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2章:ロッカーナ演習事件
5話:新たな被害者
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厨房に残っていた専属のコックたちに事情を説明して了承を得ると、ランバートは手早く四人分の夜食を作った。
サンドウィッチを数種類と、サラダとスープ、油を抑えた肉料理も少々。
それらをトレーに乗せて行こうとした時、背後で何かが動く音がした。
思わず剣に手をかける。厨房のコック達は既にいない。最低限の明かりだけで、周囲は薄暗い。
当然、今起こっている襲撃事件を警戒した。だが、音のした方にいたのはまったくそんな事件とは無縁そうな人物だった。
「君は……」
小柄で、見た目にも細い隊員だった。薄い銀色の髪に、大きな青い瞳が夜目にも目立つ。怯えきった顔をしてランバートを見た彼は、急いで逃げようとして派手に転んだ。
「大丈夫か?」
慌てて近づいて手を差し伸べる。彼はそれにすら怯えていて、全身で逃げようとしている。
「そんなに怖がらなくても大丈夫だ。俺は何もしない」
「あの」
「こんな時間に何をしているんだ? 厨房なら、もう誰もいないけれど」
「あの、貴方は?」
「俺はオーソン様に頼まれて夜食を作っていたんだ。厨房のスタッフにも了承を得たよ」
言うと、彼は困った顔をして俯いてしまう。けれど何かを言おうとして何度か顔を上げ、その度に勇気が萎れて俯くを繰り返していた。
何かありそうだ。もしかしたら、探そうとしていた相手かもしれない。
そうは思うが、ランバートを警戒している状態では話してくれそうにない。気が弱そうだから、無理に追及すれば逃げられてしまう。
さて、どうしたものか。思っていると、不意に複数の足音が聞こえてきた。
ランバートは咄嗟に彼を自分の後ろにおしのけた。彼は驚いた顔をしていたけれど、ランバートが「大丈夫」というと頷いて、服の裾を握り締めた。
「おーい、クリフ! お前いつまでかかってんだよ」
そう声を上げて厨房に入ってきたのは、ランバートとそう変わらない年頃の隊員だった。その後ろからもう一人、似たような隊員がついてくる。
彼らはランバートを見ると動きを止めて、次に嫌な顔で笑った。
「王都の騎士様でも、厨房に食材盗みに入るんだ」
何とも不快な言いようだ。ランバートは眉根を寄せる。
「上官からの命令だが。なんなら、オーソン様に確認に行くか?」
挑戦的な言葉に、入ってきた隊員は怯んだ。そして、ランバートの後ろに隠れている彼を見つけた。
「クリフ! お前そんなのに助けてもらってるのかよ」
怒号に近い声に、ランバートの背後で彼はビクリと体を震わせる。完全に怯えている様子だ。
「彼が、何か?」
「お前に関係ないだろ!」
「関係あるさ。こいつが厨房に食材を盗みに入ったのなら、上官に報告する義務がある。このまま連れて行くのが筋だ」
その言葉にクリフは体を強張らせる。ランバートはその腕を掴んで引き上げた。身長差もかなりあるから、彼の体は簡単に持ち上がった。
「お前らも現行犯か?」
言うと、威勢が良かった奴らは足早にその場から逃げていった。
足音が遠ざかっていくのを確認して、ランバートは彼の手を離した。そして深く頭を下げた。
「悪い、咄嗟とはいえ乱暴な真似をした。怖がらせて悪かったな」
「つれて……行かないの?」
戸惑った顔をした彼に柔らかく笑ったランバートは、改めて彼を見た。
ロディの死から既に三か月。他者を踏みつけてきた奴らがその間、新しい捌け口を見つけていないはずがない。この子はまさに、奴らにとって理想的な玩具だろう。
「俺はランバート。王都からきたんだ」
「僕は、クリフ」
「クリフ、ついてきてほしい。勿論、ちゃんと守るから。このままじゃお前も、ロディと同じようになってしまう」
「どうしてロディの事!」
クリフは驚いて声を上げる。ランバートは曖昧に笑って、次にクリフに料理の乗ったトレーを持たせた。
「詳しい話はこれでも食べながら。さぁ、ついてきて」
有無を言わせずにランバートはクリフを急き立てる。そして、上官たちの待つ部屋へと向かっていった。
◆◇◆
部屋についたクリフは、緊張と恐怖から顔色が悪くなった。まぁ、無理もない。部屋にいるのはオーソンだけではなく、ウェインと、何よりファウストがいるのだから。
「その子は?」
