35 / 72
第一世界 ロージェン(さあ、魔王討伐だ!)
第三十二話 闇竜
しおりを挟む
「あれがそうか」
闇の中に薄っすらとだが銀色に輝く神殿が浮かび上がっていた。
「闇竜って強いわよね」
「そうでしょうね。悪の権化ですから。ああ神よ。我らを護りたまえ」
「大丈夫、いまの僕らならいけるさ」
そもそも悪なら神殿にいるのおかしくないか? ああでも破壊神とか魔神とかも神の部類か。でもその確率は低いよな。
飛空艇の高度をゆっくり下げ、死の谷へと降り立った。
「ほんとに真っ暗なんだな。周りが何も見えねーぞ」
『光の精霊よ、我らを包む闇を神聖なる輝きで照らし出せ、出でよウィル・オー・ウィスプ!』
「うっ! 眩しぃっ!」
三個の光の玉が現れ、漆黒の谷を昼の世界へと変える。一瞬だが視界に多数の魔物が映った。が、すぐに悲鳴をあげて視界の隅へと逃げ去っていった。そうだよな。これまで光なんて存在したことのない世界の住人たちだ。いきなりこの光量を浴びるのはきついだろう。
「この神殿の扉のでかさ半端ないな」
「竜が出入りするからかにゃ?」
「カイト。見上げてないで中に入ろうよ」
「ああそうだな。あっ! ちょっと待ってくれ」
俺は一旦船へと戻る。忘れ者をしていたからだ。
「やめてけれ! オラ、空は嫌ダ! 高いところは嫌だ!」
「だから陸に降りたっていってるだろ!」
俺の言葉が聞こえないのかオーグはジタバタと騒ぐ。メンドクサイので甲板から外に蹴りだした。
「うぁぁあああ! 死にたくないダァアアア」
オーグはドスンと顔面から地面に顔を打つ。
「あれ? 痛くないダ! オラはとうとう無敵になったダ!」
「あ、オーグくん。久しぶり」
「なんで勇者が落ちた先にいるダ?」
「面倒だから早く行くにゃ」
「そうね」
あ、オーグの奴、とうとう誰からも構ってもらえなくなっちゃったよ。
「地面は最高ダ!」
死の谷の岩のような地面に顔を擦りつけて喜んでいた。オーグはマイペースだった。
*****
神殿に入ったら直ぐにいました。どうやら待ち構えていたようだ。
「あれ? 闇竜って前はこんな感じだったかしら」
アンジェリーナが首を傾げる。
「いえ、前回はもっとこう禍々しいというか猛々しい雄叫びをあげてましたよ」
ソフィも不思議そうにしている。
「ねえ、カイト。竜も降参のポーズってあーいう感じなのかな」
「俺が知るかよ。直接本人に聞け」
漆黒の闇を纏う超巨大な竜がそこにはいた。しかし、仰向けになって腹を見せる姿はなんといえばいいのだろうか……。少なくとも可愛くはない。
「其方があのお方の使徒でしょうか?」
「「「竜が喋った!?」」」
あれ、竜が人間の言葉を話すのって一般的に知られていないのか? 赤竜も喋っていたから普通かと思っていた。
「俺自身は全くもってそれを了承した覚えはない。だがまあ、そういうことにはなっているな」
表面上のステータスは。
「やはりそうですか。あのお方の匂いがしましたので」
「えっ!? マジで!」
「ええ、凄く強い香りがいまもします」
鼻をひくひくさせる闇竜。ミヤロスの野郎。なに勝手にひとをマーキングしてるんだ。毎日体を魔法でクリーニングしているのに落ちないとは頑固な穢れだな。
「おい、ユーキ。恐らくこいつは、この世界を創造した神の関係者だぞ」
「えええっ!?」
「畏れ多いことです。わたくしめはあの方の下位の下位の下位に連なる矮小なただの竜でございます」
「めっちゃ低姿勢だな。お前らこいつを本当に殺すのか」
「えっ、いや、でも……」
「あ、悪の権化ではないのですか……」
「むしろ神罰が降るんじゃね?」
その言葉にぶるっと体を震わせるソフィ。神に使えるものとしては神罰ほど恐ろしいものはないようだ。しかしなかなか揺れが収まらないな。止めてあげようかな。
「ユーキ。やっぱり止めましょうよ」
アンジェリーナも完全に及び腰だ。
「でも、スキルが……」
えっ? ユーキさんよ。竜を倒すと言っていたのは、悪だからという理由ではなくスキル目当てだったんですか。勇者のくせにがめついな。
「スキルであれば、お授けいたしますのでご安心ください」
そう言うと闇竜は仰向けの体勢から立ち上がる。おおデカい。というかいままで仰向けでずっと喋っていたんだ。
闇竜は頭上を見上げて大きく吠える。勇者パーティ全員が一瞬、闇に包まれた。
「わっ凄い! 本当にスキルを得ているわ」
「ほんとだ。闇属性(中)か。これで魔王との闘いが少し楽になるかな」
「別にいらないけどただだからもらっておくのにゃ」
