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13章:ラン・カレイユ人質救出作戦

6話:傷心を癒やすもの(ハクイン)

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 目が覚めたのは、まだ日の高い時間だった。
 窓から日差しが差し込んでいたし、風が通っていたのにパニックを起こして暴れて、側にいたリオガンに抱きしめられた。

 少しだけ怖かった。人の体温が気持ち悪くて、触れられるのが怖くてたまらなかった。

「大丈夫! ハクイン、僕だよ」
「リオ、ガン……?」

 頷いた。その香りがリオガンだって教えてくれる。首に刺さる堅めの銀の髪が、彼本人だと教えてくれる。

 ちょっとずつ落ち着いた。息が整って、辺りが見えるようになった。そうしてよやく、あの地獄から救い出されたんだと実感できた。


 その後、あの場にいた医者が謝罪にきてくれた。
 ハクインはこの人を恨んでいない。それどころか、助けようとしてくれた。朦朧とした意識の中、「これ以上は死んでしまう!」「なんて惨い事をするんだ!」と、声がしていた。
 あいつがいない時間はずっと、「大丈夫かい?」と声をかけて手当をしてくれた。
 最後には煩いと言われ、簀巻きにされて蹴り倒されていたのをぼんやり覚えている。


 食事は最初、上手く食べられなかった。口の中に入る液体が不快で、胃が受け付けなかった。粥なんてもってのほかで、白くてドロッとしたものを口に入れる事ができなかった。
 そして夜は、悪夢で何度も起きてしまった。あいつが死んだ事、乱暴した奴全員が死んだ事を知ったのに、心の中ではそうじゃなくて何回だって犯された。
 でもその度にリオガンがいて、「大丈夫」と言って抱きしめてくれた。

 リオガンは怖くない。触れられても気持ち悪いなんて思わない。それどころか、縋って頼もしく感じてしまう。
 情けない気がした。弟分だと思っていたのに、いつの間にか自分よりも大きくなったリオガンに負けたくなくて、気持ちだけは強がった。お兄ちゃんでいたかった。なのに今は、彼がいないと不安と恐怖で叫びだしてしまいそうなんだ。

 目が覚めて四日、少しだけ落ち着いて散歩をするくらいまではできた。
 第五師団の人達が心配の声をかけてくれて、温かく迎えられた。でもやっぱり、触られる事が少し怖いと思えている。彼らにそんな気持ちはないのに、申し訳なくて辛かった。
 リオガンはずっと守ってくれた。側にいて……それも情けなくて嫌だった。


 夜になって、風呂も入って、その後の経過も良好だと言われた。その間ずっと、リオガンは犬みたいについてくる。もう大丈夫って言っても嫌々と首を振るのだ。

「もう本当に大丈夫だから、俺の事は構わないでよ」

 優しく言っても駄目で溜息が出る。本当にもう、こんな情けない姿は見せたくないのに。お兄ちゃんなのに。

 背中を向けて布団に潜り込んで、寝ようと頑張る。でも、寝るのも怖い。またあの夢を見るんだと思ったら眠りたくない。
 それでもウトウトして、いつの間にか眠っていた。


 口が、閉じない。そこに男のものを咥えさせられて嗚咽が漏れる。苦しくて、息ができなくて、生臭い臭いが気持ち悪くて吐き気がする。
 嫌だ。でも、後ろも貫かれて腫れぼったい部分を擦りつけられて、痺れていく。反応なんてしたくないのに、止められない。

『おい、反応してやがるぜこいつ』
『酷くされるのがお好みか? とんだ淫乱だな』

 ちがう! こんなの違う!!

 気持ちよくなんかない。気持ちよくなりたくない。なのに体は勝手に反応してしまう。勃起して、先走りを溢して。
 酷くされているのに、射精はしてしまった。それは何度も痛いくらい。
 違う。思っても、説得力がない。射精してしまったのは気持ちよかったからだ。こんな事をされて、快楽を感じたんだ。


「……ィン」
「い、やぁ……」
「ハクイン!」
「!」

 真っ暗な部屋で、月明かりの元に銀色が光っている。青灰色の瞳が苦しそうにしている。そして、強く抱きしめてくれた。
 温かい。なのに、素直になれない。だって、なんて返せばいい? こんな汚い体で、何をしたらいいの。

