異世界でボッチになりたいが、なれない俺

白水 翔太

文字の大きさ
34 / 42

第三十三話 恐ろしいアクア

しおりを挟む

「この豚野郎が! オラ! オラッ! ウリャ!」

 ピギッ!? ピギャツ!? ブヒン!?

 短い悲鳴を断末魔にオークたちが爆ぜていく。

「デカいだけで木偶の坊ねっ! 『シャイニングアローズ!』」

 グガァア! ウゴォオオォオ!

 急所を貫かれたオーガが大地に沈んでいく。巨体ゆえに、積み重なった死体は小高い山のようだ。

「私だって! えいっ!」

 アクアが赤いピンポン玉サイズの玉を遠くに投擲する。あれはなんだ? 初めて見るな。

 ドゴゴゴゴォォオオオオオオオ!!

「うぉっ!?」

 ゴブリンの群れが吹き飛んだ。ゴブリンメイジもジェネラルもいたはずだ。五十体以上いたのに爆発によって跡形もなく消えていた。というか森の一部が抉られて大きな窪地が出来上がっていた。

「やり過ぎだろ……」

「ほんとですわ。とてもお手製のものとは思えませんの」

「自作なのか?」

「ええ、アンヘレスから聞きましたの。アクアさんは昨晩眠れなかったらしいのですわ。なので夜な夜なハイテンションで何かを混ぜていたらしいですわ」

 調合スキルで爆弾製作かよ。なんて物騒なスキルなんだ。誤って爆発してたらと思うと冷や汗がでる。

「ルイスさん! 私の爆竹どうでしたか?」

 いやいやいやいや。どうみてもそんな可愛い代物じゃないでしょ。

「今度はもっと強力な爆弾でも作ってみます!」

「止めなさい!」
 
「えーいいじゃないですかぁ。あ、そういえばルイスさんって調子でも悪いのですか?」

「いや、そんなことないぞ」

「でも、ずっと下を俯いて歩いているじゃないですか」

 だって、みんな未だにビキニ姿で走り回っているんだもん。たゆんたゆん揺れているんだよ。正直目のやり場に困る。だからといって野郎の裸は見たくないし。

「そうですわ。また厚着をしてらっしゃるし。風邪をひかれたのでしたら私がヒールをかけてあげますわよ」

「いや、いいから! 大丈夫だから。鎧の下に耐熱効果のシャツを着てるから暑くないんだよ」

 だからマイクロビキニで近づかないでくれ。まったくこれはなんの拷問なんだよ。唯一の救いは海パン姿であそこをさらけださなくてもいいことだな。

 テントで着替えをしていた時に気づいたんだ。耐熱耐寒の魔導具の服をたくさん持っていたことに。筋力と防御力向上のシャツを着ていたけどそれには熱耐性が付与されていなかったのだ。すっかり忘れていたよ。

 海パンだったらどうだったかって? おそらく今頃は後ろの奴らと同じ運命を辿っていたことだろう……。

「きびきび歩かないと、私間違ってさっきの爆竹をそこに落としちゃいますよ」

「「「ひぃいいい!?」」」

 そう、海賊たちだ。さすがにあそこに放置できなかった。そのままにしていたらまた誰かを襲うだろうしな。なのでギルドに引き渡すことにしたのだ。

「こら押すな!」

「ばか引っ張るなって!」

「「「「うわぁぁああ!?」」」」

 盛大にこける海賊たち。縄で繋がっているから一蓮托生だ。

「何やってるんですか! まったく!」

「目が見えないから仕方ないだろ!」

「野獣が口答えしない!」

「がぁ!? ぁ……」

「ちょ――。ほどほどにしてやれ」

 クレームをつけた海賊が股間を押さえて泡を吹いていた。

「いいんです! この人達は獣なんですから!」

「獣人だから間違って――」

「ただの獣なんです! 一緒にしないでください!」

「あ、ああ……。そうだな」

 うん、逆らうのは止めよう。触らぬなんちゃらだな。

 海賊たちも初めは武器と防具を奪われてただ歩かされていただけなのだ。でもそれがいけなかったんだと思うね。

 ビキニのボインボインが目の前で走り回ってるんだよ。そりゃ、あーなるの男なら仕方ないと思うんだけどね……。それを見たアクアが不潔だ、獣だと。

 そんなとき、レオーラが言ってしまったんだ。「目を潰してしまえばいいのですわ。大丈夫です。ギルドに着いたら私が回復してあげますわ」と……。

 冗談だと思ったんだけどさ。「それグッドアイディアです!」とか言って……。まさか本当に目潰しするとは思わなかったよ。なんか嗤ってたし。いやほんとそんなアクアが恐くてちょびっと漏らしちゃった。

