特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

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第13章 -1st_Wナユタの世界-

†第13章† -24話-[魔神族ナユタ&メルケルス③]

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 一方その頃。
 宗八そうはちがアルシェからの命令で霹靂へきれきのナユタの討伐を試している同時刻。
 マリエルは叢風むらかぜのメルケルスと激しい空中戦を繰り広げており、メルケルスは自身の翼を高速機動が出来る広げ方から臨機応変に飛べる広げ方に変更しコンコルドの出力も細かな機動変化に対応出来るよう調整し始めていた。

「はっ!たぁ!ぜあぁぁぁっ‼」
『(いけぇ!そこぉ!まだまだですわー‼)』

 内に宿るニルの声援を受けながらマリエルは果敢にメルケルスへ連撃を繰り返していた。
 通常攻撃が効かない事は承知の上で隙を見せれば痛い一撃を叩き込んでやろうという思惑を浮かべており、現在は空中にて付かず離れずを繰り返し事態は停滞していた。

「まだ…? まだまだまだまだまだまだ……まだ?」
「あぁ~!煩いなぁ!まだまだ、まだまだって厭らしい抑え方している方が言う言葉じゃないわよ!」
「才能、あると思う……。貴女ならまた私を傷つけられるはず……。頑張って……」
『(生まれて初めて出会うタイプでニルは困惑していますわー!?お父様ーっ‼)』

 そこは今も勇戦しているお父さんじゃなくて一緒に戦っている私の名を呼ぶべきところじゃないの?とマリエルは思ったが聞き流すことにした。互いに空を飛ぶ姿勢は前傾姿勢の為、上を取った方が優位となるので入れ代わり立ち代わり時には上下反転して飛ぶことも求められる戦いにマリエルとニルの飛行技術はメキメキと上達していく。
 今では短時間ながら仰向けで飛行することも可能になっているがそれでも進行方向の状況がわからない恐怖に攻撃や防御は少々疎かになってしまう。

「《ガストピアサー》」
「《風神脚ふうじんきゃく/山颪やまおろし!》」

 優位を取って見下ろすメルケルスは風巻く鋭い槍を突き出し、仰向けのマリエルが迎撃に切っ先を蹴た瞬間ギャリリリリリリッ‼と不快音を鳴らしながら蹴り払って防御に成功する。

「《風神脚ふうじんきゃく/烈風嵐れっぷうらんっ!》」
「《エメラルダシールド》」

 槍の戻しが早くても次に突かれる前にリボンのスラスターを利用して真上を位置取るメルケルスを蹴り上げるが盾の防御力を上げる魔法にて無難に防がれた。その勢いのままポジションが入れ替わり今度はマリエルが優位な攻防を開始する。
 メルケルスの飛行は背から生える翼と翼装備のコンコルドによるものだ。つまり鳥と同じく仰向けで戦うことは出来ないので今回の順番も飛行速度を上げてマリエル達を振り切りリセットする方法でマリエルの有利ターンをパスして来る。

『(ぐぬぬー!これでは決着が付けられませんわー‼)』
「いや、私達がここで倒すことが出来てもメルケルスの世界で復活するかもしれないんでしょ? とりあえず隊長と姫様の邪魔にならなければ怒られることは無いと思うけど……」
『(甘いですわー!倒してしまえばナユタの世界に戻って来る時間稼ぎは出来ますし、その間はニル達もナユタの相手が出来ますものー!それに倒せないまま戦い続けるのは達成感が無くてつまらないんですわー!)』
「う~ん、一理ある。ただ、課題は見えてるし無理はしたくないんだよね。
 何か隊長がナユタを誘導して私達と離し始めたしメルケルスが邪魔にならないように気を引き締めましょう」

 無理をして怪我をすれば最悪数か月まともな訓練も出来なくなるし、おそらく今のペースなら次の戦いもそれほど間を置かずあの隊長は敵を見つけてくるだろう。私だって無自覚な”ストライカー”のつもりはない。メリーさんとクーちゃんのペアは戦闘に不向きな属性だから姫様のサポートを優先しているしセーバーさんとリュースライアは[ユニゾン]慣れをしていないからまだ隊長が求める基準に達していないけれど、いずれ状況を打破しうる”ストライカー”の人数は確実に増えていく。

 でも今メルケルスと相対出来るのは私とニルだけだ。
 いずれセーバーさんやライナーさんを筆頭に風精霊使いが空に進出するその時までは……。

「空は私達が確保しないとね!」
『ですわねーっ‼』


「『《翠雷纏身すいらいてんしんっ‼》』」


 身体が翠雷すいらいに変質したマリエル達の前に高度を上げて切り返して来たメルケルスが警戒しつつ盾を前面に構えて向かってくる様子を捉えた。今までにも数度短時間発動していた雷化を安全面や安定性を考え魔法式からすべて組み上げ直した新魔法。先に蹴り放った[シルフィードスティング]とは別に用意された必殺技の一つだ。

「《ライトニングスティング!》」
「《多連脚!》」
『(雷の耐性は上がっていますものー!痛くも痒くもありませんわー!)』
「《フェザーストーム!》」
「《転送テレポート》《断頭嵐だんとうらん!》」

 メルケルスの得物[アストラエア]がバリリッと雷が付与され攻撃速度と貫通力が上昇したうえで目にも止まらぬ速さで15連続で突き出された切っ先をマリエルは雷化によるで全てを蹴り払いノーダメージで切り抜けた。
 続けて間断なく翼から放たれる複数の鋭い羽が広範囲にばら撒かれるも雷化で回避。メルケルスの背後に姿を現したマリエルは既に予備動作の済んだ蹴り落としモーションを続行しメルケルスの機動力の要である翼の根元に蹴りを打ち込んだ。

