エイプリルフールに同性の恋人が出来たと嘘をついたら学校一の美少女である幼馴染みが異性に興味を持って貰おうと彼女になると言ってきた

ひゃみる

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嘘をついたら幼馴染みが彼女になった

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「なあ、絢音」
「何ですか?」

 自室で山崎誠也やまざきせいやは、少女──佐々木絢音ささきあやねと一緒に漫画を読んでいる。
 一緒にとは言っても同じ漫画を読んでいるわけではなく、お互いの背中を背もたれにして寄っ掛かりながら別の漫画をだ。
 二人はいわゆる幼馴染みの関係で、週に何回かどちらかの家に行き、趣味のアニメ観賞をしたり漫画やラノベを読んだりする。
 もし、幼馴染みという関係じゃなかったら、二人はこんな風にお互いの家に行ったりしていなかっただろう。
 誠也は黒髪でどこにでもいるような顔というアニメに出てくるとしたらモブAと言った感じなのだが、絢音は誰もが見惚れるほどの美少女なのだから。
 きちんと手入れされている腰まで伸びたサラサラなストレートヘアー、長いまつ毛にライトブラウンの大きな瞳、潤いのある美しい桃色の唇、透き通るような白い肌といい、絢音は全てが整いすぎている。
 容姿端麗に加えて品行方正、頭脳明晰、運動神経抜群と非の打ち所がない。
 だからなのか絢音はラブコメアニメに出てくる学園のアイドル並にモテ、去年高校に入学してから今日まで数え切れないほど告白されている。本人が数えていないのだが。
 ちなみに品行方正なのは好きなアニメキャラを真似ているだけであり、本当の姿はアニメ大好きなオタク。
 亜麻色の髪も好きなキャラがこの髪色だからって理由で染め、本来の絢音の髪は黒色。
 そして品行方正は演技なので、自分の家や誠也の家ではロンティーにショーパンと結構ラフな格好が多い。
 学校の人が誠也の背中に寄りかかり漫画を読んでいる姿を見たら、幻滅してしまうだろう。
 それと同時に、大多数の人が羨ましいくて誠也に殺意がわくことが簡単に想像できる。

「俺な……彼氏が出来たんだ」
「……はい?」

 数秒の沈黙の後、絢音が聞き返してきた。
 読んでいた漫画を床に落とし、絢音はキョトンとした瞳を誠也の方に向けている。

「だから彼氏が出来たんだ」

 もちろん彼氏が出来たなんて嘘であり、本日が四月一日のエイプリルフールだからドッキリを仕掛けただけ。
 この嘘をつくために普段読んでいるラブコメを封印して、女性物のラノベや漫画を読み始めたほど。
 何故、こんな前から嘘をつこうと考えたのかというと、去年のエイプリルフールは絢音に盛大なドッキリを仕掛けられたから。
 だから今年は誠也が復讐……とまではいかなくとも、驚かすことができればいいなと思っている。

「彼氏……? 彼女ではなくて?」
「間違いなく彼氏と言ったぞ」

 思ってもいなかった言葉だったのだろう、絢音は目を見開く。
 幼馴染みから同性の恋人が出来たと聞かされたら、こうなるのは当たり前だ。

「確かに最近のせいくんは女性向けの作品ばっか読んでいますけど、彼氏はないですよね?」

 いきなりそんな話をされて信じられるわけもなく、絢音はすぐに疑いの目を向ける。
 ほぼ毎日一緒にいるのだし、彼氏が出来たと言われても何か証拠がないと信じられないのだろう。

「あ、今日はエイプリルフールですから嘘をついたんですね。少し驚いてしまいましたよ」

 勝手に自己解決したようで、絢音は「誠くんに彼氏なんてできるわけないですよね」と呟いた。
 確かにそうなのだが、誠也がすぐバレるような嘘で終わるわけがない。

「これでも嘘だと言えるかな?」

 スマホを取り出すと、誠也は絢音にとある写真を見せる。
 すると先ほど以上に絢音の目が見開かれていく。
 誠也が男の人とイチャついているような写真なのだからしょうがない。
 嘘をつくためだけに友人に頼みこんで撮ったものであり、焼き肉の食べ放題を奢ると言ったらすぐに了承してくれた。
 撮る時には二人とも吐き気を催しそうになったが……。
 ちなみに友人には面倒だったので、このことを説明していない。

「誠くん、いくら私以外に女っ気がないと言っても、彼氏を作っちゃダメですよ。男の子好きは二次元限定にしないと」

 写真を見せられ完全に信じたようで、絢音は必死に誠也を説得しようとしている。
 目が真剣そのものであり、誠也の肩を揺らしながらだ。
 信じてくれたのは何よりだが、少しヤバいような感じがする。

「確かにあの男の子は可愛い系でしたけど、三次元では女の子に興味を持ってください」

 言われなくても、誠也は二次元も三次元も女の子が好きだ。
 女性向けの作品を読んでいたのはあくまで嘘をつくためであり、誠也が本来好きなのはラブコメや異世界物の俺Tueee系だ。
 鈍感すぎる主人公には若干イラっとするが、あまり早くヒロインとくっつかないためと割り切っている。

「何で?」
「何でって……日本で同性同士では結婚出来ませんし、世間体だって悪いですよ」
「そんなことはわかってる」
「じゃあ、何で同性と付き合うのですか?」

 あまりにも真剣な顔に、嘘と言えなくなっている誠也。
 基本的に嘘なんてつかないので、どう訂正していいかわからないのだ。
 なのでとりあえず「好きだから」と答えておいた。

「二次元だけであれば私は何も言いません。むしろバッチコイです」
「バッチコイなのか……」
「はい。女性向けの、特にイケメンが出てる漫画を読んでいる誠くんは萌えます」

 萌えるんだ……と思いつつも、誠也は絢音の言葉を聞く。

「でも、だからって三次元での同性同士の恋愛は止めてください。おじさん、おばさんも悲しみますよ」

 確かに息子に彼氏なんていたら、両親は泣いてしまうかもしれない。
 だけど本当はいないので、さして問題はないだろう。

「だから私が誠くんに女性の魅力を教えてあげます」
「え?」
「……私が……誠くんの彼女になります」

 あまりにも予想外過ぎて、誠也は反応できなくなった。
 驚くことはわかっていたが、彼女になりますなんて予想外すぎる。
 言っている当の本人は顔を赤くして恥ずかしいがっているのだけど。

「彼女としてイチャイチャしたりデートしたりして、女の子に興味を持たせます。そして男の子に興奮なんて決してさせません」

 元から男には興奮しないとツッコミをするとこだが、誠也は唖然に取られていてそれどころではなかった。

「心配しなくても大丈夫です。前はラブコメを読んでいたのですし、誠くんは女の子に興味を持てます」
「あ、うん。よろしく……?」

 ここで嘘だと言えば丸く収まるのだけど、何故か誠也はそのまま了承してしまう。

「はい。絶対に誠くんを私に……じゃなくて、女の子に興味を持たせてみせますから」

 こうして二人は幼馴染みから恋人? の関係になるのだった。
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