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79話 猶予
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「今日も遅いのか?」
現在午後六時。部活動をしていない瑠魅がこんな時間まで家に帰らないなんて……最近は確かに七時とか八時に帰ってくる時もあるが……やはりそうは言っても心配なものは心配だ。
何をしているのかを聞いても濁されてしまう。あまりしつこく聞くことも出来ないから結局手詰まりだな。
「取り敢えず夕飯でも作るか」
去年も一人での生活を長い間送っていたし、自炊ぐらいは出来る。面倒だから惣菜に頼ることもあるが、今日は久々に作りたい気分だ。
「うぅんと……そうだ、今日は買い出しの日だったな」
冷蔵庫の中のもので作れなくは無いが、それでも買い出しはいつかしないといけないし、やる気のある今がちょうど良い。
「さて行こうか──」
「ただいま」
財布を持ってリビングのドアを開けると、そこにちょうど帰ってきた瑠魅と出くわした。
片手には食材などが入っているエコバッグが握られている。
「どこか行くの?」
「え、あ、いや……買い出しと思ったんだけどね。まさか帰ってきてくれるとは思わなかったよ。荷物は俺が片付けるておくよ」
「ありがと」
やっぱり避けられるように感じるな。気のせいと言われればそうかもしれないけど、どこか俺を遠ざけようしてる気がする。
思い当たる節が無いわけでは無いけど、どれも理由としては弱いと思う。
「いくら考えても無駄か。さて、早く片付けないとな」
~~~~
「…………」
「…………」
夕食を食べ終え、リビングにはテレビの音のみが響き渡っている。
同じソファに座り同じテレビを見ているのに、そこに会話は無い。最近はいつもこんな感じで、気まずさは感じないが、寂しさを感じずには居られない。
でも、それも今日までだ。
早まる鼓動を宥めるように深呼吸をして、隣でテレビに見入る瑠魅を見た。
「瑠魅、ちょっと良いか?」
「……っ!えっと、ごめん。今から宿題しないとだから……じゃあ──」
「なんで避けるんだ?」
オレは立ち上がって、この場から去ろうとする瑠魅の手を反射的に掴んでいた。自分でも一瞬何が起こったのか理解出来なかった。
「避けてないよ。気のせいだよ」
「………言ってくれないと分からないよ。面倒だと思うけど、言ってくれよ……じゃないと分かんないだろ」
情に訴えるようでなんだか心が痛む。ホントはこんな空気にしたくない。
でも、俺にはこんな方法しか出来ない。自分を下げることしか出来ない。
「………本当になんでもないよ?私はただすべき事をしてるだけ」
すべき事……。俺を避けることが瑠魅のすべき事なのか?なんでそんな事………まさか!
「まだ……感じてるのか、俺を巻き込んだ罪悪感を」
「…………」
「何度も言ったけど、俺は気にしてない。なんなら、神太さんの件で俺が申し訳ないくらいだ」
「…………」
どうしたら伝わるんだよ。俺はこんな風になることを望んでないのに……どうすれば瑠魅は納得してくれるんだ。
一緒にいれれば良いのに……なんでそれが伝わらないんだよ……。
「………手、離してくれる?宿題しないと」
「っ……」
なんで……どうして……?何がそこまで俺を拒絶させているんだ?ただ分かり合いたいと思うことすらも手遅れなのか?
「話してくれよ……俺はまだ何もわかんないよ」
「…………」
瑠魅は諦めたかのようにソファに座り込んだ。俺は驚きながらもそっと手を離す。
「蓮翔は那乃ちゃんとなんで付き合わないの?」
「……えっ?」
「秘密まで話して、相手からも好かれているのに……なんで那乃ちゃんと付き合わないの?」
「それは……」
瑠魅の事が好きだから。那乃に向けるのは友愛であって恋愛じゃない……。
「私のせいだよね……あなたの寿命を奪ったから。あなたの寿命がたったの一年だから……!」
「………」
瑠魅は泣いていた。なんで、泣いているのか俺には分からない。
こんな時、俺はなんて声をかければ良い?気にしてないと慰めるべきだろうか?それとも、優しい言葉で落ち着かせるべきだろうか?
