Rewind Seven

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第二章

第二章-06-

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 逃走したアキラを追っていた輝斗と忍は、幸弘から羽鳥たちの報告を聞いて複雑な思いに駆られる。
「まさか低級悪魔に足止めを食らうなんて……」
「後先考えずに突っ込んで、ノミノンまみれになってちゃあ世話ないな。霧島の奴、神条のことをバカにしてたくせに、人のこと言えないだろ」
 任務が終わったら、からかってやろうと忍は意地悪な笑みを浮かべた。
『ノミノンの浄化は済んだから、羽鳥と威が合流するよ。嵐はオレ達のいるワゴン車へ戻ることになったから』
「だと思った。あいつのことだから、早く帰りたいとか喚いたんだろ』
『あはは、当たり』
 肯定した幸弘に、忍はなんとも言えない微妙な表情を浮かべる。
「嵐の件は承知した。俺たちは引き続き、アキラを追う」
『アキラも相当興奮状態だから、ふたりとも気をつけて』
「大丈夫だ」
「霧島みたいなヘマはしねぇよ」
 幸弘との通信を終え、輝斗と忍はアイコンタクトを交わす。無言で忍が手を差し出し、輝斗はその上に己の手を重ねた。
「飛ぶぞ」
「ああ」
 言い終わる前に、ふたりの姿は掻き消える。距離を短縮するために、忍の瞬間移動テレポーテーションを使った。
 何度か飛んだ後、到着したのは廃ビルの中だ。薄暗い中は誇りっぽい。むき出しのコンクリートの壁には、いくつも水漏れのシミはあった。
「この辺りのはず……」
「神条!」
 忍びの叫び声に首を動かす。廊下の方で白い影が横切った。アキラだ――。
「追いかけよう」
 加速ヘイストでスピードを上げ、同時に威嚇射撃をする。
「ちぃっ!」
 アキラが近くの部屋の中へ飛び込んだ。
「ちょこまかと……動くんじゃねぇ!」
 追いついた忍が鯉口を切って抜刀する。一足飛びで距離を詰め、背中に向かって振り下ろした。
「うわっ!?」
 アキラは反射的に身体をひねり、一撃をかわした。
「出てこい、ノミノン!」
 ノミノンを召喚して行く手を阻もうとするが、懐から札を取り出して体当たりをしてくる前に障壁で防いだ。忍が立ち止まった隙に、アキラは足元に大穴を開けて階下へ逃走する。
「神条、下だ!」
「分かってる!」
 輝斗はフックショットを使って窓から外へ飛び出す。素早く下の階へ移動して着地をすると、加速ヘイストでアキラの元へ向かう。
「もう追いついてきたのかよ!?」
 ぎょっとした表情でアキラは叫んだ。
「はあっ!」
 勢いのまま、輝斗は跳び蹴りを放つ。
「ぐあっ」
 こめかみに直撃し、アキラは壁に身体をぶつけた。
「……っ」
 痛みに顔を歪めたアキラはふらついている。頭を蹴られた衝撃で目眩を起こしているようだ。そのまま、ずるずると力なく倒れ伏す。輝斗はアキラの両腕を掴み、手錠で拘束した。
「捕まえたようだな」
 遅れてやってきた忍は、伸びているアキラを見下ろす。
「これは……?」
 輝斗の表情が険しくなる。右手首に小さな刺青のようなものがあった。
「やっぱり悪魔と契約していたのか」
 悪魔と契約を交わした者は、身体のどこかに刻印を刻まれる。それは『黒王冠の刻印シュヴァルツクローネ』と呼ばれ、形は様々だが共通しているのは黒い王冠の形をしていた。
「この刻印を浄化すれば、こいつはただの無力な人間に戻るな」
「すぐに千景さんを呼ぼう――っ!!」
 不意に殺気を感じ取った輝斗は、その場から飛び退く。

 ――ゴオオオッ!

 どこからともなく炎の矢が飛んできてアキラに直撃した。
「ぎゃああああっ」
 炎に包まれ、絶叫と共に肉の焼ける臭いが充満する。
「っ!?」
「どっから飛んできやがった!」
 悶え苦しむアキラは、輝斗たちの目の前でみるみる炭と化していく。
「悪魔の方から契約を解除したのか……」
 契約を終えた悪魔は、力を与えた代償として契約者の命を奪う。アキラの願いを全て叶えたと判断したようだが、タイミングからして輝斗たちに情報が漏れるのを防ぐためだろう。アキラが契約した悪魔を叩かない限り、この事件は真の意味で解決したとは言えない。
「くそっ……」
 手がかりを失った輝斗は拳を握り締めて呻く。
「この事件は長引きそうだな」
 人の形をした炭を見下ろし、忍は面倒そうに呟いた。
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