 まさか自分にはないものに対して欲情する男が許せないのか……。

「ルイスさん」

「いや! あるよな! 控えめなだけだよな!」

「何を言ってるんですか? それより、なんか魔物の集団が多くないですか?」

「いつもより凶暴で怖いわね」

「後衛のわたくしまで狙われていますわ」

「そうか? あんまり俺の所には襲ってこないけどな。追い回してばっかりだぜ」

 それはね、興奮してるからだよ。人間の雌に子供を産ませる魔物ばかりだったしな。こんな裸同然の格好で歩けば襲ってもくるわ。向こうからすると誘われてるようなもんだ。悲しき雄の宿命。

「あ、あそこに階段が見えます!」

「次の階に転移結晶があるのよね!」

「とうとう十五階か。ボスは何だ?」

「決まってないそうです」

「ランダムなのかよ」

「はい、ただどれもソロでBランク相当の強敵のようです」

「アンヘレス! お前は後ろに下がって魔力を温存しろ」

「仕方ないなー」

 ほっといたら魔力切れになるまで魔法をぶっ放すからな。

「十五階はレッドと俺が前で戦う。レッドいいな」

「おう任せとけ!」

 十五階は湿地だった。足を取られながらも泥濘を進む。魔物が何度も進路を妨げてきた。ブルーアリゲータやホワイトアリゲータ、レッドアリゲータ、イエローアリゲータ、ポイズンアリゲータ、ゾンビアリゲータ――。

「ワニばっかじゃねーかよ!」

「でも、ルイスさんのお蔭で楽ができましたわ」

「ああ、このアリゲータキラーの切れ味は最高だからな」

「ルイスの剣ってみな真っ黒だから違いがわからないよ」

 アリゲータ専用の剣ということにして、インフィニティを軽く発動させていたのだ。だって普通に斬ったら硬くて手が痺れたんだもん。

「ほら早く歩きなさい! もう面倒臭いから鰐の餌にしましょうか?」

「「「ひぃぃいいいいい!」」」

 あ、またコケた。アクアが脅すから余計に時間がかかってるような気がするが、気のせいか?

「いだっ!?」

 前を歩いていたレッドが急に顔面を押さえてしゃがみ込んだ。

「いきなりどうしたんだお前?」

「いってえ。壁にぶつかったんだよ」

「ん? 何いってるんだ。お? なんだこれ透明な壁?」

「わあ、これ面白いね!」

「どうやら行き止まりのようですわ」

 遠くの景色は見えるのに不思議だな。

「でも扉なんてどこにもないぞ?」

「あそこのようです」

 アクアが指さした先に、扉が……ないな。

「え? どういうことだ?」

 扉の代わりに馬鹿でかいワニが寝ころんでいた。

「あのワニは本物じゃないみたいです。あの口をこじ開けて中に入ればいいのです」

「おお、ほんとだ! 中に道が続いているぞ」

 レッドが鰐の巨大な口をこじ開けて中に入っていった。でもそれって単に口から内臓に繋がっているって可能性もあるじゃないか。ほんと怖い物知らずというか……。

 まあいい。とにかくボス戦だ。

 鬼がでるか蛇がでるか……。

 また鰐というオチだけは止めてくれよ。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

魔力ゼロの俺だけが、呪いの装備を『代償なし』で使い放題 ~命を削る魔剣も、俺が持てば『ただのよく切れる剣』~

仙道
ファンタジー
現代日本で天才研究者だった相模登(さがみ のぼる)は、ある日突然、異世界へ転移した。  そこは『スキル』と『魔力』が全てを決める世界。   しかし登には、ステータス画面もなければ、魔力も、スキルも一切存在しなかった。   ただの一般人として迷宮に放り出された彼は、瀕死の女騎士と出会う。彼女の前には、使う者の命を瞬時に吸い尽くす『呪いの魔剣』が落ちていた。   武器はそれしかない。女騎士は絶望していたが、登は平然と魔剣を握りしめる。 「なぜ……生きていられるの?」  登には、剣が対価として要求する魔力は存在しない。故に、魔剣はデメリットなしの『ただのよく切れる剣』として機能した。   これは、世界で唯一「対価」を支払う必要がない登が、呪われた武具を次々と使いこなし、その副作用に苦しむ女騎士やエルフ、聖女を救い出し、無自覚に溺愛されていく物語。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

万分の一の確率でパートナーが見つかるって、そんな事あるのか?

Gai
ファンタジー
鉄柱が頭にぶつかって死んでしまった少年は神様からもう異世界へ転生させて貰う。 貴族の四男として生まれ変わった少年、ライルは属性魔法の適性が全くなかった。 貴族として生まれた子にとっては珍しいケースであり、ラガスは周りから憐みの目で見られる事が多かった。 ただ、ライルには属性魔法なんて比べものにならない魔法を持っていた。 「はぁーー・・・・・・属性魔法を持っている、それってそんなに凄い事なのか?」 基本気だるげなライルは基本目立ちたくはないが、売られた値段は良い値で買う男。 さてさて、プライドをへし折られる犠牲者はどれだけ出るのか・・・・・・ タイトルに書いてあるパートナーは序盤にはあまり出てきません。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

処理中です...