クズ勇者が伝説の英雄になるまで

パチ朗斗

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1章 クズ勇者の目標!?

クズ勇者、鬱憤を晴らす 2

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「す、スゲェ」

  ローブマンと亜魔人が戦闘を開始し、まだ五分も経っていない。しかし、この時点でローブマンの力量を測るには充分だった。

  それほどまでにローブマンの実力を圧倒的だった。

「おらおらぁ!再生すんだろ!もっと俺を楽しませろやぁ!」

 僕が必死に戦っていたのがバカみたいじゃないか。こんなのを見せられちゃあさ。

  誰が見ても分かった。あのローブマンはまだ実力を出していないと。

「あえて……あえて再生させているのか?なんで……なんでッ!」

 あれだけの力を持ちながら、なぜ殺さないんだ。みんなアイツを倒すのに……近付くことすら出来なかったアイツをやっと倒せる兆しが出てきたんだ。それなのに、なんで……。

「俺らに……自分の力を誇示しているのだろうな」

「ガントさん……なぜそう思ったのですか?」

「俺はあいつがFランクだからって否定した。だから、あいつは自分の力で証明しようとしてるんだ」

  実際のところ、そんな考えは一切なかった。ローブマンはただ自分の鬱憤を晴らすためだけに戦っていたのだ。

 そして、戦闘が始まりついに十分経とうと言う時、急にローブマンの動きが止まった。

「いくら強くてもFランクか。もう戦える余力が……体力が無くなってきてるんだ」

「えっ?じゃあ、どうすれば……!」

 唯一の希望だったのに……。僕もガントさんも……周りの冒険者だってかなりの傷を負っている。

  周囲が焦りや恐怖を顕わにする中、ローブマンはこの場に似つかわしくないほどの物凄い幸福感に包まれていた。

「いやぁ……お前、良いな。是非ともサンドバッグに欲しいな」

『!!!!!!!』

  この亜魔人は今だかつて感じたことの無い感情に襲われた。その感情とは……そう、恐怖だ。

  今まで恐怖を与える側だった亜魔人は人生で初めて恐怖を知った。

  亜魔人から見たローブマンはもう、悪魔以外の何者でもなかった。

「なっ!逃がすかよ!」

  亜魔人は残る全ての力を出して森の中へと逃げた。出来るだけ遠くに行くように……。

  しかし、既に目の前に居たのだ、悪魔ローブマンが。

「はっ。亜魔人と言えどこの程度か。テメェみたいな腑抜けは用無しだな……死ね」

  再生が追いつかぬ程の速さで亜魔人の体を切り刻んだ。

  今の亜魔人ならば、たとえカインの弱々しい一太刀だったとしても、倒されていたことであろう。。

 なぜなら、亜魔人は心から願っていた、切実に懇願していたのだ………この悪魔から解放してくれ、と。

  こうして、呆気なく街の、そして冒険者たちの危機は去った。

  ローブマンは懐に何かを隠すように入れると、すぐさまその場を離れるように去ろうとしたその時、ガントが口を開いた。

「先程はすまなかった」

  深々と頭を下げた。先輩という意地よりももっと大切なものだと感じたからだった。

「ムカつくな。テメェ、冒険者辞めろや」

「…………」

「肩書きだけで他人を見るような薄情な野郎がよ」

「……………」

 何も守れない、肩書きと口しか無い冒険者クズめ。

 こんなクズを見てるとさっき晴れたはずの鬱憤がぶり返さられる。

 はぁ……クソが。こんな小物ごときにこの俺がなめられたままなら、いっそ死んだ方がマシだな。

 こういう野郎には現実ってもんをしっかり教えてやらなきゃな。

 俺の気を逆撫でした事を悔い改めやがれ、クズどもが。

  リョーマは一歩、ガントの方へと足を踏み出す。

  ローブマンは顔を隠すためのフードによって出来た影の中から鋭い眼光がガントたちを睨む。

「……テメェは一生経っても実力者にゃなれん」

「………」

「本質を見抜く力が必要なんだよ。テメェみてぇのは早死にするだけの量産型のカスだ。大人しく街の中にでも引っ込んでろ」

「………ッ」

  リョーマは切り捨てるようにそう告げたのだ。その言葉は暗に、冒険者に向いてない事を表すものだった。

  そして、リョーマは次にガントから視線を外してカインの方を見た。

「そして、お前だ。一番の問題はお前だよ、カイン」

「ぼ、僕?!」

  カインは今回、出来ることは全てやったと、全て出し切って亜魔人と戦ったと自負していた。それは他の人から見ても明確だった。

「大切な者を守りたいと言いながら、蔑ろにしたのは誰だ?………テメェ自身だよな、嘘吐きがよ」

  その言葉でカインの脳裏にはシルが、倒れていく冒険者が浮かび上がった。

  そして、周りを見渡したとき、カインは絶句した。

  周囲に倒れていたはずのシルや冒険者が居なかったのだ。

「みんなをどうした!」

  ローブマンの胸ぐらを掴んで威圧的な眼で睨みつけた。しかし、身長の差があり、そこまで効果はないように見える。

「チッ。なんだ、その態度?ぶっ殺すぞ?」

「早く言え!みんなをッ!シルをッ!どこにやった!」

  カインの鋭い視線がローブマンのに刺さり続ける。

  ローブマンは一度ため息をついてから、口を開く。

「………総勢百三十四人。その内の四十人が死にかけてた。もし、お前がもっと早く状況を理解していたら負傷者はもっと少なかったはずだ。この場に俺が来てなければ、死人すら出ていた」

「……ッ!お前に何がわかる……僕は今生きてる人を守るために身を挺して!」

「……そうだ。カインは良くやった。責めるなら俺を責めろ」

  カインの背後からガントが顔を出した。怪我のせいでまだ辛そうにしているが、先程よりは幾分もマシに見える。

  だが、そんなガントをリョーマは一瞥して再びカインの方へ視線を向けた。

「薄情者の上貧弱だな。そんな言い訳をしなきゃシルを守れなかった理由を正当化出来ないなんて」

「ッ……!!!シ、シルは大丈夫なのかッ!?生きてるのか!?」

  そんなカインの様子を見たリョーマはカインの言葉に何を返す訳でも無く、横を通った。

「…………お前は力はあるが、強くない。結局、お前らは自分の身が一番大切だったんだよ。冒険者って……クソゴミカス共の集まりだな」

   そのリョーマの言葉は特定の誰かに向けたものでも、誰かに言おうとしたものでもなかった。だが、その言葉はその場に居たもの全てに聞こえていた。
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