1 / 4
嘘をついたら幼馴染みが彼女になった
しおりを挟む
「なあ、絢音」
「何ですか?」
自室で山崎誠也は、少女──佐々木絢音と一緒に漫画を読んでいる。
一緒にとは言っても同じ漫画を読んでいるわけではなく、お互いの背中を背もたれにして寄っ掛かりながら別の漫画をだ。
二人はいわゆる幼馴染みの関係で、週に何回かどちらかの家に行き、趣味のアニメ観賞をしたり漫画やラノベを読んだりする。
もし、幼馴染みという関係じゃなかったら、二人はこんな風にお互いの家に行ったりしていなかっただろう。
誠也は黒髪でどこにでもいるような顔というアニメに出てくるとしたらモブAと言った感じなのだが、絢音は誰もが見惚れるほどの美少女なのだから。
きちんと手入れされている腰まで伸びたサラサラなストレートヘアー、長いまつ毛にライトブラウンの大きな瞳、潤いのある美しい桃色の唇、透き通るような白い肌といい、絢音は全てが整いすぎている。
容姿端麗に加えて品行方正、頭脳明晰、運動神経抜群と非の打ち所がない。
だからなのか絢音はラブコメアニメに出てくる学園のアイドル並にモテ、去年高校に入学してから今日まで数え切れないほど告白されている。本人が数えていないのだが。
ちなみに品行方正なのは好きなアニメキャラを真似ているだけであり、本当の姿はアニメ大好きなオタク。
亜麻色の髪も好きなキャラがこの髪色だからって理由で染め、本来の絢音の髪は黒色。
そして品行方正は演技なので、自分の家や誠也の家ではロンティーにショーパンと結構ラフな格好が多い。
学校の人が誠也の背中に寄りかかり漫画を読んでいる姿を見たら、幻滅してしまうだろう。
それと同時に、大多数の人が羨ましいくて誠也に殺意がわくことが簡単に想像できる。
「俺な……彼氏が出来たんだ」
「……はい?」
数秒の沈黙の後、絢音が聞き返してきた。
読んでいた漫画を床に落とし、絢音はキョトンとした瞳を誠也の方に向けている。
「だから彼氏が出来たんだ」
もちろん彼氏が出来たなんて嘘であり、本日が四月一日のエイプリルフールだからドッキリを仕掛けただけ。
この嘘をつくために普段読んでいるラブコメを封印して、女性物のラノベや漫画を読み始めたほど。
何故、こんな前から嘘をつこうと考えたのかというと、去年のエイプリルフールは絢音に盛大なドッキリを仕掛けられたから。
だから今年は誠也が復讐……とまではいかなくとも、驚かすことができればいいなと思っている。
「彼氏……? 彼女ではなくて?」
「間違いなく彼氏と言ったぞ」
思ってもいなかった言葉だったのだろう、絢音は目を見開く。
幼馴染みから同性の恋人が出来たと聞かされたら、こうなるのは当たり前だ。
「確かに最近の誠くんは女性向けの作品ばっか読んでいますけど、彼氏はないですよね?」
いきなりそんな話をされて信じられるわけもなく、絢音はすぐに疑いの目を向ける。
ほぼ毎日一緒にいるのだし、彼氏が出来たと言われても何か証拠がないと信じられないのだろう。
「あ、今日はエイプリルフールですから嘘をついたんですね。少し驚いてしまいましたよ」
勝手に自己解決したようで、絢音は「誠くんに彼氏なんてできるわけないですよね」と呟いた。
確かにそうなのだが、誠也がすぐバレるような嘘で終わるわけがない。
「これでも嘘だと言えるかな?」
スマホを取り出すと、誠也は絢音にとある写真を見せる。
すると先ほど以上に絢音の目が見開かれていく。
誠也が男の人とイチャついているような写真なのだからしょうがない。
嘘をつくためだけに友人に頼みこんで撮ったものであり、焼き肉の食べ放題を奢ると言ったらすぐに了承してくれた。
撮る時には二人とも吐き気を催しそうになったが……。
ちなみに友人には面倒だったので、このことを説明していない。
「誠くん、いくら私以外に女っ気がないと言っても、彼氏を作っちゃダメですよ。男の子好きは二次元限定にしないと」
写真を見せられ完全に信じたようで、絢音は必死に誠也を説得しようとしている。
目が真剣そのものであり、誠也の肩を揺らしながらだ。
信じてくれたのは何よりだが、少しヤバいような感じがする。
「確かにあの男の子は可愛い系でしたけど、三次元では女の子に興味を持ってください」
言われなくても、誠也は二次元も三次元も女の子が好きだ。
