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ハンレニーとレギーナ
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「ここまで長かったねえ。」
官僚のハーレニーが、同僚のレギーナに感慨深く言った。
「ええ、ハーレニーは、おバカな男性上司の下、見当違いな指示を出されても、正しく仕事をしようと苦労してきた。でも、それもこれも過去の話。この先の糧になると思えば、無駄では無かったのよね。」
「レギーナこそ苦労してきたじゃないの。それに私はそもそも平民だから出世は諦めてた。レギーナは貴族で仕事ぶりは申し分ないのに、唯一の女性の先輩の私が上につかえてたから、一緒に出世の道を閉ざされて、申し訳なかったわ。」
「私が官僚を目指したのは、ハンレニーに憧れたからって知ってるでしょ?」
ハンレニーは、宮中伯ヘルマン・プライン家で下働きをする使用人夫婦の子だ。幼い頃から同じ年の男の子より一回り身体が大きく、力持ちで喧嘩も強かった。ただし、喧嘩はいじめられている子を助ける時だけ。心優しく面倒見の良い女の子だった。母親は日頃から、
「ハンレニーごめんね。大柄で美人じゃないところは私に似ちゃったね。あんたの姉ちゃんはハンサムな父ちゃんに似て美人で華奢なのにね。あんたは骨も太くて肩幅も広くて。いつか、ハンレニーが良いって言う父ちゃんみたいな人が現れてくれたらいいんだけどね。」
と、よく娘に謝った。父親は、
「母さんみたいに、身体が丈夫で気立てが良いハンレニーは、洗濯でも、荷物運びでも、何やってもまわりに喜ばれるんだよ。腕っぷしもいいから、どこかの奥様の女護衛にだってなれるかもしれない。結婚できなくても楽しく暮らせれば良いんだからね。それに、もしかしたらハンレニーより大きくて強い男が、ハンレニーを迎えに来てくれるかもしれないよ。」
と、いつも娘を慰めていた。
ハンレニーは幼い頃から、まわりの状況がよく見えていたので、自分より大きな男も小さな男も、華奢で守りたくなる女を好むことがわかっていた。
ハンレニーの両親の雇い主、宮中伯ヘルマン・プラインは、お屋敷に勤める使用人の子供たちの中に、読み書きができて頭が良い子供がいることを聞いていた。
前々国王による『広く才能を発掘すべし』との号令が王宮内で出た時、ヘルマンは屋敷の中の頭の良い子供のことを思い出し、調べてみた。すると、ハンレニーという女の子が、学校も行っていないのにいろいろな知識を身につけていて、親の仕事を手伝っていても知恵を出して工夫し、皆にありがたがられていることを知った。『平民の、しかも女の子を推薦したら、才能発掘に尽力していると、国王にアピールできるのではないか』と思い、試しに当時12歳だったハンレニーを官僚の下働きとして王宮に連れてきてみた。するとハンレニーは、終わりの見えない作業でも一生懸命進めるし、自分なりに工夫してより良い方法を思いつくし、嫌がらせをしてくる官僚には正論で抗議をするがあとを引かず、誰にでも親切という仕事ぶり。6年後にハンレニーは平民の女性で初の官僚になった。宮中伯ヘルマン・プラインは狙い通り、前々国王に一目置かれる存在になっていた。
ハンレニーは剣の腕もあげていて女護衛の選択肢も残していたが、武人も官僚も男社会。ならば官僚の方が長く勤められる、少しは出世の道があろうと、王宮での仕事に身を捧げることに決めた。
ハンレニーは努力を惜しまず体力も人の二倍はあったので、官僚になってからも、ますます能力を伸ばしていった。しかし長年の王宮勤めで、自分より仕事のできない男の下で働くことに、不満も持たなくなっていた。
そしてこの度、新国王フレデリクの男女関係ない人事により、ハンレニーはニ段飛ばしに出世し、宮中伯ヘルマン・プラインの長男ハインリヒと肩を並べるまでになったのだった。
