絶望人生にさようなら、人間にして魔王に転ず。

御歳 逢生

文字の大きさ
12 / 37
第一章 フリネラアルペン

第十二話 魔王城再構築

しおりを挟む
「みんな集まってくれてありがとう。それじゃ紹介するよ。新しい仲間、ヤマだよ。」

「ヤマです。この度はオべリス殿お声がけでここで働かせてもらうことになりました。よろしくお願いします!!」

なんだか緊張しているなぁ。

「ヤマにはここになだれ込んだ人間どもを裁く仕事についてもらう。」

「私はオべリス殿の側近のような者で、ルーデン・バッハと申す。アンデッド種のリヴレスです。」

「わいはヤゴリと申す。雷狸族の頭をやらしてもらってます!」

「うらはナコビと申します。狐火族をまとめているものです。」

「私はメザカモ。雹狼族の長をしております。」

「それとゴブリンたちかな。ヤマは鬼人だからゴブリンより上位種にあたるかな。」

「ルーデン、ゴブリンの部下を少しヤマに分けてもらえるかな?」

「そうですね。その方がヤマ様の手伝いで進化するかもしれせんね。」

「ヤマ、どうかな。」

「そうですね。そうしていただけると有り難いことです。それにしても種族も人数もかなり多いですね。」

「そう!だからこの際、魔王城を一旦壊して、再構築します!」

「やはり一旦壊すのですね・・・。」

「ルーデン、名残惜しいかい?こればっかりは最初に決めたことだろ。」

「承知しております。それで、どうするのです?」

「それは、こうするのさ!」

僕は『ミナカ』を召喚して魔王城を一旦更地にした。
それを見ていたルーデン達は唖然としていた。まぁそれもそうだ。昨日まで住んでいた魔王城があっけなく無くなったのだから。

「それじゃ『ミナカ』、伝えた通りに創ってくれるかい?」

「御意。」

「〈セラ・ヴァナ・イリュン=ティアル〉星屑より生まれし虚無よ、我が声に応じて形を取れ。
 『カル=ヴァル=ネム』奈落の門、開かれよ。」
その瞬間、大地が震えた。空気が逆巻き、虚空が
そして目の前に1つの門現れた。それは上へと伸びる塔ではない。
地に向かい、無限に掘り抜かれる、底なき逆塔であった。

「〈グラン・ディス=ファルマ〉黒き炎よ、荘厳なる穹へ尖塔を突き立てよ。
 『ヴェル・ナ・ドムハイン』地に満ちよ、狂気と信仰の殿堂!」
虚空に火の光が落ち、黒曜石が湧き出すように塔を組み上げる。
尖塔が天を裂き、血のように赤いステンドグラスが光を孕む。
大聖堂『ダークカテドラル』が、現世に姿を現した。

「〈ナミエル・オルト=グライア〉断末魔を刻み柱となれ。『セラフィック・マウスレア』哭け。」
列柱が地の底へとねじれ、構築される。
各柱には、神々の怒りと人間の慟哭が封じられてゆく。
嘆きの列柱都市『セラフィック・マウスレア』が、城の一層を形成する。

「〈サーダナ・ジュル〉裁きの座に座せ。時の鏡を掲げよ。」
閃光とともに、ヤマ御殿が具現する。
四方に設置された檀荼幢が煌めき、浄玻璃鏡が人間の罪を映し出す。

「〈ザイ・セレファーン〉天の鉄より火を。魂を打ち鍛える聖なる炉よ、星炉宮、燃えろ。」
隕鉄が地に落ち、火柱となって殿堂を包む。
炎の中から、星炉宮がゆっくりと現れる。

「〈ヌ・カイラ。ロゥ・ファラ。ヲ・ラミア。ヲ・グルア〉季の輪を繋げ。生の形を地層に刻め。」
風が四方から吹き、色とりどりの街が出現する。それぞれの季節が独立した街となって階層を彩る、四季街。

「〈アヴェ・トルグ・アルダ〉命の鼓動よ、空間を食らえ。胎動宮、覚醒せよ。」
地面がし始める。
生きた肉壁がうごめき、胎動宮がその姿を顕す。

「〈メネス・カアノ〉記憶よ、死者の名を語れ。レクイエム・ネクロポリス、現世に座せ。」
死者の魂が交錯し、光と影が絡み合う墓標都市が築かれる。

「〈フィルタ・ラキア、サン=エクリース〉理よ、反転せよ。背理の庭園、姿を示せ。」
自然法則が捻れ、庭園が立ち現れる。
そこでは死が生を導き、時間が逆流する。

最後に、ミナカは両の掌を重ね合わせ、静かに告げる。

「『ヴェルグラス・ドムハイン』我が王の座、ここに定まれ。」
静寂が訪れる。
完成された魔王城は、空間そのものに存在となる。
その日より、魔族の領土は再誕した。

「ありがとう、『ミナカ』。下がっていいよ。」

「御意。」

「これが僕が構築した新魔王城だよ。名付けて、『ヴェルグラス・ドムハイン』!!」

「ルーデン様。私には門しか見えませんが・・・。」

「中に入ってみて。」

皆で『カル=ヴァル=ネム』の門を通り抜けると、そこには上空にどこまでも続く塔と大聖堂『ダークカテドラル』があった。宗教的荘厳さと狂気が同居し、魔族たちの信仰と力の象徴である。

「これはまた見事な大聖堂ですね。」

「そうでしょ。この『ヴェルグラス・ドムハイン』は下に向かって無限に続く塔なんだ。各階にそれぞれ転移陣を敷いているから君たちも自在に移動できるよ。」

「これは私たちの居住区もあるのでしょうか?」

「勿論だよ。君たち3種族は地下4階層の四季街がいいかな。好きなところに住んでいいよ。ルーデンは、そうだな。この大聖堂『ダークカテドラル』でもいいし、地下6階層 記憶の墓標都市『レクイエム・ネクロポリス』がいいんじゃないかな。」

「ちょっと様子を見て考えます。それにしてもこれほどの魔王城とは・・・かなり圧倒されています。」

3種族もゴブリンもルーデンももうそれはそれは唖然としていた。

「あ、あの~。私の仕事場は・・・。」

「あー、ごめんごめん。案内するよ。」

ヤマを仕事場の階層へと案内することにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。 召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。 多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。 しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。 何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。

ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります

はぶさん
ファンタジー
ブラック企業で心をすり減らし過労死した俺が、異世界で手にしたのは『ポイント』を貯めてあらゆるものと交換できるスキルだった。 「今度こそ、誰にも搾取されないスローライフを送る!」 そう誓い、辺境の村で農業を始めたはずが、飢饉に苦しむ人々を見過ごせない。前世の知識とポイントで交換した現代の調味料で「奇跡のプリン」を生み出し、村を救った功績は、やがて王都の知るところとなる。 これは、ポイント稼ぎに執着する元社畜が、温かい食卓を夢見るうちに、うっかり世界の謎と巨大な悪意に立ち向かってしまう物語。最強農民の異世界改革、ここに開幕! 毎日二話更新できるよう頑張ります!

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

処理中です...