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2章 奇妙な事件

閑話 異世界のクリスマス?

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「……だいぶ冷えてきたな」

  馬車の窓から外へ顔を出すキョーガ。

  これはまだキョーガがまだ魔王を討伐する前……この世界に来てから六年目のことだった。

  現在のキョーガには仲間が一人だけ居る。以前は五人ほど居たが、キョーガの強さを目の当たりにして自信を無くす者が続出、それで現在のパーティとなる。

「寒くないのか?俺はめちゃくちゃ寒いからよ、出来れば窓掛けしてくれないか?」

「あぁ、すまない。毎年この時期になるとな」

  キョーガは最後にもう一度その冬の景色を見つめると、窓掛けをして窓を閉じた。

「くりすます、だっけか?お前の国の人たちは面白いこと考えるよな」

「そうだな。まぁ、今になっては懐かしい記憶だ」

「じゃあよ、今年はせっかくだしやってみようぜ、その『くりすます』ってやつをよ」

  目を輝かせてキョーガの目の前にいる男は言った。

「お前がやりたいだけだろ?」

  ジト目でキョーガは前にいる男を見つめるが、その表情は柔らかいものだった。

「まぁ、やってみるか、クリスマスをよ」

「ハハッ、そう来ねぇとな、キョーガ」

「そうだな、ハル」

  二人は拳を合わせてニコリと笑いあった。

~~~~

「で、『くりすます』ってどうやんだ?」

  馬車に揺られ続けてやった着いた街、ハレンダル。王都程の活気は無いが充分明るい街だ。

「それは追々説明してやるよ。とりあえず一時間後、あの宿に集合な」

  キョーガの指さす先には立派は木造りの宿がある。外見だけ見てもかなり高そうな宿だ。

「それは分かったが……なんで一時間後?てか、集合ってことは別々に行動するってことだよな?」

「あぁ。その間に俺は色々と準備をする。ハルはこの街で気に入った物を一つ買ってきてくれ」

「ん?それだけか?」

「あぁ。あとはこっちに任せろ。宿も俺がとっておく」

「それなら一時間も要らなくないか?」

「気に入る物が簡単に見つかるとは限らないだろ?それに、俺の方はやることが多いんだ」

  キョーガは既に魔法によって街全体の地形や店の配置を把握していた。

  六年ぶりのクリスマスという事で、キョーガらしくもなく浮き足立っており、行動は早かった。

  その様子を見てハル……もといベルハルトは優しく微笑んだあと、キョーガに背を向けた。

「まぁ、細かいことは後で説明してくれ。今はとりあえず調達だ」

  ハルはそれだけを言ってキョーガとは反対の方向へと向かって行った。

「ハル………」

  キョーガはなぜか悲しそうな顔を浮かべる。だが、その後キョーガもハルに背を向けて歩み始めた。

「そっちには土産みたいなモンが買える店はねぇよ」

~~~~

  ほとんど一時間が経った。キョーガは既に指定していた宿に居た。その宿には受付と同じ空間に食堂があり、そこで飲み食いができるようになっている。

「そろそろかな……」

  キョーガはボォっと扉のところを見つめた。

  そこから更に十分程度経ったあと、ついにベルハルトは来た。

「すまん、遅かったか?」

「少しな。まぁ、俺が早すぎたせいかもな」

「よいしょっと。さて、じゃあ早速『くりすます』とやらを始めよう」

「そうだな」

   こうして何も置いてないテーブルを挟んで二人のクリスマスは始まる。

「で、どんなもんなんだ、くりすますってよ?」

「そうだな……俺目線からすれば、豪華なご飯が食べられて、みんなとプレゼントを交換出来て……夜更かしができる特別な日だな」

「ふむ……豪華な飯、プレゼント、夜更かし……。このうちの二つはいつでも出来るだろ?」

  ハルは割と真面目な顔つきでそんな事を口にした。

な。昔はそれが特別で楽しかった。年に一度ってのも特別感があったな」

「なるほどな。で、豪華な飯ってのはどこだ?」

「ここだ」

  キョーガが指をパチンと鳴らすと、先程まで何も無かったテーブルの上には一瞬で豪華な食べ物がズラリと並ぶ。

  鳥の丸焼き、ピザ、ローストビーフに色とりどりの野菜が入ったサラダ、飲み物には酒が用意されていた。そして、その食べ物の中央にはいちごが沢山乗ったショートケーキがあった。

