49 / 91
47話 泥沼
しおりを挟む
「今日はいつもよりもひでぇ顔だな」
姫乃との騒動が終わり、ついに月曜日を迎えた。だが、俺の心は異常なほどに沈んでいる。もちろん、今週テストがあるのもあるし、今が月曜日ってのもあるが……やはり、姫乃の件はかなり堪えた。
「朝から茶化すな。こっちはテスト以上に高い壁にぶち当たってんだよ」
「あら?もしかして、昨日の亮の言葉は真実だったのか?」
「ちげぇよ」
土曜日は姫乃達との勉強をやり、日曜日には海斗と亮と陽斗の四人で勉強会をすると言うハードスケジュールだった。
なんであんなに頑張ったんだよ、俺……。
「えぇ……てっきり蓮翔にも春が来たと思ったのによ」
「………有り得ねぇよ」
咄嗟に否定しようとして姫乃の言葉がフラッシュバックする。姫乃のあの言葉が、あの顔が、あの想いが……あの時のことを思い出すと俺の心にさらに深く刺さり、更に抉られるような感覚さえある。
「今の間は、と聞きたいところだが、その深刻そうな顔を見るとかなり酷い状況にでも立たされてるのか?」
「そう、なのかもな……。俺が弱いからなのかもしれんな」
「まぁ、確かに蓮斗の記憶能力は貧弱だな」
「それは触れないでくれ」
「あ……ごめん」
俺は海斗がこんなにも申し訳なさそうに謝るのを見たのは久しぶりだ。昔一度だけあった……気がするが、思い出せない。やはり俺の記憶能力は終わってるみたいだ。
「そろそろホームルーム始まるぞ?」
「あ、あぁ。そうだな」
なんとも歯切れの悪い返事だ。なんでそんなにあんな事で気にするのか分からないが、もしかして俺の言い方がキツかったのかもしれない。後で一応謝った方が良いかもしれない。
「ふぅ……ハゲそう」
ストレスの蓄積、一度に色んなことが起きてキャパオーバー寸前、自分に対する苛立ち。
やることが多い分には良いが、多すぎるとやる気が無くなる。はっきり言って考える気力すら湧かない。
若くしてハゲるのは嫌だが、こればかりはもうどうしようもない。
こういう時は優先順位を決めてコツコツやる方が良い。
ひとまずテストは置いておこう。あれは今更足掻いてどうにかなる品物じゃない。考えるだけ時間の無駄だ。まぁ、そもそもストレスの原因もキャパオーバー寸前なのも自分への苛立ちも全てあの一件が深く関わってるんだ。
「はぁ……言えるわけねぇだろ」
俺は瑠魅のことが好きだ。恋は盲目と言うからかもしれないが、瑠魅の容姿も性格も能力も全てが俺の理想に最も近い。大袈裟に言うならば理想通り、というやつだ。もちろん、瑠魅が俺のことをそういう対象として見れない、と言うのであればこの恋は儚く散ることになるが……。
ここで問題なのは姫乃の存在だ。俺的に姫乃は良き友人、親友と言っても過言では無い。だが、結局は友達だ。それ以上でも以下でもない。姫乃は俺の幼なじみで唯一の女の親友。
もし、俺のたった一言でこの関係が崩れるかもしれない……と考えるとどうしても言葉にならなかった。あの場で、あの時ハッキリと言うと決めたのに、俺は逃げた。あの笑顔をもう二度と見れないかもしれない、姫乃と疎遠になるかもしれない……そう思うと口は開かなかった。喉にすら言葉は届かず、脳内で反復して消えていった。
俺には瑠魅に俺の気持ちを伝える覚悟も、姫乃を突き放す覚悟もない。
「どうすれば良い……どうすれば解決できるんだ」
姫乃との関係を壊さずに、姫乃自ら俺と付き合うことを望まなくなる状況をつくる……。
無理ゲーにも程がある。もちろん、俺の本音を言ってこのままの関係でいられるかもしれない。でも、それは姫乃に全てがかかっている。つまり、姫乃依存の計画で俺の理想で……ただの押し付けだ。これじゃダメなんだ。これじゃ……俺らがちゃんと収まらないと……。俺視点からでも確実性が確保できる案……。
そんな事を考えていると、ついに魔が差したのかは分からないが、俺の脳裏に最悪とも言える案が浮かぶ。
………そうか。姫乃が俺以外の誰かと付き合えば良いんだ。
~~~~~~~~~~~~~~
ギリギリでしたが何とか間に合いました。
今回47話を執筆中に気が付いたのですが、主人公の名前の漢字が蓮斗になっていました。実際は蓮翔です。
読む分には気にならないと思いますが、気になる誤字などがあれば報告等して頂けると幸いです。
拙い部分はありますが、これからもよろしくお願いします!
