初期ステータスが0!かと思ったら、よく見るとΩ(オメガ)ってなってたんですけどこれは最強ってことでいいんでしょうか?

夜ふかし

文字の大きさ
18 / 22

17.師弟とポングリ

しおりを挟む
「・・・し、・・・師匠・・・!」

ラナがリビングの中に入ってくるなりそう呟いた。
みんながラナに注目する中、

「おー!!なんじゃ、ラナではないか!」

クロネが答えた。

2人は顔見知りだったのか?

「ラナ、久しぶりじゃの!ん?でもなんでラナがこのトオル達の屋敷におるんじゃ?」

「あぁ、それはさっき話してた、俺達のパーティに新しく入った子が、そこにいるラナだからなんだけど。でも2人も元々顔見知りだったのか?それにラナ、さっきの師匠ってのは?」

「この、お方は・・・忍術の・・・師」

そう言って、ラナはクロネの前まで来ると、片足ずつ折りたたんで正座をした。そして、その場でクロネに対して綺麗な座礼を行った。

「ご無沙汰・・・して・・・おります」

「うむ!ラナも元気そうじゃな!」

師弟の上下関係もしっかりしてるんだなと感心して見ていると、横にいたシロネもラナに声をかけた。

「ラナ、おひさなの!シロネもいるの!」

「シロネ・・・・・・よっ!」

だがラナは、敬うべき師匠の姉のシロネには、右手を挙げるだけの軽いノリで対応していた。

関係性がいまいち謎だなと思いつつも、詳しく話を聞いてみたところ、ラナがいた村とクロネ達のエルフの村は昔から交流があったらしく、ラナがまだ小さい時に、ラナの村で開催された隠し芸大会にエルフ族からクロネが参加して忍術を披露したようで、それを当時、観客として見ていたラナが大変感銘を受けて、クロネに弟子入りをお願いし、そこから師弟関係が始まったとの事だった。ちなみにシロネとはただの友達みたい。

そういえば、クロネも初めて会った時に隠れみの術とかやってたな。
あっ、だからラナの忍術技もクロネ・クオリティだったというわけか!
色々と繋がった。

「ところで、キュウちゃんが見当たらないようじゃが、どこにいるんじゃ?」

「そうなの!今日はクロネから聞いたキュウちゃんを見に来たなの!」

「キュウちゃんは2階にいるわよ。あたしが案内してあげるわ」

そう言ってリリスがキュウの眠ってる部屋に案内した。
部屋の扉を開けて、部屋の真ん中に置いてある篭を見つけると2人がその篭に近づいた。

「おぉ、キュウちゃんがいたのじゃ!篭の中ですやすや眠っていてかわいいのじゃ!!ほら、シロネも見るのじゃ!これがキュウちゃんなのじゃ!」

「ほぇぇなの。近づいてよく見てみるの。え、・・・クロネ・・・!この子は・・・」

赤ちゃんを見るように柔らかかったシロネの表情が急に真剣な表情に変わった。

何だ?まさか、キュウが実はこの世界を滅ぼす存在だとか言うんじゃ・・・

「クロネ・・・!!!この子は、・・・本当に、・・・かわいいなのーーー!」
 
やっぱりそっちですよね!

2人が勢いあまってキュウをなで回し始めた。

「おい!あんまりもみくちゃにして乱暴にかわいがるなよ。キュウを怒らせたら、まじで怖いんだからな」

「キュウちゃんが怒っても怖くないのじゃ!かわいいだけなのじゃ」

「そうなの。キュウちゃんは全然怖くなさそうなの」

「そうよ!キュウちゃんは怒っても怖くないわ!ただ愛くるしいだけよ!」

リリスも参戦してきた。
お前は一緒にグリフォンを一瞬で消滅させたあの現場にいただろうが!

あの時に見たキュウの力。いやそもそも、この世界の精霊の存在についても謎のままで、いつか調べないといけないと思っていた。

そういや俺、キュウだけじゃなく、リリスの事もラナの事もまだ全然深くは知らないよな。

前世の俺は、ある出来事が起きてから他人と深く関わる事が怖くなって、それから人と関わることを極力避けてきた。そして、そのまま引きこもりになってしまったわけなのだが、それをなぜか今、ふと思い出してしまって、少し顔が暗くなっていたのかもしれない。気がつくと、いつの間にかクロネとシロネが傍に来ていた。

