【完結】顔だけと言われた騎士は大成を誓う

凪瀬夜霧

文字の大きさ
34 / 38
1章

6話 特別な人(11)

しおりを挟む
 酒はあっという間になくなってしまう。二人でボトル一本だ、当然だろう。
 それでも程よく気持ちを解す効果はあった。二人で抱き合い、どちらともなく唇を寄せ、思うままに絡め合うくらいには。

「んっ、ふっ……っあ!」

 向かい合い、しっかりと抱きしめられて口づけを受けるクリスは与えられる快楽にクラクラしている。口の中を探るような舌がこんなに気持ちいいなんて、驚きしかない。
 ルークの舌が根元を、口の上側を撫でる度にヒクリと腰が浮きそうになる。気持ちいい刺激が走って、蕩けたように腰が砕けそうになる。
 けれど彼の腕はそれを許さない。逃がさないよう腰に回った腕、撫でられる頭。体の全部を使ってクリスを捕まえている人はとても切なげな目でこちらを見ている。

「ふはぁ!」
「息しろ」
「どう、やってっ!」
「鼻は何の為についている?」

 僅かに唇が離れる間も近くて、静かで低い声がそんな風に言ってくる。クリスは涙目で混乱していて、どうしていいかも分からなくなっていた。
 ペロリと唇を舐められるだけでビクッとする。全身が酷く敏感になっている感じがする。
 再び重なった唇から、ルークの溢れた魔力が入ってくる。それを取り込むと酷く落ち着かなくて、気持ちよくて朦朧とするんだ。

「ルーク、やっ……魔力、流さないでっ」
「そんなつもりはないが……そうか、魔力循環も初めてか」
「魔力、循環?」

 涙目のままハフハフして問うと、ルークは優しく目を細めて頷いた。

「互いの魔力を相手に流して、流れを促すんだ。意識的にもできるが、セックスでは自然と相手と自分の魔力が交わり入ってくる。キスや、それ以上で」
「んぁ」
「魔力の相性が良いほど気持ちいい。俺も今、とても気持ちいい」

 低く耳殻を擽る声にまたビクリとする。同時に、嬉しくも思う。彼も気持ちいいと言ってくれたから。

「俺とお前の相性は最高にいいんだろう。合わないと不快感しかないが、お前とはキスだけで理性が飛びそうだ。お前に、体の内側まで触れられている感じがする」
「あ……俺、も。ルークが、入ってくる」

 ぼんやりしながらも感じている事を伝えると、彼は本当に愛おしそうに目を細めて頭を撫でてくる。優しくて色っぽい紫色の瞳から、目が離せない。

 そのうちに体が浮き上がって、慌てて首に腕を回してしがみついた。抱き上げられるなんて平時は恥ずかしいのに、今は安心する。
 そのまま大きなベッドに寝かされて、今は高い天井とルークで視界がいっぱいだ。

「怖いか?」

 問われ、覆うように手が頬に触れる。その熱が心地よく思えて首を横に振ると、彼はホッとした顔をしている。
 優しく触れるだけの口づけすら気持ちよくて、甘く鼻にかかった音が漏れている。
 いつの間にかローブの紐は解かれ、肌に夜の空気が触れた。

「力だけ抜いとけ」

 柔らかく言われ、返事をするよりも前に手が体を確かめるように触れてくる。大きくて、ザラザラした手が敏感になっている肌を滑るだけでクリスはヒクリと震えた。

「綺麗な肌だな。白魚っていうのか」
「そんなっ」
「この辺り、気持ちいいのか?」

 臍の辺りに指が触れると、妙な感覚がして反応してしまう。くすぐったいとも、気持ちいいとも違う感じだ。
 ルークは察してその辺りを指先で触れてくる。それにもゾワゾワした感じがして、クリスは腰を捻って逃げようとする。でも、それをルークは許してくれない。

「遊ぶなぁ!」
「悪い、なんか可愛くて」
「かわ!」

 その言い方はちょっと嫌だ。可愛いじゃなくて、もっと、何か…………出てこない。なんて言われたいかも分からない。綺麗も嫌だし、格好いいはずもないから。
 でもそんなクリスに、ルークはさも当然と答えを放り込んでくる。

「愛しいと思う相手を可愛いと思うのは、わりとあるんじゃないか?」

 言われて、キョトッとして、考える。そういえば、自分もルークの何気ない様子や言動を「可愛い」と思う事があるじゃないか。
 あれ、か……なら、いいのか。

「それで? 何処が気持ちいい?」
「え? っ!」
「じっくりと、探していこうか」

 耳元で囁かれる甘く、少し意地悪な声。それだけで背を何かが駆け抜けるのに、目の前の男は随分と楽しそうにしている。

「あっ! それ、っ!」

 指が膝の辺りから内股にかけてをゆっくりと這ってくる。皮膚の薄い敏感な部分に触れられるだけでも慣れないのに、触れ方は確実に欲情を誘うもの。ビクビクするのと同時に自然と股が開いてしまって、そんな自分が恥ずかしくて手で顔を隠した。

「全身気持ちいいんだろうな。だからって無防備だぞ、クリス」
「やっ、だぁ……触るなっ」
「体は気持ち良さそうだが」

 あぁ、気持ち良くて恥ずかしくて大変だよ! ちくしょう!

 これだけでも大変なのに、不意に足の付け根に柔らかなものが触れ、更に濡れたものが触れ、吸われて声が上がった。ゾワゾワなんて言葉じゃ足りない。腰骨に響くような快楽が広がる感覚に、クリスの腰は僅かに跳ねた。

「お前の肌は柔くて白いから、簡単に跡がつく」
「んっ、や……っ! あぁ! あ……っ」

 やわやわと付け根に触れられ、揉まれ、舌がそこを這うだけで体が芯の方から熱せられていても立ってもいられなくなる。気持ち良くて、それが少し怖い。
 そんなクリスの体を捕まえるように抱きしめた人が、甘やかすように頭を撫で、触れるだけのキスをくれる。目に一杯の涙をためながら嬉しそうな人の顔を見つめて、クリスはこのままドロドロに溶かされる自分を想像した。

「あっ、気持ち、いい」

 陥落したように漏れる声はうわ言みたいで、出てしまえば止めどない。
 そして、そんなクリスを見てルークもまた、何かのスイッチが入ったみたいだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

ぼくが風になるまえに――

まめ
BL
「フロル、君との婚約を解消したいっ! 俺が真に愛する人は、たったひとりなんだっ!」 学園祭の夜、愛する婚約者ダレンに、突然別れを告げられた少年フロル。 ――ああ、来るべき時が来た。講堂での婚約解消宣言!異世界テンプレ来ちゃったよ。 精霊の血をひく一族に生まれ、やがては故郷の風と消える宿命を抱えたフロルの前世は、ラノベ好きのおとなしい青年だった。 「ダレンが急に変わったのは、魅了魔法ってやつのせいじゃないかな?」 異世界チートはできないけど、好きだった人の目を覚ますくらいはできたらいいな。 切なさと希望が交錯する、ただフロルがかわいそかわいいだけのお話。ハピエンです。 ダレン×フロル どうぞよろしくお願いいたします。

出来損ないΩの猫獣人、スパダリαの愛に溺れる

斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
旧題:オメガの猫獣人 「後1年、か……」 レオンの口から漏れたのは大きなため息だった。手の中には家族から送られてきた一通の手紙。家族とはもう8年近く顔を合わせていない。決して仲が悪いとかではない。むしろレオンは両親や兄弟を大事にしており、部屋にはいくつもの家族写真を置いているほど。けれど村の風習によって強制的に村を出された村人は『とあること』を成し遂げるか期限を過ぎるまでは村の敷地に足を踏み入れてはならないのである。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

異世界転移された傾国顔が、アラ還宰相の幼妻になって溺愛されるまでの話

ふき
BL
異世界に転移したカナトは、成り行きでアラ還の宰相ヴァルターと結婚することになる。 戸惑いながら迎えた初夜。衝動のキス、触れあう体温――そして翌朝から距離が遠ざかった。 「じゃあ、なんでキスなんてしたんだよ」 これは、若さを理由に逃げようとするアラ還宰相を、青年が逃がさない話。 ヴァルター×カナト ※サブCPで一部、近親関係を想起させる描写があります。

処刑エンドの悪役公爵、隠居したいのに溺愛されてます

ひなた翠
BL
目が覚めたら、やり込んだBLゲームの悪役公爵になっていた。 しかも手には鞭。目の前には涙を浮かべた美少年。 ——このままじゃ、王太子に処刑される。 前世は冴えない社畜サラリーマン。今世は冷徹な美貌を持つ高位貴族のアルファ。 中身と外見の落差に戸惑う暇もなく、エリオットは処刑回避のための「隠居計画」を立てる。 囚われのオメガ・レオンを王太子カイルに引き渡し、爵位も領地も全部手放して、ひっそり消える——はずだった。 ところが動くほど状況は悪化していく。 レオンを自由にしようとすれば「傍にいたい」と縋りつかれ、 カイルに会えば「お前の匂いは甘い」と迫られ、 隠居を申し出れば「逃げるな」と退路を塞がれる。 しかもなぜか、子供の頃から飲んでいた「ビタミン剤」を忘れるたび、身体がおかしくなる。 周囲のアルファたちの視線が絡みつき、カイルの目の色が変わり—— 自分でも知らなかった秘密が暴かれたとき、逃げ場はもう、どこにもなかった。 誰にも愛されなかった男が、異世界で「本当の自分」を知り、運命の番と出会う—— ギャップ萌え×じれったさ×匂いフェチ全開の、オメガバース転生BL。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

処理中です...