「ほら、また怖い顔をしていますよ。怯えています。笑ってください」
料理をテーブルに並べて「どうぞ」と言ったランバートを睨むファウストに、おどけたような調子で返す。綺麗な顔にますます皺を寄せたファウストを見て、ランバートは困ったように笑みを浮かべた。
「お前は無茶を言っている自覚があってやっているだろ」
「まぁ、笑えとまでは言いませんけれど。でもせめて、この子を追い詰めるような事はしないでください。とても臆病な子ですから。あんまり虐めたら逃げてしまいますよ、せっかくの突破口」
その言葉に、オーソンもファウストも目を丸くする。
ランバートはクリフの傍に立ち、上官たちの前に出す。勿論、ちゃんと肩に手を添えて、大丈夫だと示しながら。
「おそらく、ロディと同じように虐められているのだと思います。厨房に盗みに入るよう強要されている所に遭遇しました」
「最近厨房の食材が減っているというのは、もしや……」
オーソンが目を丸くしてクリフを見る。その視線にクリフは完全に委縮して、その場に両手をついて土下座した。
「ごめんなさい、オーソン様! ごめんなさい! ごめんなさい!」
「クリフ……」
オーソンの目がとても悲しそうに歪む。そしてそっと近づいて、震えながら謝る少年の肩を叩いた。
「すまない、クリフ。わしはまた、大切な隊員の苦しみを見逃してしまっていたのだね」
オーソンのその言葉に、顔を上げたクリフの目から大粒の涙が溢れだす。そして、声の限りに泣きじゃくった。
オーソンに縋って泣くクリフを見ていたファウストも、さっきまでの苛立ちが消えたように空気が穏やかになる。傍に立ったランバートにも、それがよく伝わった。
「今回は、ラッキーだったと思います」
「考えていなかった」
「俺は、明日にでも探そうと思っていました。きっと、今現在こうした被害者がいるだろうと推測できましたので」
ランバートの言葉に、ファウストは暗い顔をする。その心情が、面白いくらいに読める。
ファウストはとても真っ直ぐな人だ。そんな人にとって今回の事件は許しがたいものだ。感情的になると、この人は視野が狭くなってしまうのだろう。
だからこそ、ランバートはこの人が好きだ。素直に伝わる感情の波が心地よく、怒りを怒りとしてぶつけてくる。感情を押し殺す自分とは大違いだ。それに、周囲の言葉を真摯に聞く耳もある。決して一人で感情的になり、突っ走るような愚か者ではない。
「俺は、駄目だな」
呟かれる言葉には、反省が見える。申し訳なく目を伏せるファウストに、ランバートは穏やかに微笑んだ。
「貴方が真っ直ぐなのは知っています。犯人を許せないと思う気持ちが強い事も知っています。だからこそ、見落とすものもあるのでしょう。そこを拾ってサポートしていくのが、俺やウェイン様、オーソン様です。ダメだなんて言葉を簡単に使ってはいけませんよ」
思わず出た言葉に、ランバート自身も少し驚く。言うつもりはあまりなかったが、あまりに落ち込んでいる彼を見ると伝えたくなった。
驚いたようにランバートを見たファウストは、次には弱い困り顔になった。
「さて、落ち着いたら食べませんか? お腹が空いてはいい考えも浮かびません。クリフもこっちに来て食べなよ。正直痩せすぎだ」
ランバートの言葉に区切りをつけた全員が、手に料理を持って思い思いに食べ始める。スープはカップに入れてあるし、他の料理も手が汚れないようにしてある。
それらを口にした全員が、食事風景を満足そうに見ているランバートをマジマジと見た。
「お前、どうして騎士団に入ったんだ?」
「は?」
思わずといった感じでファウストが口にする。それに、ランバートは怪訝な顔をした。何を言いたいのか分からないが、他の面々は頷いている。
「レストランとか出したら絶対に繁盛する味だよ、これ」
「美味しい」
「貴族というのは料理などしないものだと思っていたが」
そこには、「あぁ」としか答えられなかった。
「俺は趣味人ですから。でも、趣味の域を出ないので本気で稼ごうとは思えないんです。趣味は趣味。仕事にしたら楽しくなくなりますし、無責任に辞めることもできませんから」
この言葉を聞いて、ファウストがまた渋面を作る。気遣わしいその顔を見ると、なんだか申し訳なくなってしまう。この人にはこんな顔ばかりさせてしまっている。
「お前は、器用なのに不器用だな」
ファウストの呟きに、ランバートは何とも言えない苦笑を浮かべた。
「さて、クリフ。少し話を聞かせてもらいたい」