姫乃との騒動が終わり、ついに月曜日を迎えた。だが、俺の心は異常なほどに沈んでいる。もちろん、今週テストがあるのもあるし、今が月曜日ってのもあるが……やはり、姫乃の件はかなり堪えた。
「朝から茶化すな。こっちはテスト以上に高い壁にぶち当たってんだよ」
「あら?もしかして、昨日の亮の言葉は真実だったのか?」
「ちげぇよ」
土曜日は姫乃達との勉強をやり、日曜日には海斗と亮と陽斗の四人で勉強会をすると言うハードスケジュールだった。
なんであんなに頑張ったんだよ、俺……。
「えぇ……てっきり蓮翔にも春が来たと思ったのによ」
「………有り得ねぇよ」
咄嗟に否定しようとして姫乃の言葉がフラッシュバックする。姫乃のあの言葉が、あの顔が、あの想いが……あの時のことを思い出すと俺の心にさらに深く刺さり、更に抉られるような感覚さえある。
「今の間は、と聞きたいところだが、その深刻そうな顔を見るとかなり酷い状況にでも立たされてるのか?」
「そう、なのかもな……。俺が弱いからなのかもしれんな」
「まぁ、確かに蓮斗の記憶能力は貧弱だな」
「それは触れないでくれ」
「あ……ごめん」
俺は海斗がこんなにも申し訳なさそうに謝るのを見たのは久しぶりだ。昔一度だけあった……気がするが、思い出せない。やはり俺の記憶能力は終わってるみたいだ。
「そろそろホームルーム始まるぞ?」
「あ、あぁ。そうだな」
なんとも歯切れの悪い返事だ。なんでそんなにあんな事で気にするのか分からないが、もしかして俺の言い方がキツかったのかもしれない。後で一応謝った方が良いかもしれない。
「ふぅ……ハゲそう」
ストレスの蓄積、一度に色んなことが起きてキャパオーバー寸前、自分に対する苛立ち。
やることが多い分には良いが、多すぎるとやる気が無くなる。はっきり言って考える気力すら湧かない。
若くしてハゲるのは嫌だが、こればかりはもうどうしようもない。
こういう時は優先順位を決めてコツコツやる方が良い。
ひとまずテストは置いておこう。あれは今更足掻いてどうにかなる品物じゃない。考えるだけ時間の無駄だ。まぁ、そもそもストレスの原因もキャパオーバー寸前なのも自分への苛立ちも全てあの一件が深く関わってるんだ。
「はぁ……言えるわけねぇだろ」
俺は瑠魅のことが好きだ。恋は盲目と言うからかもしれないが、瑠魅の容姿も性格も能力も全てが俺の理想に最も近い。大袈裟に言うならば理想通り、というやつだ。もちろん、瑠魅が俺のことをそういう対象として見れない、と言うのであればこの恋は儚く散ることになるが……。
ここで問題なのは姫乃の存在だ。俺的に姫乃は良き友人、親友と言っても過言では無い。だが、結局は友達だ。それ以上でも以下でもない。姫乃は俺の幼なじみで唯一の女の親友。
もし、俺のたった一言でこの関係が崩れるかもしれない……と考えるとどうしても言葉にならなかった。あの場で、あの時ハッキリと言うと決めたのに、俺は逃げた。あの笑顔をもう二度と見れないかもしれない、姫乃と疎遠になるかもしれない……そう思うと口は開かなかった。喉にすら言葉は届かず、脳内で反復して消えていった。
俺には瑠魅に俺の気持ちを伝える覚悟も、姫乃を突き放す覚悟もない。
「どうすれば良い……どうすれば解決できるんだ」
姫乃との関係を壊さずに、姫乃自ら俺と付き合うことを望まなくなる状況をつくる……。
無理ゲーにも程がある。もちろん、俺の本音を言ってこのままの関係でいられるかもしれない。でも、それは姫乃に全てがかかっている。つまり、姫乃依存の計画で俺の理想で……ただの押し付けだ。これじゃダメなんだ。これじゃ……俺らがちゃんと収まらないと……。俺視点からでも確実性が確保できる案……。
そんな事を考えていると、ついに魔が差したのかは分からないが、俺の脳裏に最悪とも言える案が浮かぶ。
………そうか。姫乃が俺以外の誰かと付き合えば良いんだ。
~~~~~~~~~~~~~~
ギリギリでしたが何とか間に合いました。
今回47話を執筆中に気が付いたのですが、主人公の名前の漢字が蓮斗になっていました。実際は蓮翔です。
読む分には気にならないと思いますが、気になる誤字などがあれば報告等して頂けると幸いです。
拙い部分はありますが、これからもよろしくお願いします!
