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第一章
第一章-02-
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事件現場のミナト公園は、天々来のある中華街にほど近い。高台にある公園は、一般人の立ち入りは禁止され、現場検証を行う警察だけでなく地区担当の他TJ部隊も集合していた。
輝斗たちもまた各所の配置確認と任務に当たりブリーフィングを行う。
この場に諜報の幸弘と千景、そして後方支援の侑李はいない。既に公園から離れた場所に配置済みだ。
千景は情報収集に徹し、狙撃手である侑李と観測手の幸弘は、指示されたポイントにいる。三人は実動隊の支援を行うのが任務だ。
「――では、各自所定のポイントについてほしい。何かあったら無線で連絡するように」
「了解」
政宗の号令で、輝斗たちは指定の場所へ向かった。
実動隊は、基本的に二人ひと組または複数で行動する。戦闘力や霊力、属性など様々なバランスの結果、輝斗と忍は組んでいるが個人的な相性は最悪だ。
「はあ……お互いの属性を補うために組まされているとはいえ、お前の子守りなんかしたくねぇんだが」
だるそうに呟き、忍は自身の頭を乱暴に掻いた。彼の主な武器は日本刀で、刀身はやや長い。銃も携帯しているが、もっぱら刀での戦闘を得意としている。
輝斗はハンドガンと携帯用にサバイバルナイフを装備している。
部隊内の戦闘力が高いのが輝斗と忍のため、必然的に組まされていた。口数の少ない輝斗は多くを語らない。年上の忍に敬意を払うこともなく、いつも呼び捨てだ。また忍は気に食わないことがあると、誰彼構わず突っかかるため、いつもトラブルが絶えない。
そんなふたりが組んで任務に支障はないのかと心配になるが、戦闘時は不思議と馬が合うのだから奇妙な話だ。
「……おい、なんか喋れよ。さっきから俺ばっか喋ってんじゃねぇか」
沈黙に耐えかねて、忍が話しかけてきた。
「任務中に私語は慎むべきだ」
「あー、そうですか」
輝斗の沈黙になれているが、何を考えているのか読めないため落ち着かない。忍は嫌味たっぷりに言った後、周囲を見回した。
「さっさと終わらせて帰りたいよ。ったく……」
「……」
忍の背中から視線を逸らし、輝斗は反対側を見やる。
公園は広く、道は入り組んでいる。敷地内に小高い丘があり、そこまでの道は急な坂になっていた。坂を登りきると、港が見渡せる展望台がある。
バラ園の他、軍の駐屯地跡や外国領事館跡もあり、今は資料館やカフェになっていた。さらにアスレチックやハイキングコースなど施設も豊富だ。
輝斗たちは展望広場を担当していた。海側では、これから入港する貨物船が何隻か見える。
『こちらNr.8。みんな、悪い知らせだよ』
不意に千景から通信が入った。
「こちらNr.1。何かあったんですか?」
任務中はコードネームで呼び合う。輝斗は自分のナンバーで応じた。
『悪魔召喚をした人間を特定した』
「へえ~、誰だった?」
軽い調子で忍も会話に加わる。
『ミナト公園近くのマンションの一室に住む二十代男性。名前は榊原尚人。会社員だ』
さすが索敵能力に優れた千景だ。もうそこまで情報を得ている。
『室内には魔方陣があった。召喚したのは、この男で間違いない。自宅にあったパソコンを調べたところ、裏サイトで悪魔召喚に関するアクセス履歴が残っていた』
情報化社会から、今やネットで検索すれば悪魔召喚についても調べられるだろうが、玄人が行うような正式な手続きや制約など手順を踏めるほどではない。そんな風に手軽にやろうとするのは素人の仕業だ。故に、昨今悪魔関係の事件も増えてきているのだが、まったくもって迷惑な話である。
「おいおい、素人が悪魔召喚したのかよ」
『魔方陣の傍には女性の写真があったんだけど、彼女は最初の犠牲者でミナト公園近くのカフェで働いていることが分かった。しかも榊原の元交際相手だ』
バラバラにちらぱっていたパズルのピースが、一つずつはまっていく。
『彼女と別れたことで榊原は怨みを抱き、悪魔召喚を行った。そして殺害したのが始まりというわけ』
「ですが、最初の女性だけでなく、被害者は今も増えています」
『うん、この話には続きがあってね。実は、数日前から榊原が行方不明なんだ』
千景の声が低くなり、輝斗と忍も厳しい表情に変化した。
『素人の悪魔召喚だ。マンティコアを制御するのは不可能だろう。最悪、榊原はもう……』
最後は言葉を濁した。結果は容易に想像できる。
「早急に榊原の捜索とマンティコアの殲滅します」
『頼んだよ』
通信を終え、輝斗は小さく息をつく。空を仰ぐと、茜色から紫色へと空の色が変わろうとしていた。一番星も顔を覗かせており、もうすぐ日が暮れようとしている。