隣国ルカム王国との戦争が終結して半年が経過した。今王宮の会議室で、国王夫妻はじめ王族、重臣、学者、そしてハーレニーたち官僚も含めて総勢16名が、丸く並べた椅子に、順不同で座っている。
ハーレニーはこのような会議に呼ばれるようになったことに震えた。武者震いである。
国王フレデリクがまず話し出す。
「さて、集まっていただきましたのは、我がフォルスフッド王国の未来について、忌憚のないご意見を皆様から伺うためです。フェルディナンドさん、何かご意見ありますか?」
と国王は、従兄弟の王太子フェルディナンドに話を振った。
「エスドート王国、ルカム王国、他諸外国が武器開発と製造を進める中、我が国は、農業、商業などに力を入れてきました。また、街道の整備や教育にも力を入れようとしています。あとは外交をどのように進めるか、でしょうか?」
とフェルディナンドが涼やかな声で答えると、そこにいた全員が満足げに微笑んだ。
国王フレデリクが、
「外務大臣に、例えばアルヌルフさんを起用して、我が国に良い印象をもっていただくという案があります。」
急にふられたアルヌルフが驚いて抗議しようとしたが、一瞬先に宰相の妻フランツィスカが声をあげた。
「フレデリク、何それ?ルカムには最新兵器がまだたくさん残ってるし、エスドートは我が国を意のままに操ろうとしてるのでしょ?アルヌルフさんの美貌で外交が何とかなるものなの?」
フレデリクはすまして、
「フランツィスカさん、私のことはフレデリクさんとお呼びください。」
「フレデリク、じゃなくてフレデリクさん、ええい、弟を、さん付けで呼ぶのに、まだ抵抗があるわ。」
「会議の時だけです。慣れてください。全員対等を意識づけるためです。」
と、フレデリクは言った。ハンレニーは、
「ルカム国民は、戦後すぐの我が国からの食糧援助を感謝しており、ルカムの兵器がこちらに向くことは、しばらく心配無さそうです。エスドート王国へ我が国がどのような態度を見せるかが、喫緊の課題と考えます。」
王妃エレオノーラが、
「美貌なら、エルンストさんの方が外交に向いていませんか?」
エレオノーラの兄アルヌルフがやっと発言できて、
「そうだよ、エルンストさんが良い。私は今日、何のために呼ばれたかと来てみたら、私が外務大臣だなんてびっくりしたよ。私には外交はできないし、いかにも弱そうな私だと相手にナメられる。エルンストさんなら堂々としていてぴったりだ。それから、王妃の兄の私が、実績もないのにヒョイと表舞台に出るのは、今後のために避けておこうよ。」
エルンストは、
「私も、外交を勉強したこともありません。それに今謹慎中の身です。」
と、アルヌルフもエルンストも乗り気では無かったが、フランツィスカが、
「でも、エルンストさんとアルヌルフさんが並べば、かなりのインパクトね。後ろに護衛のヴィーレさんをつけて、キラキラ男子外交団。」
と言い出し、皆が絶句した。そこに、
「それは良い案かもしれません。」
レギーナが発言した。
「エルンストさんとアルヌルフさんが、にこやかに握手の手を伸ばせば、誰でも自然と顔が緩むでしょう。そこに私たち官僚が交渉を始めると、こちらが有利に進むかもしれません。」
ハンレニーも、
「それは試す価値があると考えます。それに、もしキラキラ男子外交団が評判になれば、諸外国も一回会ってみたいと我が国との交流を考えるでしょう。」
皆のキラキラ男子外交団案への拒絶反応が薄れてくると、アルヌルフが、
「じゃ、私も護衛で雇えば?ヴィーレさんと並ぶよ。」
「おお」
戦時中、参謀本部で美しいヴィーレとアルヌルフが並んで護衛として立っていた情景を思い出して、国王フレデリクと宰相カールが、ぶんぶんと首肯する。
「ヴィーレさんとアルヌルフさんが並ぶと、威圧感がある護衛ではなくて、上品な印象ね。護衛とは言えないかもしれないけれど、相手国が我が国と仲良くなりたいと思うなら良いわよね。」
