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学生寮アグネスの部屋
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エレオノーラがノックをするやいなや、扉が開きエレオノーラの身体が吸い込まれる。
「エーファが盗み聞き対策まで施したのよ。」
「え?そこまで?盗み聞き対策ってどうするの?」
「壁に穴があいていないか丹念にチェックし、壁が薄いところにはタペストリーを掛けます。この寮の部屋は、隣と排気口が共用なので、そこは板で塞ぎました。」
と、エーファが具体的に対策をした場所を見せながら教える。
「ありがとう、エーファ。いつもながら勉強になります。さて、アグネス、エーファ。私、フレデリク様と婚約しました!」
「え?」
「え?」
「あれ?エーファの耳にも入らなかった?私、フレデリク様の求婚をこの女子寮のエントランスで承諾して、中庭で私がフレデリク様を抱きしめてしまったのだけど。」
「ぞ、存じませんでした。どなたからも見られなかったのでしょうか?」
「わからないわ。私、フレデリク様しか見てなかったんですもの。」
「エレオノーラ、あなた、いつからそんな恋する女になってるの?」
アグネスが聞くと、
「よくぞ聞いてくれました。では、出会いからお話しますのでお聞きください。」
と、創立祭パーティー、中庭でのやり取り、侯爵家へ断る理由に公爵を使ったこと、エントランスでの求婚、中庭でノートに書いた契約の内容を詳しく語った。
「では、公爵様は、エレオノーラとずっと仲良くできれば、エレオノーラが実家のために働いても良いし、嫡男も産む必要なしと言われているの?」
アグネスが疑り深そうにたずねる。
「そうなの。それにベルク先生の講義聴き放題ですって。」
「だからエレオノーラは、あんなに結婚はしない、お兄様の側にいたいと言ってたのに、承諾したのね。」
「断る理由ある?どこを取っても素晴らしいお話でしょ?」
「計算高い女め。」
「計算するわよ。どこを計算しても、私には得しか無いと思って承諾しました。それに、フレデリク様は困窮した貴族が娘を差し出して来る度に、領地経営エキスパートをその貴族の家に送り込んで、娘を売らずに済むよう、赤字の家を立て直させたそうなの。」
「その話は聞いたことがございます。」
とエーファ。
「フレデリク様は本当に素敵な方だと思わない?それにね、昨日うちのタウンハウスに、フレデリク様と一緒に、フレデリク様のお母様、お姉様も来られたの。」
「国王陛下の妹君が!」
「そうなの。私、フレデリク様のお母様が国王陛下の妹君であることすら知らなかったのよ。フレデリク様が来られるからと、タウンハウスのほこりだけは大急ぎで掃除して、と言っても玄関から客間までだけしか出来なかったけど。そして、我が家の護衛とその家族だけしかスタッフはいないけど、そのメンバーで精一杯のおもてなししましょうと、私が決めたの。フレデリク様だけが来られると思い込んでいたから、見栄を張らない方が良いと思ってね。それなのに次の日フレデリク様のお母様まで来ちゃって、ものすごく焦ったけど、お母様もお姉様も、あたたかく接してくださったの。こんな私によ?なぜだかよくわからないけれど、とにかく私は夢の中にいるみたいなのよ。」
「そうなんだ。それから、中庭で抱きしめた話は?エレオノーラが、公爵様をってこと?」
「そう。だって、私、感激しちゃって、でも向こうから触らないって契約だから、私からしかできないでしょ。すごく喜んでたわ、フレデリク様。」
「ああそうですか。私もなんだかよくわからないけど、どうやらお似合いのお二人のようね。エレオノーラ、おめでとう。幸せになってね。」
「ありがとう、アグネス。私、こうなったら幸せになるしかないわ。とりあえず、公爵夫人修行よ。公爵家に恥をかかせないために、まず王族の家系図から頭に叩き込んでるところ。それに、我が家を少し豪華にするために、商売にも励みたいわ。」
「あの、エレオノーラ?公爵様との結婚のために、婚約者が商売に励むのは、いかがなものでしょうか。公爵様に恥をかかせるのでは?」
