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29話 一得一失
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瑠魅が一週間ぶりに登校した日から更に一週間が経った。
六月に近づいているのか、蒸し暑い日もあったりで、春が好きで暑いのが嫌いな俺にとっては、あまり良い季節では無くなってきている。
夏に近づくにつれて虫も活発になってきて、田舎とかだと虫が多すぎて嫌になる。けど、カブトムシとか、子供に需要のある虫は割と少ないってのが意味分かんねぇけどな。
「おぉ。いつも通り黄昏てんね」
ボケェとしていると不意に声を掛けられて反射的に体がビクってなった。
もちろん、好き好んで俺に話し掛ける奴、それもこの教室に居る男子って言うと、かなり絞られる。と言うか、一人しか居ない。
あぁ、自分で言ってて悲しくなるわ。
「おっ?無視か?俺とやるってのか?」
「ガリ勉が何言ってるんだよ」
俺は声のした方に視線を向ける。するとそこには案の定、海斗が居た。
俺と目が合ったとほぼ同時に海斗が口を開いた。
「突然だけどさ、今日お前の家に遊び行って良い?」
「今日?」
「あぁ。最近遊んでないだろ?さすがに寂しいなって」
そう言えばな。確かに最近は全く遊んでないな。学校で話すぐらいだし……俺もちょっと寂しいな。
でも、今は今で充分に満足してるし、来られると逆にマズイんだよな……。
「すまんな。今日はちと予定があってよ」
「そうなん?そっかぁ……ならしゃーねぇな」
まぁ、"今日は"と言うか毎日無理なんだけどな。もちろん、俺の家じゃなければいつでも遊べるんだけど。
「あれ?でも、お前もバイトあるんじゃないのか?」
「今日は休みなんだよ。だから遊ぼっかなって」
「あぁね。そりゃすまんね。せっかく誘ってくれたのに」
俺はふと、教室を眺めて違和感を感じた。
「今日、冬華来てないんだな」
いつもは姫乃たちと前の方で駄弁っているのに、今日は居なかった。
それでいて、いつもあるバイトが今日は休み。なおかつ、その店の看板娘も学校を休んでいる。
ふむ、匂いますね。これは……事件の匂いだ!
「今更かよ……今日、冬華は熱出したから休むんだってよ。だから両親が看病するって言って今日はバイトが休みになったんだよ。ガキでも分かるだろ」
「…………そっか。そうだよな」
どうやら、俺の頭脳は子供未満のようですわ。
見た目は高校生、頭脳はガキ、その名は千堂蓮翔ってか?
それただのバカじゃん………って、それは俺か。
「まぁ、遊べる日は言ってくれよ。バイトが入ってなければだけどよ」
「はいよ。そん時は言うわ」
どんな用事なの?とか、いつ空いてるの?とか質問されると都合が悪かったから、あぁ言ってもらえたのはかなり良かった。
そんな質問されたって答えられねぇもんな。なんて言ったって、その予定って言って誤魔化したのは、瑠魅についてだからな。
海斗に、実は瑠魅のお父さんが事故死して、そのショックから立ち直れるまでの間、家に居させてるんだ、なんて言ったら、絶対に気が狂うだろうからな。
「うっ………」
そんなことを思っていたら急に酷い頭痛が起こり、堪らず頭を抑えながら短く呻いた。
その頭痛と共に、俺はまた強い喪失感に苛まれた。
でも、何を失ったのかなんて俺自身ですら理解していない。
ただ一つだけ言えることは、その失った記憶がとても大事なものだということだけだった。
六月に近づいているのか、蒸し暑い日もあったりで、春が好きで暑いのが嫌いな俺にとっては、あまり良い季節では無くなってきている。
夏に近づくにつれて虫も活発になってきて、田舎とかだと虫が多すぎて嫌になる。けど、カブトムシとか、子供に需要のある虫は割と少ないってのが意味分かんねぇけどな。
「おぉ。いつも通り黄昏てんね」
ボケェとしていると不意に声を掛けられて反射的に体がビクってなった。
もちろん、好き好んで俺に話し掛ける奴、それもこの教室に居る男子って言うと、かなり絞られる。と言うか、一人しか居ない。
あぁ、自分で言ってて悲しくなるわ。
「おっ?無視か?俺とやるってのか?」
「ガリ勉が何言ってるんだよ」
俺は声のした方に視線を向ける。するとそこには案の定、海斗が居た。
俺と目が合ったとほぼ同時に海斗が口を開いた。
「突然だけどさ、今日お前の家に遊び行って良い?」
「今日?」
「あぁ。最近遊んでないだろ?さすがに寂しいなって」
そう言えばな。確かに最近は全く遊んでないな。学校で話すぐらいだし……俺もちょっと寂しいな。
でも、今は今で充分に満足してるし、来られると逆にマズイんだよな……。
「すまんな。今日はちと予定があってよ」
「そうなん?そっかぁ……ならしゃーねぇな」
まぁ、"今日は"と言うか毎日無理なんだけどな。もちろん、俺の家じゃなければいつでも遊べるんだけど。
「あれ?でも、お前もバイトあるんじゃないのか?」
「今日は休みなんだよ。だから遊ぼっかなって」
「あぁね。そりゃすまんね。せっかく誘ってくれたのに」
俺はふと、教室を眺めて違和感を感じた。
「今日、冬華来てないんだな」
いつもは姫乃たちと前の方で駄弁っているのに、今日は居なかった。
それでいて、いつもあるバイトが今日は休み。なおかつ、その店の看板娘も学校を休んでいる。
ふむ、匂いますね。これは……事件の匂いだ!
「今更かよ……今日、冬華は熱出したから休むんだってよ。だから両親が看病するって言って今日はバイトが休みになったんだよ。ガキでも分かるだろ」
「…………そっか。そうだよな」
どうやら、俺の頭脳は子供未満のようですわ。
見た目は高校生、頭脳はガキ、その名は千堂蓮翔ってか?
それただのバカじゃん………って、それは俺か。
「まぁ、遊べる日は言ってくれよ。バイトが入ってなければだけどよ」
「はいよ。そん時は言うわ」
どんな用事なの?とか、いつ空いてるの?とか質問されると都合が悪かったから、あぁ言ってもらえたのはかなり良かった。
そんな質問されたって答えられねぇもんな。なんて言ったって、その予定って言って誤魔化したのは、瑠魅についてだからな。
海斗に、実は瑠魅のお父さんが事故死して、そのショックから立ち直れるまでの間、家に居させてるんだ、なんて言ったら、絶対に気が狂うだろうからな。
「うっ………」
そんなことを思っていたら急に酷い頭痛が起こり、堪らず頭を抑えながら短く呻いた。
その頭痛と共に、俺はまた強い喪失感に苛まれた。
でも、何を失ったのかなんて俺自身ですら理解していない。
ただ一つだけ言えることは、その失った記憶がとても大事なものだということだけだった。
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