フランツィスカが言った。アルヌルフが、
「エルンストさんの横にはアレクサンデルさんを通訳に置けば?」
「良い絵面ですわね。」
レギーナが太鼓判を押す。
「アレクサンデルさんは、どちらにしても外交団に付けたい。最近ではエスドートの地方の訛りまで習得してるし、エスドート語、ルカム語以外も勉強しているようです。さて、外交メンバーの案ばかり出ましたが、肝心の外交方針もあわせて考えましょう。」
とフレデリクが言うと、前国王ジグムンドが、
「外交メンバー案を聞くと、外交方針がほぼ浮かんじゃったけど?相手国も自国も尊重し、仲良くするが決してへりくだらない。力による威圧でなく、尊敬させて自国を守る。」
「素晴らしい」
一同が嘆息した。
「それが出来たら最高だ。」
フレデリクが言うと、ハンレニーが、
「やりましょう。不可能でも目指しましょう。目指して行動していれば、自ずと道は開けるでしょう。」
一同拍手した。
フレデリクが、
「では、今の外交方針を基に、外交団の皆さんはエスドート王国はじめ諸外国の歴史や文化、言語を学習していただき、実際の外交場面を想定した練習もお願いします。準備期間は、エルンストさんの謹慎期間の残り、あと半年です。毎月このメンバーで会議を開き、調整しましょう。」
エルンストは、また遠慮がちに、
「実は、妻が懐妊しまして、体調が優れない日もあります。そんな日は、休ませてもらえないでしょうか?妻についていてやりたいのです。」
と言うと、妻のリルディスが、
「あなた、私たちは国のために、何かさせてもらえる日が来たら、どんな些細なことでも力を尽くそうと言ってきたではありませんか。」
「そもそもエルンストさん、リルディスさんのそばにいて、あなた何かの役に立つの?」
と、フランツィスカが、ずけずけ言うと、男性全員ギョッとした。リルディスは、エルンストにすがるような目で見つめられながら、
「そうですね、無い、ですね。むしろ、夫がいない方が身体が休まります。」
と、聖母のような慈愛に満ちた微笑みを浮かべながら、夫を奈落の底へ落とした。
官僚のハーレニーが、同僚のレギーナに感慨深く言った。
「ええ、ハーレニーは、おバカな男性上司の下、見当違いな指示を出されても、正しく仕事をしようと苦労してきた。でも、それもこれも過去の話。この先の糧になると思えば、無駄では無かったのよね。」
「レギーナこそ苦労してきたじゃないの。それに私はそもそも平民だから出世は諦めてた。レギーナは貴族で仕事ぶりは申し分ないのに、唯一の女性の先輩の私が上につかえてたから、一緒に出世の道を閉ざされて、申し訳なかったわ。」
「私が官僚を目指したのは、ハンレニーに憧れたからって知ってるでしょ?」
ハンレニーは、宮中伯ヘルマン・プライン家で下働きをする使用人夫婦の子だ。幼い頃から同じ年の男の子より一回り身体が大きく、力持ちで喧嘩も強かった。ただし、喧嘩はいじめられている子を助ける時だけ。心優しく面倒見の良い女の子だった。母親は日頃から、
「ハンレニーごめんね。大柄で美人じゃないところは私に似ちゃったね。あんたの姉ちゃんはハンサムな父ちゃんに似て美人で華奢なのにね。あんたは骨も太くて肩幅も広くて。いつか、ハンレニーが良いって言う父ちゃんみたいな人が現れてくれたらいいんだけどね。」
と、よく娘に謝った。父親は、
「母さんみたいに、身体が丈夫で気立てが良いハンレニーは、洗濯でも、荷物運びでも、何やってもまわりに喜ばれるんだよ。腕っぷしもいいから、どこかの奥様の女護衛にだってなれるかもしれない。結婚できなくても楽しく暮らせれば良いんだからね。それに、もしかしたらハンレニーより大きくて強い男が、ハンレニーを迎えに来てくれるかもしれないよ。」
と、いつも娘を慰めていた。
ハンレニーは幼い頃から、まわりの状況がよく見えていたので、自分より大きな男も小さな男も、華奢で守りたくなる女を好むことがわかっていた。
