夕暮れアイデンティティ

水望 彗

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藍.

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「ただーいまっ」
放送室に戻るとさっき居たメンツがそのまま残っていた。
「おかえり~!撮影いけた~?」
れいちゃんがハグをしながら迎えてくれる。
「ダメだった。じゃけまたアポ取り直して来たけ今度撮影してくるよ」
「そかそか、おっけ~。」
目線が下がり少し毒を持った表情をされる。
(申し訳ない…)
「遥起きとるかーい?後で少しお話いい?」
「うん、ええよ~。じゃあもうそろ帰ろっか」
遥は少し元気がなさそうだったが笑顔で応じてくれる。元々バイトが忙しい人なので疲れているのかもしれない。
「あの、部長さん。この撮影って誰が考えたんですか?」
帰る準備を各々していると野田くんが言った。
(頼むから黙っといて…)
「先生だよ。なんか今度入学説明会とかで使うらしいよ~」
「そうなんですか。じゃあ1度この企画白紙にしませんか?」
空気が凍りついた。
「どして?」
遥は困ったような表情になりながらも笑顔を保っている。
れいちゃんやゆずちゃんからは冷気が既にダダ漏れているが…
「だって段取り悪いじゃないですか。部長さん達が一生懸命考えてくださった案なのは理解してるのですが、ついていけないです。」
「じゃあそれはもう一度みんなで話あって改善しようか」
「でも他の部活へダンスを1から覚えてもらって撮影するのに今月中って無理がありますよ。アポもまだ取れてない班が多いのに。それなら──」
「お前何が言いたいん。」
れいちゃんが噛み付いた。
「どういうことですか?」
(始まった…)
遥は困惑した表情のまま固まってしまっている。
自分もどう止めたらいいものかわからず様子を伺う。
「お前さ、さっきから何をぐじゅぐじゅいいよん?みんなが一生懸命考えた案に文句つけるん?お前何もしてないくせに」
「新しく入ってきたばかりの分際で申し訳ないとは思うんですけど、この案は難しすぎますよ。それならもう少しレベルを落とすべきです」
「いやいやいや、そしたら今撮影協力してもらっとる部活になんて言うん?全部部長の遥とかの責任になるんよ?協力してやり遂げようとは思わんのん?」
「そうじゃないじゃないですか。だから確実に出来る企画に変更した方が──」
「もういい帰る。」
「一緒に帰ろうや。」
ゆずちゃんとひびくんも荷物をとって帰ろうとする。
「──お前なんて言ったんや!!」
れいちゃんが野田くんの前を通り奥の防音室に入ろうとすると野田くんが殴り掛かる勢いで追いかけた。
「何も言ってないだろうが!お前まじなんなんや!」
ゆずちゃんが野田くんの前に立ち叫ぶ。
「お前やっとること最低だかんな。女に手挙げようとすんなや」
「あっちから先にふっかけて来たんだろーが!目の前通る時死ねって暴言吐いたあいつはいいんか!」
「それくらいで手挙げようとすんなや!そもそも入ったばっかの新人がでしゃばんな。何も知らん癖にガタガタ抜かすなや」
「あ?部活辞めた貴女に言われたくはないですよ。この企画がめんどくさかったから退部したって聞きましたけど?」
「そんなことは関係ないじゃん。とりあえずれいちゃんに謝れや。そんで企画を一生懸命考えてきた子らに謝れや!」
「意味がわかりませんよ。矛盾しすぎてませんか?」
「何がや。一生懸命やっとる人に文句ばっか言うなや。お前のその態度が気に食わん。」
──もう限界。
涙が出ていた。止まらなかった。
呼吸を潜めてそのまましゃがみこむ。
その後もずっと野田くんとゆずちゃんの怒鳴り声が放送室に響いていた。
すると遥が勇気を出して止めに入ったのだろう。か細い声で喧嘩を止める声がした。
色んな人の暗い感情を読み取って自分の気持ちまでぐちゃぐちゃで精神的にしんどかった。
その後元部長が喧嘩を完全に鎮めてくれてその日は各々帰路に着いた。
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