腹が落ち着いて気持ちも落ち着いた。クリフも泣いたりはしていない。隣にランバートとオーソンが座り、ファウストを正面にして座っている。
「お前、ロディの事を知っているか?」
その質問に、クリフはビクリと体を震わせた。顔には緊張と、それ以上の罪の意識が見える。膝に置いた手がギュッと握られた。
「話してもらいたい。今起こっている事を、できるだけ穏やかに解決したい。襲撃事件の犯人に、見当はあるか?」
「それは分かりません。本当です! でもきっと、みんなロディの復讐を誰かがしているんだと、感じていると思います」
それに、ファウストは頷いた。
「ロディが虐められている事は、全員が知っている事だったんだな?」
「……はい。上官の前では隠していましたが、僕達の前ではあからさまでした」
「知っていても、誰も助けられなかったんだな」
クリフは躊躇いながらも頷いた。
「面倒な人達なのは、皆が知っています。それに、何か意見して標的が自分に移ったらって、考える人が大半でした。唯一あいつらに何か言えたのは、エドワード先輩だけです」
「エドワード?」
「会っていますよ。到着時、オーソン様の代わりに砦の案内をした人です」
ファウストはやや考える素振りをして、「あぁ」とだけ口にした。
「エドワードは三年目で、真面目で気遣いのできる隊員です。出身はここではありませんが、家柄もよく皆が一目置くような優秀な隊員です」
オーソンの言葉に、クリフも大きく頷く。
「エドワード先輩は、僕達みたいな気の弱い隊員を庇ってくれるんです。仕事を押し付けられても、こっそり手伝ってくれたり。僕は何度も助けられました」
「では、エドワードはロディとも関わりがあった可能性があるんだな?」
鋭いファウストの言葉に、クリフは驚いた顔をして、その後は声を大にして立ち上がった。
「エドワード先輩は違います! あの人は、こそこそ人を傷つけるような事はしません! あの人だけが、僕達の声を聞いてくれたんです!」
「クリフ」
目に涙を浮かべて手を震わせるクリフを座らせ、ランバートは困った顔をした。
エドワードが新たな突破口となる可能性がある以上、調べるべきだろう。だが、信頼の厚い彼を不用意に突くのは、彼を頼っている隊員を刺激する危険がありそうだ。
「犯人だと言っているわけじゃない。ただ、少しでもロディに関わる情報が欲しいんだ。普段の様子、交友関係。今回の犯人には、それらの情報からしか辿り着けないように思う。このままでは、事件は軽微なものでなくなるかもしれない」
冷静なファウストの言葉に、クリフもややあって頷いた。
おそらくクリフも感じているのだろう。事件が徐々にエスカレートしている事を。たとえ標的が自分を虐めている相手でも、起こっている事を喜ぶような陰気な子には見えない。
「ロディと、親しかったのか?」
「……はい。騎士になる前から、親しかったです」
「騎士になってからはどうだ?」
「友達でした。でも……僕のせいでロディが虐められるようになってしまったんです」
小さく呟く言葉。クリフは手を握り締める。その目には再び、大粒の涙が浮かんだ。
「僕のせいなんです。僕が最初に目をつけられて、ロディは僕を庇って奴らに反抗したんです。そしたらあいつらは、ロディを標的にして。なのに僕は、ロディに何もしてあげられなかった。それどころか、怖くてロディから遠ざかってしまったんです。僕が、ロディを殺してしまったようなものなんです!」
感情の起伏に涙がポロポロこぼれ、何度も手で拭いながら胸の奥に溜まっていたものを吐き出すようなクリフ。その様子に、ランバートは胸の奥が痛んだ。
おそらくずっと、罪悪感があったのだろう。自分のせいで友人が死んだと、自分を責め続けていただろう。けれど、それを口にするのも怖い。罪の意識と恐怖心とが、クリフを二重に苦しめ続けていたのだろう。
何かを言おうとしたランバートよりも先に、ファウストの手がクリフに触れる。ビクリと震えたクリフの頭を、ファウストは軽くポンポンと叩いた。
「お前ばかりが悪いのではない。知っていても手を差し伸べられなかったのは、皆も同じだ。俺も騎兵府を預かる長として、この現状を知らなかった罪がある。もう、一人で苦しむな」
穏やかなファウストがそう伝えると、クリフは驚いて、その後は静かに涙を流した。
「クリフ、これが最後の質問だ。ロディは、自殺だと思うか?」
クリフは戸惑った顔をした。だがすぐに、真っ直ぐな視線でファウストを見ると、首を横に振った。