「私は蓮翔から幸せを奪ってしまったじゃないかって……私のエゴのせいであなたの幸せを制限してしまってるじゃないかって……だから、もうなるべく関わりたくないの。これ以上私に縛られないで……」
「………」
そっか、那乃もきっとこんな気持ちだったんだろうな。一人で抱え込んで、自分だけが犠牲になれば良いって……。
こんなに辛いんだな。避けられることが……好意を否定されることが……。
「……俺は後悔してないよ。人生を何度繰り返したって、何度でも瑠魅に会いたいんだ。愚かって言われたって俺は何度だって同じ選択をする。何度だって瑠魅に関わるよ」
「……………」
こんな言葉、心には響かないかもしれない。俺がそうだったように、こんな言葉、慰めにしか聞こえない。それでも、諦めちゃダメなんだ。
「瑠魅……俺に時間をくれないか?」
「…………」
「俺が瑠魅と出逢えたことがどれだけ幸せだったか、それを証明してみせるから」
「…………」
「一週間だけで良い。瑠魅の時間を俺にくれ。もし、一週間後、俺がどれだけ瑠魅と居るのが幸せか、それが伝わらなければその時はもう瑠魅に従う」
もうこれしかない。俺でも分かるほど焦っている。でも、瑠魅とこのまま終わるぐらいなら……行動しないと。
「……うん、わかった」
「ありがとう!絶対に……後悔なんてさせないから」
現在午後六時。部活動をしていない瑠魅がこんな時間まで家に帰らないなんて……最近は確かに七時とか八時に帰ってくる時もあるが……やはりそうは言っても心配なものは心配だ。
何をしているのかを聞いても濁されてしまう。あまりしつこく聞くことも出来ないから結局手詰まりだな。
「取り敢えず夕飯でも作るか」
去年も一人での生活を長い間送っていたし、自炊ぐらいは出来る。面倒だから惣菜に頼ることもあるが、今日は久々に作りたい気分だ。
「うぅんと……そうだ、今日は買い出しの日だったな」
冷蔵庫の中のもので作れなくは無いが、それでも買い出しはいつかしないといけないし、やる気のある今がちょうど良い。
「さて行こうか──」
「ただいま」
財布を持ってリビングのドアを開けると、そこにちょうど帰ってきた瑠魅と出くわした。
片手には食材などが入っているエコバッグが握られている。
「どこか行くの?」
「え、あ、いや……買い出しと思ったんだけどね。まさか帰ってきてくれるとは思わなかったよ。荷物は俺が片付けるておくよ」
「ありがと」
やっぱり避けられるように感じるな。気のせいと言われればそうかもしれないけど、どこか俺を遠ざけようしてる気がする。
思い当たる節が無いわけでは無いけど、どれも理由としては弱いと思う。
「いくら考えても無駄か。さて、早く片付けないとな」
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「…………」
「…………」
夕食を食べ終え、リビングにはテレビの音のみが響き渡っている。
同じソファに座り同じテレビを見ているのに、そこに会話は無い。最近はいつもこんな感じで、気まずさは感じないが、寂しさを感じずには居られない。
でも、それも今日までだ。
早まる鼓動を宥めるように深呼吸をして、隣でテレビに見入る瑠魅を見た。
「瑠魅、ちょっと良いか?」
「……っ!えっと、ごめん。今から宿題しないとだから……じゃあ──」
「なんで避けるんだ?」
オレは立ち上がって、この場から去ろうとする瑠魅の手を反射的に掴んでいた。自分でも一瞬何が起こったのか理解出来なかった。
「避けてないよ。気のせいだよ」
「………言ってくれないと分からないよ。面倒だと思うけど、言ってくれよ……じゃないと分かんないだろ」
情に訴えるようでなんだか心が痛む。ホントはこんな空気にしたくない。
でも、俺にはこんな方法しか出来ない。自分を下げることしか出来ない。
「………本当になんでもないよ?私はただすべき事をしてるだけ」
すべき事……。俺を避けることが瑠魅のすべき事なのか?なんでそんな事………まさか!
「まだ……感じてるのか、俺を巻き込んだ罪悪感を」
「…………」
「何度も言ったけど、俺は気にしてない。なんなら、神太さんの件で俺が申し訳ないくらいだ」
「…………」
どうしたら伝わるんだよ。俺はこんな風になることを望んでないのに……どうすれば瑠魅は納得してくれるんだ。
一緒にいれれば良いのに……なんでそれが伝わらないんだよ……。
「………手、離してくれる?宿題しないと」
「っ……」
なんで……どうして……?何がそこまで俺を拒絶させているんだ?ただ分かり合いたいと思うことすらも手遅れなのか?
「話してくれよ……俺はまだ何もわかんないよ」
「…………」
瑠魅は諦めたかのようにソファに座り込んだ。俺は驚きながらもそっと手を離す。
「蓮翔は那乃ちゃんとなんで付き合わないの?」
「……えっ?」
「秘密まで話して、相手からも好かれているのに……なんで那乃ちゃんと付き合わないの?」
「それは……」
瑠魅の事が好きだから。那乃に向けるのは友愛であって恋愛じゃない……。
「私のせいだよね……あなたの寿命を奪ったから。あなたの寿命がたったの一年だから……!」
「………」
瑠魅は泣いていた。なんで、泣いているのか俺には分からない。
こんな時、俺はなんて声をかければ良い?気にしてないと慰めるべきだろうか?それとも、優しい言葉で落ち着かせるべきだろうか?
「私は蓮翔から幸せを奪ってしまったじゃないかって……私のエゴのせいであなたの幸せを制限してしまってるじゃないかって……だから、もうなるべく関わりたくないの。これ以上私に縛られないで……」
「………」
そっか、那乃もきっとこんな気持ちだったんだろうな。一人で抱え込んで、自分だけが犠牲になれば良いって……。
こんなに辛いんだな。避けられることが……好意を否定されることが……。
「……俺は後悔してないよ。人生を何度繰り返したって、何度でも瑠魅に会いたいんだ。愚かって言われたって俺は何度だって同じ選択をする。何度だって瑠魅に関わるよ」
「……………」
こんな言葉、心には響かないかもしれない。俺がそうだったように、こんな言葉、慰めにしか聞こえない。それでも、諦めちゃダメなんだ。
「瑠魅……俺に時間をくれないか?」
「…………」
「俺が瑠魅と出逢えたことがどれだけ幸せだったか、それを証明してみせるから」
「…………」
「一週間だけで良い。瑠魅の時間を俺にくれ。もし、一週間後、俺がどれだけ瑠魅と居るのが幸せか、それが伝わらなければその時はもう瑠魅に従う」
もうこれしかない。俺でも分かるほど焦っている。でも、瑠魅とこのまま終わるぐらいなら……行動しないと。
「……うん、わかった」
「ありがとう!絶対に……後悔なんてさせないから」
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