女性向けの作品を読んでいたのはあくまで嘘をつくためであり、誠也が本来好きなのはラブコメや異世界物の俺Tueee系だ。
鈍感すぎる主人公には若干イラっとするが、あまり早くヒロインとくっつかないためと割り切っている。
「何で?」
「何でって……日本で同性同士では結婚出来ませんし、世間体だって悪いですよ」
「そんなことはわかってる」
「じゃあ、何で同性と付き合うのですか?」
あまりにも真剣な顔に、嘘と言えなくなっている誠也。
基本的に嘘なんてつかないので、どう訂正していいかわからないのだ。
なのでとりあえず「好きだから」と答えておいた。
「二次元だけであれば私は何も言いません。むしろバッチコイです」
「バッチコイなのか……」
「はい。女性向けの、特にイケメンが出てる漫画を読んでいる誠くんは萌えます」
萌えるんだ……と思いつつも、誠也は絢音の言葉を聞く。
「でも、だからって三次元での同性同士の恋愛は止めてください。おじさん、おばさんも悲しみますよ」
確かに息子に彼氏なんていたら、両親は泣いてしまうかもしれない。
だけど本当はいないので、さして問題はないだろう。
「だから私が誠くんに女性の魅力を教えてあげます」
「え?」
「……私が……誠くんの彼女になります」
あまりにも予想外過ぎて、誠也は反応できなくなった。
驚くことはわかっていたが、彼女になりますなんて予想外すぎる。
言っている当の本人は顔を赤くして恥ずかしいがっているのだけど。
「彼女としてイチャイチャしたりデートしたりして、女の子に興味を持たせます。そして男の子に興奮なんて決してさせません」
元から男には興奮しないとツッコミをするとこだが、誠也は唖然に取られていてそれどころではなかった。
「心配しなくても大丈夫です。前はラブコメを読んでいたのですし、誠くんは女の子に興味を持てます」
「あ、うん。よろしく……?」
ここで嘘だと言えば丸く収まるのだけど、何故か誠也はそのまま了承してしまう。
「はい。絶対に誠くんを私に……じゃなくて、女の子に興味を持たせてみせますから」
こうして二人は幼馴染みから恋人? の関係になるのだった。
「何ですか?」
自室で山崎誠也は、少女──佐々木絢音と一緒に漫画を読んでいる。
一緒にとは言っても同じ漫画を読んでいるわけではなく、お互いの背中を背もたれにして寄っ掛かりながら別の漫画をだ。
二人はいわゆる幼馴染みの関係で、週に何回かどちらかの家に行き、趣味のアニメ観賞をしたり漫画やラノベを読んだりする。
もし、幼馴染みという関係じゃなかったら、二人はこんな風にお互いの家に行ったりしていなかっただろう。
誠也は黒髪でどこにでもいるような顔というアニメに出てくるとしたらモブAと言った感じなのだが、絢音は誰もが見惚れるほどの美少女なのだから。
きちんと手入れされている腰まで伸びたサラサラなストレートヘアー、長いまつ毛にライトブラウンの大きな瞳、潤いのある美しい桃色の唇、透き通るような白い肌といい、絢音は全てが整いすぎている。
容姿端麗に加えて品行方正、頭脳明晰、運動神経抜群と非の打ち所がない。
だからなのか絢音はラブコメアニメに出てくる学園のアイドル並にモテ、去年高校に入学してから今日まで数え切れないほど告白されている。本人が数えていないのだが。
ちなみに品行方正なのは好きなアニメキャラを真似ているだけであり、本当の姿はアニメ大好きなオタク。
亜麻色の髪も好きなキャラがこの髪色だからって理由で染め、本来の絢音の髪は黒色。
そして品行方正は演技なので、自分の家や誠也の家ではロンティーにショーパンと結構ラフな格好が多い。
学校の人が誠也の背中に寄りかかり漫画を読んでいる姿を見たら、幻滅してしまうだろう。
それと同時に、大多数の人が羨ましいくて誠也に殺意がわくことが簡単に想像できる。
「俺な……彼氏が出来たんだ」
「……はい?」
数秒の沈黙の後、絢音が聞き返してきた。
読んでいた漫画を床に落とし、絢音はキョトンとした瞳を誠也の方に向けている。
「だから彼氏が出来たんだ」
もちろん彼氏が出来たなんて嘘であり、本日が四月一日のエイプリルフールだからドッキリを仕掛けただけ。
この嘘をつくために普段読んでいるラブコメを封印して、女性物のラノベや漫画を読み始めたほど。
何故、こんな前から嘘をつこうと考えたのかというと、去年のエイプリルフールは絢音に盛大なドッキリを仕掛けられたから。