「そうなのアグネス?でも大丈夫よ。フレデリク様は私のすることに口出ししないと思うし。でも念のため、父を動かそうかしら。具体的にはうちの護衛のマティアスかな。マティアスの幼なじみが商会にいて、その幼なじみが、留守の時のタウンハウスを管理しているの。アグネスとエーファさんには、マティアスとその商会の人間を紹介したいと、父が言ってたわ。」
「それは大変ありがたいのですが、国王陛下の妹君がご訪問されたタウンハウスを、うちの商売の拠点に使って良いものやら。」
とアグネスが心配すると、エーファも、
「私がルカム出身とわかったら、差し障りがないですか?」
「商会の窓口になっているマティアスがルカム出身よ。酔っ払うといつもツィターを弾きながら、ルカムの歌を歌ってるわ。父が言うには、ルカム王国には、スパイの養成所があって、あちこちの国に潜入させているらしいけど、我が国出身の人間もいるそうよ。」
「そうなの?エーファはローザン男爵領の外では、ルカムのスパイだと疑われたり嫌な目にあってきたから、ルカム出身をひた隠しにしてきたけれど、ツェリェ伯爵領は、そんな雰囲気なのね。ルカム王国と接している我が家より、伯爵様の方がルカムのことを良くご存知なのかしら。」
「そうなのかしらね。父は特に何も考えて無いのんきな人だと思うけど。では、明日にでもタウンハウスをご案内します。マティアスと商会も。」
「お願いします。」
アグネスとエーファが頭を下げる。
「では、今日も護身術のお稽古をお願いします。」
とエレオノーラがエーファに頭を下げる。
「まだやるのですか?公爵夫人になられる方が?」
とエーファが驚く。
「もちろんです。自分の身は自分で守らないと。」
その言葉が終わるや否や、エーファがエレオノーラを羽交い締めにする。エレオノーラは手も足もビクとも動かせない。しばらくジタバタしてからエレオノーラが諦めて、
「まいりました。」
と言った。
「私など少し武術をかじっただけなのですよ。道具も揃えた男が襲ってきたら、ひとたまりもありませんね。でもお互い精進して、気持ちだけは負けないように育てましょう。」
「はい師匠!」
「師匠はやめてね。」
「エーファが盗み聞き対策まで施したのよ。」
「え?そこまで?盗み聞き対策ってどうするの?」
「壁に穴があいていないか丹念にチェックし、壁が薄いところにはタペストリーを掛けます。この寮の部屋は、隣と排気口が共用なので、そこは板で塞ぎました。」
と、エーファが具体的に対策をした場所を見せながら教える。
「ありがとう、エーファ。いつもながら勉強になります。さて、アグネス、エーファ。私、フレデリク様と婚約しました!」
「え?」
「え?」
「あれ?エーファの耳にも入らなかった?私、フレデリク様の求婚をこの女子寮のエントランスで承諾して、中庭で私がフレデリク様を抱きしめてしまったのだけど。」
「ぞ、存じませんでした。どなたからも見られなかったのでしょうか?」
「わからないわ。私、フレデリク様しか見てなかったんですもの。」
「エレオノーラ、あなた、いつからそんな恋する女になってるの?」
アグネスが聞くと、
「よくぞ聞いてくれました。では、出会いからお話しますのでお聞きください。」
と、創立祭パーティー、中庭でのやり取り、侯爵家へ断る理由に公爵を使ったこと、エントランスでの求婚、中庭でノートに書いた契約の内容を詳しく語った。
「では、公爵様は、エレオノーラとずっと仲良くできれば、エレオノーラが実家のために働いても良いし、嫡男も産む必要なしと言われているの?」
アグネスが疑り深そうにたずねる。
「そうなの。それにベルク先生の講義聴き放題ですって。」
「だからエレオノーラは、あんなに結婚はしない、お兄様の側にいたいと言ってたのに、承諾したのね。」
「断る理由ある?どこを取っても素晴らしいお話でしょ?」
「計算高い女め。」
「計算するわよ。どこを計算しても、私には得しか無いと思って承諾しました。それに、フレデリク様は困窮した貴族が娘を差し出して来る度に、領地経営エキスパートをその貴族の家に送り込んで、娘を売らずに済むよう、赤字の家を立て直させたそうなの。」
