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【ファウスト×ランバート】アプリーブに愛を込めて
8話:アプリーブ大捕物(2)
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▼チェルル
シルヴィア主催のパーティーは華やかだ。だが、今回は屋敷を開放しての小規模なものということで控えめらしい。確かに彼女の格好は王都で日常的に見るレベル。だが、周囲の女性達が控えめ過ぎて浮いて見えた。
オスニエルの協力の下、女性達の顔を改めたが全員確かに劇場にいた女優達だった。それらを連れてきた旦那陣はいささかばつの悪い顔をする。それというのも大抵の女性が顔に生気がなく、頬もこけている。明らかに過重労働の気配があった。
「あら、貴方顔色が悪いわ。大丈夫?」
「あの、お気遣い頂かなくても大丈夫です夫人」
「そんな事ないわ。女性はみな輝くものよ? あちらにリラックス出来るお茶と、美味しいお菓子があるの。少し休んでらしたら?」
今も一人の女性に声をかけ、メイド姿のチェルルへと目配せをする。呼ばれて近づき、女性を別室へと連れていくとそこには役所の職員と騎士団員、そして健康診断をするハムレットが控えていた。
「あの!」
「心配しなくていいよ、君の事情は理解している。クレアさん……かな? 今の環境が強要されてのものなら、破棄できるように手配した」
ハムレットがそう伝えると、彼女は目に沢山の涙を溜めて泣き崩れてしまった。
「君のご家族を含めた一連の事に不審な部分が多く見られる事が判明した。現在それらについて聴取している」
「役所としてはこの事件が本当であるならば、婚姻やそれに関わる一切の負債もなかったことにできるよう手続きを行っている。どうか、ご協力頂きたい」
「同時に健康状態にチェックね。まぁ、見た感じでもう過重労働だし十分な食事や睡眠も取れていなさそうだけれど。嫌かもしれないけれどこちらも医者だから他言しないと約束する」
騎士団、役所、そしてハムレットの様子に彼女は頷き、一通りあったことを話した。
明らかな睡眠不足、そして栄養不足から別室で点滴治療を受ける事になり、チェルルは会場へと戻ってくる。それをシルヴィアが見つけるとまた違う女性に声をかけてチェルルを見る。これの繰り返しだ。
治療を受け、会場に戻れる女性は会場に戻ってもらっている。中にいる給仕などは全員騎士団か役所の職員だと知ると彼女たちも少しは落ち着いたようで、出されたお茶やお菓子、料理を控えめに楽しんでいる。
そうした地道な聞き取りと診察が全て終わったタイミングで、ハムレットが会場へと入ってきて数人が出入口に立ったのを見て、シルヴィアがにっこりと前へと出た。
「さて、お集まりの皆様。本日は楽しんで頂けたでしょうか?」
何も存ぜぬという顔でにっこり微笑む彼女の豪胆さを見ると、ヒッテルスバッハという大貴族の夫人とはこうでなければならないのかと思わされる。これほどの図太さと華やかさがなければ務まらない、そんな家なんだろう。
「頃合いとなりましたので、本日のメインイベントと致します」
「メインイベント?」
夫人達の付き添い、もとい監視の為に付き添っていただろう男達が顔を見合わせる。その前で、シルヴィアはにっこりと微笑み、その目に残酷な光を宿した。
「全員、女を食い物にするゲスを捕らえなさい」
「!」
彼女の号令に旦那衆は青い顔をして身を返したが遅い。出口は騎士団が押さえているし、あちこちで捕縛が始まる。捻り上げられた男達が喚くがそんなものを聞き入れる奴はここにはいない。
「暴れるな! 言い分は騎士団砦で聞く」
「お前達の悪事は到底許されない!」
一人二人と縄をかけられ、裏口へと連行される。そこには幌馬車が用意されていて、複数を乗せて砦へと連れて行く算段となっている。
ものの十分少々で、会場には着飾った紳士がいなくなった。
「ふぅ、こんなものかしら」
「ヒッテルスバッハ夫人!」
「オスニエルさん、しっかりしなきゃ駄目よ。彼女たちの居場所を作るのは貴方の役目。それも兼ねて、私達は協力者なのよ」
シルヴィアの側で狼狽えたオスニエルに、彼女はにっこりと言う。
自然とオスニエルへと女性達の視線が集まった。皆が少し泣きながら「オーナー」と呼んでいる。
驚き、それでも彼は前に出た。そしてはっきりとした声で宣言した。
「頑張ります! 皆さんとまた、素敵な舞台がやりたいです」
「オーナー!」
ワッと泣きそうになりながらも女性達が駆けつけて側で頷き笑う。それを前にもらい泣きするオスニエルが一番泣いて周囲に笑われ励まされている。