「ロディは絶対に、自殺なんてしません。母親を置いて先に死ぬなんて、ありえません」
「絶対か?」
「はい、絶対です。早くに父親を亡くして、苦労して育ててくれた母親を大事にしていました。母がいるから頑張れると、言っていました。ロディは確かに大人しかったけれど、優しくて意志の強い人です。そんな人が、病気の母親を残して自殺なんてしません。あれは、あいつらが殺したんだと思います」
「言い切れる根拠はあるか?」
「……一度、僕はお風呂場で沈められそうになりました。エドワード先輩が助けてくれましたけれど、本当に溺れそうになったんです。あいつらはふざけただけだって言いましたけど、僕は本気で殺されるんだと思いました」
ファウストが重く頷く。そして一言、「分かった」と静かに言うと全員を見回した。
「クリフはしばらくランバートと一緒にいろ。ランバート、任せていいな?」
「はい、問題ありません」
一つ確かに頷くと、ファウストも安心した顔を見せた。今日一番の、穏やかな表情だ。
「でもランバート、あいつらがランバートを標的にしたら」
「気に病む必要なんてないよ、クリフ。ランバートを虐めようなんて度胸の据わった奴なんていやしないって。天上天下唯我独尊。やられたら数倍返しさ」
「ウェイン様……」
褒められてはいないだろうな。だが、ウェインは「そうでしょ?」と付け加えてくる。ファウストまでが楽しそうに笑った。
「笑わないでくださいよ!」
「いや、確かにお前を虐めようなんて俺でも思わないからな。本気で復讐されたら恐ろしくていられない」
「しませんよ、そんな陰湿なこと」
がっくりと肩を落としたランバートに、その場にいたクリフ以外が声を上げて笑った。
「ウェイン様、一つお願いがあります」
「なに?」
ゲラゲラ笑っているウェインに脱力しきって、ランバートが言う。視線は状況について行けずにオロオロしているクリフに向けられた。
「俺はクリフと同室がいいので、部屋を変えてもらえますか?」
「あぁ、そうだね。どれだけ守ろうにも、部屋から拉致られたら終わりだもん。いいよ、僕はファウスト様の部屋に間借りする」
「俺の部屋にか?」
驚いた顔をしたファウストが部屋を見回す。ベッドは間違いなくシングル。客室なのだから、王都の部屋ほど広くない。
「ソファーでも床でも。野宿よりはずっと上等です」
「上官がそんな場所で寝ていては示しがつかん。使っていない客室があるから、そちらに移りなさい」
オーソンが呆れたように言うのに、ウェインが舌をペロリと出す。とても親しい間柄なのだろう。
「さて、話はついたな。明日からの予定を決めて、風呂にするか」
一度大きく伸びをしたファウストが全員を見回す。クリフが一瞬戸惑ったけれど、ランバートに「もう巻き込まれたんだから」と言われて頷いた。
「ランバートは隊員からそれとなく情報を聞き出してくれ。気取られないようにな」
「はい」
「じゃあ、僕は少し町に行こうかな。ロディの事とか、外にも情報はありそうだしね。何よりこの町の力関係を改めれば、何か掴めるかもしれない」
「頼む」
「ではわしは、改めて報告書を詳しく確認すると共に、被害者を面談しよう。それとなく理由をつけて」
「頼む。俺は一年目と二年目を中心に、ここで稽古をつける」
「……は?」
ランバートの表情が固まった。それを見るファウストの顔は、実に悪く楽しそうだった。
「俺が動くと目立つからな。できる限り普通に、演習という目くらましをする。その方がお前達も動きやすいだろ」
「いや、それはそうですけれど……。えっ、一週間ですか?」
「当然だ」
「……地獄だ」
ランバートが溜息と共に肩を落とすのを見て、ファウストが声を上げて笑う。とても楽しそうだ。
「さて、この予定で動く。クリフは普通にしていろ。でも決して、ランバートの傍を離れるなよ」
「はい。それで迷惑にならないのでしたら」
「問題ない。そいつは一人くらい庇いながらでも十分に動ける」
「まぁ、問題はないと思います」
不安そうな目をランバートに向けるクリフに笑いかけ、一つ確かに頷くランバート。頼りない視線を向けていたクリフもようやく覚悟を決めたように、深々とお辞儀をして「お願いします」と口にした。
「さて、風呂だ。ランバート、行くぞ」
「え? あの、俺は……」
「お前も入っていないんだろ。二人で入っても上官用の風呂は狭くない」
ランバートの脳裏に、一カ月程前の記憶が鮮明に蘇る。その途端、警戒心はマックスだ。
