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新たなる道
【続く迷宮】
しおりを挟むフードコーディネーターと言う能力は実に単純だ。魔力で思いのままの料理を作る事が出来る。そしてその料理の味が作成に使用した魔力量で決まる。
……なのに、なぁのぉにぃ!! アローラはスキルは全く上達しない。もう、わざとやってるとしか思えん。
その上達しなさに、迷宮探中にもずっと練習していた。俺はそのため戦闘しながらアローラの指導をしていた。その結果……戦いながら、全く別の事を教えるのはとても大変だと言う事が分かった。
そんな事を続ける事5日、アローラの腕は全くもって上がらないが、俺の腕は完璧に治った。少しずつ氷の腕が、肉の腕に戻っていき5日の朝、氷は消えていた。
5日間で大分進んだ。85層から139層。そして140層に上がるためのボスがまだ倒されていないらしい。つまりこの先にいるボスを倒せば未到達領域に俺が人類初足を踏み入れるのだ。まあ、俺の目的は1番最下層にいるボスモンスターを倒す事だが。親玉を倒した後、迷宮がどうなるのか知りたい。潰れるのか、それとも新しいボスを決めてやり直すのか。はたまた、モンスターがいない廃墟とかすのか。
それは神のみぞ知る領域だ。
「ボスは目の前の部屋。その奥には休憩所」
……今の所苦戦した所はない。いや、今だって後だって苦戦する予定なんてない。
「ボス戦までそれやんのやめてくれよ」
今も必死でスキルを上げようとしているアローラに俺は容赦なく釘を指す。
アローラはシュンと落ち込みながら頭を縦に振る。
「さてと行きますか」
人を守りながら戦うのは凄く大変だ。たとえモンスターが狙ってなくても常に気にかければいけない。迷宮はどこからモンスターが現れてもおかしくない。
バシュンッ!!
それは俺が豪快にボス部屋の扉を開けた直後だった。一瞬、痛みが走る。反射的に痛みの根元に手が延びる。しかし……そこにはあるべきものが無くなっていた。
えっ? 何? ……どいうこと……?
「お前か!! 僕たちの事をずっとつけてたのは!! これは警告だぞ!!」
理解が追い付かない中、扉の向こうには1人の少年と3人の美少女達がいた。
「そ、そそそソラ君!! 腕!! 腕っ!!」
フリーズした俺を揺さぶるアローラ。
「はっ! 」
俺はそれに応える様に正気に戻る。
「……左腕は?」
俺はいたって冷静に聞く。
「そ、ソラ君の左腕はあそこに……」
アローラが恐る恐る指を指す先にあるのは、俺の左腕だった。見事に肩から下を持ってかれた。俺はそれを呆然と眺める様に見ていた。
「そ、ソラ君!! 止血!! 止血しなきゃ!!」
「ん? あ、ああ」
血は知らない間にボタボタと地面に落ちている。すでに俺の足元は血に染まっていた。
凄く慌てているアローラに対して俺は無感情だった。いや、感情は間違いなくある。だけどそれは……酷すぎる物だった。今の自分自身でも無意識に心の奥底に埋める程に。
アローラはきっとこんな俺に怯えているだろう。腕が1本吹っ飛んだのに、普通に普段と変わらず冷静にいる俺に。
アローラに左腕の止血をして貰った後、俺は改めて前にいる奴等を見る。
「猫耳少女にハーフエルフ、人……選り取り緑ですな」
俺と同い年位の少年の周りにはその美少女どもがいた。
「……強いな」
戦ってもないのに、そんな言葉が自然に口から漏れる。それは誰に対してか……それはまだ分からない。
だがなんとなく分かる。あのグループには強い奴がいる。
「葵、早く殺っちゃうニャ♪ ああ、いう分からず屋は殺った方が早いニャ♪」
「サーヤそういうのは良くないよ。相手にも降伏するチャンスをあげなきゃ」
降伏? はっ? なに? いきなり攻撃して来て、それはないだろ。どこのテロ集団だよ。お前ら。
無言で拳を固く握りしめる。
「サーヤ、葵さんの言う事を黙って聞けば良いのです。獣人はどう頑張っても、脳は人間の域に達しないのですから」
「ニャッ! リーフの癖に生意気ニャッ! 魔法なんてくだらニャい物にとっかした、運動不足にニャにか言われる筋合いはニャいニャ」
「エルフは別に運動不足ではありません。運動をする必要がないから、していないだけです。魔法は万能なので」
「ニャっ、ニャにおぉぉ!!」
「ま、まあまあ、2人ともそこまでにして……ね?」
「そうだぞ。朱里の言う通りだ」
「葵さんがそう言うのなら……」
「葵がそこまで言うニャら止めてあげるニャ」
……なぁ、そんな下らない茶番を見てるこっちの身にもなれよ。
「それにしても、あいつ動かニャいニャ。きっと葵の咆哮が効いたのニャ♪ 流石葵だニャ♪」
「ぼ、僕はああいうのは苦手なんだけどな……」
葵に朱里……日本出身の召喚者だな。……クラス召喚で貰った能力がショボくて追い出されて、無双系か、普通に2人で一緒にいる所を召喚されたか……多分どっちかだろう。俺は前者だと思う。直感がそう言っている。
「なあ、殺し合いはもう始めていいのか?」
不敵な笑顔で俺はそう小さく呟いた。
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