愛していると言われても、頭上の数値は『殺意MAX』ですが?

セトガワ

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図書室の罠

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 ああ、今日も世界はGapまみれだ。
 校門をくぐると、嘘は始まる。

「ごきげんよう。本日もまた、ソラリス様の優雅さが際立っていらっしゃいますわ」

キャリー・オルデント
【総合値】-411

【嫉妬】-92
【憎悪】-87
【反感】-82
【劣等感】-76
【憤怒】-74

 そう驚くことでもない。
 この学院の女子はほぼ全員、ソラリスのことが大嫌いだ。
 アーサー以外のサブパートナー三人も学院生で、しかも女子人気がある。
 彼女たちが嫌う気持ちもわかる。
 校舎の前までくると、アーサーが落ち着かない様子で立っていた。
 私と目が合うと、一瞬戸惑った様子を見せた。

【総合値】-445

【猜疑】-95
【警戒】-92
【恐怖】-88
【忌避】-86
【トラウマ】-84

 総合値は昨日と近くても、構成は全く違う。
 オークションの件がよほど効いたのだろう。
 かなりビビっている。

「ソ、ソラリス……。ちょっといいか」
「あら、どうかされました?」
「昨日の件だけど……オークションに出品してなかったじゃないか」
「ええ。でもアーサー様には、そちらの方が良かったのではなくて?」
 
 淡々と話す。
 逆にアーサーの方は、かなり言葉を選んでいる。
 ソラリスはメンヘラではあったが、純真でもあった。 
 アーサーに反撃などしたことがない。
 だからこそ、余計不気味に映るのだろう。

「……そうだが、さすがに嘘は看過できない。香水を返してくれ。そうすれば水に流す」
 
 私は素直に懐から香水を取り出す。
 それを空中にワンプッシュ。
 霧のように舞うそれを、手首で優雅に受ける。

「なっ!? どういうつもりだ!?」
「いい香り。これは嘘つき王子には勿体ないですわ」
 
 ここで強く睨みつける。
 アーサーは短い悲鳴を漏らし、一歩後ずさる。
 
「これは私がいただきますが、よろしいですね?」
 
 眉根をギュッと寄せてみた。
 アーサーは目を逸らしながら答える。

「す、好きに、使えばいいさ……」
「ありがとうございますっ!」
 
 敢えて猫なで声を出して礼を述べておく。
 得体の知れない女だと植え付けておくのが大事だよね。

 ☆
 
 昼休みの図書館で、思考を巡らせる。
『ソラリスの救済』は非常に難易度が高いゲームだ。
 まずイベントの数が膨大過ぎる上、ランダムだったりする。
 放課後の教室で起こるイベントがあるとして。
 固定ではないのだ。
 何種類もある。
 しかも日付やストーリーの進行で、細部が変化したりなど、とても把握はしきれない。
 加えて、ここは完璧にゲーム通りには進行しない。
 昨日のアーサーとのやり取りでわかった。
 やりこんだ私でも、決して油断はできない。
 ——ガタッ。
 椅子が引く音がする。
 もう一人の利用者である女子が、立ち上がって出ていく。
 手には本を持ったままだ。

「あっ。貴方、本を返さないと痺れますわよ!」
  
 つい声をかける。
 図書館の本は全て魔術紋が組み込まれており、部屋から持ち出すと手に電気が走る。
 
「平気です。わたしの持ち物ですから」
「それは失礼」
 
 彼女は無事に出ていった。
 所持品は本当だったようだ。

「これで一人か。のんびりできるわね。……彼らが来なければだけど」

 サブパートナーの内、本好きが二人いる。
 心構えはしつつ、読書を続ける。

「——ひどすぎるよ……!」
 
 五分もしない内に女子の嘆きが聞こえてきた。
 出てみると、さっきの女子が座り込んで泣いていた。
 そばには、ビリビリに破られた教科書。
 そうか、これはイベントであった——

「——なにか事件か!?」
 
 待ってましたとばかりのタイミングで巨躯な男子が駆けつけてくる。

「ソラリス……!? これはどういう状況だ?」
「私もわかりませんわ、レオン様」

 レオン・フォルナー。
 サブパートナーの一人で、読書好きの内の一人だ。
 今回は彼の方だったのね。
 まず目を引くのは190cmを超えるであろう体格。
 騎士団長の息子であり、制服の上からでも鍛えられているのがわかる。
 特徴的な赤髪と琥珀色の瞳。
 精悍で凜々しい正統派イケメンだ。
 
「トイレから戻ったら、わたしの大事な本が破られて捨てられていたんです……! しかも魔石を埋め込んだ栞もなくて!」
 
 メーターを見るまでもなく嘘だとわかる。
 ただ私にはであって、レオンは別だ。

「君、本はどこに置いていた?」
「図書室内です……」
「他に誰がいた?」
「中にはわたしともう一人だけ……でした」
 
 気まずそうに、女子は私の方を一瞥した。
 
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