だがそんなランバートなどお構いなしに、ファウストはひょいと腕を掴むとそのままズルズルと引きずって行ってしまう。
後はもう、されるがままだった。
サンドウィッチを数種類と、サラダとスープ、油を抑えた肉料理も少々。
それらをトレーに乗せて行こうとした時、背後で何かが動く音がした。
思わず剣に手をかける。厨房のコック達は既にいない。最低限の明かりだけで、周囲は薄暗い。
当然、今起こっている襲撃事件を警戒した。だが、音のした方にいたのはまったくそんな事件とは無縁そうな人物だった。
「君は……」
小柄で、見た目にも細い隊員だった。薄い銀色の髪に、大きな青い瞳が夜目にも目立つ。怯えきった顔をしてランバートを見た彼は、急いで逃げようとして派手に転んだ。
「大丈夫か?」
慌てて近づいて手を差し伸べる。彼はそれにすら怯えていて、全身で逃げようとしている。
「そんなに怖がらなくても大丈夫だ。俺は何もしない」
「あの」
「こんな時間に何をしているんだ? 厨房なら、もう誰もいないけれど」
「あの、貴方は?」
「俺はオーソン様に頼まれて夜食を作っていたんだ。厨房のスタッフにも了承を得たよ」
言うと、彼は困った顔をして俯いてしまう。けれど何かを言おうとして何度か顔を上げ、その度に勇気が萎れて俯くを繰り返していた。
何かありそうだ。もしかしたら、探そうとしていた相手かもしれない。
そうは思うが、ランバートを警戒している状態では話してくれそうにない。気が弱そうだから、無理に追及すれば逃げられてしまう。
さて、どうしたものか。思っていると、不意に複数の足音が聞こえてきた。
ランバートは咄嗟に彼を自分の後ろにおしのけた。彼は驚いた顔をしていたけれど、ランバートが「大丈夫」というと頷いて、服の裾を握り締めた。
「おーい、クリフ! お前いつまでかかってんだよ」
そう声を上げて厨房に入ってきたのは、ランバートとそう変わらない年頃の隊員だった。その後ろからもう一人、似たような隊員がついてくる。
彼らはランバートを見ると動きを止めて、次に嫌な顔で笑った。
「王都の騎士様でも、厨房に食材盗みに入るんだ」
何とも不快な言いようだ。ランバートは眉根を寄せる。
「上官からの命令だが。なんなら、オーソン様に確認に行くか?」
挑戦的な言葉に、入ってきた隊員は怯んだ。そして、ランバートの後ろに隠れている彼を見つけた。
「クリフ! お前そんなのに助けてもらってるのかよ」
怒号に近い声に、ランバートの背後で彼はビクリと体を震わせる。完全に怯えている様子だ。
「彼が、何か?」
「お前に関係ないだろ!」
「関係あるさ。こいつが厨房に食材を盗みに入ったのなら、上官に報告する義務がある。このまま連れて行くのが筋だ」
その言葉にクリフは体を強張らせる。ランバートはその腕を掴んで引き上げた。身長差もかなりあるから、彼の体は簡単に持ち上がった。
「お前らも現行犯か?」
言うと、威勢が良かった奴らは足早にその場から逃げていった。
足音が遠ざかっていくのを確認して、ランバートは彼の手を離した。そして深く頭を下げた。
「悪い、咄嗟とはいえ乱暴な真似をした。怖がらせて悪かったな」
「つれて……行かないの?」
戸惑った顔をした彼に柔らかく笑ったランバートは、改めて彼を見た。
ロディの死から既に三か月。他者を踏みつけてきた奴らがその間、新しい捌け口を見つけていないはずがない。この子はまさに、奴らにとって理想的な玩具だろう。
「俺はランバート。王都からきたんだ」
「僕は、クリフ」
「クリフ、ついてきてほしい。勿論、ちゃんと守るから。このままじゃお前も、ロディと同じようになってしまう」
「どうしてロディの事!」
クリフは驚いて声を上げる。ランバートは曖昧に笑って、次にクリフに料理の乗ったトレーを持たせた。
「詳しい話はこれでも食べながら。さぁ、ついてきて」
有無を言わせずにランバートはクリフを急き立てる。そして、上官たちの待つ部屋へと向かっていった。
◆◇◆
部屋についたクリフは、緊張と恐怖から顔色が悪くなった。まぁ、無理もない。部屋にいるのはオーソンだけではなく、ウェインと、何よりファウストがいるのだから。
「その子は?」
「ほら、また怖い顔をしていますよ。怯えています。笑ってください」
料理をテーブルに並べて「どうぞ」と言ったランバートを睨むファウストに、おどけたような調子で返す。綺麗な顔にますます皺を寄せたファウストを見て、ランバートは困ったように笑みを浮かべた。
