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第五十一話
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三人は居間に通されると、座布団の上に座った。
晴明が真ん中に座り、両隣に史郎と咲が座っている。
テーブルにはすでにいくつか料理が並べられていた。
美味しい朝食を食べて大満足な晴明だが、好きなものが並べられていたのでお腹が空きそうだった。
「咲ちゃんに会うのはこれで二度目よね。身長伸びた?晴明より大きくなっているような気がするわ」
葛の姫の言葉に咲は首を傾げる。
比べられた晴明は少し考える素振りを見せた。
「そうでしょうか」
咲は声を小さくして答える。
葛の葉姫と会うのは晴明の結婚式以来だ。
まだ二度目ということもあり、咲は緊張していた。
無理もなかった。葛の葉姫は伝説の妖狐だからだ。
つまり咲にとっては血が繋がっていなくとも種族としては大先輩に当たる。
緊張するというのはごく当たり前の話であった。
「そんなに緊張しなくていいのよ。……もう少しでご飯が炊けるから、あの人呼んでくるわね」
そう言い残し、葛の葉姫は居間から立ち去る。
その様子を見届けた咲は、はぁ…と大きく息を吐き出した。
「緊張する?母上のこと」
晴明が足を崩して尋ねた。彼女は葛の葉姫の実の娘なのでその感情はわからない。
咲は何度も激しくうなづいた。
「まぁ、何度か会ってればそのうち慣れてくるよ。史郎も子供の頃は緊張していたし」
「俺の話は恥ずかしいからあまり出すなよ」
不満げな顔をして史郎がそう言った。
それに対して咲は意外そうな表情を浮かべる。
「葛の葉姫様に緊張していたのですか?史郎様が?」
「……確かに俺は子供にしては賢かったし、冷静な性格だったと今は思うけどよ。だからって緊張しないとは限らないだろ」
微笑を浮かべて史郎はそう答えた。
自分だけが緊張したわけではないのだと咲は少し安心した。
そのように会話していると、やがて二人分の足音が聞こえてくる。
足音は居間で立ち止まった。
「仕事が立て込んでいて遅れてしまって申し訳ないね。三人とも、久しぶり」
晴明の父親である安倍保名が葛の葉姫の隣に立っていた。
「お久しぶりです。父上」
ひらひらと手を軽く振って晴明はそう実の父親に話かけた。
史郎と咲は軽く頭を下げる。
保名は嬉しそうにその様子を視界に入れていた。
晴明の向かい側に保名が座ると、葛の葉姫がご飯と作った全ての料理をテープルに並べた。
「晴明の好きなものだけでなく、この人の好きなものも作ってみたわ」
「美味しそうです。母上は相変わらず料理が上手ですね」
母親が作った料理を嬉しそうに晴明は笑顔を浮かべていた。
そんな晴明に史郎も笑顔を浮かべて言う。
「俺もこれくらい料理が上達できたらいいんだけどな。まだまだだ。」
「ありがとう、史郎くん。さぁ、冷めないうちに食べましょう。新幹線の時間もあるでしょう?」
「ありがとうございます、母上。――いただきます」
全員手を合わせて挨拶をしてから食事を始めた。
「晴明は見ない間に更に綺麗になったなぁ」
保名はしみじみと娘の成長を感じていた。
咀嚼して飲み込んでから晴明は父親に言う。
「父上は相変わらずお忙しそうですね。無理もありませんが」
「ははは……もう慣れたさ」
二人の会話を聞いて咲は疑問に思っていたことを思い出した。
晴明からの情報で彼女の父親が人間であることは知っている。
あまり関わることもなかったので咲はそれくらいしか知らないし興味もなかった。
けれど普通に考えれば人間がこの時代まで生きているというのはおかしな話だ。
晴明のように父親も生まれ変わったのだろうか。
そう考えた咲は思い切って尋ねてみた。
「晴明様。お父上は人間なんですよね」
「うん。そうだよ」
「ではなぜこの時代まで生きていられるのですか?」
「……あれ。咲に話したこと、なかったっけ」
晴明はしまったという顔をして箸を止めた。
娘の表情を見て察した保名は少し呆れたように口を開く。
「私のことを家族のような式神にきちんと話していないのは感心しないよ、晴明」
「申し訳ございません、父上。咲。……てっきり話しているつもりでおりました」
食事中にも関わらず、晴明は頭を深々と下げた。
咲は慌てて頭を上げるように言う。
「頭を上げてください、晴明様」
「いや、結構大事なことなのよ。私が歴史に名を残せたのは父上の血筋が大きく影響しているから」
「……半妖だから、ではないのですか?」
晴明の言葉に咲は目を見開く。
史郎は別段、驚いている様子はない。
何もかも知っているといった風にとても落ち着いていた。
「それもあるかもしれないけど、多分それだけではないんだよね。簡単に言うとね、私の父上は人間道の人間ではないのよ」
「人間道……って確か六道のことですよね」
咲の言う六道とは、仏教の世界観における輪廻転生の六つの世界のことだ。
地獄道、飢餓道、畜生道、修羅道、人間道、天道のことを指す。
そのうち人間が生きる世界のことを人間道と言う。
「そうだよ、よく勉強してるね。ではどこの人間なのかというと、地獄道の人間。閻魔大王の息子が私の父上なんだよ」