「おぉ……なんか見たこともないのもあるが、キョーガが出したもんだし、安全だよな?」

「あぁ。ハルの舌に合うかは分からないが、俺が好きなクリスマス飯だな」

  キョーガはあらかじめ用意していた二つのグラスに酒を注ぐとその一つをハルの方へ持っていく。

「じゃ、乾杯」

  キョーガは酒の入ったグラスをハルの方へ突き出す。

「乾杯……?」

  乾杯をし終えたキョーガは早速グラスの中の酒を飲む。それに習ってハルもグラスに口をつけた。

「美味いな」

「だね。不思議だ」

  その後二人は酒を煽りながらテーブルにある食べ物を次々に食べていく。

「これ、結構美味いな」

「だろ?一度しか食ったことは無かったが、鳥の丸焼きの美味さとその見た目のインパクトで今でも鮮明に覚えてるんだ」

「なるほどな。確かにこれは普段は食べないな。まさしくって感じだ」

  雑談をしながら食事を続けていくと、いつの間にか二人の目の前にはケーキのみが残っていた。

「これ……初めて見るんだが……ほんとに美味いのか?匂いもしないし……」

「デザートだ。ま、これを食う前にちょっとやりたいことがある」

「やりたいこと?」

  キョーガが再び指を鳴らすと手のひらに小さな箱が現れた。

「それは?」

「さっき言ったろ?プレゼントだよ、ハルへのな」

「本気か?じゃあ、あの俺が買ったのをキョーガにやるのか?」

「そゆこと」

  その後に、「もっと大勢居た方が楽しいが」、と付け加えてキョーガはハルの方へそのプレゼントを突き出す。

「受け取れ。日々の感謝の印だ」

「………なんか照れくさいな」

  ソッとその箱を受け取ると、ハルは箱を開けた。箱を開けると、そこには中央に小さな赤い宝石があしらわれたイヤリングが入っていた。

「これは?」

「ん?ただのイヤリングだ。魔道具でもなんでもない」

「珍しいな。キョーガが効率や性能以外で物を選ぶなんて」

「安かったからな」

「……………めっちゃ冷めること言うな」

  そんな事を言いながらもハルは耳をそのイヤリングを付けた。

「どうだ?似合うだろ?」

「あぁ。お前の女みてぇな顔には良く似合う」

「やめてくれ……気にしてんだよ」

「ほんとかぁ?実は男が沢山寄ってきて嬉しいんじゃねぇの?」

「嬉しくねぇわ!何が、『君かわいいね』だよ!こっちはバリバリの男だわ!」

「アハハハ!可哀想にな」

  その後少しだけ言い争いは続いたものの、すぐに収まり次はハルがキョーガにプレゼントを渡す番になった。

「ほら、やるよ」

  少し恥ずかしそうにしながらもプレゼントをキョーガの方へ突き出す。

  キョーガは対照的にその箱を普通に取り上げて、サッと箱を開く。

  箱の中には古びた硬貨コインが入っていた。

「………これなんだ?」

「いやぁ……まさか渡すものだとは思わなくてね。護身用に買ったんだ」

「魔道具か?」

「あぁ。そのコインを割ると一度だけ頭に思い浮かべた場所に一瞬で移動できる品物だ」

「高かったんじゃないのか?」

「いや、相手がこのコインの価値を知らないみたいでね。案外安かったよ」

「そうか?なら良いが」

「ん?まぁ、そんなことよりこれ食べようよ。すごい気になる」

「あぁ、そうだな」

  こうしてプレゼント交換を終えた二人は目の前にあるショートケーキへと手を伸ばした。


~~~~~~~~~~~~~~

  いつもの二倍ぐらいの分量を描きました。二分割とかも出来ないので結構長くなった感じです。楽しんで読んでいただけていたら作者としては嬉しい限りです。

  明日は予定通りに12話を投稿できそうです。そちらも楽しみにしておいて下さい。

  拙い部分はありますが、これからもこの作品をよろしくお願いします!
    
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