「その話は聞いたことがございます。」
とエーファ。
「フレデリク様は本当に素敵な方だと思わない?それにね、昨日うちのタウンハウスに、フレデリク様と一緒に、フレデリク様のお母様、お姉様も来られたの。」
「国王陛下の妹君が!」
「そうなの。私、フレデリク様のお母様が国王陛下の妹君であることすら知らなかったのよ。フレデリク様が来られるからと、タウンハウスのほこりだけは大急ぎで掃除して、と言っても玄関から客間までだけしか出来なかったけど。そして、我が家の護衛とその家族だけしかスタッフはいないけど、そのメンバーで精一杯のおもてなししましょうと、私が決めたの。フレデリク様だけが来られると思い込んでいたから、見栄を張らない方が良いと思ってね。それなのに次の日フレデリク様のお母様まで来ちゃって、ものすごく焦ったけど、お母様もお姉様も、あたたかく接してくださったの。こんな私によ?なぜだかよくわからないけれど、とにかく私は夢の中にいるみたいなのよ。」
「そうなんだ。それから、中庭で抱きしめた話は?エレオノーラが、公爵様をってこと?」
「そう。だって、私、感激しちゃって、でも向こうから触らないって契約だから、私からしかできないでしょ。すごく喜んでたわ、フレデリク様。」
「ああそうですか。私もなんだかよくわからないけど、どうやらお似合いのお二人のようね。エレオノーラ、おめでとう。幸せになってね。」
「ありがとう、アグネス。私、こうなったら幸せになるしかないわ。とりあえず、公爵夫人修行よ。公爵家に恥をかかせないために、まず王族の家系図から頭に叩き込んでるところ。それに、我が家を少し豪華にするために、商売にも励みたいわ。」
「あの、エレオノーラ?公爵様との結婚のために、婚約者が商売に励むのは、いかがなものでしょうか。公爵様に恥をかかせるのでは?」
「そうなのアグネス?でも大丈夫よ。フレデリク様は私のすることに口出ししないと思うし。でも念のため、父を動かそうかしら。具体的にはうちの護衛のマティアスかな。マティアスの幼なじみが商会にいて、その幼なじみが、留守の時のタウンハウスを管理しているの。アグネスとエーファさんには、マティアスとその商会の人間を紹介したいと、父が言ってたわ。」
「それは大変ありがたいのですが、国王陛下の妹君がご訪問されたタウンハウスを、うちの商売の拠点に使って良いものやら。」
とアグネスが心配すると、エーファも、
「私がルカム出身とわかったら、差し障りがないですか?」
「商会の窓口になっているマティアスがルカム出身よ。酔っ払うといつもツィターを弾きながら、ルカムの歌を歌ってるわ。父が言うには、ルカム王国には、スパイの養成所があって、あちこちの国に潜入させているらしいけど、我が国出身の人間もいるそうよ。」
「そうなの?エーファはローザン男爵領の外では、ルカムのスパイだと疑われたり嫌な目にあってきたから、ルカム出身をひた隠しにしてきたけれど、ツェリェ伯爵領は、そんな雰囲気なのね。ルカム王国と接している我が家より、伯爵様の方がルカムのことを良くご存知なのかしら。」
「そうなのかしらね。父は特に何も考えて無いのんきな人だと思うけど。では、明日にでもタウンハウスをご案内します。マティアスと商会も。」
「お願いします。」
アグネスとエーファが頭を下げる。
「では、今日も護身術のお稽古をお願いします。」
とエレオノーラがエーファに頭を下げる。
「まだやるのですか?公爵夫人になられる方が?」
とエーファが驚く。
「もちろんです。自分の身は自分で守らないと。」
その言葉が終わるや否や、エーファがエレオノーラを羽交い締めにする。エレオノーラは手も足もビクとも動かせない。しばらくジタバタしてからエレオノーラが諦めて、
「まいりました。」
と言った。
「私など少し武術をかじっただけなのですよ。道具も揃えた男が襲ってきたら、ひとたまりもありませんね。でもお互い精進して、気持ちだけは負けないように育てましょう。」
「はい師匠!」
「師匠はやめてね。」
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