男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜

タナん

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二章

14話 皆肉食

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 俺はガリアの言葉に甘え、リタにアナンの村を案内してもらっていた。
 アナンの村の住居は木造建築が多いサンの村と違い石造りが殆どのようだ。
 リタ曰く鉄鉱石が取れるこの村では、鉄鉱石から鉄を取り出す製錬と鍛冶が盛んで、何かと火を使うことが多いからだそうだ。

「あっちが鉄を取るための採掘場、その下にあるのが製錬場、あそこで製錬された黒鋼をあたい達が買い取って形にするんだ。あそこには黒鋼を取りに行くことになると思うから覚えときな。」
「ん?鉄が取れて黒鋼になるんですか?」

「黒鋼は鉄鉱石と木炭と鎧山羊の血を一緒に炉に入れて作るんだ。
 鎧山羊は効果の魔法を使う山羊でな。その血に含まれるマナを鉄に混ぜると途轍もなく頑丈になるのさ。」

 この世界の鉄も俺のよく知る地球の鉄と同じものなのだろうか?
 そこに鎧山羊の血を使うことで頑丈になっているのか?
 あまり鉄とか詳しくない俺には色々考えるがわからない。
 ただ分かることは黒鋼が俺が知る鉄より途轍もなく頑丈と言うことだ。
 俺が使ってる剣も黒鋼で作られているらしいが、今まで散々使ってきて刃こぼれする気配はない。

「これもあたいが作った道具で黒鋼製で出来てんだ。」

 リタは窓から身を乗り出して指を指しながら色々教えてくれる。
 どうやらリタは教えたがりの気があるらしく、一通り村の主要施設を教えてくれた後は、窓から離れると部屋の中に置かれた道具を説明してくれる。

 ガリアは今日から働いてもらうって言っときながら、リタに村の案内をさせるあたり俺とくっつけようとしてるんだろう。
 少なくとも娘をやっても大丈夫な程度には男としてガリアに認められたのだろうか。
 それなら今まで必死にやってきた事が認められたようで嬉しい。

 俺はこの世界に来た当初はハーレムを作るぞ!っと意気込んでいた。
 だがセツをはっきりと好きだと自覚してからはそんな気はいつの間にか失せてしまっていた。
 その事がセリアとシオに言い寄られてはっきりとわかってしまった、勿論二人の好意は愛かどうかはおいといて嬉しい。
 だけどそれ以上にセツの気持ちを物にできるかどうかのほうが俺には重要なのだ。

 なのでリタと俺がどうにかなる事はない。
 今、彼女の部屋で二人きりでも問題はないのだ。

「さっき使ってたこの紙をとめる板はもしかしてリタさんが?」
「そうだ。この板の上についたこの部分には、叩いて細くした鋼を丸めて仕込んであって、元に戻ろうとする力を利用して紙を挟んで落ちなくなるようになってんだ。」
「やっぱりリタさんは凄いですね。こんなものを思いつくなんて……」
「そんな大した事じゃねえよ……」

 さっきガリアさんの前で褒めた時と同じように、俺の褒め言葉にリタさんは顔を赤くしながら目をそむける。
 女らしからぬ言葉使いの割にもじもじするその様は実に女性らしい。
 ちらちらと時折こちらを見る目はうぬぼれでなければ意識してもらえてるのだろう。
 なぜリタと部屋に二人きりなっているかは、ガリアさんに村を案内してもらえと言われた後の事だ。
 俺はリタさんに連れられ、外に出た。

 しばらくリタに井戸の場所や村長の家など普通に案内してもらっていると、俺とリタが歩いている様子を見て一人の女性が声を掛けてきた。

「あれ?リタあんたついに結婚する気になったの?」
「っ……そんなんじゃねえよ!」

 女性の言葉は顔を一瞬で赤くして力強く否定の言葉を上げる。

「顔そんなに赤くして説得力無いよ?」
「は?…いやっこいつはただの客で……」
「客の男にびびっと来ちゃったんだ?どこの男なの?」
「そ…そんなんじゃ……」

 案の定、女性のからかいにリタは初心な反応を見せた。
 その様子に女性はニヤリと笑う。どうみてもリタの言葉を信用していない様子だ。
 追求されて言葉に詰まってしまうあたり、もう駄目なようなので取り敢えず自己紹介をする事にする。

「俺は湊って言います。サンの村から来ました。戦士の試練を受けるため武器をリタさんに依頼したんです。」
「へー、サンの村から。リタったらいい男つかまえたじゃないの。絶対逃がしちゃ駄目よ。」
「だからただの客なんだって……」
「ははは……」

 女性の猛攻に普段は勇ましい口調のリタとは思えない弱弱しさだ。
 その様子に俺は苦笑いすることしかできない。
 女性はリタに何か耳打ちして去って行った。リタはできるか!っと叫んでいたが一体なにをふきこまれたんだろうか。