「お前は無茶を言っている自覚があってやっているだろ」
「まぁ、笑えとまでは言いませんけれど。でもせめて、この子を追い詰めるような事はしないでください。とても臆病な子ですから。あんまり虐めたら逃げてしまいますよ、せっかくの突破口」
その言葉に、オーソンもファウストも目を丸くする。
ランバートはクリフの傍に立ち、上官たちの前に出す。勿論、ちゃんと肩に手を添えて、大丈夫だと示しながら。
「おそらく、ロディと同じように虐められているのだと思います。厨房に盗みに入るよう強要されている所に遭遇しました」
「最近厨房の食材が減っているというのは、もしや……」
オーソンが目を丸くしてクリフを見る。その視線にクリフは完全に委縮して、その場に両手をついて土下座した。
「ごめんなさい、オーソン様! ごめんなさい! ごめんなさい!」
「クリフ……」
オーソンの目がとても悲しそうに歪む。そしてそっと近づいて、震えながら謝る少年の肩を叩いた。
「すまない、クリフ。わしはまた、大切な隊員の苦しみを見逃してしまっていたのだね」
オーソンのその言葉に、顔を上げたクリフの目から大粒の涙が溢れだす。そして、声の限りに泣きじゃくった。
オーソンに縋って泣くクリフを見ていたファウストも、さっきまでの苛立ちが消えたように空気が穏やかになる。傍に立ったランバートにも、それがよく伝わった。
「今回は、ラッキーだったと思います」
「考えていなかった」
「俺は、明日にでも探そうと思っていました。きっと、今現在こうした被害者がいるだろうと推測できましたので」
ランバートの言葉に、ファウストは暗い顔をする。その心情が、面白いくらいに読める。
ファウストはとても真っ直ぐな人だ。そんな人にとって今回の事件は許しがたいものだ。感情的になると、この人は視野が狭くなってしまうのだろう。
だからこそ、ランバートはこの人が好きだ。素直に伝わる感情の波が心地よく、怒りを怒りとしてぶつけてくる。感情を押し殺す自分とは大違いだ。それに、周囲の言葉を真摯に聞く耳もある。決して一人で感情的になり、突っ走るような愚か者ではない。
「俺は、駄目だな」
呟かれる言葉には、反省が見える。申し訳なく目を伏せるファウストに、ランバートは穏やかに微笑んだ。
「貴方が真っ直ぐなのは知っています。犯人を許せないと思う気持ちが強い事も知っています。だからこそ、見落とすものもあるのでしょう。そこを拾ってサポートしていくのが、俺やウェイン様、オーソン様です。ダメだなんて言葉を簡単に使ってはいけませんよ」
思わず出た言葉に、ランバート自身も少し驚く。言うつもりはあまりなかったが、あまりに落ち込んでいる彼を見ると伝えたくなった。
驚いたようにランバートを見たファウストは、次には弱い困り顔になった。
「さて、落ち着いたら食べませんか? お腹が空いてはいい考えも浮かびません。クリフもこっちに来て食べなよ。正直痩せすぎだ」
ランバートの言葉に区切りをつけた全員が、手に料理を持って思い思いに食べ始める。スープはカップに入れてあるし、他の料理も手が汚れないようにしてある。
それらを口にした全員が、食事風景を満足そうに見ているランバートをマジマジと見た。
「お前、どうして騎士団に入ったんだ?」
「は?」
思わずといった感じでファウストが口にする。それに、ランバートは怪訝な顔をした。何を言いたいのか分からないが、他の面々は頷いている。
「レストランとか出したら絶対に繁盛する味だよ、これ」
「美味しい」
「貴族というのは料理などしないものだと思っていたが」
そこには、「あぁ」としか答えられなかった。
「俺は趣味人ですから。でも、趣味の域を出ないので本気で稼ごうとは思えないんです。趣味は趣味。仕事にしたら楽しくなくなりますし、無責任に辞めることもできませんから」
この言葉を聞いて、ファウストがまた渋面を作る。気遣わしいその顔を見ると、なんだか申し訳なくなってしまう。この人にはこんな顔ばかりさせてしまっている。
「お前は、器用なのに不器用だな」
ファウストの呟きに、ランバートは何とも言えない苦笑を浮かべた。
「さて、クリフ。少し話を聞かせてもらいたい」
腹が落ち着いて気持ちも落ち着いた。クリフも泣いたりはしていない。隣にランバートとオーソンが座り、ファウストを正面にして座っている。
「お前、ロディの事を知っているか?」
その質問に、クリフはビクリと体を震わせた。顔には緊張と、それ以上の罪の意識が見える。膝に置いた手がギュッと握られた。