だから今年は誠也が復讐……とまではいかなくとも、驚かすことができればいいなと思っている。
「彼氏……? 彼女ではなくて?」
「間違いなく彼氏と言ったぞ」
思ってもいなかった言葉だったのだろう、絢音は目を見開く。
幼馴染みから同性の恋人が出来たと聞かされたら、こうなるのは当たり前だ。
「確かに最近の誠くんは女性向けの作品ばっか読んでいますけど、彼氏はないですよね?」
いきなりそんな話をされて信じられるわけもなく、絢音はすぐに疑いの目を向ける。
ほぼ毎日一緒にいるのだし、彼氏が出来たと言われても何か証拠がないと信じられないのだろう。
「あ、今日はエイプリルフールですから嘘をついたんですね。少し驚いてしまいましたよ」
勝手に自己解決したようで、絢音は「誠くんに彼氏なんてできるわけないですよね」と呟いた。
確かにそうなのだが、誠也がすぐバレるような嘘で終わるわけがない。
「これでも嘘だと言えるかな?」
スマホを取り出すと、誠也は絢音にとある写真を見せる。
すると先ほど以上に絢音の目が見開かれていく。
誠也が男の人とイチャついているような写真なのだからしょうがない。
嘘をつくためだけに友人に頼みこんで撮ったものであり、焼き肉の食べ放題を奢ると言ったらすぐに了承してくれた。
撮る時には二人とも吐き気を催しそうになったが……。
ちなみに友人には面倒だったので、このことを説明していない。
「誠くん、いくら私以外に女っ気がないと言っても、彼氏を作っちゃダメですよ。男の子好きは二次元限定にしないと」
写真を見せられ完全に信じたようで、絢音は必死に誠也を説得しようとしている。
目が真剣そのものであり、誠也の肩を揺らしながらだ。
信じてくれたのは何よりだが、少しヤバいような感じがする。
「確かにあの男の子は可愛い系でしたけど、三次元では女の子に興味を持ってください」
言われなくても、誠也は二次元も三次元も女の子が好きだ。
女性向けの作品を読んでいたのはあくまで嘘をつくためであり、誠也が本来好きなのはラブコメや異世界物の俺Tueee系だ。
鈍感すぎる主人公には若干イラっとするが、あまり早くヒロインとくっつかないためと割り切っている。
「何で?」
「何でって……日本で同性同士では結婚出来ませんし、世間体だって悪いですよ」
「そんなことはわかってる」
「じゃあ、何で同性と付き合うのですか?」
あまりにも真剣な顔に、嘘と言えなくなっている誠也。
基本的に嘘なんてつかないので、どう訂正していいかわからないのだ。
なのでとりあえず「好きだから」と答えておいた。
「二次元だけであれば私は何も言いません。むしろバッチコイです」
「バッチコイなのか……」
「はい。女性向けの、特にイケメンが出てる漫画を読んでいる誠くんは萌えます」
萌えるんだ……と思いつつも、誠也は絢音の言葉を聞く。
「でも、だからって三次元での同性同士の恋愛は止めてください。おじさん、おばさんも悲しみますよ」
確かに息子に彼氏なんていたら、両親は泣いてしまうかもしれない。
だけど本当はいないので、さして問題はないだろう。
「だから私が誠くんに女性の魅力を教えてあげます」
「え?」
「……私が……誠くんの彼女になります」
あまりにも予想外過ぎて、誠也は反応できなくなった。
驚くことはわかっていたが、彼女になりますなんて予想外すぎる。
言っている当の本人は顔を赤くして恥ずかしいがっているのだけど。
「彼女としてイチャイチャしたりデートしたりして、女の子に興味を持たせます。そして男の子に興奮なんて決してさせません」
元から男には興奮しないとツッコミをするとこだが、誠也は唖然に取られていてそれどころではなかった。
「心配しなくても大丈夫です。前はラブコメを読んでいたのですし、誠くんは女の子に興味を持てます」
「あ、うん。よろしく……?」
ここで嘘だと言えば丸く収まるのだけど、何故か誠也はそのまま了承してしまう。
「はい。絶対に誠くんを私に……じゃなくて、女の子に興味を持たせてみせますから」
こうして二人は幼馴染みから恋人? の関係になるのだった。
0
あなたにおすすめの小説
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる