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第三十三話
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結婚式当日。
粛々と婚礼の儀が始まり、晴明と史郎は晴れて正式な夫婦となった。
あやかし達や晴明が招いたごく一部の人間が盛大に祝い、盛り上がった。
披露宴も催され、白無垢からウエディングドレスに着替えた晴明の姿は煌びやかで美しかった。
「晴ちゃん!素敵な結婚式と披露宴だね。白無垢も素敵だったけどそのドレスもとっても素敵」
招待客として来た雫が晴明のドレス姿を見てそう言った。
雫も薄緑色のパーティードレスを着てる。それは晴明が彼女の誕生日に贈ったものだった。
晴明はその姿を見て自分の贈ったものを着ているという事実が嬉しくなった。
「ありがとう。雫姉ちゃんドレスもとっても素敵だよ。やっぱり薄緑がとても似合う」
「ふふっ。ありがとう。晴ちゃんったら自分の服のセンスはないのに人のを選ぶ時はセンスがあるのね」
「気にしてること言わないでよ~」
そんなやりとりを二人がしている時、史郎と咲が二人の元へやってきた。
史郎はタキシード、咲は淡い水色の着物を着ていた。
「この子が雫ちゃんか?晴明」
「そうそう。私の大切なお姉ちゃんだよ」
「晴ちゃんのお姉ちゃんです」
晴明がそう笑顔で言って雫の腕に絡んだ。
史郎と咲はその様子に少し驚いている。
安倍晴明という少女が人前で気軽に腕を絡めてくるような性格でないことを知っているからだ。
普段はパーソナルスペースが狭いはずの女だった。
「晴明様がそのような距離感なのはとても珍しいですね」
驚いた表情のまま咲がそう言った。
「雫姉ちゃんに自分には甘えろって言われたからかな。姉ちゃんだけは距離感バグるんだよね」
とても嬉しそうな表情で晴明はそう答える。
まるで本物の姉妹のように仲良さげに雫と晴明は笑い合った。
「史郎さん」
晴明が三人から少し離れて他の招待客と接していると雫がそう呼びかけた。
なんだろうと思いながら史郎はなるべく雫を怖がらせないようにと微笑を浮かべて柔らかな声を出すように心がける。
「なにかな?」
「私、訳あって男の人を見る目はあるんです。貴方には晴ちゃんを託して良さそう。でもね、覚えておいてください」
「……?」
「あの子を悲しませたり泣かせたら、神が許しても私が絶対に許さない」
晴明より一歳年上と思えないほどの凄みを持った言い方と雰囲気だった。
とても少女が放っているものとは考えられない。
心なしか殺気も含まれているような、と史郎は思わず冷や汗を流してしまいそうになる。
その様子を隣で見ている咲も珍しく少し焦ってしまった。
「雫姉ちゃん殺気を収めて。ステイステイ。でもありがとね」
殺気にも敏感な晴明は雫の両肩に手を置いて穏やかな声でそう告げた。
すると雫は何事もなかったかのように穏やかな表情を浮かべて、
「私の大切な妹をよろしくお願いしますね」
とまるで実の姉のように史郎にそう言った。
――そうして結婚式と披露宴はとても穏やかに終わった。
結婚生活が始まって一週間ほど経った頃。
晴明は将来をどうするか、受験勉強を手抜きすることなく考えていた。
高校生活を捨てるか否か。
ずっと考えているものだから史郎に心配されてしまう。
「お前、何か悩んでるだろ」
「あ~わかる?ちょっとね~」
「……旦那なんだから少しは相談してくれよ」
「うん。……そうだね。ごめんごめん。人に頼るの私昔から苦手だから」
平安時代、男社会で生きてきた晴明は女であるという隙を見せないことに全ての力を使っていた。
晴明を女だと知るのは家族だけ。使用人や親戚ですら彼女を男として扱っていた。
だからなのか晴明は幼い頃から人に甘えたり頼ったりすることがとても苦手だった。
唯一頼れたのは施設で共に育った雫だけだ。晴明が雫を頼るようになったのもかなり時間がかかったものである。
「で、何に悩んでるんだ?」
「陰陽省に抜擢されたのよ。異例だけどね」
「え?マジかよ……知らなかった」
「もし入ることになれば私は高校生活が送れない。と言っても、ほぼ強制なんだよね。文章的に」
「……そうか」
「まぁ、それでも陰陽省を黙らせる手段はある。けど、そうすると私の手が届かないところで誰かが傷つくかもしれない」
「……」
「私、雫姉ちゃんみたいな人を守りたいんだ。あの人みたいな尊い人を私の力で守りたい。……この時代に生まれて初めて思ったの。誰かのことを守りたいって。だから前向きに検討してるのよ」
雫のことを思い出しているのだろうか、と史郎は晴明の穏やかな表情を見て思った。
守りたいと思う気持ちに理由は必要ない。
けれどそれに理由がつけばとても強いものになることを史郎は人生経験から知っていた。
(天才かつ最強の伝説の陰陽師が守りたい人を見つたんなら、誰も勝てる者はいないだろうな)
晴明の実力をよく知る史郎は冷静にそう分析していた。
「まぁ、でも高校生活を送ることも考えておけよ?青春は一度きりだぜ?」
「わかってまーす。もうしばらく悩んでみるよ」
そう答えた晴明にはもう迷いがないように史郎には見えた。
粛々と婚礼の儀が始まり、晴明と史郎は晴れて正式な夫婦となった。
あやかし達や晴明が招いたごく一部の人間が盛大に祝い、盛り上がった。
披露宴も催され、白無垢からウエディングドレスに着替えた晴明の姿は煌びやかで美しかった。
「晴ちゃん!素敵な結婚式と披露宴だね。白無垢も素敵だったけどそのドレスもとっても素敵」
招待客として来た雫が晴明のドレス姿を見てそう言った。
雫も薄緑色のパーティードレスを着てる。それは晴明が彼女の誕生日に贈ったものだった。
晴明はその姿を見て自分の贈ったものを着ているという事実が嬉しくなった。
「ありがとう。雫姉ちゃんドレスもとっても素敵だよ。やっぱり薄緑がとても似合う」
「ふふっ。ありがとう。晴ちゃんったら自分の服のセンスはないのに人のを選ぶ時はセンスがあるのね」
「気にしてること言わないでよ~」
そんなやりとりを二人がしている時、史郎と咲が二人の元へやってきた。
史郎はタキシード、咲は淡い水色の着物を着ていた。
「この子が雫ちゃんか?晴明」
「そうそう。私の大切なお姉ちゃんだよ」
「晴ちゃんのお姉ちゃんです」
晴明がそう笑顔で言って雫の腕に絡んだ。
史郎と咲はその様子に少し驚いている。
安倍晴明という少女が人前で気軽に腕を絡めてくるような性格でないことを知っているからだ。
普段はパーソナルスペースが狭いはずの女だった。
「晴明様がそのような距離感なのはとても珍しいですね」
驚いた表情のまま咲がそう言った。
「雫姉ちゃんに自分には甘えろって言われたからかな。姉ちゃんだけは距離感バグるんだよね」
とても嬉しそうな表情で晴明はそう答える。
まるで本物の姉妹のように仲良さげに雫と晴明は笑い合った。
「史郎さん」
晴明が三人から少し離れて他の招待客と接していると雫がそう呼びかけた。
なんだろうと思いながら史郎はなるべく雫を怖がらせないようにと微笑を浮かべて柔らかな声を出すように心がける。
「なにかな?」
「私、訳あって男の人を見る目はあるんです。貴方には晴ちゃんを託して良さそう。でもね、覚えておいてください」
「……?」
「あの子を悲しませたり泣かせたら、神が許しても私が絶対に許さない」
晴明より一歳年上と思えないほどの凄みを持った言い方と雰囲気だった。
とても少女が放っているものとは考えられない。
心なしか殺気も含まれているような、と史郎は思わず冷や汗を流してしまいそうになる。
その様子を隣で見ている咲も珍しく少し焦ってしまった。
「雫姉ちゃん殺気を収めて。ステイステイ。でもありがとね」
殺気にも敏感な晴明は雫の両肩に手を置いて穏やかな声でそう告げた。
すると雫は何事もなかったかのように穏やかな表情を浮かべて、
「私の大切な妹をよろしくお願いしますね」
とまるで実の姉のように史郎にそう言った。
――そうして結婚式と披露宴はとても穏やかに終わった。
結婚生活が始まって一週間ほど経った頃。
晴明は将来をどうするか、受験勉強を手抜きすることなく考えていた。
高校生活を捨てるか否か。
ずっと考えているものだから史郎に心配されてしまう。
「お前、何か悩んでるだろ」
「あ~わかる?ちょっとね~」
「……旦那なんだから少しは相談してくれよ」
「うん。……そうだね。ごめんごめん。人に頼るの私昔から苦手だから」
平安時代、男社会で生きてきた晴明は女であるという隙を見せないことに全ての力を使っていた。
晴明を女だと知るのは家族だけ。使用人や親戚ですら彼女を男として扱っていた。
だからなのか晴明は幼い頃から人に甘えたり頼ったりすることがとても苦手だった。
唯一頼れたのは施設で共に育った雫だけだ。晴明が雫を頼るようになったのもかなり時間がかかったものである。
「で、何に悩んでるんだ?」
「陰陽省に抜擢されたのよ。異例だけどね」
「え?マジかよ……知らなかった」
「もし入ることになれば私は高校生活が送れない。と言っても、ほぼ強制なんだよね。文章的に」
「……そうか」
「まぁ、それでも陰陽省を黙らせる手段はある。けど、そうすると私の手が届かないところで誰かが傷つくかもしれない」
「……」
「私、雫姉ちゃんみたいな人を守りたいんだ。あの人みたいな尊い人を私の力で守りたい。……この時代に生まれて初めて思ったの。誰かのことを守りたいって。だから前向きに検討してるのよ」
雫のことを思い出しているのだろうか、と史郎は晴明の穏やかな表情を見て思った。
守りたいと思う気持ちに理由は必要ない。
けれどそれに理由がつけばとても強いものになることを史郎は人生経験から知っていた。
(天才かつ最強の伝説の陰陽師が守りたい人を見つたんなら、誰も勝てる者はいないだろうな)
晴明の実力をよく知る史郎は冷静にそう分析していた。
「まぁ、でも高校生活を送ることも考えておけよ?青春は一度きりだぜ?」
「わかってまーす。もうしばらく悩んでみるよ」
そう答えた晴明にはもう迷いがないように史郎には見えた。
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