0
あなたにおすすめの小説
【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
優しい雨が降る夜は
葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン
無自覚にモテる地味子に
余裕もなく翻弄されるイケメン
二人の恋は一筋縄ではいかなくて……
雨降る夜に心に届いた
優しい恋の物語
⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡
風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格
雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン
たとえ夜が姿を変えても ―過保護な兄の親友は、私を逃がさない―
佐竹りふれ
恋愛
重なる吐息、耳元を掠める熱、そして——兄の親友の、隠しきれない独占欲。
19歳のジャスミンにとって、過保護な兄の親友・セバスチャンは、自分を子供扱いする「第二の兄」のような存在だった。
しかし、初めてのパーティーの夜、その関係は一変する。
突然降ってきた、深く、すべてを奪うような口づけ。
「焦らず、お前のペースで進もう」
そう余裕たっぷりに微笑んだセバスチャン。
けれど、彼の言う「ゆっくり」は、翌朝には早くも崩れ始めていた。
学内の視線、兄の沈黙、そして二人きりのアパート――。
外堀が埋まっていくスピードに戸惑いながらも、ジャスミンは彼が隠し持つ「男」の顔に、抗えない好奇心を抱き始める。
「……どうする? 俺と一緒に、いけないことするか?」
余裕の仮面を被るセバスチャンに、あどけない顔で、けれど大胆に踏み込んでいくジャスミン。
理性を繋ぎ止めようとする彼を、翻弄し、追い詰めていくのは彼女の方で……。
「ゆっくり」なんて、ただの建前。
一度火がついた熱は、誰にも止められない。
兄の親友という境界線を軽々と飛び越え、加速しすぎる二人の溺愛ラブストーリー。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
前世で私を嫌っていた番の彼が何故か迫って来ます!
ハルン
恋愛
私には前世の記憶がある。
前世では犬の獣人だった私。
私の番は幼馴染の人間だった。自身の番が愛おしくて仕方なかった。しかし、人間の彼には獣人の番への感情が理解出来ず嫌われていた。それでも諦めずに彼に好きだと告げる日々。
そんな時、とある出来事で命を落とした私。
彼に会えなくなるのは悲しいがこれでもう彼に迷惑をかけなくて済む…。そう思いながら私の人生は幕を閉じた……筈だった。
これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー
小田恒子
恋愛
この度、幼馴染とお見合いを経て政略結婚する事になりました。
でも、その彼の左手薬指には、指輪が輝いてます。
もしかして、これは本当に形だけの結婚でしょうか……?
表紙はぱくたそ様のフリー素材、フォントは簡単表紙メーカー様のものを使用しております。
全年齢作品です。
ベリーズカフェ公開日 2022/09/21
アルファポリス公開日 2025/06/19
作品の無断転載はご遠慮ください。
白椿の咲く日~ひそかな恋、遠い日の思いは
紫さゆり
恋愛
結婚を控えた真由子は、久しぶりに異母姉の稚子(わかこ)と会う。
真由子の母の雪江は、大学教授であり著名な歌人の水上実之(みなかみさねゆき)の後添いとして水上家に嫁いだ。
婚約者の諒人(りょうと)のことなど、真由子は稚子と色々語り合ううち、庭の白椿の木は真由子がなついていた異母兄、靖之が植えたものだと知る。
白椿の木をめぐっての、ひそかな大人の恋物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる