特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

文字の大きさ
243 / 450
閑話休題 -次に向けての準備期間-

閑話休題 -47話-[ドーモ。ドワーフ=サン。④]

しおりを挟む
 村に進む道中では、
 俺の隣をタルテューフォが歩き頭を撫でて気分を発散させながら歩く。
 手を離すと頬を膨らませて不機嫌になるのでとりあえず村に着くまでは撫で続けるしかなさそうだ…。

 これで12歳。
 普通の猪なら10~20年が寿命だった気がするから、
 本来ならもう死んでるか半分超えている感じなのに見た目は年齢よりも幼い印象だ。
 アルシェとマリエルも知ったうえで歳よりも幼い子を相手にしている様に見えるし。
 里帰りの時にでもカカ様に人間なら何歳か聞いてみるか。

 ブルー・ドラゴンフリューネは新しいワイバーン形態で俺たちの周りを走り回っている。
 何が楽しいのか岩に羽ばたいて登ったり、頭突きをして岩を壊したり暴れ放題だ。

「フリューネ、そろそろ着くから落ち着けよ」
『あぁ、ごめんね。今後色んな竜種を真似てみようと思うくらいに新鮮だったから、つい』

 ざわざわと騒がしい声が村から漏れ聞こえてくる。
 岩角を曲がれば、村の入り口で壁となるほどに集まっているドワーフ達が見えた。
 ってか、俺の知るドワーフと違ってずんぐりじゃないんだが?

「こんにちわ」

 そんな内心の驚きはおくびにも出さずドワーフの面々に向けて挨拶をする。
 俺の対応に驚いたのか知らないが、全員が一瞬で静かになった所で誰が代表として話始めるのか待ってみれば全員が再び口を開いて何やら文句を言い始めた。

「人間が何しにやって来たんだ!」
「どうせ人間の町で犯罪を犯して島流しになったのだろう!」
「お前も精霊使いの仲間だろう!島から出ていけ!」
「今度は魔物まで連れて来やがって!!」
「ヤマノサチだからってドワーフ相手にいい度胸だ!!」
「精霊使いの次は魔物使いかっ!」
「厄災しかもたらさない人間めっ!!」
「お前も猪も竜もブチ殺してやるっ!!」

 これはタルテューフォもキレるわな。
 来たばかりで島の状況もよくわからないってのにいきなり誹謗中傷に晒されるのだから。
 うちの子達を連れてこなくて正解だったな…。

うるさいな」

 タルの頭を撫でる方とは逆の腕を振るうと誹謗中傷の声はピタリと止んだ。
 まぁ、制御力で一定範囲の振動数を下げただけでこちらに彼らからの声が届かなくなっただけで、
 ドワーフ達もいきなりの事態に困惑しているのか互いを見渡し声が出ず聞こえない状況に混乱し始めた。

「俺たちを殺すとさえずったお前、前に出ろ」
「っ!? 声が聞こえる!?」
「早くしろ」

 俺も日本人だからね。
 礼には例で返すけど、不作法の輩には分相応の対応をさせていただく。
 俺の声を一人の青年のみに聞こえるように制御して意思を伝えるが、
 戸惑うばかりでさっさと前に出てこないので殺気を放出する。

 俺の殺気程度なら耐えられるらしいドワーフ達は逆に冷静になって俺に殺気を返して来た。
 が、その返しに反応をしたのは聖獣と青竜なもんだから、
 瀑布の様な殺気が村を飲み込みほとんどの住人は顔を青ざめさせ尻もちをつき、中にはアンモニア臭を発し始める者も出る始末。
 ただ、俺が指示した青年は口だけ野郎だったのかアンモニア組に入っていてまともに話が出来るようには見えなかった。

 意図せず静かにはなったので制御は解除して改めてまともに状況の説明が出来そうな奴を探して見渡す。

「おいちゃん、話せるか?
 挨拶をしたら口汚く罵られた理由を伺いたいんだが」
「お、お前ら……精霊使いの仲間じゃないのか?」
「話が見えないな。俺たちは今日島に着いたばかりの旅人だぞ?
 その精霊使いとやらの名前は? 現状知っているかどうかの判断も出来ないぞ」
「名前は、知らない。
 本当に精霊使いの仲間じゃないの、か?」

 正体を隠しているからなんともすっきりしないけど、
 とりあえず調査に動き出すにしてももっと詳しい話を伺う必要はあるか…。

「しつこい。村に近づいただけで無礼なドワーフ共がうちのチビをいじめて殺すと恐喝きょうかつした。
 さらに善良な旅人が挨拶したら無礼なドワーフ共が分も弁えず殺気立って口汚く罵って来た。それが現実だ。
 詳しい話を聞かないと納得出来ないから偉い奴のところに連れて行ってほしんだが?」
「ま、待ってくれ!すぐには決められないっ!」
「待つから早くしてくれ」
「その……殺気も治めてはもらえないだろうか」

 はぁ? 何言ってんのこいつ。
 自分達の立場分かってないのかよ……。

「口から出た言葉は戻りはしない。
 謝りも無く殺気を治めてくれとはまだ高い鼻をお持ちらしいな」
「いやっ!すまないっ!
 勘違いしたことは謝る、しかし村の総意を確認しなければ俺にはどうしようもない」
「じゃあ、いってらっしゃい♪」

 俺の付け焼刃な殺気に比べれば数段上の殺気を発する生物が2匹だもんな。
 時間経過で泡を吹いて気絶している者もすでに見渡すだけで結構な数が居るし、
 話が出来たおいちゃんも青い顔でふらふらしながらまだ意識のある者に声掛けを行い村の奥へと消えていった。

 まぁ俺自身としては別に怒りはしていない。
 何か言われるだろうとタルが戻って来た時点で覚悟できていたし、
 言われる対象も俺とタルとフリューネの3人だ。
 これがうちの子供たちに向けられていたら……近い奴の腕の一本は飛んでいただろう。
 それを見たドワーフ共が襲い掛かって来ても全員の腕を飛ばしてまともな生活を送れない様にすることで清算とすると思う。
 長く続く嫌がらせとか実は大好きなんだ。

「(とりあえずドワーフは黙らせたけど一旦村人で俺たちをどうするか話し合うらしい)」
『(わかったです。フラムとベルとウォルベズに伝えるです)』


 * * * * *
 30分も待てば話し合いが終わったのか先ほどの青年と武器を構える5名が迎えに出て来た。
 待つ間に2人が殺気を抑える事はなく、
 青ざめた顔のドワーフが気絶したドワーフを回収する光景を眺めるしかすることが無く暇だった。

「お待たせしました、お客人。
 村長のご子息が対応致しますので自分に付いてきてください」
「ありがとう。本来なら挨拶のあとすぐにその言葉が聞きたかったなぁ」
「状況が状況ですので……。詳しくはご子息に」
「おいちゃん貧乏くじ引いたんだろ。ご愁傷様」
「ははは……」

 お前の所為だろうがっ!て聞こえてきそうな乾いた笑い。
 俺が話しかけた人物だからかこの橋渡し役も押し付けられたのだろう。
 周りの斧やらツルハシを握る護衛役も強張った顔のまま俺たちを警戒しつつ俺たちは村の中を歩き始めた。

「想像していたよりも開拓されてるな」
「大地の力も育まれてて良い土地だよ!」
『グギャアアア!』

 そもそもドワーフ共の格好は土の国内とはいえまだ冬だってのに半裸だ。
 男性はリザード革のシャツと半ズボン。
 女性もチューブトップに軽い上着とスリット入りのスカート。
 寒さに強い種族というのもあるのだろうが、
 村に入ってから妙に熱気が肌を撫でる。

 よく見れば村のあちこちに足湯や地面に鉄格子などもあるから、
 もしかしたら温泉でも村中に引いているのかもしれない。
 あの鉄格子からの湯気も家の床を通ってきたのであれば床暖房の技術を持っているのか?