「だい、じょうぶ……」

 リオガンは首を横に振る。そしてもっと強く抱きしめてくる。
 嫌だ、惨めだ。変えられて……いや、思い知らされた浅ましさが、醜さが身に染みる。リオガンみたいな綺麗なものに触れて欲しくない。綺麗すぎて、自分がとても汚く見える。

「リオガン離してよ!」
「いやだ」
「どうしてさ! 俺なんて、大事にされるようなものじゃない! 見たじゃん、あれ! あんな……あんな事されて俺、射精してたんだぞ! 気持ち悪くて汚いじゃんか!」
「ちがう!!」

 初めて聞いた強い声にビクリと震えた。見上げた、青灰色の瞳が悲しそうに近づいてくる。そして濡れた頬を手の平全部で拭って、触れるだけのキスをしてくれた。

 ヒクリと震える。温かな体温が触れる事に恐怖はない。リオガンだから、平気。それどころか、ドキドキする。目を見開いたまま、切なそうなリオガンを見ていた。

「好き、だよ」
「え?」
「ハクインが、好き。大好き、だから。だからそんな、悲しい事言わないで」

 ドキドキする。その好きは、どういう種類?

「俺は、お前のお兄ちゃん……」

 確認するみたいに言った。けれど、リオガンはブンブンと首を横に振る。そして今度はもっと確かに、唇に触れてくる。押し当てるような不器用なキスが心地よく感じる。

「お兄ちゃんなんて、思え、ない。もっと、側にいたい。もっと……先生と、チェルルみたいになりたい」
「それって、恋人ってこと?」

 真っ赤になりながら、リオガンはコクンと頷いた。

 どうしよう、嬉しい。お兄ちゃんだって思っていたのに、こんなの違うのに、胸の奥が熱くなる。
 あいつらにもキスをされた。でも、違う。全然違うんだ。触れたところから優しい気持ちに満たされているみたいだ。

「リオガン、あの……」
「もう、離さ、ない。ハクインを傷つける奴は、許さない。苦しめる奴は、許さない。僕じゃ、ダメ? 僕じゃ、ハクインを幸せにできない? 頑張るから、一緒にいてほしい」

 ドキドキする。ダメなんて思うはず無い。ううん、申し訳ない。なにひとつ初めてじゃなくなってしまった。

「バカ、だな。俺でいいのかよ。だって、あんな……あんな犯され方したんだぞ? ドン引きじゃん。俺、汚いとか思わないの?」
「思わない。ハクイン、可愛いし強い。僕はずっと、ハクインに助けてもらった。大事にしてもらった。だから今度は、僕が大事にしたい。ハクインの、助けになりたい」
「……バカだよ、ほんと。犬っころみたいに……ありがとう」

 泣きたくないのに泣いてしまった。だって、嬉しかったから。
 なのにリオガンはオロオロしている。こういう所が犬だなって思うんだ。

 触れて、みようと思った。怖いけれど、手を伸ばした。精悍になった顔を挟んで、僅かに起き上がって、唇に触れた。

 拒まれない。それに、嬉しい。もどかしいくらいで物足りなくて、でもそれがいい。

 リオガンは驚いて目を丸くしていた。触れた唇を指で触って、次には嬉しそうな笑みを浮かべた。
 その幸せ顔が、余計にハクインを熱くした。

「ねぇ、リオガン。もっとちゃんと触ってよ。嫌じゃないなら、もっと沢山キスして」

 まだ、怖いんだ。他人の体温じゃなくて、汚いと思われる事が。拭い去りたいから触れて欲しい。上書きしてほしい。全部今、やり直しをしたい。

 リオガンはゆっくりとキスしてくれた。かかる重みがとてもリアルに感じる。少し、重たい。リオガン、大きくなったから。
 でも中身はなんだか子供のまま。もの凄くちぐはぐだけど、そこが可愛いとも思う。
 それはこういう時もそうで、触れるだけのキスから先に進まない。もの凄くもどかしく思えてしまう。

「んぅ、もっとちゃんと……っ」

 首傾げても可愛くないから!

 もどかしい。どうしよう。もっと、口の中まで舌を入れてほしい。もう、どうして先にあんなゲス共に知らされたんだよ! 満足できないじゃんか!

 焦れったくて、ハクインは自ら舌を這わせてリオガンの唇を割った。そして、舌を絡めていった。

「んぅ、あっ」
「こう、いうの欲しい。リオガン、してよ」

 顔を赤くしながらも頷いたリオガンが、おずおずと近づいて唇に触れる。舌が唇を撫で、促されて開いた所から侵入されて、絡まって擽られていく。
 背中の辺りがゾクゾクする。これ、気持ちいい。大切に触れられて、嬉しくなって応えていく。胸の奥が切なく甘く痺れて、もっと欲しいって思う。
 こういうのを望んでいた。こうして欲しかった。今まで弟だって思っていたけれど、今はズレていく。もっと深く、触れて欲しい相手。もっともっと側にいて欲しい相手。

「リオガン、気持ちいいよ」
「僕、も……」
「触って? 体も、全部。お願い、もっと気持ちいいって、教えて」

 自ら服を脱ぎ捨てた。貧相だと思うけれど、恥ずかしいけれど、目の前のリオガンは真っ赤になって照れている。だからこれでいいんだ。
 リオガンの服も全部脱がせた。細いけれど引き締まった体。ちょっと羨ましい。そして体に残る沢山の痛々しい傷跡。全部、ルースに裏切られてハクインを庇った時の傷だ。

 そっと傷に触れて、そこに唇を寄せた。ヒクリと反応する体と掠れた声。リオガンは恥ずかしそうに、でも待てをしている。オロオロして、許しを待っている。

「痛かったよね、これ」
「痛まない」
「今はでしょ? あの時、死にそうだった。俺、何もできなかった」

 本当に、死んでしまうと思った。そうならなかったのはエリオットとランバート、そしてハリーのおかげ。全員、大変な事をしてしまった人。なのに、助けてくれた。

「俺ね、あの時だったんだと思うんだ」
「なに、が?」
「リオガンのこと、ちょっと特別に思ったの。チェルルも、勿論他の仲間も大事だけれど、リオガンが倒れた時にどうして俺じゃないんだって思った。俺はどうなってもいいから、リオガンだけは助けて欲しいって思った」

 恋情なんて知らなかったから、お兄ちゃんとして当然だって思った。でもあの時にはもう、お兄ちゃんとか弟とかじゃない特別があったのかもしれない。

 リオガンは切なそうに目を眇めて、覚えたばかりのキスをくれる。口腔を暴く舌がとても器用に撫でていく。気持ちいい場所もちゃんと抑えている。

「あぅ、あっ、ふぅ……ぅ」

 ダメ、これ気持ちいい。体中が熱くなる。あの時は怖いと思ったのに、今は怖くない。だって、好きだって思える人が大切にしてくれるんだから。
 それにしたって上手い。リオガン、昔から器用だった。一度教えると次には同じようにできるようになって、考えて更に上手になっていった。それって、セックスでも同じってこと?

「あっ、あぁ!」

 首筋に唇が触れてヒクリと震えた。さっき体を舐めて気持ちよかったんだってわかった。だから、返してくれている。
 手が体を探るように触れて、脇腹や、腹筋や、胸にも触れる。そうして乳首を捏ねられて、また小さく震えた。
 だからバレてしまった。そこが気持ち良いんだって。
 分かったら躊躇わない。リオガンの唇がまだ柔らかい乳首を舐めて、手も優しくふにふにしてくる。もどかしいけれどゾワゾワしてしまう。

「嫌じゃ、ない?」

 不意の上目遣いが犬みたい。お伺いを立てているみたいな。だから銀の髪をワシワシと撫でて、微笑んだ。

「気持ちいいから、もっとして欲しいよ」

 ニパッと笑った。そしてより熱心に体中を舐められて、触られる。背骨も、腰の辺りもビリビリ痺れる。一緒に、お尻の奥がキュッと締まる。ここを散々暴かれて、乱暴に開かれたのに欲しそうにしている。

 それはまだ少し怖い。気持ち悪いとか、思ったらどうしよう。好きなのに、拒んでしまったらどうしよう。
 でも、欲しい。熱くなって、疼いて仕方がない。お尻で気持ちよくなるようになってしまっている。恥ずかしいけれど、リオガンが相手なら嫌じゃないのも本当。後は、怖いと思うかどうかだけ。

 リオガンの口が、徐々に下へとさがっていく。そして立ち上がり、透明な液を滲ませる部分へと達して、その先端を舐められた。

「んぅぅぅ!」

 ビリッと痺れが背中から頭まで突き抜けた。でも、同時に嫌で銀の髪を押し下げようと手を突っ張った。

「いや、それダメ……汚い……」

 嫌だった。無理矢理口に突っ込まれて、飲み込むだけの物のように扱われて、気持ち悪くて吐いた。あんな事、させたくない。
 けれどリオガンは不服そうにする。そして先端をカプリと口の中に入れてしまった。

「んぅぅ! ダメ、汚いからぁ!」
「汚く、ない。ハクインのだから、嫌じゃ無い。ダメ、なの? 好きだから、したい」
「……え?」

 嫌じゃ、ないの? だって、美味しくない。気持ち悪くないの?

「僕が、したい。ハクインに、気持ちよくなってほしい。それでも、だめ?」

 見上げる潤んだ目が嫌々をしている。だめって、言えない。それに本当に望んでくれているなら、嫌じゃない。

「嫌じゃ、ないんだよね?」
「うん」
「……気持ち、いいよ」

 顔が熱くなる。でも、伝えた。
 リオガンは嬉しそうに微笑んで熱心に昂ぶりにしゃぶりついている。腰が抜けそうなほど気持ちいい。口を窄められて上下に扱かれて、何度か腰が浮いた。心臓、バカみたいになってる。壊れそうで怖いのに、壊れてもいいって思ってる。

「あぁ! だめ、出ちゃう! リオガン離して!」

 喉奥まで咥えられて、柔らかな狭い場所に敏感な先っぽをしゃぶられて、ハクインはあっけなく達した。フェラがこんなに気持ちいいなんて知らなかった。腰がずっと揺れてしまう。

「はぁ、あっ、飲んじゃだめだよ。気持ち悪くなるし、体に悪いよ」

 全部飲み込んだリオガンは更に吸い上げるみたいにして、残ったものも綺麗にしている。
 美味しくないのに、そんなの申し訳ない。
 でも、彼は平気そうな顔をしている。

「ハクインの、だから。嫌じゃない」
「俺の、だから?」

 じゃあ、リオガンのなら平気かもしれない。

 ふと脳裏に蘇った苦しい思い。でも、リオガンなら大丈夫かもしれないという希望もある。
 そろそろと近づいて、ハクインはリオガンの股座に顔を近づけた。

「ハクイン!」
「動かないで! 俺も、してみたい。あんなのに、負けたくない。リオガンのなら今も嫌じゃ無かったから、だから……俺、リオガンとちゃんと恋人のエッチがしたい」

 鼻先に大きくなった肉棒がある。嫌な形じゃない。色も白いし、綺麗にしてるし、形も滑らか。妙にいきり立って血管が浮いた赤黒いのとかだと、抵抗あるけれど。

 それでも、いきなり口にいれるのは怖かった。だから舌を伸ばして、触れてみた。
 思った以上に熱くて、塩っぱい。でも、吐きそうな嫌悪とかは感じない。
 次はもっと大胆に、舌で舐めてみた。竿も、カリも、鈴口も。あいつらみたいな雄臭さはなくて、透明な液がトロトロこぼれていく。

「ハクイン、それ、ダメだよ……」

 見上げると真っ赤な顔をして、息を荒くしているリオガンがとても恥ずかしそうだ。白い肌が染まって、震えている。我慢しているみたいに、泣きそうな顔をしている。

 とても、可愛い

 思ったら、全部嫌じゃなくなった。ううん、もっとしたくなった。切ない目で見下ろしながら我慢している。感じてくれていると思うと躊躇いはなくなった。

 パクンと大きく口を開けて咥えてみた。口腔を埋める肉の感触は一瞬思い出して怖くなったけれど、リオガンが切ない声で喘ぐのを聞いたら戻ってこられた。
 口の中にあるのはどこの誰とも分からない欲望じゃ無い。大事な、優しい人の大事な一部だ。大好きな人の欲望だから。
 舌で、口で、思うようにしゃぶった。そうするうちに自分までドンドン淫らな気持ちになって、腰がくねってくる。こんな思い初めてだ。そして、嫌じゃ無い。

「ハクイン、もっ、ダメだ!」

 グッと肩を掴まれて、そのまま強制的に口を離された。正直、不満だった。あのまま口に出されてもきっと嫌じゃなかったのに。
 ぷくっと頬を膨らませて不機嫌ですアピール。でもこんなのあからさまなポーズで、本当に怒ってるんじゃない。だってあれは、気遣ってくれた優しさなんだから。
 なのにリオガンはシュンとしてしまった。犬なら耳がペタンと折れて、尻尾が力なくへにゃりとするような。

