男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜

タナん

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二章

38話 クズ

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 俺の両親は離婚している。
 原因は母さんの浮気だ。
 
 表向きは仲睦まじい両親だった。
 それが勘違いだったと気づいたのは俺がちょっとした反抗期を迎えた中学二年の時、何となく学校に行きたくなくて通学路を引き返して家に帰っくると、リビングの扉越しに母さんの話声が聞こえてきた。
 
『あいつは金だけ家に入れとけばいいんだって~』

 それは父さんに対する母さんの認識だった。
 最初は耳を疑がったが、それから始まったのは父さんに対する罵詈雑言だ。

『私の事愛してる~だって! キモ!』
 
 父さんは気が弱くて少し頼りないが、母さんの言うような屑野郎では決してない。
 まじめに働いてるし、休みの日は出来るだけ家事を手伝ったり、どこかに一緒に出掛けてくれようとする。
 反抗期で父さんと俺は喧嘩しがちだったが、母さんが父さんの悪口を一言を言うたびに俺の心がそれは違うと叫んだ。

『家の事なんもしてくれないし』

 違う。
 俺の弁当を自分の分と合わせて毎日作ってくれているのは父さんだ。
 夕飯の片づけは進んでやってくれるし、風呂掃除は仕事から帰ってきた父さんの役目だ。

『意思がないっていうか情けないっていうかなんて言うか……男らしくないんだよね~』

 違う。
 情けないんじゃない。優しいんだ。
 父さんは自分は仕事でくたくたなくせに、俺達家族のことを優先してくれているだけだ。
 
 それに情けなくなんかない。
 俺が小さい頃、急に後ろから野良犬に押し倒されたことがある。

 すぐに父さんは野良犬を蹴飛ばしたが、それだけでは逃げてはくれず、父さんの腕に噛み付いてきた。
 父さんは腕を血まみれにしながらも何とか野良犬を撃退、その時、痛いだろうに俺を安心させるように『怪我無いか?』と声をかけてくれた。
 父さんの腕には今でもその時の傷跡がはっきりと残っている。
 

 そんな知りたくなかった母さんの本音を聞いてしまった俺は、色んな思いが湧いてきて涙で顔をぐちゃぐちゃにして廊下に立ち尽くしかなかった。
 俺が動き出したのは母さんが電話を終えてリビングから廊下に出てきてからだ。
 両親が離婚したのはその半年後である。
 

 
 俺がそんな体験をしたからなんだろうか。
 セリアやシオを始めとする女達にアピールされて踏ん切りがつかないのは。
 
 俺も男だからこの世界に来たときはモテモテになってハーレムを作ってやると息巻いた。
 だが、いざ女たちと関わりを持つとどうだ。湧いてきたのは裏切るんじゃないかという猜疑心。

 つまるところ俺は女が怖いらしい。

 だからリタに告白された俺は咄嗟に逃げに走ったんだろう。

「ごめん! 俺はセツが好きだ!」
「お……おう……そうか……」
「だから……俺の本妻はセツに決めてるから……今はごめん!」

 異邦人である俺が、どこまで彼らの結婚観を理解できているかはわからない。
 
 一人前の男はハーレムを築くのはこの世界では当たり前だ。
 男の少ないこの世界は、少しでも子供を増やすために日本のように浮気=悪というより、浮気と言う概念がない。
 だからといって女の嫉妬や独占欲がないわけではない。

 この世界の男にとってもやはり最初の妻は特別だからだ。
 初めての妻は男から最も大事にされ、全てにおいて優先される。
 逆に男が怪我や病気によりハーレムを維持する力を失った時、他の女達は離婚することを許されているが、本妻は最後まで添い遂げなければならない。
 つまり本妻は結婚した男がクズだろうが、動けなくなろうが、別れられないし、最後まで介護してでも見届ける義務がある。
 一見、本妻になることのメリットに対してデメリットが大きいように見えるが、だからこそ女は憧れるらしい。

 何人の女を囲おうが男の本当の愛は最初の妻である私だけの物。そこに女はグッとくるとのこと。

 つまり何かにつけて逞しいこの世界の女も、女の子だということだ。

 だから俺は最初の妻をセツにしたい。
 彼女の心を独占したい。
 たとえ俺が動けなくなっても、俺の心が他の女に移ることがあっても、最後はセツの元で眠りたい。

 俺はそう思っている事にした。

 ただ女が怖いだけのくせに。
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