「うぐぁ……!《逆巻いて》《ポーラウインド》」
「嘘っ!?この状態でも身体って凍るの!?」
『(本当に雷化するのは危ないですものー。お父様の意見もあって疑似的に雷化を再現しているだけですわー!
 完全無敵ではないので直撃したり広範囲や持続時間の長い魔法には弱いのですわー!)』

 メルケルスのバランスが崩れた事から翼への攻撃は機動力を下げる良いK点だったと判断出来たマリエルだったがそのまま張り付かれる事を許す魔神族ではなく、弾き飛ばす風と凍える風により距離は開き凍結のデバフまでを受ける羽目になった。
 マリエル達の雷化の主な効果は[半径2mの強力な磁場空間を創る事][自身をプラズマ化して磁場空間内に転送テレポートする。その際攻撃の予備動作は省略される]の2つ。攻撃は全て効かない無敵な魔法ではないのだ。

「《紅蓮衝ぐれんしょう》。うわぁ冷たかった……っていうか何で氷属性の攻撃出来てるわけ?」
『(風にも寒風暖風はありますからきっとその延長ですわねー。真似は出来ても流石に凍結させるまでの威力はまだ出せませんわー!)』
「まだ……ね」

 加階を数回経てここまで戦えるようになったニルでも手乗り精霊→1歳児→3歳児と大きくなっているからまだまだ伸びしろがある精霊の子供なのだ。いずれは叢風むらかぜのメルケルスに匹敵する威力の寒風暖風を扱えるようになる事だろう。
 宗八そうはち達の戦力のカギは契約精霊との共闘であるのに魔神族の侵攻に対して成長するのが遅いという点がまた宗八そうはち達の苦しい部分とも言える。

「ナユタ…?」
『(来ましたわよー!)』

 回避し損ね凍結した左手を解凍している間に隊長に動きがあったらしい。メルケルスの声を合図にチラリと見やれば炎の竜巻とその中心で昇っている火柱が重なり超高温になった攻撃に曝されているナユタの姿が!
 これだけ離れていてもナユタのピンチに反応を示せるなんて、前衛後衛のバディ以外に何か繋がりがあるのかもしれない。もしくは自分達以上に集音能力が高いだけかもしれないけれど、ここから先に行かせるわけにはいかないのよね!

「《アクセラレータチャージ!》《コンコルドバースト!》」
「ところがぎっちょん!行かせないよ!《転送テレポート》」
『(無双のお時間ですわー‼)』
「《風神脚ふうじんきゃく/韋駄天いだてんっ!》》」

 妨害される事は承知の上でナユタの元へ向かおうとするメルケルスが守りを固めたまま加速開始の合言葉を口にした瞬間、構えていた大盾に強烈な打撃が打ち込まれた。厚みのある盾と決して軽くはない何かがぶつかり合う音はとても重低で盾で前方が塞がれたメルケルスの視界の端に何度も繰り返し再生するように映り込む緑の雷が現れる度に盾は重低音をかき鳴らした。
 最高速から動き出せる[アクセラレータチャージ]は雷速で続けられる攻撃ですぐに失速し加速動作に時間が掛かる[コンコルドバースト]とはいえ、その間に自身がナユタとの距離をこうもあっさり広げられるとはメルケルスも考えてはいなかった。

「《イグニッションスティング!》《ソーラーウインド!》」
『(やはり火属性の技も持っていましたわねー!)』
「《転送テレポート》《紅蓮双衝ぐれんそうしょう‼》」

 魔神族の高いステータスで無理やり動きの妨害を行おうとしても簡単に躱され強烈な一撃を貰う羽目に繋がり手の内を晒すだけで徒労に終わった。その動揺からか[コンコルドバースト]の加速が止まったことを確認したマリエル達はすかさず連撃をブチ込んだ。

「《風神脚ふうじんきゃく/断頭嵐だんとうらんっ‼/尖塔嵐せんとうらんっ‼/韋駄天いだてんっ‼》》」
『(転送テレポートー!)』
「《双斧岳そうふがくっ‼/満月軌まんげつきっ‼/紅蓮双衝ぐれんそうしょうっ‼》」
『(転送テレポートー!)』

 追撃。追撃。追撃。追撃。

「うああぁ…痛……っ!」

 追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。

「ふぐっ!うっ……おぐっ!」

 追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。
 追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。
 追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。

 雷速で打ち込まれては消えまた打ち込まれて。
 盾はひしゃげ衝撃に腕はついに壊れ、槍で応戦と防御をしても搔い潜られ嬲り蹴られる。
 追撃。追撃。追撃。追撃……。少しでも相手の攻撃の手が止まればと黒紫こくしオーラを展開してみるもマリエルの足を覆っている翠雷すいらい色のオーラが蹴散らし霧散させていく。

 追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。
 追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。追撃。

 やがてナユタの断末魔の叫びと共に近距離からも少し前に聞いたドルルルゥという音と確実に魔神族に届き得る魔力の高まりを感じ取ったメルケルスは今回の戦闘の敗北を理解した。次はどこで戦うことになるか…。これほどに痛みを与える存在は他にもいるのか…。

「『《シルフィードスティングッ‼》』」

 まだ挽回出来るチャンスはあったけれど。
 喜びも貰えたし楽しみも増えたし。何より、シュティーナの命令はナユタが1度死ぬまで手助けする事だったから。
 胸に捉えた魔神族の鎧や身体とて穿ちながら進むマリエルの姿を目に焼き付けながら。穿たれた大穴により上半身と下半身に分かれたメルケルスは最後に口を動かした。


「また……ね……」
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