「どうしたのじゃ、トオル?そんなに暗い顔をして。仕方ないのぉ。手を出すのじゃ!」

クロネがそう言ったので、俺は言われるままに手を差し出すと、クロネは、にっと笑って俺の手の平にドングリのような物を乗せた。そしてすぐにまた、キュウの傍に戻っていった。

「それは、エルフの村でしか育たない木の実のポングリなの。エルフ族の中では、自分が大事に育てたポングリをあげるという行為が友好の印となるの。どうやらクロネは、トオルの事を友達だと思ってるみたいなの」

そう言って傍にいたシロネが教えてくれた。

「そうか。クロネはこんな俺を友達として励まそうとしてくれたのか・・・」

クロネのその純粋な想いが素直に嬉しかった。
なんだかじんわりと心もあったかくなってきた。
自分にもまだ、こんな感情が残ってたんだな。

俺は手の平の上に乗っているポングリを見つめて、これをこの世界での1番目の宝物にしようと決めた。

指を折りたたんで手の平の上のポングリを優しく包み込む。心なしかポングリも気持ちに呼応するようにあったかく感じる。それに、ほどよく柔らかい。中々に心地よい感触だ。

「ポングリって、クロネの気持ちみたいに、あったかくて、柔らかいものなんだな・・・」

しみじみと1人呟いたつもりだったが、シロネが反応した。

「え?ポングリは別にあったかくも柔らかくもないの。あっ!・・・もしかしてなの!それ、クロネがさっき拾ってた、・・・・・・クロネ!ポケットの中を見るの!」

そう言うと、シロネが急に俺と距離を取った。

そして、シロネの声が聞こえるとキュウの傍にいたクロネは、自分のポケットに手を突っ込んで、ごそごそとしては何かを取り出した。それを確認すると、あっ!という顔をしたのが見てとれた。

「すまんのじゃ!トオル!それはここに来るときに拾った動物のフンじゃ!ポングリと似とったから、村に持って帰ってみんなに自慢しようとポケットに入れておいたのじゃった!こっちがポングリじゃ!すまん。すまん!間違えてしまったのじゃ!」

だからか。クロネの気持ちを踏みにじってしまう様で口には決して出せなかったけど、握りしめたあたりから、嗅いだことのある臭いがしてきたなと思っていた。

俺はすぐにその場で床に叩きつけようとしたが、後で一生懸命拭いている自分の姿が容易にイメージできたので、トイレに駆け込み、この世界での1番目の宝物を「大」で流した。

手を洗って消毒して、あらためてクロネからポングリを受け取った。
いの一番に感触を確かめる。

うん。今度は間違いなく固い木の実だ。

それから楽しい時間はあっと言う間に過ぎていくもので、すぐに2人が帰る時間になってしまった。

「次はラナがトオル達を連れてエルフの村に遊びに来るのじゃ!」

「そうなの!歓迎してあげるなの!」

そんな約束をして2人は帰って行った。

この世界でエルフ族の友達ができた。
2人が帰ってからも、その日はずっと余韻に浸っていた。
こんなあたたかい気持ちになれたのは、この世界に来て初めてだったからだ。

しかし、

そんなクロネとシロネのいるエルフの村が、モンスターに襲撃されたらしいと噂が流れ出したのが、この翌日の事なのであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

【完結】悪役に転生したのにメインヒロインにガチ恋されている件

エース皇命
ファンタジー
 前世で大好きだったファンタジー大作『ロード・オブ・ザ・ヒーロー』の悪役、レッド・モルドロスに転生してしまった桐生英介。もっと努力して意義のある人生を送っておけばよかった、という後悔から、学院で他を圧倒する努力を積み重ねる。  しかし、その一生懸命な姿に、メインヒロインであるシャロットは惚れ、卒業式の日に告白してきて……。  悪役というより、むしろ真っ当に生きようと、ファンタジーの世界で生き抜いていく。  ヒロインとの恋、仲間との友情──あれ? 全然悪役じゃないんだけど! 気づけば主人公になっていた、悪役レッドの物語! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

八百万の神から祝福をもらいました!この力で異世界を生きていきます!

トリガー
ファンタジー
神様のミスで死んでしまったリオ。 女神から代償に八百万の神の祝福をもらった。 転生した異世界で無双する。

気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした

高坂ナツキ
ファンタジー
衝撃を受けた途端、俺は美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生していた!? これは、自分が制作にかかわっていた美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生した主人公が、報われないサブヒロインを救うために人生を賭ける話。 日常あり、恋愛あり、ダンジョンあり、戦闘あり、料理ありの何でもありの話となっています。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...