ハンレニーの両親の雇い主、宮中伯ヘルマン・プラインは、お屋敷に勤める使用人の子供たちの中に、読み書きができて頭が良い子供がいることを聞いていた。
前々国王による『広く才能を発掘すべし』との号令が王宮内で出た時、ヘルマンは屋敷の中の頭の良い子供のことを思い出し、調べてみた。すると、ハンレニーという女の子が、学校も行っていないのにいろいろな知識を身につけていて、親の仕事を手伝っていても知恵を出して工夫し、皆にありがたがられていることを知った。『平民の、しかも女の子を推薦したら、才能発掘に尽力していると、国王にアピールできるのではないか』と思い、試しに当時12歳だったハンレニーを官僚の下働きとして王宮に連れてきてみた。するとハンレニーは、終わりの見えない作業でも一生懸命進めるし、自分なりに工夫してより良い方法を思いつくし、嫌がらせをしてくる官僚には正論で抗議をするがあとを引かず、誰にでも親切という仕事ぶり。6年後にハンレニーは平民の女性で初の官僚になった。宮中伯ヘルマン・プラインは狙い通り、前々国王に一目置かれる存在になっていた。
ハンレニーは剣の腕もあげていて女護衛の選択肢も残していたが、武人も官僚も男社会。ならば官僚の方が長く勤められる、少しは出世の道があろうと、王宮での仕事に身を捧げることに決めた。
ハンレニーは努力を惜しまず体力も人の二倍はあったので、官僚になってからも、ますます能力を伸ばしていった。しかし長年の王宮勤めで、自分より仕事のできない男の下で働くことに、不満も持たなくなっていた。
そしてこの度、新国王フレデリクの男女関係ない人事により、ハンレニーはニ段飛ばしに出世し、宮中伯ヘルマン・プラインの長男ハインリヒと肩を並べるまでになったのだった。
隣国ルカム王国との戦争が終結して半年が経過した。今王宮の会議室で、国王夫妻はじめ王族、重臣、学者、そしてハーレニーたち官僚も含めて総勢16名が、丸く並べた椅子に、順不同で座っている。
ハーレニーはこのような会議に呼ばれるようになったことに震えた。武者震いである。
国王フレデリクがまず話し出す。
「さて、集まっていただきましたのは、我がフォルスフッド王国の未来について、忌憚のないご意見を皆様から伺うためです。フェルディナンドさん、何かご意見ありますか?」
と国王は、従兄弟の王太子フェルディナンドに話を振った。
「エスドート王国、ルカム王国、他諸外国が武器開発と製造を進める中、我が国は、農業、商業などに力を入れてきました。また、街道の整備や教育にも力を入れようとしています。あとは外交をどのように進めるか、でしょうか?」
とフェルディナンドが涼やかな声で答えると、そこにいた全員が満足げに微笑んだ。
国王フレデリクが、
「外務大臣に、例えばアルヌルフさんを起用して、我が国に良い印象をもっていただくという案があります。」
急にふられたアルヌルフが驚いて抗議しようとしたが、一瞬先に宰相の妻フランツィスカが声をあげた。
「フレデリク、何それ?ルカムには最新兵器がまだたくさん残ってるし、エスドートは我が国を意のままに操ろうとしてるのでしょ?アルヌルフさんの美貌で外交が何とかなるものなの?」
フレデリクはすまして、
「フランツィスカさん、私のことはフレデリクさんとお呼びください。」
「フレデリク、じゃなくてフレデリクさん、ええい、弟を、さん付けで呼ぶのに、まだ抵抗があるわ。」
「会議の時だけです。慣れてください。全員対等を意識づけるためです。」
と、フレデリクは言った。ハンレニーは、
「ルカム国民は、戦後すぐの我が国からの食糧援助を感謝しており、ルカムの兵器がこちらに向くことは、しばらく心配無さそうです。エスドート王国へ我が国がどのような態度を見せるかが、喫緊の課題と考えます。」
王妃エレオノーラが、
「美貌なら、エルンストさんの方が外交に向いていませんか?」