咲は晴明の言葉に身体が完全に固まった。
晴明が真ん中に座り、両隣に史郎と咲が座っている。
テーブルにはすでにいくつか料理が並べられていた。
美味しい朝食を食べて大満足な晴明だが、好きなものが並べられていたのでお腹が空きそうだった。
「咲ちゃんに会うのはこれで二度目よね。身長伸びた?晴明より大きくなっているような気がするわ」
葛の姫の言葉に咲は首を傾げる。
比べられた晴明は少し考える素振りを見せた。
「そうでしょうか」
咲は声を小さくして答える。
葛の葉姫と会うのは晴明の結婚式以来だ。
まだ二度目ということもあり、咲は緊張していた。
無理もなかった。葛の葉姫は伝説の妖狐だからだ。
つまり咲にとっては血が繋がっていなくとも種族としては大先輩に当たる。
緊張するというのはごく当たり前の話であった。
「そんなに緊張しなくていいのよ。……もう少しでご飯が炊けるから、あの人呼んでくるわね」
そう言い残し、葛の葉姫は居間から立ち去る。
その様子を見届けた咲は、はぁ…と大きく息を吐き出した。
「緊張する?母上のこと」
晴明が足を崩して尋ねた。彼女は葛の葉姫の実の娘なのでその感情はわからない。
咲は何度も激しくうなづいた。
「まぁ、何度か会ってればそのうち慣れてくるよ。史郎も子供の頃は緊張していたし」
「俺の話は恥ずかしいからあまり出すなよ」
不満げな顔をして史郎がそう言った。
それに対して咲は意外そうな表情を浮かべる。
「葛の葉姫様に緊張していたのですか?史郎様が?」
「……確かに俺は子供にしては賢かったし、冷静な性格だったと今は思うけどよ。だからって緊張しないとは限らないだろ」
微笑を浮かべて史郎はそう答えた。
自分だけが緊張したわけではないのだと咲は少し安心した。
そのように会話していると、やがて二人分の足音が聞こえてくる。
足音は居間で立ち止まった。
「仕事が立て込んでいて遅れてしまって申し訳ないね。三人とも、久しぶり」
晴明の父親である安倍保名が葛の葉姫の隣に立っていた。
「お久しぶりです。父上」
ひらひらと手を軽く振って晴明はそう実の父親に話かけた。
史郎と咲は軽く頭を下げる。
保名は嬉しそうにその様子を視界に入れていた。
晴明の向かい側に保名が座ると、葛の葉姫がご飯と作った全ての料理をテープルに並べた。
「晴明の好きなものだけでなく、この人の好きなものも作ってみたわ」
「美味しそうです。母上は相変わらず料理が上手ですね」
母親が作った料理を嬉しそうに晴明は笑顔を浮かべていた。
そんな晴明に史郎も笑顔を浮かべて言う。
「俺もこれくらい料理が上達できたらいいんだけどな。まだまだだ。」
「ありがとう、史郎くん。さぁ、冷めないうちに食べましょう。新幹線の時間もあるでしょう?」
「ありがとうございます、母上。――いただきます」
全員手を合わせて挨拶をしてから食事を始めた。
「晴明は見ない間に更に綺麗になったなぁ」
保名はしみじみと娘の成長を感じていた。
咀嚼して飲み込んでから晴明は父親に言う。
「父上は相変わらずお忙しそうですね。無理もありませんが」
「ははは……もう慣れたさ」
二人の会話を聞いて咲は疑問に思っていたことを思い出した。
晴明からの情報で彼女の父親が人間であることは知っている。
あまり関わることもなかったので咲はそれくらいしか知らないし興味もなかった。
けれど普通に考えれば人間がこの時代まで生きているというのはおかしな話だ。
晴明のように父親も生まれ変わったのだろうか。
そう考えた咲は思い切って尋ねてみた。
「晴明様。お父上は人間なんですよね」
「うん。そうだよ」
「ではなぜこの時代まで生きていられるのですか?」
「……あれ。咲に話したこと、なかったっけ」
晴明はしまったという顔をして箸を止めた。
娘の表情を見て察した保名は少し呆れたように口を開く。
「私のことを家族のような式神にきちんと話していないのは感心しないよ、晴明」
「申し訳ございません、父上。咲。……てっきり話しているつもりでおりました」
食事中にも関わらず、晴明は頭を深々と下げた。
咲は慌てて頭を上げるように言う。
「頭を上げてください、晴明様」
「いや、結構大事なことなのよ。私が歴史に名を残せたのは父上の血筋が大きく影響しているから」
「……半妖だから、ではないのですか?」
晴明の言葉に咲は目を見開く。
史郎は別段、驚いている様子はない。
何もかも知っているといった風にとても落ち着いていた。
「それもあるかもしれないけど、多分それだけではないんだよね。簡単に言うとね、私の父上は人間道の人間ではないのよ」
「人間道……って確か六道のことですよね」
咲の言う六道とは、仏教の世界観における輪廻転生の六つの世界のことだ。
地獄道、飢餓道、畜生道、修羅道、人間道、天道のことを指す。
そのうち人間が生きる世界のことを人間道と言う。
「そうだよ、よく勉強してるね。ではどこの人間なのかというと、地獄道の人間。閻魔大王の息子が私の父上なんだよ」
咲は晴明の言葉に身体が完全に固まった。
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