「逢魔が時だ」
人有らざる者が活発になる時間が、間もなくやってくる――。
輝斗たちもまた各所の配置確認と任務に当たりブリーフィングを行う。
この場に諜報の幸弘と千景、そして後方支援の侑李はいない。既に公園から離れた場所に配置済みだ。
千景は情報収集に徹し、狙撃手である侑李と観測手の幸弘は、指示されたポイントにいる。三人は実動隊の支援を行うのが任務だ。
「――では、各自所定のポイントについてほしい。何かあったら無線で連絡するように」
「了解」
政宗の号令で、輝斗たちは指定の場所へ向かった。
実動隊は、基本的に二人ひと組または複数で行動する。戦闘力や霊力、属性など様々なバランスの結果、輝斗と忍は組んでいるが個人的な相性は最悪だ。
「はあ……お互いの属性を補うために組まされているとはいえ、お前の子守りなんかしたくねぇんだが」
だるそうに呟き、忍は自身の頭を乱暴に掻いた。彼の主な武器は日本刀で、刀身はやや長い。銃も携帯しているが、もっぱら刀での戦闘を得意としている。
輝斗はハンドガンと携帯用にサバイバルナイフを装備している。
部隊内の戦闘力が高いのが輝斗と忍のため、必然的に組まされていた。口数の少ない輝斗は多くを語らない。年上の忍に敬意を払うこともなく、いつも呼び捨てだ。また忍は気に食わないことがあると、誰彼構わず突っかかるため、いつもトラブルが絶えない。
そんなふたりが組んで任務に支障はないのかと心配になるが、戦闘時は不思議と馬が合うのだから奇妙な話だ。
「……おい、なんか喋れよ。さっきから俺ばっか喋ってんじゃねぇか」
沈黙に耐えかねて、忍が話しかけてきた。
「任務中に私語は慎むべきだ」
「あー、そうですか」
輝斗の沈黙になれているが、何を考えているのか読めないため落ち着かない。忍は嫌味たっぷりに言った後、周囲を見回した。
「さっさと終わらせて帰りたいよ。ったく……」
「……」
忍の背中から視線を逸らし、輝斗は反対側を見やる。
公園は広く、道は入り組んでいる。敷地内に小高い丘があり、そこまでの道は急な坂になっていた。坂を登りきると、港が見渡せる展望台がある。
バラ園の他、軍の駐屯地跡や外国領事館跡もあり、今は資料館やカフェになっていた。さらにアスレチックやハイキングコースなど施設も豊富だ。
輝斗たちは展望広場を担当していた。海側では、これから入港する貨物船が何隻か見える。
『こちらNr.8。みんな、悪い知らせだよ』
不意に千景から通信が入った。
「こちらNr.1。何かあったんですか?」
任務中はコードネームで呼び合う。輝斗は自分のナンバーで応じた。
『悪魔召喚をした人間を特定した』
「へえ~、誰だった?」
軽い調子で忍も会話に加わる。
『ミナト公園近くのマンションの一室に住む二十代男性。名前は榊原尚人。会社員だ』
さすが索敵能力に優れた千景だ。もうそこまで情報を得ている。
『室内には魔方陣があった。召喚したのは、この男で間違いない。自宅にあったパソコンを調べたところ、裏サイトで悪魔召喚に関するアクセス履歴が残っていた』
情報化社会から、今やネットで検索すれば悪魔召喚についても調べられるだろうが、玄人が行うような正式な手続きや制約など手順を踏めるほどではない。そんな風に手軽にやろうとするのは素人の仕業だ。故に、昨今悪魔関係の事件も増えてきているのだが、まったくもって迷惑な話である。
「おいおい、素人が悪魔召喚したのかよ」
『魔方陣の傍には女性の写真があったんだけど、彼女は最初の犠牲者でミナト公園近くのカフェで働いていることが分かった。しかも榊原の元交際相手だ』
バラバラにちらぱっていたパズルのピースが、一つずつはまっていく。
『彼女と別れたことで榊原は怨みを抱き、悪魔召喚を行った。そして殺害したのが始まりというわけ』
「ですが、最初の女性だけでなく、被害者は今も増えています」
『うん、この話には続きがあってね。実は、数日前から榊原が行方不明なんだ』
千景の声が低くなり、輝斗と忍も厳しい表情に変化した。
『素人の悪魔召喚だ。マンティコアを制御するのは不可能だろう。最悪、榊原はもう……』
最後は言葉を濁した。結果は容易に想像できる。
「早急に榊原の捜索とマンティコアの殲滅します」
『頼んだよ』
通信を終え、輝斗は小さく息をつく。空を仰ぐと、茜色から紫色へと空の色が変わろうとしていた。一番星も顔を覗かせており、もうすぐ日が暮れようとしている。
「逢魔が時だ」
人有らざる者が活発になる時間が、間もなくやってくる――。
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