狙われた優子

雄太

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悩む優子

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優子の家の玄関
優子と翔子がもどって来る。
「(悲痛な表情で)ねえ優子、本当なの?」
優子がうなづく。
「土曜日に相武さんのお宅に行くの?」
「うん」
優子が家を出る。
沈痛な表情の翔子。

公園で優子が一人立っている。
優子が合気道の気合の声を出す。
「イヤー! ター!」
優子が両手を前に出し、平手打ちするようなポーズを取る。
「ヤー! ヤー!」

夜、道を康太が寂しそうに歩いている。
優子の家に康太が帰って来る。
「ただいま」
「お帰りなさい」
康太が靴を脱ぐ。
「優子は?」
「今日はもう寝たわ」
「そうか」
「あなた、今日相武社長がうちにいらしたの」
「……」

居間で康太がテーブルに着いてビールを飲んでいる。
康太の隣に翔子が座り、厳しい顔で康太にビールを注いでいる。
「ねえあなた!」
「……」
「本当に情けない人ね。あの相武って人に全然頭が上がらないんだから」
「仕方ないだろ。社長には俺が仕事でヘマしたとき、何回も大目に見てもらってるんだよ…」
ため息をつく翔子。
「それにこれまで昇給でもよくしてもらってるし…」
康太がビールをグイッと飲み、グラスをテーブルにドンッ! と叩きつける。
「俺だって自分が情けないんだよ。社長のいいなりになってる自分がさ!」
「あなた……」
「でもこの方が優子にとって幸せなのかもしれない。貧乏人のうちにずっといるよりは…」
「でも…」
「あの子は将来医者になりたいみたいだぞ。でもうちにあの子を医者にさせてやれるのかよ? おまえがサロンの経営の失敗で作った借金もまだ返せてない、貧乏人のうちが!」
寂しげな翔子。
   
朝、道を制服姿の優子と真央が歩いている。
「ふーん、じゃ次の土曜日にその相武って人の家に行くんだ」
「うん。あの人も家にはお手伝いさんが一人いるだけで寂しいらしいの」
「で、どうすんの?」
「うーん……あたしね、お父さんとこのまま一緒の家で暮らすのが堪えられないの」
「優子……」
「いくらあたしが本当の子でないからってあたしを裏切るだなんて……」
困惑する真央。
「……でもさ、すごい金持ちなんでしょ? その相武って人」
「……」
「でも凄いよね、一夜にして社長令嬢だなんて。羨ましいわ」
「……」
「(ニコッとして)って思えば少しは気持ちも楽になるんじゃない?」
優子、真央を見る。
「うまいこと言えないけど、優子の悩みを少しでも軽くできたらって」
「真央……」
微笑む真央。
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