 もぉ、どうしてこんな時にこんな顔するのかな。ただちょっとだけ、怒ったふりをしただけなのに。

 ハクインは近づいて、ちょんとキスをした。親愛の触れ合いみたいな軽いもの。
 その後は仰向けになって、自分で足を広げてみた。もの凄く恥ずかしい。

「ハクイン」
「きてよ、リオガン。ここも、ちゃんと上書きして」
「でも……」
「俺、嫌なんだよ。あんなのが俺の初めてなんて思いたくない。初めては愛されて、ちょっと恥ずかしいくらいがいいって思ってるんだから」

 そしてこれ、けっこう羞恥心が凄いんだから。

 リオガンはとても戸惑っている。あそこ、まだギンギンなのにオロオロしている。

「痛まない?」
「少し痛くてもいいよ。ほら、最初は痛いらしいし」
「でも、傷が悪化したら嫌だ」
「じゃあ、優しくしろよ。血が出るようなやりかたしたらもう二度とさせてやらないんだからな」

 ビクンと震えた。そして、首をコクコクしている。肯定しちゃったことに、気付いてるのかな? 思ったら、おかしくて笑った。

 引き出しから取り出した瓶には、精油が入っている。傷の具合とかを見るのに第四の人が使ってたやつ。それを思えばほぼ毎日、誰かに尻の穴を広げられていた事を思いだして恥ずかしくなった。医療行為だからイヤらしくないんだけれど、目的違えど行為は同じだった。

「はぁ……あぁ」

 精油を垂らした指が柔らかく入ってくる。それが、辛くない事がショックだ。最初あんなに痛くて違和感あったのに、今全然だ。尻の穴、緩くなってる。
 そして、ゾクゾクしてくる。もどかしい指の動きに焦れったくなってくる。だって、奥が訴えているんだ。ここだよって。

「もっ、奥に入れて……指の根元まで入れていいから……」

 戸惑いながらもリオガンがグッと奥まで指を入れる。瞬間、グッと欲しい所に届いた。ビクン! と体に走った電流に腰が浮く。ジンジン痺れて、嬉しそうにリオガンの指を締め付けている。

「ハクイン、大丈夫?」
「大丈夫! あの、もっと欲しい。そこ、気持ちいいのっ」

 男として屈辱的だけど、どうしようもない。そこが気持ちいい。そこだけで、何度も吐精してしまった。
 リオガンは最初ゆっくりそこを攻め立てたけれど、徐々に大胆に押し込むようになった。それだけで全身震えてしまう。
 でも、まだ物足りない。もっと確かに繋がりたい。
 性急に促して、指が二本になり、三本になった。痛みは全くないなんて言わない。でも、それ以上に満たされる。気持ちいいばかりじゃない。求められている事に喜びを感じている。

「リオガン、きて。お願い、俺もう欲しい!」

 しなやかな体が、正面から覆い被さる。ヒクついて少しぽってりした部分に、熱い肉棒の先が当たる。それがゆっくりと、ハクインの中を満たしていった。

「あぁう! はっ、あぁ……あんぅぅ!」
「うっ! ハクイン……」

 熱い、少し痛い、でも欲しい。気持ち悪いなんて思わない。だってこんなに大切に抱きしめられて、キスをされて、互いの体を触っている。逞しい肩甲骨の辺りに触れて抱きついて、ハクインは与えられる快楽に素直に溺れた。

 リオガンはゆっくり様子を見ながら我慢してくれて、時間をかけて最後まで入れてくれた。そうして後は、確かめるように中を解していく。
 性急じゃないから、理性が残っている。その中で感じていられる。「好き」と、何度も伝えた。「好き」と、何度も伝えてくれた。抱きついて、激しく乱れる事はないけれど確かに奥まで感じて、ハクインは幸せな中でちゃんと終えられた。

 リオガンはとても我慢して、達したハクインの中から抜け出ると自分で扱いてお腹の辺りに吐き出した。不満を口にしたらやっぱり耳も尻尾も下げてモゴモゴ言っている。

「悪化したら、嫌だから」

 しょぼくれて言った彼に、ハクインは面白くて笑う。そして腹の上で混ざり合った二人分の白濁を、指で混ぜて口に運んでみた。

「美味しくない!」

 でも、嫌悪はない。

 綺麗に体を拭って、抱き合って眠る心地よさ。リオガンの腕の中で、トロトロと眠りに落ちていく。
 もう、悪夢はきっと見ない。全部リオガンが塗り替えてくれたから。ちゃんと体が治ったら今度こそ、繋がったまま最後まで。もう、何も怖くないから。
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