愛していると言われても、頭上の数値は『殺意MAX』ですが?

セトガワ

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当然の報いです

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 魔道具から炎が出ないことに、焦りまくるオルド。
 それを見たジャイルが涼しい顔で立ち上がる。
 逆に怖い。

「教授、それが火魔法なのでしょうか?」
「ち、違う! これはなにかの間違いでっ。おいグレイィィ——」
 
 舞台裾にいたグレイの元に全力で走っていくオルド。
 衆人環視ということも忘れ、彼の肩口を殴るように押す。

「貴様、私の言う通りに調整したのか!?」
「……ちゃんと、やりましたが」
「だったら、なぜああなる!? まともに炎が出ないではないか!」
「——見苦しいですわね」
 
 私の一声が校庭に響いた。

「オルド先生、まず私のサブパートナーに乱暴な真似をするのはやめてください」
「……これは失礼。ですがこれは師弟の問題ですぞ。部外者は黙ってください」
「でも先生の発明なのに、助手であるグレイ様に責任を押しつけるのは変です。それでは、魔道具の真の制作者が彼のようではありませんか」
 
 指摘すると、オルドの勢いが止まった。
 顔中から焦燥の汗を吹きだしている。
 私は、グレイにビシッと指をさす。

「グレイ様も、身の潔白を自分で証明するべきですわ! その程度できないようなら、この場でサブパートナーを破棄いたします!
「……わかったよ。やればいいんだろう」
 
 捻くれた感じでグレイはガントレットを受け取り、壇上にあがる。
 彼はオルドのように気合いを入れたり、力んだりしない。
 ごく自然体で、どこか気怠げに腕を空に伸ばした。

 ——ゴォオォォオオオオ!!

 目を瞠るような鮮やかな炎の渦。
 それが天高く昇っていく。
 広がる熱気が私たちの情感を刺激し、また炎の美しさに、誰もが心を奪われた。
 誰か一人が手を叩くと、それが連鎖して万雷の拍手へと変わる。

「さすがですわグレイ様! でもおかしいですわね? なぜ先生ではダメで、彼は成功したのでしょう。……あ、わかりましたわ!?」
 
 ここはもう大仰に、私は手を合わせる。
 誰もが注目している中、核心に迫ることを口にする。

「グレイ様の癖で、制作者の魔力にだけ反応するようにコードを書いたのでは?」
「……確認します」
  
 グレイの指先が光り、魔術コードが空中に浮かび上がる。
 それをその場で素早く書き換えていく。

「失礼。オルド先生が正しかったです。完全にボクのミスでした」
 
 どよめきが起こる。
 淡々と反してはいるけれど、衝撃の暴露をしているからだ。
 ジャイルが真っ先に反応した。

「オルド教授、これはどういうことでしょう。貴方の発明ではないのですか?」
「いやいやいや……! これにはですな、事情がありまして……」
 
 とぼけようとするので、私がトドメを刺しておく。

「事情って、まさかグレイ様の発明を横取りしていたのでは!? なんてことでしょう! それが教師のやることですか!?」

 ヒステリック気味に叫ぶと、観客たちからも軽蔑の声が巻き起こる。

「弟子の作品を自分の物にしてたわけか」
「最低じゃねえか! 逆らえない教え子を食い物にするなんてっ」

 オルドは誤解だと繰り返すばかりで、まともな説明はしない。
 いや、できないんだよね。
 実際、みんなが話す通りだから。
 
「ジャイル、こんな酷い人との契約なんてやめるべきだわ!」
「ええ、お嬢様の仰る通りです」

 ジャイルは感情を切り捨てた目で、オルドを冷然と見下ろす。

「オルド教授。ノルディ公爵家は、貴方との契約を破棄します。我々を欺いたことに対する違約金、さらに支援金に関する返還請求書を後日お送りします。ご覚悟ください」
「……だからぁ……違うってぇ…………」
 
 オルドは膝から地面に落ち、うなだれる。
 己の強欲が招いたことだし、なんの同情の余地もないかな。
 私はグレイに視線を送る。
 声は出さずに、口の動きだけでコミュニケーションを図る。

『上手くいきましたわね?』
『ああ、気分がいいよ』
『私も楽しかったです。やっぱり復讐は最高の娯楽ですわ』
 
 悪役令嬢らしいセリフを言っておく。

 ☆

 帰りの馬車の中で、私はジャイルに尋ねる。

「制作者がオルド先生じゃないって、知っていたのでしょう?」

 瞑目していたジャイルが、静かに瞼を上げる。

「公爵様と私は、オルドをずっと疑っていました。魔道具の質が上がった時期を考えると、グレイ様が制作者ではないかとも」
「だからお父様は、婚約者候補に彼を割り込ませてきたのね」
 
 公爵は戦略的な人なので、天才と娘がくっつくのならば、それも良しと考えたのだ。

「その通りです。問題は、グレイ様本人がオルドに協力的だったことです。それで証拠が掴めませんでした」
 
 グレイは限界まで我慢して、ある日プッツンといくタイプだからね。
 オルドを尊敬してたのも大きい。

「昔の先生は、本当に凄かったの?」
「彼も間違いなく天才でした。でも金と欲に溺れて才を腐らせてしまった」
「難しいのね、人生って」
「今回は、お嬢様とグレイ様の演技のおかげです。感謝いたします」
 
 穏やかな笑みを浮かべながら、ジャイルは胸に手を当てる。
 彼は優秀なので、私たちの三流演技など楽に見抜いていたのだろう。

「なんの話かしら」
「ふふ。しかし、お嬢様は変わられましたね。なにが起きたのでしょう」
「さあ。よくわからないわ」 

 とぼけたフリして、もう一度ジャイルの内面をのぞき見る。

 ジャイル・オードリー
【総合値】+80

【忠誠】+75
【感心】+62
【興味】+58
【警戒】-70
【軽蔑】-45

 私の評価、プラ転していた。

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