「私は聖職者なのに闇属性なんて良いのでしょうか」
複雑そうな顔のソフィ。いや、そもそも創造神が闇を司る者なんですけど。
「なあ、闇竜さんよ。俺らは何も得てないんだけど」
俺もそうだが、ルシアもオーグもスキルは得ていない。
「貴女様方には私めからは与えることはできません。私のちっぽけな加護とは違い、最大級のものをすでに得ておりますので……」
ああ、そうか。ルシアとオーグは神の寵愛を受けているもんな。俺なんてその前に無限という修飾語が付いているんだぞ。限度を弁えて欲しい。
「あれ? でもおかしいな。それならコールマンの野郎は何故この地点に印なんかつけたんだ?」
「きゃぁっ!?」
闇竜の巨体が文字通りビクンと飛び跳ねた。その振動で神殿の上からパラパラと石のようなものが落ちて来た。
「コ、コ、コ、コ、コ……」
「とりあえず落ち着け。神殿が崩れるだろ」
「コ、コ、コル、ココ、コル…」
「おい、まずは深呼吸しろ」
目を彷徨わせてキョどる闇竜が大きな口を開けた。
「うおっ!」
「ちょっと勢いよすぎよ! 吸い込まれちゃうわ」
暫くすると闇竜の腹がパンパンに膨れ上がった。おい、待て――。
「どわぁぁああ!?」
もの凄い突風に襲われた。吹き飛ばされないように必死に神殿の柱に掴まる。やべえ、柱が軋んでいるぞ。ほんとに建物が崩れるってば! あ、それよりもルシアがヤバい! 細身で体重の軽い彼女はこの猛烈な風に耐えられるとは思えない。心配になって、さっきまでルシアがいた場所を振り向く。
「……おい」
何事もなかったかのように平然とした顔をしてそこに立っていた。緑の精霊を伴って。
「何でお前一人だけシルフに護ってもらっているんだよ!」
「だって全員は無理なのよ。なので平等にしたの」
要は独り占めかよ。
「あ、貴女様と、コ、コ、コールマン様とは――。お、お知り合い、な、なのですか?」
お、深呼吸の効果か、竜が正気を取り戻していた。若干まだどもっているけどな。
「ああ、うちの執事だ」
「ぶっ!? あのコールマン様のご主人様だったのですか!? そ、そんな馬鹿なこと……。い、いえ、た、大変失礼なことを致しました!」
そう言ってまた仰向けに転がった。だから暴れると崩れるから落ち着いてくれ。
「いや問題ない。あいつがここに来たら役立つものがもらえるような事を仄めかしていたから。あの嘘つき野郎」
「いえいえいえいえいえ! ま、ま、ま、待ってください!」
闇竜は牙を剥き、自分の体に噛みついた。
「グギャァァアア!」
おい、お前は何をしているんだ……。
「つ、つまらないものですが……。こ、これをお持ちになってください」
涙目の竜の足元にこれでもかと鱗が落ちていた。
「闇竜の鱗ね。これが役に立つアイテムか……」
「い、いえ。それだけでは!? そうだ! そこの猫耳の拳闘鬼のお嬢さん」
「なんにゃ?」
「私の下顎というか口の中に乗って頂けますでしょうか」
「にゃっ!? 噛まないにゃ?」
「勿論ですとも! ささ、早く」
「ララ、危ないよ!」
勇者は止めたが、ララはビクビクしながらも闇竜の口のなかへと入る。うーん。閉じてゴックンされたら終わりなのに。あいつ勇気あるな。
「乗ったにゃ? それでどうするにゃ?」
「わらひのひたのきはをおもいっひりなくってくだひゃい」
口を開けたままなので上手く喋れないようだ。しかし、聞き間違いでなければ牙を殴れとかいってたな。
「よーし、覚悟はいいかにゃ」
ララの握り締めた拳が白い闘気を纏う。そして大きく振りかぶり――。
「ま、まっひぇ!?」
「秘奥義! 闘鬼破神拳!」
「グギャァァアアアアアアアア!」
おー、でかい牙が何本も根元から折れて飛び散った。
「シクシクシク……。一本だけって言えば良かった」
竜の下顎の歯の三分の一ほどが抜け落ち、いや根元から折れ落ちていた。凶悪な顔なのに、どこか間抜けな見た目になっていた。
「なんか、悪いことしたな」
「カイトって中学生をカツアゲする不良の高校生みたいだったよ」
「おい、人聞きが悪いな。俺は何も言ってないじゃないか」
「言わなくてもわかるよな、っていう無言の圧力」
失礼な。俺はコールマンの野郎に腹を立てていただけなのに。あの野郎。こうなることがわかっていてあえて印をつけたに違いない。まあ、折角だ。痛みを耐えてまで用意してくれたものだし。有り難く貰っておこう。次の世界に持っていけば、なんかの役に立つかもしれない。
「なんかお騒がせてしまって悪かったな」
「い、いえ。くれぐれもコールマン様には宜しくお伝えください。ただ、私めも多忙でして暫くお会いすることは叶わいともお伝えください」