 気を取り直して村を歩いていると、また別のリタと同じ歳くらいの少女が話しかけてきた。

「あれ?その横にいる男の人は?」

 少女は俺の事を目を細めて見つめてくる。
 どうやら値踏みされているようだ。

「私の家の客だ。」
「ということは戦士?どこの人?」
「俺はサンの村から来ました。まだ戦士じゃなくて、今日は戦士の試練を受けるための武器を作ってもらいに来たんです。」
「サンの村……」

 少女の俺を見る目が変わった。その目はセツが獲物をしとめようとゆっくり近寄っている時と同質に感じる。

「サンの村の戦士になるって事はお兄さん強いんだ。」
「いえ、俺はまだ全然強くないです……」
「リタと一緒に私もどう?今の私の婚約者も戦士になる予定なんだけどいまいちなのよ。」
「なにいってんだ!あたいとこいつはそんなんじゃねえよ!」

 この村の女性はなぜこんなにも逞しいのだろうか。
 こんな気の強そうなリタに対して全く遠慮する気配がない。
 それともリタのこのすぐ赤くなる様子からして可愛がられキャラなのだろうか。

「ありがたい話なんですが俺は心に決めた人がいるので申し出を受ける訳にはいきません。ごめんなさい。」
「?なにか問題でもあるの?」
「俺が結婚するのはその人ただ一人のみと思ってます。」
「変なの。男がそんなの許されるの?」
「許されるも何も決めた事なんで。」

 やはりこの世界においては一人を愛そうと言うのは異質の存在なのだろう。
 セツが俺を愛しているかどうかはわからないが、少なくとも結婚する流れになっている現状を嫌がっているようには見えない。
 そのためなのかセツはどうも独占欲が強い面をみせている。もしそうなら俺はハーレムを築く訳にはいかない。
 俺は初めて他人に言葉に出す事でそう決意を固めた。

 そんなこんなで村を歩いていると声を掛けられ続けた。
 内容はリタが男を連れている!か、お前強いの?じゃあ私と結婚どう?のほぼ二択である。
 その度にリタが顔を赤くしたり、もじもじしたり、何か言いたそうな顔をしたりしていた。
 リタは恥ずかしさのあまり我慢ならなくなったようで、俺を鍛冶場とは別にある自宅に連れ込んで二階の窓から村を紹介することにしたのだ。

「そういえばここにはガリアさんと住んでるんですか?」
「いや、この家にはあたいとお袋だけだ。親父はまた別の家に住んでる。」

 この世界の女は結婚したからといって相手の男と必ずしも一緒に暮らす訳ではない。
 ハーレムを築いた男が、全員と一緒に住もうとすれば家が手狭になってしまう、そのため女の人が近くで家を構える事は珍しい事ではないらしい。
 ガリアとリタの関係は悪い物ではなさそうだったし、普通に別に暮らしているだけなのだろう。
 俺とリタがそんな他愛もない話をしていた所、誰かが階段を駆け上がる音が聞こえ、急に扉が開かれた。

「リタあんた男捕まえたんだって?!」
「お袋?!ちがっ……」
「男に言い寄るのを恥ずかしがって婚約者をつくれなかったあんたがお客さんを連れ込んだって聞いて安心したよ……絶対逃がすんじゃないよ!」
「お袋やめろって!ミナト、違うからな?別にそんなつもりで連れてきたんじゃないからな?」
「分かってますからリタさん落ち着いて。」

 リタと良く似た女性が扉を開けるなりぶっ込んできた。
 リタが必死に否定するが、リタの母親はリタの肩を掴んで男を逃がすなと発破を掛ける。

「ミナトさんといいましたね。話は聞いております。ここを自分の家だと思ってくつろいでください。
 泊まってもらっても結構ですので今日はリタを女にしてやってくださいね。」

 俺の方に向き直り、頭を下げながらド直球を投げ込んでくるリタの母親に、女性経験のない俺は面食らいながら顔を赤くしてしまう。
 リタの母親は俺が茫然としているうちにではごゆっくりと言って扉からそそくさと出て行ってしまった。
 部屋を出る時リタを睨みつけていたが恐らく分かってんだろうな?逃がしたら飯抜きだよ?とでもアイコンタクトしていたのだろう。
 ほどなくして扉の外から何か大きなものを引き摺る音が聞こえる。
 扉に手を掛けてみるとどうやら何か大きなものを置いたようで扉が開かない。
 完全に決めに来たようだ。

「えっと…すごい元気な方でしたね。」
「…うん……」

 リタは予想通りもじもじモードに入ってしまったようだ。
 ベッドに腰を掛けると俯きながらちらちらこちらを見てくる。
 俺に何を期待しているのだろうか。やっぱり子供な俺にはわからない、わからないのだ。

「さて……」

 しばらく無言の途轍もない何かの時間が過ぎるが、外の物をどけてくれる気配がないのでどうしようか思案する。
 力に任せて扉を開けるか窓から飛び降りるか。
 力がついた今では前者は扉や物を壊してしまいかねないし、後者が無難か。
 俺は部屋の脱出の算段を整え、リタに部屋を出ることを伝えようとする。
 するとなにやら外から男の声が聞こえてきた。

「ここにミナトという男がいると聞いた!出てきて俺と闘え!」
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