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第十九話
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「とりあえず先に食べよっか。いただきまーす」
晴明は両手を合わせてから弁当箱を開けた。
彼女はその弁当箱の中身を見て目を見開く。
「見てよ咲!キャラ弁だー!」
「あらまぁすごいですね。史郎様頑張りましたね」
「私の夫は最高です!」
晴明が最近ハマっている漫画のキャラクターを見事、食材で再現したのだ。
鯰尾史郎という男は料理も上手いのである。
咲は晴明の様子を温かな目で見守った。
これから自分の主人は弁当をどうするのか気になったのだ。
すぐには食べないだろうという予想は容易にできた。
「こういう時、女子高生はスマホを使うんだよね!テレビでやってたよ」
そう言って晴明は制服からスマートフォンを出す。
心なしかとてもワクワクしているように見えた。
だがそれも一時。画面を見つめたのち、遠い目をしながらこう言った。
「写真ってどう撮るんだっけ……」
やはり安倍晴明は機械が弱かった。
期待を裏切らないなと咲は心でクスっと笑う。
スマホを持ちながら遠い目をしている晴明に咲は顔を近づけて声をかけた。
「ここですね」
咲はそう言いながら白い指で画面をタッチする。
するとカメラ機能が起動した。難しい操作ではない。
咲は特別なことをしていないのだが、その光景を晴明は目を輝かせて見ていた。
「すごい!ありがとう咲。」
「撮れますか?」
「ここをタッチするんだよね。それは分かる!」
慣れない手つきでスマホを持ちながら晴明は自分の弁当にカメラを向ける。
数分経つとカシャッというカメラの音が中庭に鳴り響いた。
「見て!いい感じに撮れた!」
「晴明様にしてはお上手ですね」
「私でもやればできる」
満足したのか晴明はスマホを制服のポケットに仕舞うと、遠慮することなくキャラクターを崩してお弁当を食べ始めた。
食べ物は食べ物と切り離して考えているらしい。
晴明らしい食べ方だなと咲は思いながら自らも弁当を食べ始めた。
ちなみに咲は自分で作っている普通の弁当だ。
史郎から作ろうかと言われていたのだが、丁重にお断りしたのである。
お弁当を作るという行為は晴明にのみして欲しかったのだ。
それからしばらくの間、2人は学校生活の話を交わした。
仕事の話も大事だが、学校生活も晴明にとっては大切だ。
咲はあやかしの一族の出身のために学校には行ったことがないが、今までにない貴重な経験だった。
「晴明様。楽しいですか?学校生活」
「頭の中は仕事のことでいっぱいだけど楽しいよ。クラスメイトっていいよね」
「そうですね。私もそう思います。そういえば明日から文化祭期間になるのはご存知ですか?」
咲の問いかけに晴明は箸を止めた。
「………………マジで?」
「マジです」
知らなかったらしい。晴明はとても穏やかな笑みを浮かべた後――
「校長先生、それ言ってくださいよ……私、情報収集に必要な会話しかしてないよ……」
とスマホのカメラ機能の使い方が分からなかった時と同様に遠い目をした。
しばらくそのままの状態だったが現状を受け入れることにしたのか、食事を再開。
咲と会話を挟むこともなくひたすら食事に集中する晴明。
いきなりの態度の変化に咲はどうしたのだろうかと弁当を食べる手を止めて首を傾げた。
まるで仕事中、パソコンと向き合って格闘している様子を咲の脳裏に浮かばせるほどだったからだ。
晴明は食事を終えたのか先ほどより少し乱雑に両手を合わせる。
咲より先に食事の挨拶を終えた彼女はいきなり明後日の方向を向いた。
「ごちそーさま。咲はゆっくり食べてて良いからね。……『私達を見ているそこのポニーテールの鬼女。こっちに来てくれる?』」
咲は目を見開いた。それと同時にその術を見たのはいつ以来だろうか、と考えた。
自分の主人は、不特定多数の生徒が見ている中でさも隣人へ話しかけるかのように高度な術を使ったのだ。
――術の名は幽世声という。
強い霊力、或いは妖力。そして高度な技術を持つ者だけができるいくつかの掌印を組んで自らの声のみに霊力を込めて使うものである。
その術の効力は指定した人間やあやかしの行動の強制。声はその強制される人物に届けられる。
本来ならば手順が必要となる高度な術だ。
その術を、いとも簡単に手順すら全て省略して行った。
妖力が強い方の咲だが彼女には到底できない真似である。晴明の術の精巧さに咲は息を呑んだ。
術はすぐにきちんと効力を発揮し、1人の女子生徒が中庭に立っていた。
結界も目隠しの効果までついている。幽世声を使う際に晴明が張ったようだ。
女子生徒というにはその少女は大人びていた。
陶器のような美しい白い肌に、黒羽のように美しい髪。
ポニーテールは肩につくくらい長さで、瞳は緋色である。
人間離れした美しい女子生徒がそこには居た。
咲は気配からしてこの女は晴明が言っていた通り鬼だと察する。
(晴明様はあの距離で鬼だと気がついていた。この方は気配をどこまで感じ取れるの……?)