「あいつに、ここに来てもらえばいいじゃないか」
「い、いえ! そんなめいわ――。滅相もない! 時期が来ればかならず私の方からお伺いしにいきますので。コールマン様にはゆっくりしていて頂きたい。そうお伝えください」
「ふーん。まあいいか。じゃあ俺達はいくからな」
神殿の外までお見送りする闇竜に別れを告げる。俺らは飛空艇に乗り、死の谷を魔族の国へと向かって進む。
コールマンよ。赤竜もそうだったが、お前は竜たちに一体何をやらかしているのだ。
闇の中に薄っすらとだが銀色に輝く神殿が浮かび上がっていた。
「闇竜って強いわよね」
「そうでしょうね。悪の権化ですから。ああ神よ。我らを護りたまえ」
「大丈夫、いまの僕らならいけるさ」
そもそも悪なら神殿にいるのおかしくないか? ああでも破壊神とか魔神とかも神の部類か。でもその確率は低いよな。
飛空艇の高度をゆっくり下げ、死の谷へと降り立った。
「ほんとに真っ暗なんだな。周りが何も見えねーぞ」
『光の精霊よ、我らを包む闇を神聖なる輝きで照らし出せ、出でよウィル・オー・ウィスプ!』
「うっ! 眩しぃっ!」
三個の光の玉が現れ、漆黒の谷を昼の世界へと変える。一瞬だが視界に多数の魔物が映った。が、すぐに悲鳴をあげて視界の隅へと逃げ去っていった。そうだよな。これまで光なんて存在したことのない世界の住人たちだ。いきなりこの光量を浴びるのはきついだろう。
「この神殿の扉のでかさ半端ないな」
「竜が出入りするからかにゃ?」
「カイト。見上げてないで中に入ろうよ」
「ああそうだな。あっ! ちょっと待ってくれ」
俺は一旦船へと戻る。忘れ者をしていたからだ。
「やめてけれ! オラ、空は嫌ダ! 高いところは嫌だ!」
「だから陸に降りたっていってるだろ!」
俺の言葉が聞こえないのかオーグはジタバタと騒ぐ。メンドクサイので甲板から外に蹴りだした。
「うぁぁあああ! 死にたくないダァアアア」
オーグはドスンと顔面から地面に顔を打つ。
「あれ? 痛くないダ! オラはとうとう無敵になったダ!」
「あ、オーグくん。久しぶり」
「なんで勇者が落ちた先にいるダ?」
「面倒だから早く行くにゃ」
「そうね」
あ、オーグの奴、とうとう誰からも構ってもらえなくなっちゃったよ。
「地面は最高ダ!」
死の谷の岩のような地面に顔を擦りつけて喜んでいた。オーグはマイペースだった。
*****
神殿に入ったら直ぐにいました。どうやら待ち構えていたようだ。
「あれ? 闇竜って前はこんな感じだったかしら」
アンジェリーナが首を傾げる。
「いえ、前回はもっとこう禍々しいというか猛々しい雄叫びをあげてましたよ」
ソフィも不思議そうにしている。
「ねえ、カイト。竜も降参のポーズってあーいう感じなのかな」
「俺が知るかよ。直接本人に聞け」
漆黒の闇を纏う超巨大な竜がそこにはいた。しかし、仰向けになって腹を見せる姿はなんといえばいいのだろうか……。少なくとも可愛くはない。
「其方があのお方の使徒でしょうか?」
「「「竜が喋った!?」」」
あれ、竜が人間の言葉を話すのって一般的に知られていないのか? 赤竜も喋っていたから普通かと思っていた。
「俺自身は全くもってそれを了承した覚えはない。だがまあ、そういうことにはなっているな」
表面上のステータスは。
「やはりそうですか。あのお方の匂いがしましたので」
「えっ!? マジで!」
「ええ、凄く強い香りがいまもします」
鼻をひくひくさせる闇竜。ミヤロスの野郎。なに勝手にひとをマーキングしてるんだ。毎日体を魔法でクリーニングしているのに落ちないとは頑固な穢れだな。
「おい、ユーキ。恐らくこいつは、この世界を創造した神の関係者だぞ」
「えええっ!?」
「畏れ多いことです。わたくしめはあの方の下位の下位の下位に連なる矮小なただの竜でございます」
「めっちゃ低姿勢だな。お前らこいつを本当に殺すのか」
「えっ、いや、でも……」
「あ、悪の権化ではないのですか……」
「むしろ神罰が降るんじゃね?」
その言葉にぶるっと体を震わせるソフィ。神に使えるものとしては神罰ほど恐ろしいものはないようだ。しかしなかなか揺れが収まらないな。止めてあげようかな。
「ユーキ。やっぱり止めましょうよ」
アンジェリーナも完全に及び腰だ。
「でも、スキルが……」
えっ? ユーキさんよ。竜を倒すと言っていたのは、悪だからという理由ではなくスキル目当てだったんですか。勇者のくせにがめついな。
「スキルであれば、お授けいたしますのでご安心ください」
