6 / 13
ツートップ?
翌日、1限後の休み時間に、達樹と諒介は連れ立って光のクラスに向かった。
「……なあ」
「ん?」
なんとなく注目を集めている気がするが、皆が遠巻きにしていて寄ってこない。
それをいいことに、達樹は諒介に尋ねた。
「木沢たち、学校来てないんだけど」
「…………」
木沢とは、昨日の第2性暴露の主犯である。
朝になったら学年中に自分の第2性が知られているかもしれないとびくびくしてほとんど眠れなかったが、学校に来てみると暴露した当人たちがいなかった。
狐につままれたような気分になったが、どうやら諒介には心当たりがあるらしい。
「……第2性のアウティングって、結構大ごとだからな」
「そうなの?」
近くにアルファもオメガもいなかったから知らなかった。いや、周りにいても知らなかったのだということには昨日気づいたが。
「たぶん、このまま年度末まで来ねえと思う」
「……そうなんだ」
中学生にそこまでのペナルティが課せられるのならば、確かに大ごとだ。
そこに自分も関わっているというのがなんとなく辛くて、達樹は息を吐いた。
「おまえのせじゃない。あいつらが馬鹿なんだよ」
どうしても気が重くなる達樹に対して、諒介は容赦がなかった。
「俺らには、自分を守る権利がある。そんなこともわからないあいつらが馬鹿なんだ」
言われて、不意に気づいた。
「……わかった」
なんとなく照れくさくて、諒介の顔を見ずに達樹は告げた。
「諒介、ありがとう、守ってくれて」
「────」
一瞬だけ、諒介の足が止まる。
「……俺は、なにもしてない」
「……うん」
実際に手を回したのは怒り狂った諒介の番だったのだが、このときの達樹はそんなことを知るよしもなかった。
「佐々岡いる?」
諒介が声をかけると、教室の入り口の近くにいた生徒は飛び上がって驚いた。
「え⁉ あ、柚木、……と、成瀬⁉」
隣にいた達樹に2度驚いたその生徒は、教室の中に向かって声を張り上げる。
「ピ、ピカちゃん‼ ツートップがお呼び‼」
(……ツートップ?)
耳慣れない呼び方に戸惑っていると、友達と話をしていた光が振り返ってあからさまに戸惑った顔をした。
「……え、なに?」
おずおずと達樹たちに近寄ってくるが、明らかに気後れしている。
その姿を間近で見て、噂通りだと達樹は内心で唸った。
全体的に色素が薄めで、肌が透けるように白い。
くっきりとした二重まぶたと長い睫毛に縁取られた大きな目、すっきりと整った鼻と小さな口。
世間一般がイメージするオメガを絵に描いたような美少年だった。
──もっとも、口を開くとがらりと印象が変わるという話も有名だったが。
「ちょっと込み入った話があるんだけど、昼休みとか、空いてる?」
達樹が訊くと、光の困惑がさらに深まった。
「俺、寮だから学食なんだけど」
私立である馳倉中学に給食はない。
達樹も学食か購買を利用するのが常だったが、今日は違っていた。
「弁当、作ってきた」
「……は?」
瞬間、光は諒介の言ったことが理解できないようだった。
「弁当、3人分作ってきた」
「…………」
光が信じられないものを見るような顔で何度も諒介と達樹を交互に見る。
言葉より状況が理解できないのかもしれない。達樹も立場が逆ならわけがわからないと思ったことだろう。
ゆっくりじっくり話すために弁当を作ってきたと聞いたときは、諒介のスペックを多少なりとも知っていた達樹ですら面食らった。
「……いーけど」
了承した光にほっとして、「じゃ、昼に」とその場を離れる。
「ピカちゃん、ツートップから同時に告白⁉ すげー‼」
「バーカ、そんなんじゃねーよ‼」
後ろから光とクラスメイトのやり取りが聞こえてきた。
(……やっぱり、目立ってる、かな?)