「話してもらいたい。今起こっている事を、できるだけ穏やかに解決したい。襲撃事件の犯人に、見当はあるか?」
「それは分かりません。本当です! でもきっと、みんなロディの復讐を誰かがしているんだと、感じていると思います」
それに、ファウストは頷いた。
「ロディが虐められている事は、全員が知っている事だったんだな?」
「……はい。上官の前では隠していましたが、僕達の前ではあからさまでした」
「知っていても、誰も助けられなかったんだな」
クリフは躊躇いながらも頷いた。
「面倒な人達なのは、皆が知っています。それに、何か意見して標的が自分に移ったらって、考える人が大半でした。唯一あいつらに何か言えたのは、エドワード先輩だけです」
「エドワード?」
「会っていますよ。到着時、オーソン様の代わりに砦の案内をした人です」
ファウストはやや考える素振りをして、「あぁ」とだけ口にした。
「エドワードは三年目で、真面目で気遣いのできる隊員です。出身はここではありませんが、家柄もよく皆が一目置くような優秀な隊員です」
オーソンの言葉に、クリフも大きく頷く。
「エドワード先輩は、僕達みたいな気の弱い隊員を庇ってくれるんです。仕事を押し付けられても、こっそり手伝ってくれたり。僕は何度も助けられました」
「では、エドワードはロディとも関わりがあった可能性があるんだな?」
鋭いファウストの言葉に、クリフは驚いた顔をして、その後は声を大にして立ち上がった。
「エドワード先輩は違います! あの人は、こそこそ人を傷つけるような事はしません! あの人だけが、僕達の声を聞いてくれたんです!」
「クリフ」
目に涙を浮かべて手を震わせるクリフを座らせ、ランバートは困った顔をした。
エドワードが新たな突破口となる可能性がある以上、調べるべきだろう。だが、信頼の厚い彼を不用意に突くのは、彼を頼っている隊員を刺激する危険がありそうだ。
「犯人だと言っているわけじゃない。ただ、少しでもロディに関わる情報が欲しいんだ。普段の様子、交友関係。今回の犯人には、それらの情報からしか辿り着けないように思う。このままでは、事件は軽微なものでなくなるかもしれない」
冷静なファウストの言葉に、クリフもややあって頷いた。
おそらくクリフも感じているのだろう。事件が徐々にエスカレートしている事を。たとえ標的が自分を虐めている相手でも、起こっている事を喜ぶような陰気な子には見えない。
「ロディと、親しかったのか?」
「……はい。騎士になる前から、親しかったです」
「騎士になってからはどうだ?」
「友達でした。でも……僕のせいでロディが虐められるようになってしまったんです」
小さく呟く言葉。クリフは手を握り締める。その目には再び、大粒の涙が浮かんだ。
「僕のせいなんです。僕が最初に目をつけられて、ロディは僕を庇って奴らに反抗したんです。そしたらあいつらは、ロディを標的にして。なのに僕は、ロディに何もしてあげられなかった。それどころか、怖くてロディから遠ざかってしまったんです。僕が、ロディを殺してしまったようなものなんです!」
感情の起伏に涙がポロポロこぼれ、何度も手で拭いながら胸の奥に溜まっていたものを吐き出すようなクリフ。その様子に、ランバートは胸の奥が痛んだ。
おそらくずっと、罪悪感があったのだろう。自分のせいで友人が死んだと、自分を責め続けていただろう。けれど、それを口にするのも怖い。罪の意識と恐怖心とが、クリフを二重に苦しめ続けていたのだろう。
何かを言おうとしたランバートよりも先に、ファウストの手がクリフに触れる。ビクリと震えたクリフの頭を、ファウストは軽くポンポンと叩いた。
「お前ばかりが悪いのではない。知っていても手を差し伸べられなかったのは、皆も同じだ。俺も騎兵府を預かる長として、この現状を知らなかった罪がある。もう、一人で苦しむな」
穏やかなファウストがそう伝えると、クリフは驚いて、その後は静かに涙を流した。
「クリフ、これが最後の質問だ。ロディは、自殺だと思うか?」
クリフは戸惑った顔をした。だがすぐに、真っ直ぐな視線でファウストを見ると、首を横に振った。
「ロディは絶対に、自殺なんてしません。母親を置いて先に死ぬなんて、ありえません」
「絶対か?」
「はい、絶対です。早くに父親を亡くして、苦労して育ててくれた母親を大事にしていました。母がいるから頑張れると、言っていました。ロディは確かに大人しかったけれど、優しくて意志の強い人です。そんな人が、病気の母親を残して自殺なんてしません。あれは、あいつらが殺したんだと思います」