そう言うと闇竜は仰向けの体勢から立ち上がる。おおデカい。というかいままで仰向けでずっと喋っていたんだ。
闇竜は頭上を見上げて大きく吠える。勇者パーティ全員が一瞬、闇に包まれた。
「わっ凄い! 本当にスキルを得ているわ」
「ほんとだ。闇属性(中)か。これで魔王との闘いが少し楽になるかな」
「別にいらないけどただだからもらっておくのにゃ」
「私は聖職者なのに闇属性なんて良いのでしょうか」
複雑そうな顔のソフィ。いや、そもそも創造神が闇を司る者なんですけど。
「なあ、闇竜さんよ。俺らは何も得てないんだけど」
俺もそうだが、ルシアもオーグもスキルは得ていない。
「貴女様方には私めからは与えることはできません。私のちっぽけな加護とは違い、最大級のものをすでに得ておりますので……」
ああ、そうか。ルシアとオーグは神の寵愛を受けているもんな。俺なんてその前に無限という修飾語が付いているんだぞ。限度を弁えて欲しい。
「あれ? でもおかしいな。それならコールマンの野郎は何故この地点に印なんかつけたんだ?」
「きゃぁっ!?」
闇竜の巨体が文字通りビクンと飛び跳ねた。その振動で神殿の上からパラパラと石のようなものが落ちて来た。
「コ、コ、コ、コ、コ……」
「とりあえず落ち着け。神殿が崩れるだろ」
「コ、コ、コル、ココ、コル…」
「おい、まずは深呼吸しろ」
目を彷徨わせてキョどる闇竜が大きな口を開けた。
「うおっ!」
「ちょっと勢いよすぎよ! 吸い込まれちゃうわ」
暫くすると闇竜の腹がパンパンに膨れ上がった。おい、待て――。
「どわぁぁああ!?」
もの凄い突風に襲われた。吹き飛ばされないように必死に神殿の柱に掴まる。やべえ、柱が軋んでいるぞ。ほんとに建物が崩れるってば! あ、それよりもルシアがヤバい! 細身で体重の軽い彼女はこの猛烈な風に耐えられるとは思えない。心配になって、さっきまでルシアがいた場所を振り向く。
「……おい」
何事もなかったかのように平然とした顔をしてそこに立っていた。緑の精霊を伴って。
「何でお前一人だけシルフに護ってもらっているんだよ!」
「だって全員は無理なのよ。なので平等にしたの」
要は独り占めかよ。
「あ、貴女様と、コ、コ、コールマン様とは――。お、お知り合い、な、なのですか?」
お、深呼吸の効果か、竜が正気を取り戻していた。若干まだどもっているけどな。
「ああ、うちの執事だ」
「ぶっ!? あのコールマン様のご主人様だったのですか!? そ、そんな馬鹿なこと……。い、いえ、た、大変失礼なことを致しました!」
そう言ってまた仰向けに転がった。だから暴れると崩れるから落ち着いてくれ。
「いや問題ない。あいつがここに来たら役立つものがもらえるような事を仄めかしていたから。あの嘘つき野郎」
「いえいえいえいえいえ! ま、ま、ま、待ってください!」
闇竜は牙を剥き、自分の体に噛みついた。
「グギャァァアア!」
おい、お前は何をしているんだ……。
「つ、つまらないものですが……。こ、これをお持ちになってください」
涙目の竜の足元にこれでもかと鱗が落ちていた。
「闇竜の鱗ね。これが役に立つアイテムか……」
「い、いえ。それだけでは!? そうだ! そこの猫耳の拳闘鬼のお嬢さん」
「なんにゃ?」
「私の下顎というか口の中に乗って頂けますでしょうか」
「にゃっ!? 噛まないにゃ?」
「勿論ですとも! ささ、早く」
「ララ、危ないよ!」
勇者は止めたが、ララはビクビクしながらも闇竜の口のなかへと入る。うーん。閉じてゴックンされたら終わりなのに。あいつ勇気あるな。
「乗ったにゃ? それでどうするにゃ?」
「わらひのひたのきはをおもいっひりなくってくだひゃい」
口を開けたままなので上手く喋れないようだ。しかし、聞き間違いでなければ牙を殴れとかいってたな。
「よーし、覚悟はいいかにゃ」
ララの握り締めた拳が白い闘気を纏う。そして大きく振りかぶり――。
「ま、まっひぇ!?」
「秘奥義! 闘鬼破神拳!」
「グギャァァアアアアアアアア!」
おー、でかい牙が何本も根元から折れて飛び散った。
「シクシクシク……。一本だけって言えば良かった」
竜の下顎の歯の三分の一ほどが抜け落ち、いや根元から折れ落ちていた。凶悪な顔なのに、どこか間抜けな見た目になっていた。
「なんか、悪いことしたな」
「カイトって中学生をカツアゲする不良の高校生みたいだったよ」
「おい、人聞きが悪いな。俺は何も言ってないじゃないか」
「言わなくてもわかるよな、っていう無言の圧力」