諒介と連れ立って歩けばもちろん目立つし、そこに光が加わればさらに目立つのは避けられない。
わかってはいたが、自分みたいな地味人間には荷が重いと達樹はため息をついた。
「……ピカちゃんって、なんだ?」
ふと、諒介が訊いてきた。
「……………………さあ」
達樹は知っていたがあえてはぐらかした。
光の母親が入学式でその呼び方を連呼したのは超がつくくらい有名な話だ。
光がその呼び方を嫌って猛勉強の果てに同じ中学の出身者がいないこの学校に進学したということもだ。
有名な話ではあるがあまりに不憫で、とてもこれ以上吹聴する気にはなれなかった。
「……なあ」
「ん?」
なんとなく注目を集めている気がするが、皆が遠巻きにしていて寄ってこない。
それをいいことに、達樹は諒介に尋ねた。
「木沢たち、学校来てないんだけど」
「…………」
木沢とは、昨日の第2性暴露の主犯である。
朝になったら学年中に自分の第2性が知られているかもしれないとびくびくしてほとんど眠れなかったが、学校に来てみると暴露した当人たちがいなかった。
狐につままれたような気分になったが、どうやら諒介には心当たりがあるらしい。
「……第2性のアウティングって、結構大ごとだからな」
「そうなの?」
近くにアルファもオメガもいなかったから知らなかった。いや、周りにいても知らなかったのだということには昨日気づいたが。
「たぶん、このまま年度末まで来ねえと思う」
「……そうなんだ」
中学生にそこまでのペナルティが課せられるのならば、確かに大ごとだ。
そこに自分も関わっているというのがなんとなく辛くて、達樹は息を吐いた。
「おまえのせじゃない。あいつらが馬鹿なんだよ」
どうしても気が重くなる達樹に対して、諒介は容赦がなかった。
「俺らには、自分を守る権利がある。そんなこともわからないあいつらが馬鹿なんだ」
言われて、不意に気づいた。
「……わかった」
なんとなく照れくさくて、諒介の顔を見ずに達樹は告げた。
「諒介、ありがとう、守ってくれて」
「────」
一瞬だけ、諒介の足が止まる。
「……俺は、なにもしてない」
「……うん」
実際に手を回したのは怒り狂った諒介の番だったのだが、このときの達樹はそんなことを知るよしもなかった。
「佐々岡いる?」
諒介が声をかけると、教室の入り口の近くにいた生徒は飛び上がって驚いた。
「え⁉ あ、柚木、……と、成瀬⁉」
隣にいた達樹に2度驚いたその生徒は、教室の中に向かって声を張り上げる。
「ピ、ピカちゃん‼ ツートップがお呼び‼」
(……ツートップ?)
耳慣れない呼び方に戸惑っていると、友達と話をしていた光が振り返ってあからさまに戸惑った顔をした。
「……え、なに?」
おずおずと達樹たちに近寄ってくるが、明らかに気後れしている。
その姿を間近で見て、噂通りだと達樹は内心で唸った。
全体的に色素が薄めで、肌が透けるように白い。
くっきりとした二重まぶたと長い睫毛に縁取られた大きな目、すっきりと整った鼻と小さな口。
世間一般がイメージするオメガを絵に描いたような美少年だった。
──もっとも、口を開くとがらりと印象が変わるという話も有名だったが。
「ちょっと込み入った話があるんだけど、昼休みとか、空いてる?」
達樹が訊くと、光の困惑がさらに深まった。
「俺、寮だから学食なんだけど」
私立である馳倉中学に給食はない。
達樹も学食か購買を利用するのが常だったが、今日は違っていた。
「弁当、作ってきた」
「……は?」
瞬間、光は諒介の言ったことが理解できないようだった。
「弁当、3人分作ってきた」
「…………」
光が信じられないものを見るような顔で何度も諒介と達樹を交互に見る。
言葉より状況が理解できないのかもしれない。達樹も立場が逆ならわけがわからないと思ったことだろう。
ゆっくりじっくり話すために弁当を作ってきたと聞いたときは、諒介のスペックを多少なりとも知っていた達樹ですら面食らった。
「……いーけど」
了承した光にほっとして、「じゃ、昼に」とその場を離れる。
「ピカちゃん、ツートップから同時に告白⁉ すげー‼」
「バーカ、そんなんじゃねーよ‼」
後ろから光とクラスメイトのやり取りが聞こえてきた。
(……やっぱり、目立ってる、かな?)
諒介と連れ立って歩けばもちろん目立つし、そこに光が加わればさらに目立つのは避けられない。
わかってはいたが、自分みたいな地味人間には荷が重いと達樹はため息をついた。
「……ピカちゃんって、なんだ?」
ふと、諒介が訊いてきた。
「……………………さあ」
達樹は知っていたがあえてはぐらかした。
光の母親が入学式でその呼び方を連呼したのは超がつくくらい有名な話だ。
光がその呼び方を嫌って猛勉強の果てに同じ中学の出身者がいないこの学校に進学したということもだ。
有名な話ではあるがあまりに不憫で、とてもこれ以上吹聴する気にはなれなかった。
あなたにおすすめの小説
魔性の男
makase
BL
俺はとにかくモテる。学生の頃から、社会人になった今でも、異性問わずにモテてしまう。
最近、さえない同性の先輩に好意を持たれている。いつものことだろう。いい人だから、傷つけたくはないな。
そう、思っていた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
その首輪は、弟の牙でしか外せない。
ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。
第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。
初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。
「今すぐ部屋から出ろ!」
独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。
翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。
「俺以外に触らせるな」
そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。
弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。
本当にこのままでもいいのか。
ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。
その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。
どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。
リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24)
※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。
三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。
僕の恋人は、超イケメン!!
八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?