「言い切れる根拠はあるか?」
「……一度、僕はお風呂場で沈められそうになりました。エドワード先輩が助けてくれましたけれど、本当に溺れそうになったんです。あいつらはふざけただけだって言いましたけど、僕は本気で殺されるんだと思いました」
ファウストが重く頷く。そして一言、「分かった」と静かに言うと全員を見回した。
「クリフはしばらくランバートと一緒にいろ。ランバート、任せていいな?」
「はい、問題ありません」
一つ確かに頷くと、ファウストも安心した顔を見せた。今日一番の、穏やかな表情だ。
「でもランバート、あいつらがランバートを標的にしたら」
「気に病む必要なんてないよ、クリフ。ランバートを虐めようなんて度胸の据わった奴なんていやしないって。天上天下唯我独尊。やられたら数倍返しさ」
「ウェイン様……」
褒められてはいないだろうな。だが、ウェインは「そうでしょ?」と付け加えてくる。ファウストまでが楽しそうに笑った。
「笑わないでくださいよ!」
「いや、確かにお前を虐めようなんて俺でも思わないからな。本気で復讐されたら恐ろしくていられない」
「しませんよ、そんな陰湿なこと」
がっくりと肩を落としたランバートに、その場にいたクリフ以外が声を上げて笑った。
「ウェイン様、一つお願いがあります」
「なに?」
ゲラゲラ笑っているウェインに脱力しきって、ランバートが言う。視線は状況について行けずにオロオロしているクリフに向けられた。
「俺はクリフと同室がいいので、部屋を変えてもらえますか?」
「あぁ、そうだね。どれだけ守ろうにも、部屋から拉致られたら終わりだもん。いいよ、僕はファウスト様の部屋に間借りする」
「俺の部屋にか?」
驚いた顔をしたファウストが部屋を見回す。ベッドは間違いなくシングル。客室なのだから、王都の部屋ほど広くない。
「ソファーでも床でも。野宿よりはずっと上等です」
「上官がそんな場所で寝ていては示しがつかん。使っていない客室があるから、そちらに移りなさい」
オーソンが呆れたように言うのに、ウェインが舌をペロリと出す。とても親しい間柄なのだろう。
「さて、話はついたな。明日からの予定を決めて、風呂にするか」
一度大きく伸びをしたファウストが全員を見回す。クリフが一瞬戸惑ったけれど、ランバートに「もう巻き込まれたんだから」と言われて頷いた。
「ランバートは隊員からそれとなく情報を聞き出してくれ。気取られないようにな」
「はい」
「じゃあ、僕は少し町に行こうかな。ロディの事とか、外にも情報はありそうだしね。何よりこの町の力関係を改めれば、何か掴めるかもしれない」
「頼む」
「ではわしは、改めて報告書を詳しく確認すると共に、被害者を面談しよう。それとなく理由をつけて」
「頼む。俺は一年目と二年目を中心に、ここで稽古をつける」
「……は?」
ランバートの表情が固まった。それを見るファウストの顔は、実に悪く楽しそうだった。
「俺が動くと目立つからな。できる限り普通に、演習という目くらましをする。その方がお前達も動きやすいだろ」
「いや、それはそうですけれど……。えっ、一週間ですか?」
「当然だ」
「……地獄だ」
ランバートが溜息と共に肩を落とすのを見て、ファウストが声を上げて笑う。とても楽しそうだ。
「さて、この予定で動く。クリフは普通にしていろ。でも決して、ランバートの傍を離れるなよ」
「はい。それで迷惑にならないのでしたら」
「問題ない。そいつは一人くらい庇いながらでも十分に動ける」
「まぁ、問題はないと思います」
不安そうな目をランバートに向けるクリフに笑いかけ、一つ確かに頷くランバート。頼りない視線を向けていたクリフもようやく覚悟を決めたように、深々とお辞儀をして「お願いします」と口にした。
「さて、風呂だ。ランバート、行くぞ」
「え? あの、俺は……」
「お前も入っていないんだろ。二人で入っても上官用の風呂は狭くない」
ランバートの脳裏に、一カ月程前の記憶が鮮明に蘇る。その途端、警戒心はマックスだ。
だがそんなランバートなどお構いなしに、ファウストはひょいと腕を掴むとそのままズルズルと引きずって行ってしまう。
後はもう、されるがままだった。
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