Rewind Seven

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第四章

第四章-02-

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「新たな任務だ」
 そう言うと、政宗は一同を見回した。
 輝斗たちは彼の背後に飾られている額縁を一瞥する。『努力、友情、勝利』と文字に変わっていた。それから、傍にある壁掛けテレビの画面へと意識を集中する。表示されているのは東都市ミナトシティ・北部の地図だ。
「今回の任務は、北都市バラトシティと目と鼻の先だ。このエリアを担当している他の舞台から応援要請があった」
北都市バラトシティから悪魔が流れてきたのですか?」
 神妙な面持ちで輝斗が尋ねる。
 北都市バラトシティは四凶・檮杌とうこつが暴れ回った傷痕がいまだに深く刻まれている。復興に時間を要しており、人間による犯罪だけでなく悪魔の警戒も行き届いていない。一部が混乱に乗じて東都市ミナトシティへ流れてきているのだろう。
「その通りだ。ここからは諜報スピオンに説明させる」
 言い終わると、政宗はその先を千景に任せた。
 千景は頷き、タブレットを操作して画面に死体画像を表示させる。
「二週間前、スラム街でふたりの男性の死体が発見された」
「うわっ、これまたエグいのがきたね」
 それを見た威が思いっきり顔をしかめた。
「スプラッタすぎ……。ランチの後で良かった」
「うぅ、今日のお昼ご飯って肉団子定食だったんだけど……」
 安堵する嵐に対し、羽鳥は青ざめた顔で口元を押さえている。
 遺体の損傷が激しく、首と胴体は繋がっていない。そればかりか、とどめと言わんばかりに体が押し潰されて原型を留めていなかった。
「まるで、大きな獣に攻撃されたような荒々しさですね」
「そうなんだ。次の画像も見てくれ」
 輝斗の呟きに首肯し、千景は画面を切り替える。
「これは先週の出来事で、北部を担当するTJ部隊の死体だ」
 どの隊員も首と胴体ではなく、腹部から真っ二つに引きちぎられていた。腸をまき散らし、苦痛と恐怖で歪んだ顔で絶命している。
「あれは何ですか?」
 その中のひとりが動物の毛のようなものを握り締めていることに気づき、輝斗は指さした。
「目敏いね」
 千景は口元を緩め、タブレット画面を指で操作して拡大する。
「血で赤黒く染まっているけど、この隊員が握り締めている毛は、もともと銀色だった。分析した結果が、このグラフだよ」
 また画面が切り替わる。
「遺伝子鑑定をした結果、人間のものではなく悪魔のものと判定された。その悪魔の名前は――狼男ヴェラヴォルフ。半狼半人の悪魔だ」
 その名前を耳にした瞬間、全員の表情が険しくなる。
「幸弘、狼男の画像を開いてくれる?」
「はい」
 幸弘は自身のタブレットを操作した。
「ここからは、幸弘に説明してもらうね」
 千景に代わって、幸弘が説明を開始する。
「みんなも知っての通り、狼男は人間が何らかの原因によって一時的ないし恒久的に動物に変身する。これは狼男に限らず虎や熊、豹といった猛獣などがで記録されているけど……」
 画面に古い書物の挿絵が表示された。長い耳と尻尾。鋭い牙を持った直立の獣が、人間を襲っている。
「映画などの創作物では満月や丸いものを見ると変身するとされているけど、実際の狼男は任意に姿を変えられる。大抵は呪いや魔術によって後天的に狼男になることが多い。これを『狼憑き』と呼んでいる」
 獣に変身する悪魔というだけならば、輝斗たちの敵ではない。警戒すべきなのは狼男に噛まれることだ。彼らに噛まれると自身も狼男になってしまう。恐ろしい感染力のため、被害が拡大しないように見つけ次第処分するようにと定められていた。
「くれぐれも狼男に噛まれないこと。銀の弾丸を切らさないように気をつけて」
 大抵の悪魔は銀に弱い。狼男も同じく弱点だ。
「狼男の数は多いのか?」
 これまで沈黙していた忍が質問する。
「確認されているのは、ひとりだけだよ」
 ひとり、と聞いて忍は片眉を上げた。
「んだよ、俺たちが出る幕もないだろ。現地の部隊だけで充分じゃねぇか」
「そうなんだけど……」
「あん?」
 言いよどむ幸弘に、忍は苛立たしげに先を促す。
「現地の部隊が感染拡大を防ぐために駆除してたんだけど……知っての通り北都市バラトシティの境界は、下級悪魔の対応で忙しいから」
「要するに、人手が全く足りてないんですね」
 忍に代わって侑李が肩をすくませながら呟いた。
「うん……」
 苦笑を漏らしながら、幸弘は首を縦に振る。
「狼男を取り逃がしたから僕たちで何とかしてほしい、ですか。はい、分かりましたって素直に助っ人に駆けつけるほど、僕たちも暇じゃないんですが」
「そう言うな。困ったときは、お互い様だろ?」
 不満を露わにしている侑李に、政宗が軽い調子で話しかける。それから、改めて一同を見回した。
「直ちに現場へ向かい、狼男を狩ってくれ」
 こうして、輝斗たちは狼男が現れる北部のスラム街へ赴くことになった。
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