エレオノーラの兄アルヌルフがやっと発言できて、
「そうだよ、エルンストさんが良い。私は今日、何のために呼ばれたかと来てみたら、私が外務大臣だなんてびっくりしたよ。私には外交はできないし、いかにも弱そうな私だと相手にナメられる。エルンストさんなら堂々としていてぴったりだ。それから、王妃の兄の私が、実績もないのにヒョイと表舞台に出るのは、今後のために避けておこうよ。」
エルンストは、
「私も、外交を勉強したこともありません。それに今謹慎中の身です。」
と、アルヌルフもエルンストも乗り気では無かったが、フランツィスカが、
「でも、エルンストさんとアルヌルフさんが並べば、かなりのインパクトね。後ろに護衛のヴィーレさんをつけて、キラキラ男子外交団。」
と言い出し、皆が絶句した。そこに、
「それは良い案かもしれません。」
レギーナが発言した。
「エルンストさんとアルヌルフさんが、にこやかに握手の手を伸ばせば、誰でも自然と顔が緩むでしょう。そこに私たち官僚が交渉を始めると、こちらが有利に進むかもしれません。」
ハンレニーも、
「それは試す価値があると考えます。それに、もしキラキラ男子外交団が評判になれば、諸外国も一回会ってみたいと我が国との交流を考えるでしょう。」
皆のキラキラ男子外交団案への拒絶反応が薄れてくると、アルヌルフが、
「じゃ、私も護衛で雇えば?ヴィーレさんと並ぶよ。」
「おお」
戦時中、参謀本部で美しいヴィーレとアルヌルフが並んで護衛として立っていた情景を思い出して、国王フレデリクと宰相カールが、ぶんぶんと首肯する。
「ヴィーレさんとアルヌルフさんが並ぶと、威圧感がある護衛ではなくて、上品な印象ね。護衛とは言えないかもしれないけれど、相手国が我が国と仲良くなりたいと思うなら良いわよね。」
フランツィスカが言った。アルヌルフが、
「エルンストさんの横にはアレクサンデルさんを通訳に置けば?」
「良い絵面ですわね。」
レギーナが太鼓判を押す。
「アレクサンデルさんは、どちらにしても外交団に付けたい。最近ではエスドートの地方の訛りまで習得してるし、エスドート語、ルカム語以外も勉強しているようです。さて、外交メンバーの案ばかり出ましたが、肝心の外交方針もあわせて考えましょう。」
とフレデリクが言うと、前国王ジグムンドが、
「外交メンバー案を聞くと、外交方針がほぼ浮かんじゃったけど?相手国も自国も尊重し、仲良くするが決してへりくだらない。力による威圧でなく、尊敬させて自国を守る。」
「素晴らしい」
一同が嘆息した。
「それが出来たら最高だ。」
フレデリクが言うと、ハンレニーが、
「やりましょう。不可能でも目指しましょう。目指して行動していれば、自ずと道は開けるでしょう。」
一同拍手した。
フレデリクが、
「では、今の外交方針を基に、外交団の皆さんはエスドート王国はじめ諸外国の歴史や文化、言語を学習していただき、実際の外交場面を想定した練習もお願いします。準備期間は、エルンストさんの謹慎期間の残り、あと半年です。毎月このメンバーで会議を開き、調整しましょう。」
エルンストは、また遠慮がちに、
「実は、妻が懐妊しまして、体調が優れない日もあります。そんな日は、休ませてもらえないでしょうか?妻についていてやりたいのです。」
と言うと、妻のリルディスが、
「あなた、私たちは国のために、何かさせてもらえる日が来たら、どんな些細なことでも力を尽くそうと言ってきたではありませんか。」
「そもそもエルンストさん、リルディスさんのそばにいて、あなた何かの役に立つの?」
と、フランツィスカが、ずけずけ言うと、男性全員ギョッとした。リルディスは、エルンストにすがるような目で見つめられながら、
「そうですね、無い、ですね。むしろ、夫がいない方が身体が休まります。」
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