「こちらです」

 俺たちが村に入った反対方向に大規模な畑を見掛けた瞬間に青年からの声が掛かる。
 家の多くは4~5人家族が住むには良さそうな半球型の家だったが、
 村長の家は複数の家が合体したような見た目で12人は快適に住めそうなデカさだった。

「ソニューザ。連れて来たぞ」
「ありがとう。嫌な役を押し付けて悪かったな、アゾレラ」
「じゃあ、あとは任せるぞ。
 魔物使い様、奥へどうぞ。座って待つ男が村長のご子息です」
「案内ありがとう。
 貴方の誠意に感謝を表したい。フリューネ、殺気を治めてくれ」
『グアッ!』

 多分年上の男性なのに敬語使わせちゃって悪いねって意味で殺気レベルを下げさせた。
 ただし、直接文句を言われたタルは継続してギンギンに殺気立ったままだが。

「ようこそ、旅の方。
 まずは早とちりをして貴方たちを傷つけた事、長代理として謝罪致します」

 奥で座椅子に座って出迎えた男はまだ30代くらいの青年だった。
 俺たちが2m手前で止まると立ち上がって硬い声音で話しかけてきた。

「俺と竜は気にしない。勘違いだと分かったうえで聞き流したからな。
 だが、この子に言った言葉だけはこの子に清算方法を決めさせる。
 殺しはさせないが出来る限り彼女に尽くすように村人に伝えてくれ。
 総意で傷つけたのだろう?」
「そう言われては弱いですね。
 可能な限りは手配しますが彼らにも生活があるので……」
「その辺りはちゃんと言い含めてやる」
「わかりました」

 突ける部分を突いて行こう。
 これでタルを通して村の状況や生活水準とかを調べることが出来るな。

「タル、一回抑えてくれるか?
 まだ言ってくる奴が居たら遊んでいいから」
「死ぬかもしれないよ?」
「自業自得だから大丈夫。 見逃しは1度だけでいいよな?」
「徹底致しますっ!」

 ソニューザと呼ばれたドワーフは即座に動き始め、
 武器を持ったまま待機していた面々に指示を出すと一人を残して散り散りに村へ駆け出して行った。
 村一番の戦士とかそんななのかな?

 パンッ!
「じゃあ仕切り直しましょうか。
 こっちも話すことはありますが、まずはそちらの事情を教えてください」
「え? あ、はい!」

 言葉通り仕切りなおす為柏手かしわでで空気を切り替える。
 音にビックリした顔のソニューザは続く俺の言葉が敬語になっていることで混乱に拍車が掛ったかの様に着いて来れていない返事をする。
 それでも村長代理としての責務からかすぐに持ち直して村の状況の説明を始めた。
しおりを挟む
感想 87

あなたにおすすめの小説

家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。

希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。 手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。 「このまま死ぬのかな……」 そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。 ​そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。 試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。 ​「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」 ​スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。 たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。

優の異世界ごはん日記

風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。 ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。 未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。 彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。 モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。

【完結】辺境の魔法使い この世界に翻弄される

秋.水
ファンタジー
記憶を無くした主人公は魔法使い。しかし目立つ事や面倒な事が嫌い。それでも次々増える家族を守るため、必死にトラブルを回避して、目立たないようにあの手この手を使っているうちに、自分がかなりヤバい立場に立たされている事を知ってしまう。しかも異種族ハーレムの主人公なのにDTでEDだったりして大変な生活が続いていく。最後には世界が・・・・。まったり系異種族ハーレムもの?です。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

最弱スキルも9999個集まれば最強だよね(完結)

排他的経済水域
ファンタジー
12歳の誕生日 冒険者になる事が憧れのケインは、教会にて スキル適性値とオリジナルスキルが告げられる 強いスキルを望むケインであったが、 スキル適性値はG オリジナルスキルも『スキル重複』というよくわからない物 友人からも家族からも馬鹿にされ、 尚最強の冒険者になる事をあきらめないケイン そんなある日、 『スキル重複』の本来の効果を知る事となる。 その効果とは、 同じスキルを2つ以上持つ事ができ、 同系統の効果のスキルは効果が重複するという 恐ろしい物であった。 このスキルをもって、ケインの下剋上は今始まる。      HOTランキング 1位!(2023年2月21日) ファンタジー24hポイントランキング 3位!(2023年2月21日)

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...