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第三十四話
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それは学校の昼休みの出来事だった。
「晴明ちゃん知ってる?最近、七不思議が流行ってるんだって」
晴明の友人がそう言って来たのだ。
その言葉を聞いて最近、空気が澱んでいる気がすると思っていたのは間違いではないと晴明は思った。
七不思議の内容はとても有名なものばかりだ。
トイレの花子さん、動く人体模型、音楽室の肖像画が笑う……といったものである。
勿論、ただの噂だ。根拠なんて何処にもない。
けれど怪異とは人の噂だけでも成り立つものなのだ。
その脅威を晴明はよく知っていた。
(放っておいても陰陽省の陰陽師が感知して駆けつけるだろうから大丈夫だと思いたいけど……でも念の為に放課後、注意しておくか。)
第六巻が久しぶりに危機感を持てと晴明に告げていると感じていた。
放課後。
晴明は真っ直ぐ帰ることなく校舎に残っていた。
勉強をするフリをして図書室でテキストを開いている。
やがて部活動が始まる時間帯になると晴明は注意深く気配を探りながら校舎を歩き始めた。
(……本来の力を解放したら一発で分かるけど、この世界にいる者のように振る舞わなきゃね)
もどかしい気持ちを抑えながらも七不思議の噂が立っている場所を巡ることにする。
まずは晴明のクラスがある教室の近くの女子トイレに向かう。
そこには何人かの女子が花子さんを見ようと探索していた。
「あ!晴明ちゃんだ。晴明ちゃんもトイレの花子さん見に来たの?」
「うーん。ちょっと個人的に気になることがあってね。君たちに着いていっても良いかな」
「いいよ~。一緒に七不思議巡りしよう!」
そう言って晴明はクラスメイトたちと七不思議を巡ることになった。
晴明は密かに強力な結界をクラスメイトたちに張って守りながら共に行動した。
七つ全て巡ったところ結論から言えば黒。完全に七不思議は怪異となっている。
いつ怪異が生徒たちを襲ってもおかしくないほどに成長しており、晴明は自分の第六感は正しかったのだと認識した。
(陰陽師と言えばこの時代では陰陽省の人間を指すからなぁ。正式な陰陽師でない私が手を出したら多分面倒なことになる。とりあえず結界を更に強化…)
そう晴明が結界の強化を発動させようとした時だった。
突然、人型を象った怪異が晴明と行動していたクラスメイトたちを襲い掛かろうとしていた。
七不思議には続きがあるものだ。
様々なパターンがあるがこの学校では八つ目の不思議に自分自身がなるというものだった。
素早く結界の強化を急ぎクラスメイトたちに声をかける。
「みんな早く逃げて!ここは私がなんとかするから!」
晴明は恐怖で逃げるクラスメイトたち全員に強力な結界を張り、自身は人を象った怪異と向き合った。
(陰陽師が近づいてきてる。なら、時間を稼ごう)
気配を感じ取り、晴明は自身にも強力な結界を張って怪異からの攻撃を防いだ。
本当は逃げてもいいかもしれないが念の為に自分が餌になろうと思ったのだ。
そうすればクラスメイトたちは安全だし、自分がいれば陰陽師たちも分かりやすいはずだと晴明は冷静に考えていた。
体感時間十五分ほど。
緊急出動した二名の男性陰陽師が到着。
「我々が来たからにはもう大丈夫ですよ」
「誰かが結界張ってくれたんですね。良かった」
誰かがって私なんだが?というツッコミを晴明はなんとか抑え込みならが逃げる素振りを見せる。
結界が誰が張っているのかというのは気配を辿ればすぐに分かるはずである。
気配を辿るという行為は陰陽師として基本的な力の一つだ。
それが出来ていないとなると、この二人は基礎的な力が出来ていないということになる。
晴明は二人の陰陽師の実力に早くも疑念を抱き始めた。
「六根清浄。急急如律令!!」
二人が人差し指と中指を天井に向けて呪文を唱える。
晴明は逃げるふりをしながら近くに潜んで二人の陰陽師を観察していた。
一応、先輩陰陽師として少し後輩が心配になったのだ。
怪異は少しだけ怯んだがそれくらいの力で祓えるはずがない。
なぜ弱い力で祓おうとしてるのだろうかと晴明は疑問に思った。
そうしてしばらく見守っていたのだが……。
(あれ~?陰陽寮の陰陽師ならあれくらいの怪異は一発で終わらせてたけどな……)
平安時代においても晴明は天才かつ最強と言われていたが、周りもそれなりの実力がある者たちばかりだった。
そういえば現代の陰陽師を見るのは初めてかも、という事実に晴明は気が付く。
もしかしてあれが全力の力じゃないでしょうねと不安になる。
「くそっ。我々だけの力では足りないか!」
「強すぎる……!」
(嘘でしょ。あんな雑魚、現代の陰陽師は対処出来ないの!?)
二人の陰陽師にツッコミを入れたくなるのを晴明は再び抑え込む。
逢魔が時のこの時間帯、陰陽師にとっては禁忌の時間帯でもある。
怪異が最も力が強くなる時間。そしてその怪異に対抗できない陰陽師。
なんのための陰陽省なのだろうと晴明は呆れた。
(あのままじゃあの二人が怪異にされる……!クッソ。今の私は陰陽師じゃないのに!)
だからと言って見捨てるわけにもいかない。
晴明は断腸の思いで決断し、幽世声を使って怪異を操った。
「動くな」
――それはとても澄んで凛とした声だった。
死を覚悟していた陰陽師の二人は突然、怪異が動きを止めたことで驚愕する。
そこへ一人の女子生徒が怪異に向けて歩く。
二人は先ほど逃げた女子生徒であることに気がついて逃げるように説得する。
そんな二人へ女子生徒は言った。
「あのねぇ。弱いくせに私に口答えなんて千年早いわ。陰陽道とはこう使うの。――六根清浄、急急如律令!!」
二人の何十倍もの強い力でその生徒は呪文を唱えて怪異を一気に祓った。
女子生徒は疲れた様子も見せることなく二人に尋ねる。
「参考までに聞きたいんだけど、あなたたち。陰陽師としてはどれくらい強いの?」
「え?えっとかなり強い方ですけど……」
「…………よくわかった。精進なさいね」
呆れたようにその生徒はため息をついてその場を後にした。
後から知ったその人がかの伝説の陰陽師・安倍晴明。
二人の上司となる人の名前だった。
「晴明ちゃん知ってる?最近、七不思議が流行ってるんだって」
晴明の友人がそう言って来たのだ。
その言葉を聞いて最近、空気が澱んでいる気がすると思っていたのは間違いではないと晴明は思った。
七不思議の内容はとても有名なものばかりだ。
トイレの花子さん、動く人体模型、音楽室の肖像画が笑う……といったものである。
勿論、ただの噂だ。根拠なんて何処にもない。
けれど怪異とは人の噂だけでも成り立つものなのだ。
その脅威を晴明はよく知っていた。
(放っておいても陰陽省の陰陽師が感知して駆けつけるだろうから大丈夫だと思いたいけど……でも念の為に放課後、注意しておくか。)
第六巻が久しぶりに危機感を持てと晴明に告げていると感じていた。
放課後。
晴明は真っ直ぐ帰ることなく校舎に残っていた。
勉強をするフリをして図書室でテキストを開いている。
やがて部活動が始まる時間帯になると晴明は注意深く気配を探りながら校舎を歩き始めた。
(……本来の力を解放したら一発で分かるけど、この世界にいる者のように振る舞わなきゃね)
もどかしい気持ちを抑えながらも七不思議の噂が立っている場所を巡ることにする。
まずは晴明のクラスがある教室の近くの女子トイレに向かう。
そこには何人かの女子が花子さんを見ようと探索していた。
「あ!晴明ちゃんだ。晴明ちゃんもトイレの花子さん見に来たの?」
「うーん。ちょっと個人的に気になることがあってね。君たちに着いていっても良いかな」
「いいよ~。一緒に七不思議巡りしよう!」
そう言って晴明はクラスメイトたちと七不思議を巡ることになった。
晴明は密かに強力な結界をクラスメイトたちに張って守りながら共に行動した。
七つ全て巡ったところ結論から言えば黒。完全に七不思議は怪異となっている。
いつ怪異が生徒たちを襲ってもおかしくないほどに成長しており、晴明は自分の第六感は正しかったのだと認識した。
(陰陽師と言えばこの時代では陰陽省の人間を指すからなぁ。正式な陰陽師でない私が手を出したら多分面倒なことになる。とりあえず結界を更に強化…)
そう晴明が結界の強化を発動させようとした時だった。
突然、人型を象った怪異が晴明と行動していたクラスメイトたちを襲い掛かろうとしていた。
七不思議には続きがあるものだ。
