40 / 47
二章
38話 クズ
しおりを挟む
俺の両親は離婚している。
原因は母さんの浮気だ。
表向きは仲睦まじい両親だった。
それが勘違いだったと気づいたのは俺がちょっとした反抗期を迎えた中学二年の時、何となく学校に行きたくなくて通学路を引き返して家に帰っくると、リビングの扉越しに母さんの話声が聞こえてきた。
『あいつは金だけ家に入れとけばいいんだって~』
それは父さんに対する母さんの認識だった。
最初は耳を疑がったが、それから始まったのは父さんに対する罵詈雑言だ。
『私の事愛してる~だって! キモ!』
父さんは気が弱くて少し頼りないが、母さんの言うような屑野郎では決してない。
まじめに働いてるし、休みの日は出来るだけ家事を手伝ったり、どこかに一緒に出掛けてくれようとする。
反抗期で父さんと俺は喧嘩しがちだったが、母さんが父さんの悪口を一言を言うたびに俺の心がそれは違うと叫んだ。
『家の事なんもしてくれないし』
違う。
俺の弁当を自分の分と合わせて毎日作ってくれているのは父さんだ。
夕飯の片づけは進んでやってくれるし、風呂掃除は仕事から帰ってきた父さんの役目だ。
『意思がないっていうか情けないっていうかなんて言うか……男らしくないんだよね~』
違う。
情けないんじゃない。優しいんだ。
父さんは自分は仕事でくたくたなくせに、俺達家族のことを優先してくれているだけだ。
それに情けなくなんかない。
俺が小さい頃、急に後ろから野良犬に押し倒されたことがある。
すぐに父さんは野良犬を蹴飛ばしたが、それだけでは逃げてはくれず、父さんの腕に噛み付いてきた。
父さんは腕を血まみれにしながらも何とか野良犬を撃退、その時、痛いだろうに俺を安心させるように『怪我無いか?』と声をかけてくれた。
父さんの腕には今でもその時の傷跡がはっきりと残っている。
そんな知りたくなかった母さんの本音を聞いてしまった俺は、色んな思いが湧いてきて涙で顔をぐちゃぐちゃにして廊下に立ち尽くしかなかった。
俺が動き出したのは母さんが電話を終えてリビングから廊下に出てきてからだ。
両親が離婚したのはその半年後である。
俺がそんな体験をしたからなんだろうか。
セリアやシオを始めとする女達にアピールされて踏ん切りがつかないのは。
俺も男だからこの世界に来たときはモテモテになってハーレムを作ってやると息巻いた。
だが、いざ女たちと関わりを持つとどうだ。湧いてきたのは裏切るんじゃないかという猜疑心。
つまるところ俺は女が怖いらしい。
だからリタに告白された俺は咄嗟に逃げに走ったんだろう。
「ごめん! 俺はセツが好きだ!」
「お……おう……そうか……」
「だから……俺の本妻はセツに決めてるから……今はごめん!」
異邦人である俺が、どこまで彼らの結婚観を理解できているかはわからない。
一人前の男はハーレムを築くのはこの世界では当たり前だ。
男の少ないこの世界は、少しでも子供を増やすために日本のように浮気=悪というより、浮気と言う概念がない。
だからといって女の嫉妬や独占欲がないわけではない。
この世界の男にとってもやはり最初の妻は特別だからだ。
初めての妻は男から最も大事にされ、全てにおいて優先される。
逆に男が怪我や病気によりハーレムを維持する力を失った時、他の女達は離婚することを許されているが、本妻は最後まで添い遂げなければならない。
つまり本妻は結婚した男がクズだろうが、動けなくなろうが、別れられないし、最後まで介護してでも見届ける義務がある。
一見、本妻になることのメリットに対してデメリットが大きいように見えるが、だからこそ女は憧れるらしい。
何人の女を囲おうが男の本当の愛は最初の妻である私だけの物。そこに女はグッとくるとのこと。
つまり何かにつけて逞しいこの世界の女も、女の子だということだ。
だから俺は最初の妻をセツにしたい。
彼女の心を独占したい。
たとえ俺が動けなくなっても、俺の心が他の女に移ることがあっても、最後はセツの元で眠りたい。
俺はそう思っている事にした。
ただ女が怖いだけのくせに。
原因は母さんの浮気だ。
表向きは仲睦まじい両親だった。
それが勘違いだったと気づいたのは俺がちょっとした反抗期を迎えた中学二年の時、何となく学校に行きたくなくて通学路を引き返して家に帰っくると、リビングの扉越しに母さんの話声が聞こえてきた。
『あいつは金だけ家に入れとけばいいんだって~』
それは父さんに対する母さんの認識だった。
最初は耳を疑がったが、それから始まったのは父さんに対する罵詈雑言だ。
『私の事愛してる~だって! キモ!』
父さんは気が弱くて少し頼りないが、母さんの言うような屑野郎では決してない。
まじめに働いてるし、休みの日は出来るだけ家事を手伝ったり、どこかに一緒に出掛けてくれようとする。
反抗期で父さんと俺は喧嘩しがちだったが、母さんが父さんの悪口を一言を言うたびに俺の心がそれは違うと叫んだ。
『家の事なんもしてくれないし』
違う。
俺の弁当を自分の分と合わせて毎日作ってくれているのは父さんだ。
夕飯の片づけは進んでやってくれるし、風呂掃除は仕事から帰ってきた父さんの役目だ。
『意思がないっていうか情けないっていうかなんて言うか……男らしくないんだよね~』
違う。
情けないんじゃない。優しいんだ。
父さんは自分は仕事でくたくたなくせに、俺達家族のことを優先してくれているだけだ。
それに情けなくなんかない。
俺が小さい頃、急に後ろから野良犬に押し倒されたことがある。
すぐに父さんは野良犬を蹴飛ばしたが、それだけでは逃げてはくれず、父さんの腕に噛み付いてきた。
父さんは腕を血まみれにしながらも何とか野良犬を撃退、その時、痛いだろうに俺を安心させるように『怪我無いか?』と声をかけてくれた。
父さんの腕には今でもその時の傷跡がはっきりと残っている。
そんな知りたくなかった母さんの本音を聞いてしまった俺は、色んな思いが湧いてきて涙で顔をぐちゃぐちゃにして廊下に立ち尽くしかなかった。
俺が動き出したのは母さんが電話を終えてリビングから廊下に出てきてからだ。
両親が離婚したのはその半年後である。
俺がそんな体験をしたからなんだろうか。
セリアやシオを始めとする女達にアピールされて踏ん切りがつかないのは。
俺も男だからこの世界に来たときはモテモテになってハーレムを作ってやると息巻いた。