それを見るシルヴィアは嬉しそうに小さく微笑んでいた。
かくして女性達の救出、および旦那達の捕縛は完了したのであった。
シルヴィア主催のパーティーは華やかだ。だが、今回は屋敷を開放しての小規模なものということで控えめらしい。確かに彼女の格好は王都で日常的に見るレベル。だが、周囲の女性達が控えめ過ぎて浮いて見えた。
オスニエルの協力の下、女性達の顔を改めたが全員確かに劇場にいた女優達だった。それらを連れてきた旦那陣はいささかばつの悪い顔をする。それというのも大抵の女性が顔に生気がなく、頬もこけている。明らかに過重労働の気配があった。
「あら、貴方顔色が悪いわ。大丈夫?」
「あの、お気遣い頂かなくても大丈夫です夫人」
「そんな事ないわ。女性はみな輝くものよ? あちらにリラックス出来るお茶と、美味しいお菓子があるの。少し休んでらしたら?」
今も一人の女性に声をかけ、メイド姿のチェルルへと目配せをする。呼ばれて近づき、女性を別室へと連れていくとそこには役所の職員と騎士団員、そして健康診断をするハムレットが控えていた。
「あの!」
「心配しなくていいよ、君の事情は理解している。クレアさん……かな? 今の環境が強要されてのものなら、破棄できるように手配した」
ハムレットがそう伝えると、彼女は目に沢山の涙を溜めて泣き崩れてしまった。
「君のご家族を含めた一連の事に不審な部分が多く見られる事が判明した。現在それらについて聴取している」
「役所としてはこの事件が本当であるならば、婚姻やそれに関わる一切の負債もなかったことにできるよう手続きを行っている。どうか、ご協力頂きたい」
「同時に健康状態にチェックね。まぁ、見た感じでもう過重労働だし十分な食事や睡眠も取れていなさそうだけれど。嫌かもしれないけれどこちらも医者だから他言しないと約束する」
騎士団、役所、そしてハムレットの様子に彼女は頷き、一通りあったことを話した。
明らかな睡眠不足、そして栄養不足から別室で点滴治療を受ける事になり、チェルルは会場へと戻ってくる。それをシルヴィアが見つけるとまた違う女性に声をかけてチェルルを見る。これの繰り返しだ。
治療を受け、会場に戻れる女性は会場に戻ってもらっている。中にいる給仕などは全員騎士団か役所の職員だと知ると彼女たちも少しは落ち着いたようで、出されたお茶やお菓子、料理を控えめに楽しんでいる。
そうした地道な聞き取りと診察が全て終わったタイミングで、ハムレットが会場へと入ってきて数人が出入口に立ったのを見て、シルヴィアがにっこりと前へと出た。
「さて、お集まりの皆様。本日は楽しんで頂けたでしょうか?」
何も存ぜぬという顔でにっこり微笑む彼女の豪胆さを見ると、ヒッテルスバッハという大貴族の夫人とはこうでなければならないのかと思わされる。これほどの図太さと華やかさがなければ務まらない、そんな家なんだろう。
「頃合いとなりましたので、本日のメインイベントと致します」
「メインイベント?」
夫人達の付き添い、もとい監視の為に付き添っていただろう男達が顔を見合わせる。その前で、シルヴィアはにっこりと微笑み、その目に残酷な光を宿した。
「全員、女を食い物にするゲスを捕らえなさい」
「!」
彼女の号令に旦那衆は青い顔をして身を返したが遅い。出口は騎士団が押さえているし、あちこちで捕縛が始まる。捻り上げられた男達が喚くがそんなものを聞き入れる奴はここにはいない。
「暴れるな! 言い分は騎士団砦で聞く」
「お前達の悪事は到底許されない!」
一人二人と縄をかけられ、裏口へと連行される。そこには幌馬車が用意されていて、複数を乗せて砦へと連れて行く算段となっている。
ものの十分少々で、会場には着飾った紳士がいなくなった。
「ふぅ、こんなものかしら」
「ヒッテルスバッハ夫人!」
「オスニエルさん、しっかりしなきゃ駄目よ。彼女たちの居場所を作るのは貴方の役目。それも兼ねて、私達は協力者なのよ」
シルヴィアの側で狼狽えたオスニエルに、彼女はにっこりと言う。
自然とオスニエルへと女性達の視線が集まった。皆が少し泣きながら「オーナー」と呼んでいる。
驚き、それでも彼は前に出た。そしてはっきりとした声で宣言した。
「頑張ります! 皆さんとまた、素敵な舞台がやりたいです」
「オーナー!」
ワッと泣きそうになりながらも女性達が駆けつけて側で頷き笑う。それを前にもらい泣きするオスニエルが一番泣いて周囲に笑われ励まされている。
それを見るシルヴィアは嬉しそうに小さく微笑んでいた。
かくして女性達の救出、および旦那達の捕縛は完了したのであった。
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