様々なパターンがあるがこの学校では八つ目の不思議に自分自身がなるというものだった。
素早く結界の強化を急ぎクラスメイトたちに声をかける。
「みんな早く逃げて!ここは私がなんとかするから!」
晴明は恐怖で逃げるクラスメイトたち全員に強力な結界を張り、自身は人を象った怪異と向き合った。
(陰陽師が近づいてきてる。なら、時間を稼ごう)
気配を感じ取り、晴明は自身にも強力な結界を張って怪異からの攻撃を防いだ。
本当は逃げてもいいかもしれないが念の為に自分が餌になろうと思ったのだ。
そうすればクラスメイトたちは安全だし、自分がいれば陰陽師たちも分かりやすいはずだと晴明は冷静に考えていた。
体感時間十五分ほど。
緊急出動した二名の男性陰陽師が到着。
「我々が来たからにはもう大丈夫ですよ」
「誰かが結界張ってくれたんですね。良かった」
誰かがって私なんだが?というツッコミを晴明はなんとか抑え込みならが逃げる素振りを見せる。
結界が誰が張っているのかというのは気配を辿ればすぐに分かるはずである。
気配を辿るという行為は陰陽師として基本的な力の一つだ。
それが出来ていないとなると、この二人は基礎的な力が出来ていないということになる。
晴明は二人の陰陽師の実力に早くも疑念を抱き始めた。
「六根清浄。急急如律令!!」
二人が人差し指と中指を天井に向けて呪文を唱える。
晴明は逃げるふりをしながら近くに潜んで二人の陰陽師を観察していた。
一応、先輩陰陽師として少し後輩が心配になったのだ。
怪異は少しだけ怯んだがそれくらいの力で祓えるはずがない。
なぜ弱い力で祓おうとしてるのだろうかと晴明は疑問に思った。
そうしてしばらく見守っていたのだが……。
(あれ~?陰陽寮の陰陽師ならあれくらいの怪異は一発で終わらせてたけどな……)
平安時代においても晴明は天才かつ最強と言われていたが、周りもそれなりの実力がある者たちばかりだった。
そういえば現代の陰陽師を見るのは初めてかも、という事実に晴明は気が付く。
もしかしてあれが全力の力じゃないでしょうねと不安になる。
「くそっ。我々だけの力では足りないか!」
「強すぎる……!」
(嘘でしょ。あんな雑魚、現代の陰陽師は対処出来ないの!?)
二人の陰陽師にツッコミを入れたくなるのを晴明は再び抑え込む。
逢魔が時のこの時間帯、陰陽師にとっては禁忌の時間帯でもある。
怪異が最も力が強くなる時間。そしてその怪異に対抗できない陰陽師。
なんのための陰陽省なのだろうと晴明は呆れた。
(あのままじゃあの二人が怪異にされる……!クッソ。今の私は陰陽師じゃないのに!)
だからと言って見捨てるわけにもいかない。
晴明は断腸の思いで決断し、幽世声を使って怪異を操った。
「動くな」
――それはとても澄んで凛とした声だった。
死を覚悟していた陰陽師の二人は突然、怪異が動きを止めたことで驚愕する。
そこへ一人の女子生徒が怪異に向けて歩く。
二人は先ほど逃げた女子生徒であることに気がついて逃げるように説得する。
そんな二人へ女子生徒は言った。
「あのねぇ。弱いくせに私に口答えなんて千年早いわ。陰陽道とはこう使うの。――六根清浄、急急如律令!!」
二人の何十倍もの強い力でその生徒は呪文を唱えて怪異を一気に祓った。
女子生徒は疲れた様子も見せることなく二人に尋ねる。
「参考までに聞きたいんだけど、あなたたち。陰陽師としてはどれくらい強いの?」
「え?えっとかなり強い方ですけど……」
「…………よくわかった。精進なさいね」
呆れたようにその生徒はため息をついてその場を後にした。
後から知ったその人がかの伝説の陰陽師・安倍晴明。
二人の上司となる人の名前だった。
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