失礼な。俺はコールマンの野郎に腹を立てていただけなのに。あの野郎。こうなることがわかっていてあえて印をつけたに違いない。まあ、折角だ。痛みを耐えてまで用意してくれたものだし。有り難く貰っておこう。次の世界に持っていけば、なんかの役に立つかもしれない。
「なんかお騒がせてしまって悪かったな」
「い、いえ。くれぐれもコールマン様には宜しくお伝えください。ただ、私めも多忙でして暫くお会いすることは叶わいともお伝えください」
「あいつに、ここに来てもらえばいいじゃないか」
「い、いえ! そんなめいわ――。滅相もない! 時期が来ればかならず私の方からお伺いしにいきますので。コールマン様にはゆっくりしていて頂きたい。そうお伝えください」
「ふーん。まあいいか。じゃあ俺達はいくからな」
神殿の外までお見送りする闇竜に別れを告げる。俺らは飛空艇に乗り、死の谷を魔族の国へと向かって進む。
コールマンよ。赤竜もそうだったが、お前は竜たちに一体何をやらかしているのだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!
たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。
新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。
※※※※※
1億年の試練。
そして、神をもしのぐ力。
それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。
すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。
だが、もはや生きることに飽きていた。
『違う選択肢もあるぞ?』
創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、
その“策略”にまんまと引っかかる。
――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。
確かに神は嘘をついていない。
けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!!
そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、
神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。
記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。
それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。
だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。
くどいようだが、俺の望みはスローライフ。
……のはずだったのに。
呪いのような“女難の相”が炸裂し、
気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。
どうしてこうなった!?
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
魔力ゼロの俺だけが、呪いの装備を『代償なし』で使い放題 ~命を削る魔剣も、俺が持てば『ただのよく切れる剣』~
仙道
ファンタジー
現代日本で天才研究者だった相模登(さがみ のぼる)は、ある日突然、異世界へ転移した。 そこは『スキル』と『魔力』が全てを決める世界。
しかし登には、ステータス画面もなければ、魔力も、スキルも一切存在しなかった。
ただの一般人として迷宮に放り出された彼は、瀕死の女騎士と出会う。彼女の前には、使う者の命を瞬時に吸い尽くす『呪いの魔剣』が落ちていた。
武器はそれしかない。女騎士は絶望していたが、登は平然と魔剣を握りしめる。 「なぜ……生きていられるの?」 登には、剣が対価として要求する魔力は存在しない。故に、魔剣はデメリットなしの『ただのよく切れる剣』として機能した。
これは、世界で唯一「対価」を支払う必要がない登が、呪われた武具を次々と使いこなし、その副作用に苦しむ女騎士やエルフ、聖女を救い出し、無自覚に溺愛されていく物語。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる