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第四十三話
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「こんな簡単に連れてこれるならもっと早くそうするべきだったな」
史郎の容姿に負けず劣らずの少年は厭らしい笑みを浮かべたままそう言う。
今の状況を考えて史郎は慎重に言葉を選んで口にした。
「……一体何が目的なんだ」
なるべく強い口調にならないように史郎は言った。
少年は史郎の言葉にずっと浮かべていた笑みを一瞬で消し去って答える。
「俺の世界一可愛いらしい婚約者をお前から取り戻す為だよ。あくまでも俺は、な」
その言葉に怒りがこもっていることが史郎には分かる。
でも少年が言う意味がイマイチ理解できずにいた。
まるで史郎が少年から婚約者を奪ったような言い草だ。それに付け足した言葉の意味も気になる。
自分の記憶を慎重に確認してみるが、史郎の記憶には婚約者を奪ったというようなことは一切なかった。
「分かってない顔だな。お前は俺から百合を奪ったっていうのに!俺の百合を!!!」
少年は怒声でそう言うなり、磔にされている史郎の顔と腹を道具を使って思い切り殴った。
史郎の視界に鮮血が飛び散る。あまりの痛みで顔が俯いた。
(百合って俺の婚約者の百合のことか?この男はアイツの知り合いなのか?)
殴られたところが痛むが現実逃避してくて言われた意味を考えてみる。
俺の百合と言っていることからこの少年は少なくとも百合に対して恋愛感情を持っているようだ。
どうやら自分の預かり知らぬうちに二人の仲を引き裂いていたらしい。
「俺から百合を立場的に奪うだけでなく、心まで奪った!百合の心は俺だけのものだったのに!!」
少年は興奮しながら何度も史郎の顔と腹を殴る。
自分の身体を使って殴らないためにかなり痛みが激しい。
気絶してしまいそうなくらい酷い痛みだった。
そんな中でも史郎は自分の考えは間違いではないことを少年の発言から察する。
「お前が生きていられるのもあと僅かだ。お父様の許可が降りたら俺の手で殺してやる。そして俺が総大将になって百合と結婚するんだ」
――そうか。事態はそこまで悪いのか。
自分の認識の甘さに史郎は苛立ちを覚えた。
てっきり相手の要求さえ飲んでしまえば自分は解放されるのではと淡い期待を抱いていたのだ。
誘拐とはそういうものだと考えていた。
けれど少年の発言を聞く限りそれは夢の話のようだ。
ここで自分の命は終わるかもしれない。そう考えると死の恐怖心に苛まれた。
(嫌だな。死にたくない。俺は生きて、まだやりたいことが沢山ある。父さんと母さんにだって会いたい)
子供にしては滅多に泣かない史郎が泣きそうになっていた。
そんな史郎の様子に気がついた少年は大声で笑いながら言った。
「お前、その歳でまだ泣くの?情けねぇやつ。なんで百合はこんな弱っちぃ男に惚れたんだ?情けねぇ」
あぁ、そうだとも。自分は弱い。弱いと思われていい。情けない男だ。認める。――だから。
「命は……命だけは助けて下さい……」
「泣いてるの面白いな」
大粒の涙をこぼしながら史郎は必死に訴えた。
声が震えている。その様子から死の恐怖が拭えきれていないことが分かった。
けれど少年は泣いている史郎の姿を見て笑っていた。
史郎の願いは少年には届いていなかった。
ピリリと電子音が部屋に鳴り響く。
それは少年が持つ携帯電話からの音色だった。
「親父からメールが来た。……交渉成立、ね。ぬらりひょんが総大将の時代はもう終わったんだ。次からは俺たちの一族が総大将だ」
「……」
「もうお前の命に価値はない。俺が殺してやる。そうすれば百合も俺の元に戻ってくる」
少年は冷たくそう言い残すと、慣れた手つきで一本の日本刀を鞘から抜いて史郎の首元に突きつける。
ここが自分の命が終わる場所だと確信した史郎はキツく目を閉じた。
――もう、ダメだ。最後に父さんと母さんに会いたかったな。
史郎がそう絶望し諦めたその瞬間。
雷鳴が鳴り響いたような轟音が部屋まで響き渡った。
少年が驚いて刀を下ろす。
「なんだ!?」
事態を把握していない少年は周囲を見渡していると、史郎を閉じ込めている部屋がいきなり崩壊した。
まるで部屋に何発も大砲で撃ち込まれたかのような崩壊の仕方だった。
ボロボロになった部屋の中に小さな影が一人、部屋の中に映り込む。
それは史郎のものでも少年のものでもない新たな侵入者の影だった。
「だ、誰だ!!!」
少年は史郎に向けていた刀をその影に向ける。
影から出てきたのは明らかに史郎と少年よりも幼い小さな少女だった。
「少々手荒く来てしまったけど間に合ったみたいね、よかった」
少女は磔にされている史郎の方を向いて安心したような声を出した。
史郎の容姿に負けず劣らずの少年は厭らしい笑みを浮かべたままそう言う。
今の状況を考えて史郎は慎重に言葉を選んで口にした。
「……一体何が目的なんだ」
なるべく強い口調にならないように史郎は言った。
少年は史郎の言葉にずっと浮かべていた笑みを一瞬で消し去って答える。
「俺の世界一可愛いらしい婚約者をお前から取り戻す為だよ。あくまでも俺は、な」
その言葉に怒りがこもっていることが史郎には分かる。
でも少年が言う意味がイマイチ理解できずにいた。
まるで史郎が少年から婚約者を奪ったような言い草だ。それに付け足した言葉の意味も気になる。
自分の記憶を慎重に確認してみるが、史郎の記憶には婚約者を奪ったというようなことは一切なかった。
「分かってない顔だな。お前は俺から百合を奪ったっていうのに!俺の百合を!!!」
少年は怒声でそう言うなり、磔にされている史郎の顔と腹を道具を使って思い切り殴った。
史郎の視界に鮮血が飛び散る。あまりの痛みで顔が俯いた。
(百合って俺の婚約者の百合のことか?この男はアイツの知り合いなのか?)
殴られたところが痛むが現実逃避してくて言われた意味を考えてみる。
俺の百合と言っていることからこの少年は少なくとも百合に対して恋愛感情を持っているようだ。
どうやら自分の預かり知らぬうちに二人の仲を引き裂いていたらしい。
「俺から百合を立場的に奪うだけでなく、心まで奪った!百合の心は俺だけのものだったのに!!」
少年は興奮しながら何度も史郎の顔と腹を殴る。
自分の身体を使って殴らないためにかなり痛みが激しい。
気絶してしまいそうなくらい酷い痛みだった。
そんな中でも史郎は自分の考えは間違いではないことを少年の発言から察する。
「お前が生きていられるのもあと僅かだ。お父様の許可が降りたら俺の手で殺してやる。そして俺が総大将になって百合と結婚するんだ」
――そうか。事態はそこまで悪いのか。
自分の認識の甘さに史郎は苛立ちを覚えた。
てっきり相手の要求さえ飲んでしまえば自分は解放されるのではと淡い期待を抱いていたのだ。
誘拐とはそういうものだと考えていた。
けれど少年の発言を聞く限りそれは夢の話のようだ。
ここで自分の命は終わるかもしれない。そう考えると死の恐怖心に苛まれた。
(嫌だな。死にたくない。俺は生きて、まだやりたいことが沢山ある。父さんと母さんにだって会いたい)
子供にしては滅多に泣かない史郎が泣きそうになっていた。
そんな史郎の様子に気がついた少年は大声で笑いながら言った。
「お前、その歳でまだ泣くの?情けねぇやつ。なんで百合はこんな弱っちぃ男に惚れたんだ?情けねぇ」
あぁ、そうだとも。自分は弱い。弱いと思われていい。情けない男だ。認める。――だから。
「命は……命だけは助けて下さい……」
「泣いてるの面白いな」
大粒の涙をこぼしながら史郎は必死に訴えた。
声が震えている。その様子から死の恐怖が拭えきれていないことが分かった。
けれど少年は泣いている史郎の姿を見て笑っていた。
史郎の願いは少年には届いていなかった。
ピリリと電子音が部屋に鳴り響く。
それは少年が持つ携帯電話からの音色だった。
「親父からメールが来た。……交渉成立、ね。ぬらりひょんが総大将の時代はもう終わったんだ。次からは俺たちの一族が総大将だ」
「……」
「もうお前の命に価値はない。俺が殺してやる。そうすれば百合も俺の元に戻ってくる」
少年は冷たくそう言い残すと、慣れた手つきで一本の日本刀を鞘から抜いて史郎の首元に突きつける。
ここが自分の命が終わる場所だと確信した史郎はキツく目を閉じた。
――もう、ダメだ。最後に父さんと母さんに会いたかったな。
史郎がそう絶望し諦めたその瞬間。
雷鳴が鳴り響いたような轟音が部屋まで響き渡った。
少年が驚いて刀を下ろす。
「なんだ!?」
事態を把握していない少年は周囲を見渡していると、史郎を閉じ込めている部屋がいきなり崩壊した。
まるで部屋に何発も大砲で撃ち込まれたかのような崩壊の仕方だった。
ボロボロになった部屋の中に小さな影が一人、部屋の中に映り込む。
それは史郎のものでも少年のものでもない新たな侵入者の影だった。
「だ、誰だ!!!」
少年は史郎に向けていた刀をその影に向ける。
影から出てきたのは明らかに史郎と少年よりも幼い小さな少女だった。
「少々手荒く来てしまったけど間に合ったみたいね、よかった」
少女は磔にされている史郎の方を向いて安心したような声を出した。
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