だが、いざ女たちと関わりを持つとどうだ。湧いてきたのは裏切るんじゃないかという猜疑心。
つまるところ俺は女が怖いらしい。
だからリタに告白された俺は咄嗟に逃げに走ったんだろう。
「ごめん! 俺はセツが好きだ!」
「お……おう……そうか……」
「だから……俺の本妻はセツに決めてるから……今はごめん!」
異邦人である俺が、どこまで彼らの結婚観を理解できているかはわからない。
一人前の男はハーレムを築くのはこの世界では当たり前だ。
男の少ないこの世界は、少しでも子供を増やすために日本のように浮気=悪というより、浮気と言う概念がない。
だからといって女の嫉妬や独占欲がないわけではない。
この世界の男にとってもやはり最初の妻は特別だからだ。
初めての妻は男から最も大事にされ、全てにおいて優先される。
逆に男が怪我や病気によりハーレムを維持する力を失った時、他の女達は離婚することを許されているが、本妻は最後まで添い遂げなければならない。
つまり本妻は結婚した男がクズだろうが、動けなくなろうが、別れられないし、最後まで介護してでも見届ける義務がある。
一見、本妻になることのメリットに対してデメリットが大きいように見えるが、だからこそ女は憧れるらしい。
何人の女を囲おうが男の本当の愛は最初の妻である私だけの物。そこに女はグッとくるとのこと。
つまり何かにつけて逞しいこの世界の女も、女の子だということだ。
だから俺は最初の妻をセツにしたい。
彼女の心を独占したい。
たとえ俺が動けなくなっても、俺の心が他の女に移ることがあっても、最後はセツの元で眠りたい。
俺はそう思っている事にした。
ただ女が怖いだけのくせに。
0
あなたにおすすめの小説
男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺
マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。
その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。
彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。
そして....彼の身体は大丈夫なのか!?
異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~
松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。
異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。
「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。
だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。
牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。
やがて彼は知らされる。
その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。
金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、
戦闘より掃除が多い異世界ライフ。
──これは、汚れと戦いながら世界を救う、
笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。
高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。
第2の人生は、『男』が希少種の世界で
赤金武蔵
ファンタジー
日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。
あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。
ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。
しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。
ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話
ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。
異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。
「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」
異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~
榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。
彼はその日から探索者――シーカーを目指した。
そして遂に訪れた覚醒の日。
「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」
スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。
「幸運の強化って……」
幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。
そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。
そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。
だが彼は知らない。
ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。
しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。
これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる