恋愛騎士物語4~孤独な騎士のヴァージンロード~

凪瀬夜霧

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8章:ジェームダルから愛をこめて

1話:子犬のワルツ(リオガン)

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 十二月も終わり。もう少しで一年が終わる。
 ジェームダル王都に小さな家を借りて住み始めて数ヶ月。ようやく慣れた気がしている。

「リオガン兄ちゃん!」

 教会兼孤児院にいる子供が数人、走り寄ってきて抱きつく。それを受け止めて、リオガンは控えめな笑みを浮かべた。

「兄ちゃん、今日は雪合戦しようぜ!」
「えー、一緒に雪だるまにしようよ」
「寒いから中でご本読んで」

 子供達の沢山の要求に、リオガンは少し困りながらも頷いた。

「まず、雪合戦しよう。雪だるま、先に作ってて、ね? お昼ご飯食べたら、ご本、読もう」

 一つずつ確認するみたいに伝えると、子供達は素直に「はーい」と言ってそれぞれ散らばっていく。
 子供達が庭に出て走り回るのを見ていると、教会のシスターが笑いながら近づいてきた。

「リオガンさん、いつも有り難うございます」
「あの、いいえ」

 ペコリと頭を下げたリオガンに、シスターはくすくす笑っていた。

 アルブレヒトの仕事の手伝いは今もしている。けれど空いた時間で、教会の助けをしている。
 王になったアルブレヒトには手が足りない。今もほぼ、城に籠もりきりな状態になっている。たまに疲れた顔をしていて、欠伸をしたり体を解したりしているのを見る。
 そんな目も手も足りていない恩人の手や目として、ハクイン達と一緒に働いている。最近、ようやくそれも減ってきた。

 それと一緒に教会の子供とも接しているのは、神父様に受けた恩を返したかったから。
 チェルルから、神父様が死んだ事を聞いた時には悲しかった。あの人が助けてくれなかったら、今頃どうなっていたか分からない。
 優しくて、厳しかった。怒られたけれど、全部温かかった。
 そんな風になりたくて、孤児と触れあう時間を作ろうとハクインと話しをした。色んな事情で親のない子は、沢山我慢したり、悩んだり、寂しかったりしている。自分達はきっと、そうだった。
 だがらそんな子達の助けになれれば、恩返しと贖罪になるんじゃないかと思っている。

「今日はハクインちゃん、いないのですね」

 リオガンを見たシスターの言葉に、リオガンはコクンと頷く。

「今日、は、新年の料理作る、って」
「ふふっ、そうですね。新年ですものね」

 柔らかく笑うシスターに、リオガンは頷いた。

 ハクインは今、新年の料理を作っている。帝国で学んだ料理はそのまま、ハクインの趣味や楽しみになった。おかげで、美味しいご飯が食べられる。

「教会でケーキを焼いたのよ。少しだけれど、帰りに持って行って頂戴ね」
「有り難う、ございます」

 ぺこりと頭を下げたリオガンに、シスターは「こちらこそ、いつも有り難う」と言ってくれる。
 そのうちに遠くから「リオガン兄ちゃん!」と呼ぶ声がして、もう雪だらけになった子供達が遊びの誘いをしている。
 リオガンはそちらへと足を向け、まずは雪合戦を始めるのだった。


 雪合戦をしながら雪だるま作りに少しだけ参加して数時間が過ぎた。今はお昼ご飯を食べた後、小さな子達は昼寝の時間だ。

「――こうして、お姫様は王子様と幸せにくらしました」

 数人の子が側に座って絵本を読むのを聞いている。そして一人の子はリオガンの膝に座って楽しそうにしていた。

「おしまい」

 パタンと本を閉じると、聞いていた子達はそれぞれ散っていって布団に入る。小さな子はもう目を擦っていた。
 けれど膝の上に乗っていた子だけはリオガンの膝から降りず、振り向いてジッと見上げていた。

「どう、したの?」
「リオガンお兄ちゃんに、あげたい物があるの」

 そう言うとその子はトコトコと自分の布団まで歩いていくと、そこに隠していた小さな包みを持って来た。

「これね、この間シスターと一緒に作ったの。今日は特別な日だから、贈り物」
「特別な日だから、贈り物?」

 問いかけると、その子は静かにコクンと頷いた。

「シスターが言ってた。一年の有り難うを、大好きな人に伝えるのよって」

 包みの中は栞だった。少し厚めの台紙に押し花を貼り付けた簡単なもの。けれどとても心のこもったものだ。

「いつもご本読んでくれて有り難う。リオガンお兄ちゃん、大好き」

 にこっと笑った子が、座ったままのリオガンの頬に伸び上がってちょんとキスをする。そうして自分のベッドに戻って潜り込んだ。

 手にした栞を見ていると、心がぽかぽかしてくる。『嬉しい』っていう気持ちがこみ上げてくる。

 『一年の有り難うを、大好きな人に伝える日』

「……」

 ハクインは、何か欲しい物があるのだろうか?

 不意に浮かんだこの思いを、リオガンは教会を去るまでずっと考えていた。


 教会からの帰り道、リオガンは家で待つハクインに何か贈り物をする事を決めていた。思えば一度もそんな事をした事がない。

 店先を気にしながら帰る。その気持ちはウキウキとしていた。
 誰かに何か、特別な意味を込めて贈るというのはとても楽しい事だと知った。彼がどんなものを喜んでくれるのか、それを考えるのもとても楽しい。

 そんな感じで店を覗いていると、ふと一つの店を見て足を止めた。
 服を売る店の、その店先。吊してあるエプロンに目が留まった。
 ハクインは料理が好きになったみたいで、リオガンに沢山ご飯を作ってくれる。全部美味しくて、二人で食べるのが嬉しくて、とても幸せ。

「いらっしゃいませ。このエプロン、贈り物に人気なんですよ。奥様にどうですか?」

 奥様。その言葉にちょっと顔が熱くなった。ハクインは正式には奥様ではないけれど、一緒に住んでて、お互いに好きで、一緒にご飯を食べている。

「あの、これを」

 一番シンプルな、使いやすそうなエプロンを選んだリオガンはそれを包んで貰って、足取り軽くハクインの待つ家に向かうのだった。


 二人の家は王都の市民街にひっそりとある。入ってすぐがリビングダイニングキッチン。部屋が一つだけあって、寝室になっている。
 アルブレヒトはもう少しちゃんとした家をくれると言ったけれど、二人で話してそれを断った。大きな家は二人には広すぎて落ち着かないし、贅沢な暮らしがしたいんじゃない。二人で穏やかに暮らす場所があれば、それでよかったんだ。

「あっ、おかえり!」

 キッチンカウンターの奥から顔を見せるハクインは、満面の笑みで迎えてくれる。室内は美味しそうな匂いに満ちていた。

「今日はちょっと豪勢だよ! 鳥のレックとサラダ、コンソメスープは野菜の皮とか肉の皮や骨で作ったけど……でも、美味しいから! 後は焼きたてのパン!」
「ご馳走だね」

 朝からコトコトスープを煮ていたのは知っていた。美味しそうな匂いがしていたから。

 テーブルに料理を運ぶのを手伝って、二人でワインを開けてご飯を食べた。ハクインはとても嬉しそうで、沢山話してくれる。リオガンも嬉しくて、それを聞いている。

「それにしてもさ、この一年本当に色々あったね」
「そう、だね」

 本当に沢山の事があった。帝国に助けられて、ハムレットの家にお世話になって、アルブレヒトに再会して、ラン・カレイユに行って……。

「去年の今頃はまだ帝国だったからな。先生にはお世話になったよね」
「うん。とても、お世話になった」

 一生掛かっても返せないくらいの恩がある。ずっと匿ってもらって、食べさせてもらって、治療もしてくれた。ハムレットがいなかったら、怪我の治療もままならなかったと思う。
「そういえば、帝国は建国祭なんだよね。とても綺麗だったよな」
「うん」
「……また、見てみたいね」
「……うん」

 キラキラした飾りが、雪と一緒に光って綺麗だった。回りの人が笑顔で、とても楽しそうだった。
 でも、あの国にはもう行けない。リオガン達はあの国にとってテロリスト。それは変わらない。どんな事情があっても犯罪者を簡単に入れるわけにはいかない。

 なんとなく、しょんぼりしてしまった。
 けれどハクインは次にパッと明るい声を出した。

「でも、何年もたって二つの国がもっと仲良くなったら行けるようになるかもって、アルブレヒト様言ってたからさ!」
「そう、だね」
「チェルルやベリアンス様にも、会いに行こうね」
「うん」

 そうだ、希望は捨てちゃいけない。帝国が教えてくれたじゃないか。絶望しかなくて死ぬ事に希望を見ていた皆を助けて、本当にアルブレヒトを救い出してくれた。
 望めば欲しい未来に手が届く。例え届かなくても手を伸ばさないのは後悔が残ってしまう。そう、彼らは教えてくれた気がした。

「さっ、食べちゃおう!」
「うん」

 美味しい料理が冷めてしまう前に。二人は明日の話しや一年の話しをしながら、美味しい食事の時間を過ごした。

 全部を美味しく食べた後、片付けをしたリオガンはどのタイミングでプレゼントを渡そうか困っていた。なにせ、やったことがないから。

「どうしたんだ、リオガン?」
「え? ううん」
「だって、何か気にしてるだろ?」
「ちっ、違うよ!」

 思わずチラリと鞄を見てしまった。それに気付かないハクインじゃない。訝しむように眉を寄せたハクインがパッと鞄を取り上げて、リオガンは「あっ!」と声を上げた。

「ケーキ?」
「教会のシスター、から。新年だから」

 ドライフルーツを使ったパウンドケーキを手にしたハクインは首を傾げる。ちゃんと二人分あるし、これは片付けたらお茶を淹れて出すつもりでいた。

「二人分あるじゃん、隠さなくても……ん?」
「あぁ、あの!」
「この包み、なに?」

 鞄の中に入れておいた包みを手にしたハクインはとても訝しんでいる。そしてジトリと、リオガンを見た。

「プレゼントなんて、誰に……」
「ハクイン、に」

 真っ赤になって伝えたら、ハクインは緑色の瞳を丸くして、包みとリオガンを交互に見る。そして自分を指さした。

「俺?」
「うん。ハクイン、に、有り難うって」
「俺に、有り難う?」
「新年に、一年の有り難うを伝えるって、教えてもらった。ハクイン、いつも料理作ってくれる、から。だから、有り難うって」

 途端、ハクインは真っ赤になってリオガンを見た。とても照れたみたいに。

「ごめ! あの、俺……普段リオガン隠し事なんてしないのに、様子が変だったから」
「うん。あの、いつ渡すのか、分からなくて困った。誰かに贈り物、初めてで」
「あぁ、うん! だよな!」

 そうしたら二人だ顔を赤くして、最後にはハクインが笑った。

「まず、お茶にしようか。俺、淹れるね」
「うん」
「ケーキ、美味しそうだね」
「うん」

 あまり大きくはないキッチンに二人で立っている。ハクインがお茶を淹れて、リオガンはお皿やカップを用意した。
 そうして貰ったケーキを美味しく食べ終えると、ハクインの手は包みに伸びた。

「開けても、いい?」
「うん」

 ちょっとドキドキする。今更だけれど気に入ってくれるか心配だ。
 出てきたエプロンを見たハクインは耳まで赤くなって目を輝かせている。よかった、気に入ってくれたみたいだ。

「いい、のか?」
「うん。ハクイン、いつも料理有り難う」
「趣味みたいなものだって! あの、でも……凄く嬉しい」

 ギュッとエプロンを抱きしめて満面の笑みを浮かべるハクインを見たら、とても嬉しくて幸せな気持ちで溢れていた。

「あっ、でも俺何も用意してない」

 ふと気付いたみたいに声を上げたハクインが真剣に考えている。だからリオガンは慌てて首を横に振った。

「いら、ない。毎日の料理の、お礼、だから」
「えー、なんかそれは気がすまない!」

 腕を組んで難しく首を傾げながらハクインは考えている。そうして突然、ポンと手を打った。

「あるよ、贈れるもの!」
「なに?」
「俺」

 グッと親指で自分を指したハクインに、リオガンは首を傾げた。ハクインが贈り物?

