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新たなる道
【迷宮】敵
しおりを挟む俺の片腕を飛ばした罪は重い。
「アローラは下がっていてくれ」
そう言ったはいいが、これ以上どうやって下がればいいんだ?
自分でも思ってしまった。俺たちが今いる所はボス部屋の目の前。正確に言えば、扉を開けただけでまだ中にすら入っていない。
「出来る限り戦闘には参加しないでくれ。いや、いっそもう帰らしてもいいかな」
「足でまといだから消えろ」そうは言えなかった。
俺が言うのもなんだか、召喚で貰えるチート能力には他のとは別格な性能を持ってる物もある。ぱっと固有名詞は出てこないが、例えで言うならリスクやデメリットがない能力。ただ魔力だけを消費して使用出来る能力。俺の持っている能力の中でデメリットがないのは、普通の魔法属性と身体能力強化だけだ。あとの、能力は何かしらデメリットがついてくる。
「わ、私はここにい―――」
ます。きっとそう言いたかったのだろう。俺は問答無用にアローラをテレポートさせた。
「すまんが、やっぱり無理だ。片腕がない状態で……」
アローラは守りきれない。そう続けたかったが、勝手に口が閉じてしまった。まるで、言いたくないかの様に。
出来れば左腕も再生させたい。だけど無理だ。この氷の自動補助にもルールがある。それは一度、代わりを作れば1ヶ月は使えない事だ。つまり、俺は傷を凍らして止血出来たとしても、そこから代わりの腕を作る事は出来ないのだ。
「さて、僕たちをつけてた理由を教えてもらおうか」
「そうニャ♪ さっさと教えれば楽に終わらせてやるニャ♪」
はぁ~ふぅ~。
心の中で深呼吸をする。これをする事でいつもの自分に戻すのだ。人間関係を否定し、独りでいた自分。自分だけのために生きてた自分に。甘えもゆとりもクソもない。
そう……あいつらは俺の命を脅かしている。なら―――
「早く答えないと、サーヤが本当に君を殺しちゃうかもしれないよ」
「そうニャ♪ ワタシは手加減とか苦手ニャ」
―――殺していいよなぁ……?
狂気の笑顔をしている事が自分でも分かった。
サーヤは白いの尻尾を逆立て、爪をむき出しし、戦闘体制を取る。
「葵さん、もしあれでしてら私がもう1本、腕か足を切断するというのは……?」
じらす様に言うリーフに葵ははっきりと言う。
「ダメだ。あれ以上やると死ぬ可能性が出てくるし、生活が不自由になる」
なぁ? なんだそりゃぁ? 腕が1本無くても普通の日常が送れると思ってんのかぁ? このクソバカ召喚者が。
「分かりました」
ていうか、お前かよ……俺の腕切ったアホは。……良い度胸だなぁ。アホエルフが。
「あいつ殺る気満々ニャ♪ 凄く殺気立ってるニャ♪ だからワタシが殺るニャ」
ニャ、ニャ、うるせぇなぁ。クソ猫が。耳、ブッチ切るぞ。
「どうする葵君?」
朱里が葵に判断を煽る。
「……そうだな。向こうが殺る気なら仕方ない。サーヤ良いぞ」
「ヤッタッニャー!!」
「ただし生け捕りだ。殺すなよ」
葵がそう釘を指す。
「わ、分かってるニャー!!」
「これだから獣人は」
殺す気、満々なサーヤにリーフは呆れる。
「煩いニャ!」
煩いのはテメェだ。猫耳娘が。
フードを被っているせいで、向こうには俺の顔は見えない。それどころか今の俺の顔がどんな顔をしているか、想像つきもしないだろう。この顔。どうしてくれようか……。
俺は一歩踏み込む。それは今までとはまるで違う一歩だった。地面にヒビが入る。
持っていたアイスソードを手放す。片手で剣を扱うのは危険が伴う。いつもならそんなのは気にしない。だけど、今は俺の気分と相手を考えてそうした。
自分の拳を使って叩きのめしたい。
「5秒で殺してあげるニャ♪ 」
サーヤも踏み込む。俺と同じくらい地面にヒビをいれ。
そして戦いの幕は上がった。
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