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異世界転生
バトルロイヤル
しおりを挟むフェンリルがリングに上がるのと同時に開始の合図が掛かる。
すると、剣士1、2がフェンリルに向かっていく。しかしただ馬鹿正直に突っ込む訳じゃない。剣士1が剣士2より前にいる。
俺は剣士1、2ではなく他の奴の行動も見て思わず関心してしまった。寄せ集めのチームでちゃんと機能しているのだ。この場合、すごいのは個人ではなく指揮者だ。今回の指揮者は剣士1ではない。弓3と魔法使い3だ。あの2人が常に足と首を動かし周りを見ている。
剣士1がフェンリルに両手剣を振りかさず。
フェンリルみたいな素早いモンスターにとってそれは回避してから、攻撃するまでの流れを作るのに、非常に都合がいい相手だ。だから本来なら剣1は今の攻撃をフェンリルに避けられ、フェンリルから1撃貰って即死する筈なのだが……。ここは流石チームプレイだ。
剣士2が続く様な攻撃でフェンリルに攻撃させないよう防いでる。
剣士2は剣士1とは違って片手剣で盾とその動きの素早さがチャームポイントだ。あの2人は指揮者の下で見事にその連携プレイをこなしている。
剣1が大きな1発をいれる。フェンリルがそれを避ける。そこに剣士2が流れるように攻撃する。剣士2は攻撃をしながらも的確に盾で確実にフェンリルの攻撃を防ぐ。そしてその間に剣士1が次なる攻撃のモーションに入る。それを魔法使い3が剣士2に、フェンリルをそこへ誘導するよう指示する。そしてその剣士2の行動のサポートに弓1、魔法使い1がそれぞれ、威嚇攻撃をしている。決してフェンリル当てる事のない誘導するための攻撃。
そしてそれを続けているとフェンリルの回避行動が追い付かなくなる。その隙を弓3と魔法使い3は見逃さない。
弓2と魔法使い2に攻撃命令を出す。凄く良い連係プレイだ。しかし――
「……剣士3の存在意義がねぇなぁ」
剣士3だけは特に何かをしている訳ではない。ただ、剣士1、剣士2のサポートをしているが、剣士1と剣士2は素晴らしいコンビで助けを必要としてない。
「これなら3トップで動いた方がよかったんじゃねぇか?」
ただ、弓3と魔法使い3は見る限り馬鹿ではない。あれも何か意味があってあそこに配置してる。俺にはそれが詠めない。
「しかし、本当に指揮者がいいな」
指揮者のお陰でフェンリルと互角に渡りあえる。
“今は”。
フェンリルはまだ能力を使ってない。それはこの戦いに余裕があるからだ。しかしこっちはギリギリの戦い。特に全線2人は。あの2人が動けなくなったら終わりだ。ん? 待てよ? そいうことか。剣士3の配置意味。
不意にそれが脳を横切ったのであった。それはもう確実な事だった。
交代要員だ。おそらく剣士1のだ。あれだけ、大きな剣をずっと振っていて疲れない訳がない。
剣士3は剣士1が疲れた時に一瞬で役割が交代出来るようにあそこにいるんだ。
「……しかし、この戦いの構造が分かると暇だな。まあ、お客さんと実況者は忙しそうだけど」
実況者はずっと、この1連の動きを細かく場内に伝えてる。加えて観客者は、ずっと応援をしている。ずっとギリギリな戦いをしているから。
「そうだな。あと5分だけ待とう。それで、これ以上戦いを有利に運べなかったら、俺が動こう」
本当はこいつら全員が脱落してからスパッと狩るつもりだったのだが……退屈というのは非常に苦痛だ。分からない物を、分かる様に見るのは楽しいけど、分かる物を見ていてもつまらない。
そして――5分という時間はあっという間だった。少しずつ剣士達の体力が限界に近づいてるのが分かる。
「ようやく俺の出番だな」
俺は気配を消し弓3の後ろまで移動する。弓3は見事に気づかない。戦いの指示で手一杯で自分の事まで気を配る余裕だどないらしい。
「邪魔だ。消えろ」
「え?」
弓3の耳元でそう言った。弓3はそれがどういう意味が理解が出来なかったらし、キョトンとした声を口から漏らした。
弓3の首を掴み、俺はそのまま場外に投げ捨てる様な勢いで投げる。
「な、何をする!?」
飛ばされた弓3が俺の投げられた直後、俺の腕を掴もうと手を伸ばした。俺はそれに応える様に手を伸ばした。そして――
「な!!」
弓3からその弓を奪い取ったのであった。
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