 「?」を浮かべるリオガンに、ハクインが近づいてキスをする。触れるだけ、啄む様なものだったけれど、それだけでちょっとドキドキする。

「まだ、ちゃんとはしてないでしょ? リオガン、俺の事いらない?」

 コテンと首を傾げたハクインが可愛い。ドキドキして、首を縦に何度も振った。欲しい。けれどずっとタイミングが掴めなくて、色々気にもしてしまって、ちゃんと最後まではしていない。

「え? いらないの?」
「あっ、ほ……しい」

 そうか、「いらない?」だから首は横に振るんだ。今更そう思ったけれど、言葉にしたからそれでいいみたい。ハクインは嬉しそうに笑ってくれた。

「うん、貰って。俺、リオガンとちゃんと最後までしたいんだ」

 にぱっと笑うハクインは、お兄ちゃんだけどやっぱりとても可愛く見えた。


 ハクインの肌はとてもすべすべしていて、白くて綺麗。それに、とてもいい匂いがする。

「んぅ、リオガンくすぐったいだろ、それ」

 でも、首筋気持ちいいんだと思う。それにとても、ハクインの匂いがする。鼻を近づけて思わず確かめてしまうのは、仕方がないと思う。

「もう、犬みたいに。ちょっと恥ずかしいよ」

 優しく頭を撫でてくれる手が嬉しい。これがとても好きだ。

 首筋から鎖骨の辺りにキスをしていくと、ハクインは小さく甘い声で鳴く。これ、ちょっとドキドキする。
 しっとりとした肌を手で確かめながら、小さくてピンク色の乳首を舐めた。途端、反応が変わる。ヒクンと体が震えて、色を含む吐息になった。

 ハクインはここ、とても弱い。ペロペロ舐めるだけで少しずつ舌に引っかかってくる。声も甘くなって、気持ち良さそう。

「ちょっと、リオガンいつまでそこ舐めてるのさ」

 舐められるの、飽きちゃったのかな?

 上目遣いで見上げたリオガンは、今度はふっくらとした乳首を吸った。あまり力を入れずに、チュッと少しだけ。
 それだけでハクインは「ふぁあ!」と声を上げてビクッと身を硬くする。

「い、や?」
「ちが! そうじゃなくて、その……あぁ、もう! 気持ちいいよ」

 恥ずかしそうに顔を真っ赤にしたハクインが睨んでくる。多分、恥ずかしいんだと思う。
 前にこれで止めたら、凄く怒られた。「こういうのは嫌じゃないから、強引にしてもいい!」と言われてしまった。

 ちゃんと学習しているリオガンはそのまま何度も、乳首がツンと尖って硬くなり、周囲もふっくらするくらい入念にそこを攻め立てた。

「ふぁ、あっ、ま……ぅぅ! やぁ、そこばっか!」

 ずっとビクビクしているし、ピンク色から赤くなってきている。

「ご、めん。嫌、だった?」
「うっ」

 しょんぼりして聞くと、ハクインが困ったみたいに睨み付ける。
 これ以上はしたくなくなったかな?

「そこばっかだと、切ない。下も、触って欲しいってこと。察しろよ、バカ」

 真っ赤になってそっぽを向いたハクインを、リオガンは目を丸くして見た。そうして視線を下げると、ハクインの前は頭をもたげてトロトロになっていた。
 リオガンはそろりとそこに手を持っていく。だがその手はハクインの手で押さえつけられた。

「ばっ! 今日はそこ触らなくていい!」
「でも……」
「今日は後ろで最後までしたい! 今そこ触ったら、俺イッちゃうだろ」
「また、ちゃんと気持ち良く……」
「お前ほど体力ないの! 二度目なんて、まだちょっと無理だよ」

 少し悔しそうに視線を外された。そしてゴロンと寝転がったハクインは自分で膝裏に手を回して片足を大きく開いた。

「ここ、ちゃんと使ってくれよ。お前、まだ中に出してくれてないんだぞ」

 真っ赤なハクインの訴えに、リオガンも真っ赤になる。
 確かにハクインとこういう事を何度かしたけれど、全部外に出した。そもそも挿入は数回に一回。ハクインを疲れさせたくないのと、痛そうなのと、前にグリフィスに「中に出したらちゃんと掻き出さないと腹壊す」というのを聞いたから。ハクインに、痛い思いはしてほしくない。

 リオガンなりにハクインを大事にしたいという気持ちだったけれど、ハクインはもしかしたら待っていたのかもしれない。チェルルが言っていた。「ちょっと恥ずかしいけれど、幸せな瞬間だ」って。

