狙われた優子

雄太

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勝也、現る

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優子の家の居間で翔子がションボリとテーブルに座っている。
そこへ優子が部屋に入ってくる。
「ああ、優子、そろそろ夕食にしようか」
翔子が立ち上がって台所に行く。
やがて翔子が戻ってきてテーブルに料理を並べる。
「今日は優子の大好きなハンバーグよ」
優子が席についてハンバーグを口にする。
翔子がその様子を見ている。

船井コーポの外は空は青空が広がっている。
優子の家の玄関で優子が出かけようとする。
優子を見送る翔子。
「気をつけて行くのよ」
「うん、じゃあ行ってくるよ」
「行ってらっしゃい」  
寂しげに優子を見送る翔子。


毅彦の家の玄関前で緊張した面持ちの優子。
優子がチャイムを鳴らす。
「……」
中から毅彦が出て来る。
優子を見て笑顔の毅彦。
「やあ、よく来てくれた。さ、入ってくれ」
「あの、これ」
優子が毅彦に手土産の菓子箱を渡す。
「やあどうもすまないね」
優子と毅彦が家の中に入る。

ダイニングでは毅彦と優子がテーブルを挟んで向かい合っている。
部屋はゴージャスな雰囲気。
テーブルの上にはおいしそうな料理がズラリと並ぶ。
お手伝いが鉄板の上でパチパチと音を立てる焼きたてのステーキを持ってきて優子と毅彦の前に出す。
戸惑った様子の優子。
「はは、どうした?」
「いえ、そのう、あんましこんな料理、食べたことないんで」
「優子がここで暮らしてくれれば毎日でもこんな料理を食べさせてやるぞ」
「……」
「息子の勝也はうちの社員なんだが、今じゃこの家を出てマンション暮らし。それにもうすぐ仕事で大阪に行く。優子が来てくれればどんなに嬉しいか」
優子がステーキを口にする。
そこへガチャッと玄関のドアが開く音。
「ああ、来たようだ。ちょっと待っててくれるか」
   毅彦が立ち上がり、部屋を出る。
「……」
すると勝也と毅彦が部屋に入って来る。
「息子の勝也だ。わしの会社で働いてて、今は埼玉のマンションに住んでるんだが、優子に言われたように、ここに来てもらったよ」
優子が立ち上がって勝也に近づき、勝也をジロッと見る。
「前に私を呼んだことがあったわね」
「……」
「あの日のことであなたに聞きたいことがあるの」
頭をボリボリ掻く勝也。
「何だよ、そんなことで俺を呼びつけたのかよ。俺今日忙しいんだよ。また今度にしてくれ」
勝也が部屋を出ようとする。
優子が勝也の右腕を持ち、勝也の右手人差し指をギュッと掴み、ねじり上げる。
「!」
「痛え! 何すんだよ!」
「私に乱暴しようとして、そんな言い方はないでしょう!」
「!」
顔をしかめる勝也。
「優子に乱暴だって? おい勝也、一体どういうことだ?」
「さあ、正直にあの日のことを話してちょうだい! どうして私に乱暴しようとしたの?」
優子が勝也の人差し指をさらにねじ曲げようとする。
苦悶の表情の勝也。
「わ、分かった! 話すから指を離してくれ! 指が折れるだろうが!」
「優子、止めなさい! 勝也も話すって言ってるだろ」
あたふたする毅彦。
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