その言葉を咲はどうにか仕舞い込んだ。
今はそれどころではないからだ。
本来ならばあやかしは人間と学校に通うということはほとんどないのだ。
しかもこの鬼女ほどの妖力であれば、こっくりさんをどうにかできたはずだ。
晴明もそれを不思議に思ったのだろう。
だからこそ他の生徒に勘付かれないように鬼女を呼びつけたのだ。
「ご、ごめんなさい。別にお2人邪魔をするつもりはなかったの……あの。安倍晴明様、よね?私は紫紫苑《しおん》といいます……。」
その鬼女の言葉に晴明は目を細めて内心で舌打ちをした。
――眼鏡をしているというのに自分の正体がバレているということは、陰陽師が関わっているなと直感で確信したからだ。
これは面倒なことになりそうだと晴明は我慢できず大きなため息を漏らした。
晴明は両手を合わせてから弁当箱を開けた。
彼女はその弁当箱の中身を見て目を見開く。
「見てよ咲!キャラ弁だー!」
「あらまぁすごいですね。史郎様頑張りましたね」
「私の夫は最高です!」
晴明が最近ハマっている漫画のキャラクターを見事、食材で再現したのだ。
鯰尾史郎という男は料理も上手いのである。
咲は晴明の様子を温かな目で見守った。
これから自分の主人は弁当をどうするのか気になったのだ。
すぐには食べないだろうという予想は容易にできた。
「こういう時、女子高生はスマホを使うんだよね!テレビでやってたよ」
そう言って晴明は制服からスマートフォンを出す。
心なしかとてもワクワクしているように見えた。
だがそれも一時。画面を見つめたのち、遠い目をしながらこう言った。
「写真ってどう撮るんだっけ……」
やはり安倍晴明は機械が弱かった。
期待を裏切らないなと咲は心でクスっと笑う。
スマホを持ちながら遠い目をしている晴明に咲は顔を近づけて声をかけた。
「ここですね」
咲はそう言いながら白い指で画面をタッチする。
するとカメラ機能が起動した。難しい操作ではない。
咲は特別なことをしていないのだが、その光景を晴明は目を輝かせて見ていた。
「すごい!ありがとう咲。」
「撮れますか?」
「ここをタッチするんだよね。それは分かる!」
慣れない手つきでスマホを持ちながら晴明は自分の弁当にカメラを向ける。
数分経つとカシャッというカメラの音が中庭に鳴り響いた。
「見て!いい感じに撮れた!」
「晴明様にしてはお上手ですね」
「私でもやればできる」
満足したのか晴明はスマホを制服のポケットに仕舞うと、遠慮することなくキャラクターを崩してお弁当を食べ始めた。
食べ物は食べ物と切り離して考えているらしい。
晴明らしい食べ方だなと咲は思いながら自らも弁当を食べ始めた。
ちなみに咲は自分で作っている普通の弁当だ。
史郎から作ろうかと言われていたのだが、丁重にお断りしたのである。
お弁当を作るという行為は晴明にのみして欲しかったのだ。
それからしばらくの間、2人は学校生活の話を交わした。
仕事の話も大事だが、学校生活も晴明にとっては大切だ。
咲はあやかしの一族の出身のために学校には行ったことがないが、今までにない貴重な経験だった。
「晴明様。楽しいですか?学校生活」
「頭の中は仕事のことでいっぱいだけど楽しいよ。クラスメイトっていいよね」
「そうですね。私もそう思います。そういえば明日から文化祭期間になるのはご存知ですか?」
咲の問いかけに晴明は箸を止めた。
「………………マジで?」
「マジです」
知らなかったらしい。晴明はとても穏やかな笑みを浮かべた後――
「校長先生、それ言ってくださいよ……私、情報収集に必要な会話しかしてないよ……」
とスマホのカメラ機能の使い方が分からなかった時と同様に遠い目をした。
しばらくそのままの状態だったが現状を受け入れることにしたのか、食事を再開。
咲と会話を挟むこともなくひたすら食事に集中する晴明。
いきなりの態度の変化に咲はどうしたのだろうかと弁当を食べる手を止めて首を傾げた。
まるで仕事中、パソコンと向き合って格闘している様子を咲の脳裏に浮かばせるほどだったからだ。
晴明は食事を終えたのか先ほどより少し乱雑に両手を合わせる。
咲より先に食事の挨拶を終えた彼女はいきなり明後日の方向を向いた。
「ごちそーさま。咲はゆっくり食べてて良いからね。……『私達を見ているそこのポニーテールの鬼女。こっちに来てくれる?』」
咲は目を見開いた。それと同時にその術を見たのはいつ以来だろうか、と考えた。
自分の主人は、不特定多数の生徒が見ている中でさも隣人へ話しかけるかのように高度な術を使ったのだ。
――術の名は幽世声という。
強い霊力、或いは妖力。そして高度な技術を持つ者だけができるいくつかの掌印を組んで自らの声のみに霊力を込めて使うものである。
その術の効力は指定した人間やあやかしの行動の強制。声はその強制される人物に届けられる。
本来ならば手順が必要となる高度な術だ。
その術を、いとも簡単に手順すら全て省略して行った。
妖力が強い方の咲だが彼女には到底できない真似である。晴明の術の精巧さに咲は息を呑んだ。
術はすぐにきちんと効力を発揮し、1人の女子生徒が中庭に立っていた。
結界も目隠しの効果までついている。幽世声を使う際に晴明が張ったようだ。
女子生徒というにはその少女は大人びていた。
陶器のような美しい白い肌に、黒羽のように美しい髪。
ポニーテールは肩につくくらい長さで、瞳は緋色である。
人間離れした美しい女子生徒がそこには居た。
咲は気配からしてこの女は晴明が言っていた通り鬼だと察する。
(晴明様はあの距離で鬼だと気がついていた。この方は気配をどこまで感じ取れるの……?)
その言葉を咲はどうにか仕舞い込んだ。
今はそれどころではないからだ。
本来ならばあやかしは人間と学校に通うということはほとんどないのだ。
しかもこの鬼女ほどの妖力であれば、こっくりさんをどうにかできたはずだ。
晴明もそれを不思議に思ったのだろう。
だからこそ他の生徒に勘付かれないように鬼女を呼びつけたのだ。
「ご、ごめんなさい。別にお2人邪魔をするつもりはなかったの……あの。安倍晴明様、よね?私は紫紫苑《しおん》といいます……。」
その鬼女の言葉に晴明は目を細めて内心で舌打ちをした。
――眼鏡をしているというのに自分の正体がバレているということは、陰陽師が関わっているなと直感で確信したからだ。
これは面倒なことになりそうだと晴明は我慢できず大きなため息を漏らした。
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