!?」」」」
盛大にこける海賊たち。縄で繋がっているから一蓮托生だ。
「何やってるんですか! まったく!」
「目が見えないから仕方ないだろ!」
「野獣が口答えしない!」
「がぁ!? ぁ……」
「ちょ――。ほどほどにしてやれ」
クレームをつけた海賊が股間を押さえて泡を吹いていた。
「いいんです! この人達は獣なんですから!」
「獣人だから間違って――」
「ただの獣なんです! 一緒にしないでください!」
「あ、ああ……。そうだな」
うん、逆らうのは止めよう。触らぬなんちゃらだな。
海賊たちも初めは武器と防具を奪われてただ歩かされていただけなのだ。でもそれがいけなかったんだと思うね。
ビキニのボインボインが目の前で走り回ってるんだよ。そりゃ、あーなるの男なら仕方ないと思うんだけどね……。それを見たアクアが不潔だ、獣だと。
そんなとき、レオーラが言ってしまったんだ。「目を潰してしまえばいいのですわ。大丈夫です。ギルドに着いたら私が回復してあげますわ」と……。
冗談だと思ったんだけどさ。「それグッドアイディアです!」とか言って……。まさか本当に目潰しするとは思わなかったよ。なんか嗤ってたし。いやほんとそんなアクアが恐くてちょびっと漏らしちゃった。
まさか自分にはないものに対して欲情する男が許せないのか……。
「ルイスさん」
「いや! あるよな! 控えめなだけだよな!」
「何を言ってるんですか? それより、なんか魔物の集団が多くないですか?」
「いつもより凶暴で怖いわね」
「後衛のわたくしまで狙われていますわ」
「そうか? あんまり俺の所には襲ってこないけどな。追い回してばっかりだぜ」
それはね、興奮してるからだよ。人間の雌に子供を産ませる魔物ばかりだったしな。こんな裸同然の格好で歩けば襲ってもくるわ。向こうからすると誘われてるようなもんだ。悲しき雄の宿命。
「あ、あそこに階段が見えます!」
「次の階に転移結晶があるのよね!」
「とうとう十五階か。ボスは何だ?」
「決まってないそうです」
「ランダムなのかよ」
「はい、ただどれもソロでBランク相当の強敵のようです」
「アンヘレス! お前は後ろに下がって魔力を温存しろ」
「仕方ないなー」
ほっといたら魔力切れになるまで魔法をぶっ放すからな。
「十五階はレッドと俺が前で戦う。レッドいいな」
「おう任せとけ!」
十五階は湿地だった。足を取られながらも泥濘を進む。魔物が何度も進路を妨げてきた。ブルーアリゲータやホワイトアリゲータ、レッドアリゲータ、イエローアリゲータ、ポイズンアリゲータ、ゾンビアリゲータ――。
「ワニばっかじゃねーかよ!」
「でも、ルイスさんのお蔭で楽ができましたわ」
「ああ、このアリゲータキラーの切れ味は最高だからな」
「ルイスの剣ってみな真っ黒だから違いがわからないよ」
アリゲータ専用の剣ということにして、インフィニティを軽く発動させていたのだ。だって普通に斬ったら硬くて手が痺れたんだもん。
「ほら早く歩きなさい! もう面倒臭いから鰐の餌にしましょうか?」
「「「ひぃぃいいいいい!」」」
あ、またコケた。アクアが脅すから余計に時間がかかってるような気がするが、気のせいか?
「いだっ!?」
前を歩いていたレッドが急に顔面を押さえてしゃがみ込んだ。
「いきなりどうしたんだお前?」
「いってえ。壁にぶつかったんだよ」
「ん? 何いってるんだ。お? なんだこれ透明な壁?」
「わあ、これ面白いね!」
「どうやら行き止まりのようですわ」
遠くの景色は見えるのに不思議だな。
「でも扉なんてどこにもないぞ?」
「あそこのようです」
アクアが指さした先に、扉が……ないな。
「え? どういうことだ?」
扉の代わりに馬鹿でかいワニが寝ころんでいた。
「あのワニは本物じゃないみたいです。あの口をこじ開けて中に入ればいいのです」
「おお、ほんとだ! 中に道が続いているぞ」
レッドが鰐の巨大な口をこじ開けて中に入っていった。でもそれって単に口から内臓に繋がっているって可能性もあるじゃないか。ほんと怖い物知らずというか……。
まあいい。とにかくボス戦だ。
鬼がでるか蛇がでるか……。
また鰐というオチだけは止めてくれよ。
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