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第二十二話
しおりを挟む「――というわけで以上です。本件は解決いたしました」
晴明が咲を連れて校長室で解決したことを報告した。
報告された校長は暗かった顔が幾分か明るくなっている。
どうやらかなりの悩みの種だったようだ。最速解決できて良かったと晴明は内心思った。
「ありがとうござます!まさか一日で解決していただけるとは……!さすが伝説と名高い安倍晴明殿でいらっしゃる!」
校長は興奮気味に晴明の言葉に答えた。
「私は大したことはしていません。……それで一つ校長先生にお願いがあるのです」
「……はい。なんでしょうか」
「文化祭までこの学校の生徒で居てもいいでしょうか」
薔薇色の唇が美しく弧を描いている。
晴明は史郎の眼鏡のおかげで目元とその周りは普通の容姿に見えているが、一際美しい唇は隠せていなかった。
その美しさに惹かれたのか校長は少し惚けていた。だがそれでもしっかりとその問いかけに答える。
「もちろんです。少ない日数だと思いますが学校生活を楽しんでください」
校長は晴明から事情を深く聞くという行為をしなかった。
長年の教員生活の経験からだろうか彼女の心情を悟ったらしい。
優しくまるで一人の生徒を見守るかのような温かな視線で晴明にそう言った。
その視線を嬉しそうに晴明は受けとった。
咲は一連のやり取りを見て自分でも晴明にできることはあるのだと少しだけ心が満たされた。
――こうして晴明は最速解決をした代わりに二週間、葛の葉高等学校に通うことになったのであった。
校長に報告を終えてから二人はクラスに戻った。
いくつかの授業を経て最後の六限目。
この時間は次の日から準備を始めるための文化祭の話し合いの時間に当てられていた。
晴明はどんな出し物がいいだろうかと思案する。すると不意に晴明の後ろの女子生徒である清水が小声で声をかけてきた。
「さくらちゃん来たばかりだから知らないと思うけどこの学校、文化祭に力を入れてるんだって」
「ほう」
「なんでも売上No. 1は高級ホテルのビュッフェの食べ放題無料券貰えるらしいよ」
「……すごいねぇ」
素直にいいなぁと説明された本人は思った。
普段はずっと仕事と家の往復の日常生活なので行く暇がないのだ。
そのことを不満に思ったりしたことはない。史郎はよく気遣ってくれるし、晴明の行きたいところへ出かけることもある。
けれど意外にも食べ放題は未だに行ったことがないなと考えていた。
(食べ放題……いいなぁ)
食べることが大好きな晴明としては一番の魅力的な賞品だった。
話し合いが始まると出し物の意見が次々と飛び交う。学級委員が黒板にチョークで出された意見をどんどんと書いていった。
お化け屋敷、迷路、喫茶店……晴明が意見を出そうとしていたのはお化け屋敷だったが、それは他の生徒によって先に出されたので手は上げなかった。
しばらく経つと意見も途切れていき、やがて多数決で決めることになった。
(私はお化け屋敷がいいと思うな。やるなら本格派でやりたい。陰陽道でちょっと弄れるし……本物の幽霊との繋がりもあるしね。幽霊は……あの子とも今も繋がりあるしいける!)
陰陽師としての力を密かに発揮しようと晴明はお化け屋敷に一票を入れた。
――結果、一年A組の出し物はメイド喫茶になった。
(メイド……漫画とかアニメで見たことはあるけど実物を見たことない……私、平安時代の記憶もある人間なのに情けない……きちんとできるかなぁ)
自分の見聞のなさに少し落ち込んだ晴明であった。
それからメニューなどの必要事項が話し合いの結果、決まった。
授業も全て終わり、帰りのホームルームが終了する。
皆が放課後に向けてそれぞれ動き出した。晴明も通学カバンを持って立ち上がっていた。
そんな時に晴明ことさくらは声をかけられる。お昼に誘ってくれた女子グループのい一人からだった。
「さくらちゃん。良かったらさ、一緒にカフェ行かない?ケーキと紅茶が美味しいところがあるんだ!明日から文化祭準備じゃん。その前に親睦会しようよ」
「いいねぇ。ありがとう。隣のクラスの妹もいいかな」
「え?妹いるの?」
「うん。――と、また大量の男子を連れていらっしゃる……」
晴明が教室からヒョイと首を出すと、咲が廊下で美しい顔をうんざりした表情に歪めているのが見える。
まるで美しい花の蜜に引き寄せられるようなミツバチのように男子達は咲の傍に群がっていた。
その美しい花が嫌がっているのを男子達はまるで気がついていないようだ。
「おーい。咲!」
さすがに可哀想だと思い、助太刀の意味も込めて晴明は声をかける。
その声が届いたのか咲はいつも通りの無表情に戻り、男子達を無視して「何かしら、さくら」と答えて姉妹を演じてくれた。
咲は演技が得意な式神なのである。
「クラスメイトが親睦会にカフェに行かないかーだって。行こうよ」
「いいわね。行きましょう」
咲の登場に晴明に声をかけた女子グループは全員が驚いている。
多分、咲が美人だからだろうなぁとまるで他人事のように晴明は分析していていた。
「すっごい美人!えっと咲ちゃん?」
「ええ。鯰尾咲よ。姉が世話になっているわね。私もご一緒してもいいのかしら」
「もちろん!一緒に行こう!」
こうして今日できた友人達と共に二人は放課後にカフェへ向かうことになった。
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