 リオガンは体を下にずらしてハクインの腰を持ち上げ、ひくひくとする窄まりに舌を伸ばした。

「ちょ! リオガンだめ! 汚い!」
「へい、き」

 ちっとも汚いなんて思わない。そのまま窄まりを解すように唾液を絡めていくと、柔らかくなっていく。
 指を一本差し入れて浅く抜き差しをすると、ハクインは手を唇に当てて小さく息をつめる。顔は真っ赤なままだ。

「声、我慢しない、で?」
「だっ、んぅぅ!」

 柔らかい部分を丁寧に優しく押し上げると、指の先にコリコリとしたものが触れる。ここが気持ちいいのは知っている。触れるとすぐに、中がキュゥゥッと締めつけてくる。

 手で塞いでいる唇にキスをした。頭の中に直接、ハクインの声が響くみたい。
 一緒に中を広げ、指を増やしていった。痛くないように香油を少しずつ含ませたそこは、ぐちゅぐちゅに濡れていく。中もうねるように、リオガンの指を締めつけた。

「もっ、挿れ、てぇ」

 トロトロの目をしたハクインが可愛くて、ドキドキしてしまう。こんなに体が熱くてドキドキするのは、ハクインと抱き合っている時だけ。
 指を抜いて、大きく育ったものを押し当てる。そしてゆっくりと、ハクインの中に押し入った。

「んぅ! くっ、ふぅぅぅ」

 少し辛そうにするのが、いつも辛い。もう少し、上手にしてあげられればいいのに。負担なんてかけたくないけれど、繋がるとなるとどうしても……
 今度、こういうのに詳しそうな人……アルブレヒト様にでも聞いてみようか。

「リオガン?」

 頬に手を伸ばされ、触れてくる。涙に濡れた緑の瞳がジッとこちらを見ている。

「どう、したの?」
「……痛く、ない?」
「そりゃ、少しは。でも、それ以上に嬉しいよ」

 にぱっと笑うハクインの言葉に嘘はない。途端に、キュッと締めつけられて少し辛い。狭くて熱くて、絡まってきて締められる。自然と眉根が寄る。

「つらい、よね? いいよリオガン、動いて」
「でも……」
「欲しいって言ってるの。もぅ、忠犬すぎるよお前」

 ギュッと抱き寄せる腕は少し震えている。けれど中は誘うように締めつけて、欲しそうにしている。
 軽く引いて、突き上げる。狭く熱い肉壁に包まれて、気持ちよさに吐息が漏れた。

「いぃ、リオガン、気持ちいいよっ」
「僕、も」
「もっと、して?」

 涙で潤んだ瞳が見上げて、お願いの言葉を可愛く言われて、リオガンもその行為に夢中になった。ゆっくりと交わりを深くしていくと、先端が一層狭いところに当たる。ハクインはその度に嬌声を上げて、ブルブル震えて抱きついた。

「もっ、イッ! あぁぁ!」
「僕、もっ」

 狙って奥を突いた。これだと長く気持ち良くしてあげられない。突き上げる度に中がうねって締められて、それが熱くて絡まってくる。搾り取られるみたいで、とても気持ち良くて頭の中がぼーっとしてしまう。

「リオガンぅぅ!」
「っ!」

 とぷっと吐き出された白濁。それと同時に根元から吸い上げられるように刺激されて、リオガンも深い部分に押し当てて吐き出した。
 凄く、気持ちいい。ハクインは自分のだって、そんな気持ちが強くなる。他の誰にもあげたくない。この人は、自分だけのものなんだ。

 力の抜けたハクインが、ゆるゆると嬉しそうに微笑む。その力の無い、ちょっとだらしない笑顔が可愛い。
 キスをしたリオガンは、いつまでもこの中に包まれていたいと思ってしまう。まだまだ全然、萎えてくれない。

「もぅ、しかたないなぁ」

 汗だくでこちらを見上げたハクインが、笑いながらも溜息をついた。

「もう一度、していいよ」
「え?」
「リオガン全然萎えないし。それに、明日は休みだもん」

 新年の花火の音が遠くで聞こえる。その中で、二人は抱き合ってキスをした。
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