せっかく異世界転移したのに、もしかして俺は弱いのか!?

化茶ぬき

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第二章

第43話 帰還

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「――我々は彼が目覚め次第ここを離れます。魔王の眷属がこの大陸に現れたことと、ドワーフの武具が狙われていることを伝えれば種族会議も上手く事が運ぶと思うので」

「すでに伝わっているとは思いますが、種族間契約が纏まればギルドからも他の種族からもこの村を守るための兵を派遣することができます。今暫くお待ちいただければ――」

 離れたところの会話を聞きながら目を覚ませば、とりあえず皆が無事なのだと確信した。腹に感じる重みはサーシャだろう。視線をずらせば、ベッドを背に座っているロットーが居た。

「……ロットー、何があった? あいつは倒せたのか?」

「いや、あの時の栞の剣は奴には刺さらなかった。伸びた刃の先に立ったエンジュは楽しそうに笑いながら言った――『その雑魚に免じて今日のところは皆殺しはやめておこう。武器はいずれもらう。その時まで蓄えておけよ』と。つまり、結果的にいつも通り栞に助けられた形になったわけだ」

 強者の気紛れに救われたってところか。

「まぁ、いつもは俺のほうがお前らに助けられているからな。俺の命一つで事無きを得たならそれで十分だ」

 体を起こせば、腹の上にいたサーシャと添い寝するように横にいたハティが目を覚ました。

「しーちゃん、もう平気ですか?」

「ああ。どうやら心臓も元に戻っているようだし、生きてるな」

 言いながらハティとサーシャの頭を撫でていれば、目を覚ましたことに気が付いたホロウとバショウが近寄ってきた。

「……驚異的ですね。まさか心臓を抜かれても生き返るとは」

「それは同感です」

「ともかくとして、栞さん。急いで王国に戻りましょう」

「話はなんとなく聞こえていましたが……俺たちがいない間、この村は――」

 言い掛けたところで、ゴウジンが口を開いた。

「心配は要らぬ。儂らとて儂ら自身を守ることはできる。主らは主らのすべきことをしろ」

「……わかりました」

 ドワーフが強いことは知っているし、準備期間があればゴブリンとの戦争も俺たちの介入が無くとも勝っていただろう。またエンジュの気が変わる可能性もあるが、今はその言葉を信じるしかない。

 サーシャを退かして立ち上がれば、胴を包んでいた革鎧が落ちた。服は未だしも鎧は傷付き過ぎたな。

「栞、こっちに。渡したい物がある」

「渡したい物、ですか。ロットー、サーシャ、ハティ、お前らは出られるように準備を」

「りょーかい!」

 ゴウジンの後に付いて他の建物へと入れば、そこにある作業台の上には俺が付けているのと同型の革鎧が置かれていた。

「これを礼とは思わないでもらいたいが、栞に合わせた装備を作った。使ってくれ」

「それは有り難いのですが、採寸とかは……?」

「そんなものは一目見ればわかる。ドワーフというのはそういうものだ」

「じゃあ――」

 革鎧を身に纏えば、まるであつらったようにしっくりとくる。これもまた一つの極致だな。

「おおっ、丁度いいな。あとは、これだ。初めて見る武器だったが、使い方と用途がわかっていれば改良は容易い」

 差し出されたのは俺が作ったよりも圧倒的に精練されたスリングショットだった。Y字型なのは変わらず、木製なのも同じだが作り手が違うとこれほどまで違うのかと言うくらいに加工された武器になっている。張られたゴムを伸ばして弾いてみれば、多少の力は必要だが威力は増しているように思う。

「これも頂いてよろしいんですか?」

「もちろんだ。それと弾も付ける。いつでも補充できるように用意しておく。屑鉄の加工なんざもののついでにもならん」

 渡された革袋を腰から下げて、スリングショットも背嚢に仕舞った。

「何から何まですみません」

「いや、主らがいなければ今の儂らは居らん。また、会おう」

 固い握手を交わして建物を出れば、そこには準備を整えた全員が待っていた。

「お待たせいたしました。では、行きましょうか」

「少し急ぐので私が先行します。付いて来られないようでしたら速度を緩めるので言ってください」

 その言葉にロットー達のほうに視線を向ければ、それぞれが走るための準備運動をして、ハティは狼に姿を変えた。

「問題ないようです」

 ゴウジンたちドワーフに挨拶をして、村を出て駆け出したバショウの後を追っていく。

 ホロウは元より、ロットーもサーシャも元の体の作りが違う。ハティは狼だし。現状で疲れているのは俺だけだが、付いていけないほどではない。

 ホワイトフォレストを出て最短ルートでアイルダーウィン王国へと進んでいくが、俺たちが一日以上を掛けて向かった道程を急げば半日と掛からず、か。まぁ、地の利が無いわけだから当然と言えば当然だが、仕事と依頼が乗っかっているとはいえもう少しのんびりと行きたいものだ。

 辿り着いた門の前でようやく脚が停まった。

「それなりの速度を出しましたが付いて来られて何よりでした。おかげで大幅に時間短縮になりました」

「はぁ、はぁ……ええ、いや……ふぅ……俺たちは一度家に戻ります。何か進展があればその時に」

「そうしましょう」

 バショウとホロウを見送り、俺たちは揃って家路へとついた。

 汗だくなのは俺だけだが、周囲から向けられる視線はそれが原因ではないだろう。他種族が一緒に歩いていること自体も未だに慣れていないのかもしれないが、それ以上の緊張感を覚える。

「嫌な空気だな」

「なんか、エンジュがこの大陸に現れたことがもう噂になってるみたいだね~」

 なるほど、道理で。

「ドワーフについては?」

「ん~……ホワイトフォレストにエンジュが出現ってだけで、ドワーフの話はしてないね」

 つまり、あくまでもヴァイザーがエンジュの気配を感じ取ったってだけの話か。

 慌ただしい様子の王城を遠巻きに見て、ようやく家へと帰ってきた。

「栞、少しは休めると思うか?」

「少しどころか一日二日は大丈夫だろ。俺は少し休むが……お前らは?」

「……お腹が空きました」

「サーシャも!」

「なら、アタイが何か作ろう」

 俺には飯を食う元気すらない。

「じゃあ、俺は風呂にでも入ってくるかな。何かあったら言ってくれ」

「は~い」

 死ねば体の傷は癒えるし疲労感も無くなるが、精神的には何も変わらない。どころか余計に疲れるくらいだ。だから、風呂に入ってリセットする。考えることも多いしな。

 シャワーを浴びて湯舟に浸かれば、自然と息が漏れた。

「はぁ……」

 考えてみよう。

 まず、ドワーフを種族間契約の中に入れようと考えたのは俺のエゴだ。爪弾き者が不幸かと言えば必ずしもそうではないが、この世界を包む空気感から察するに幸せとは程遠いだろう。

 次に魔王と、その眷属について。この世界が常に魔物の脅威と戦っているのは本で読んで知っているが、魔王に連なる者が実際に被害をもたらしたという記録は無かった。それが今になって動き出したのはなんの因果か知らないが――エンジュの言動からすると、魔王勢は武器を欲している。普通に考えれば戦争に備えて、というところだろうが……どうだろうか。

 魔物自体は多種多様で、ヒューマーの異能力のように様々な力も持っている。もちろんゴブリンのように多少の知恵があるだけで特有の力が無い魔物もいるが、基本的にはドワーフ製の武器など必要としないはずだ。

 仮に戦争を起こすつもりでゴブリンなどの白兵を強化するというのならその考えは正しいが……どうにも腑に落ちない。現状で納得するだけの理由付けをすることはできないが、今、そこは重要ではない。

 大事なのは、エンジュの襲撃によってドワーフの種族間契約参加がほぼ確定したことだ。ドワーフの武器が狙われていて、それが戦争に使われる可能性があるのなら守るしかない。あとの交渉に俺が関わることはないだろうが、ここまでお膳立てされて間違った方向に進むのならさすがにお手上げだが、まぁ大丈夫だろう。

「ああ……忘れていたな」

 戻ってきたことを、せめてザイコウに報告に行かないと。

 何があったのか、これから何が起こるのか――明日にでも。
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